母の記憶に (ケン・リュウ短篇傑作集3)

  • 早川書房
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本棚登録 : 131
レビュー : 12
  • Amazon.co.jp ・本 (334ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784150122317

作品紹介・あらすじ

不治の病の母が娘のため選んだ行動をつづる表題作、娼婦の殺人犯を追う「レギュラー」など単行本版『母の記憶に』から9篇を収録

感想・レビュー・書評

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  • ケンリュウ3作目のSF短編集。大いに期待しながら読んだ。

    SF短編集として扱うテーマは手広い。

    時間旅行、異星の古代文化、戦争マシンと生命倫理、AI と人間のあり方、超能力と正義、身体拡張。

    様々なテーマで楽しませてくれるので、飽きることなくサクサクと読んでいける。幅広くSFの各分野に触れてみたい初心者にぜひオススメかもしれない。

    SF作家としてシンプルに力量が高い、と感じる1作。

    しかし正直なところ、SF的な完成度は高くはない。それぞれのテーマはどこか既視感がある。

    そんな本作を傑作たらしめるのは、ひとえにケンリュウの人間愛ゆえ、かもしれない。

    例えば、「残されし人々」は「人格のデジタル化」を描く。電脳世界で永遠の命を得る人々と、それに抗う物質世界の人々、という構図。

    どこか見覚えのある設定。それでも夢中になってしまうのは、人間の感情というものが良く描かれているから。人間の喜怒哀楽がしっかりと織り込めているので、心にまで訴えかけてくる。

    特に最後に収録された「レギュラー」はあまりにも秀逸。久しぶりに「泣けるSF」に出会うことができ、大きな充足感に包まれた。

    SF短編集として良作である以上に、小説として、物語として傑作。SFファンにもそれ以外にもオススメできる1冊。

    (より詳しい感想は書評ブログの方でどうぞ)
    https://www.everyday-book-reviews.com/entry/%E5%BF%83%E3%81%AB%E5%BC%B7%E3%81%8F%E8%A8%B4%E3%81%88%E3%81%8B%E3%81%91%E3%82%8BSF%E7%9F%AD%E7%B7%A8%E9%9B%86_%E6%AF%8D%E3%81%AE%E8%A8%98%E6%86%B6%E3%81%AB_%E3%82%B1%E3%83%B3%E3%83%AA%E3%83%A5%E3%82%A6

  • 表題作に、星野之宣さんの「愛に時間を」を重ね合わせて、泣けてしまった。
    読み始めたのが、母を亡くしたばかりだった時なので、読み終えるのに時間がかかってしまった。
    肉親の愛は深く、そして、自分勝手で、哀しく、業が深い。

    とくに母は(T ^ T)

  • 大満足!
    どれも面白いけど、監視テクノロジーの物語は特に、
    筆者が中国系アメリカ人だと思うと余計に説得力がある。
    国際世論はみんな「監視社会・中国」を批判するけど、民主的な欧米のグローバル大企業もやってることは一緒なんじゃないの?
    論理的に対抗