いたずらの問題 (ハヤカワ文庫SF)

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  • 早川書房 (2018年8月21日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (336ページ) / ISBN・EAN: 9784150121952

作品紹介・あらすじ

22世紀、アメリカは小型ロボットが監視する管理社会と化していた。青年社長アレンは衝動に駆られて「いたずら」に及んでしまう!?

みんなの感想まとめ

監視社会を舞台にしたディストピア小説で、道徳や倫理が強制される息苦しい世界観が描かれています。主人公アレンは、衝動的に「いたずら」を行うことで、自身の立場を危うくする行動を取りますが、その背後には深層...

感想・レビュー・書評

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  • 監視社会を描いたディストピア小説。序盤は退屈ですが、中盤以降は読むスピードがあがって引き込まれました。しかし、初期作品のせいか、らしさこそあれ雑な仕上がりに感じた作品でした。

    あらすじ:
    2114年、スレイター大佐による道徳再生運動(モレク)の結果、世界は小型ロボットの監視のみならず、住民が相互に監視しあう管理社会となっていた。人々は道徳的規範を強制され、それに反する言動や行動をすれば、住民集会の名の下に権利が剥奪されるてしまいます。ある日、モラルを促す立場である調査代理店経営のアレン・パーセルは、会社の備品を使って大佐の銅像に”いたずら”をしてしまう。しかもそのときの記憶が欠落しており、何故そんなことをしたのか明確に思い出すことができない。途方に暮れるアレンの前に、グレッチェンと名乗る女性が現れて、その兄であるドクター・マルパルトを訪ねます……。

    と、行動を監視された世界での話しですが、パラダイスのような逃げ道があるため、有名なディストピア小説たちのような暗さはありません。社会的ステータスのためだけに、人々は躍起になって監視社会の一員に帰属しているみたいです。考えようによっては、何かしら見栄を張って生きることの滑稽さを、著者によって風刺されてるようですが、そこから村八分のように賃借権を剥奪された後について、もう少し細かい描写が欲しいところ。ただ、その村八分のような決定を下す、毎週開かれる集会については、誰が発言しているかわからないSNSのようなやりとりで、こんなところにもディックの未来志向が見てとれて興味深かったです。

    主人公については、ラストまで読むと、意外とその生真面目さと責任感のある人柄がわかります。しかし、それだけに”いたずら”の内容や、それをしてしまう深層心理の表出が、自身の立場を破壊しかねない行動になっていたのが滑稽でしたね。ただですね、グレッチェンはどうなったんだろうとか、大人しすぎる奥さんにハテナだったりと、いろいろ雑な感じもしました。11章や13章なんかは、まさにディック・ワールドという感じで面白かっただけに、少し残念ですね。

  • メディアをコントロールし大衆を間接的に管理しようとするディストピアもの。
    「1984」のビッグブラザーを象徴とする社会よりも緩めやけど、現代のSNSを住処とする誹謗中傷、ガセネタのばら撒きなどの予見のよう。
    顔の見えない裁きの場「ブロック集会」「テレメディア」など、歪んだ大衆心理が怖い。
    再読してもうちょい感度高めます。

  • ディック初心者にもオススメできるストーリー展開で読みやすい。本作にあるモレク的な風潮がいまだに蔓延していて時代を経ても色褪せない一冊だなとも思いました…!(無意識に銅像の頭部を持ち帰ってくるところは笑いました)

  • こいつは傑作だ!ガハハハハ!!!
    傑作という言葉を辞書で引くと、2つの意味があり、この小説には両方の意味で傑作だと拍手喝采を送りたい。
    例によって、込み入った世界観を把握するまで序盤はやや読みにくいが、「なにこれどうなってんの!?」というディック節から物語は加速していくのでご安心を。
    道徳や倫理が絶対視され、集団相互監視の状態にある息苦しいディストピア。不倫した芸能人を匿名SNSで叩きまくる、昨今の日本を見てきたかのような、先見性あふれる描写に驚かされた(この小説は1956年発表)。その中で、主人公が取る行動によって、痛烈な社会風刺ともいえる、思いがけない結論が導きだされる。序盤の主人公の言動には共感できなかったのだが、少しずつ感情移入が増していく。
    過去にSFで多く描かれてきた監視社会に、ますます近づいていく21世紀のリアル。我々はいったいどこにむかっているのだろう?そこに、「いたずら」や「ユーモアのセンス」といったことが一石を投じるストーリーに考え込まずにはいられなかった。
    あと、文字通りユーモア全開の終盤の仕掛けには笑わせてもらった。色々な意味で傑作なのだ。

  • 西暦2114年。世界は道徳再生運動(通称、モレク)の広がりにより、あるゆる反モレク的言動を取り締まる監視社会へと変貌していた。そこではハサミムシ型のスパイ・ロボット”ジュブナイル”が人々の生活を監視し、少しでも道徳に反する行動を犯したものはブロック集会にて匿名のパッシングを浴び、居住権を奪われてしまう。そんな中、大事件が起きる。モレクの創始者ストレイター大佐の銅像に誰かが赤ペンキをぶっかけ、その首を切り落としてしまったのだ…

    ディックお好きのディストピアSFですが、現代社会に重なる部分が多く、その先見性には驚きを隠せません。特に、匿名性を帯びた住民が不道徳な者たちに対して執拗に口撃を仕掛ける様は、現代の匿名掲示板における炎上そのもの。50年以上前の作品だよなぁ、と感嘆の思いです。

    主人公アレク・パーセルはモレクにふさわしいテレビ作品を世に送りだす、新進気鋭のリサーチ・エージェンシー(いわゆる広告代理店)の創業社長。その功績を認められ、政府からテレメディア局長の座を推薦されるアレクですが、銅像へのいたずらの犯人が彼自身かもしれない(アレクには記憶がない)ということで、物語は不安定な方向へ進んでしまいます。

    アレクのようなリサーチ・エージェンシーが作るテレビ作品により道徳的教訓は世の中に発信されていきますが、子供たちはその教訓をしっかりと理解していない模様。そう思うと、このモレクという活動は初期の思想はどうであれ、いまでは現行の支配体制を維持するための方便でしかないようにも思えます。正義をかざして、悪に目を向けさせる。そのための監視社会。確かに間違いではないのでしょうが、肝心の正義に卑しさがないとは断言できません。
    「汚染されることへの恐怖。猥褻な行為をはたらくことへの恐怖。こうした構造すべてが、巨大な拷問室みたいなもの。だれもかれもがおだかいを監視して、あらをさがし、他人をひきずりおろそうとしている」
    うーん、ディストピア。

    さて、このアレク、とっても前向き。そして現実的。ディック初期の作品だからでしょうか、綺麗にまとまっていて、展開もスムーズ。アレクは奥さんとの仲も良いし、ディックの作品でいつも登場する謎の美少女(本作でももちろん登場)にもなびかない。ディックのプライベートも順調だったのか?と勘ぐりたくなるほど。また、物語は終盤、アレクが窮屈なモレク社会に残るか、開放的な反モレク社会に逃げるか選択を迫られた結果、モレク社会に残って抵抗することを決断する様には、苦難にも立ち向かうディックの前向きな姿勢を感じます。この姿勢は「パーマー・エルドリッチの三つの聖痕」にも感じたことですね。
    いずれにせよ、結末も意外と?清々しい終わり方で後味も悪くない。ディックらしからぬといえば正しくないのでしょうが、そんな印象の強い作品でした。おもしろかったので、満足です。

  • [新訳版]だと思って買っちゃった…ヽ(`Д´)ノプンプン

  • 創元推理文庫で持っているのに買ってしまった。

  • ディックの作品ということで、なるほど管理社会の悪夢を描いています。

    機械による監視や道徳の規制。それらは本書が出版された当時を考えると、戦後アメリカ国内の赤狩りに見られるような隣人に対する不信感を反映した作品とも読めるでしょう。

    そうした解釈は措いとくとして、いまひとつ本書にのめりこめなかったのは、訳文によるところが少なくないです。こなれていない訳語が目につき、いったん目につき出すと、なかなか内容に入っていくことができませんでした。単なる一読者との相性の問題と思いたいのですが......。

  • 本屋で「アンドロイドは電気羊の夢をみるか」と並んで平積みに。表紙のデザインが同じ感じだ。中身も、どうしてこんな社会になってしまっているんだ? という暗黒感は同じだ。

    未来社会、道徳再生運動が行われ、住民は自治会集団の集会で不道徳な行いについて訴追されることになっている。主人公アレンは広告会社を経営していたが、何かの衝動にかられ、この道徳再生運動の創始者の石像を壊してしまう。ここからアレンは安定した暮らしを失っていく。

    「アンドロイドは電気羊の夢をみるか」が一体救いはあるのか?といったどろどろの世界なのに対し、こちらの主人公アレンは理解ある妻がいて、最後は希望が持てそうな終わり。


    2018.11.9購入

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著者プロフィール

1961年、高知県生まれ。翻訳家。書評家。責任編集を務めた『NOVA』全10巻で第34回日本SF大賞特別賞を受賞。訳書にウィリス『航路』、劉慈欣『三体』(共訳)他。編著に『ベストSF』シリーズ他。

「2023年 『NOVA 2023年夏号』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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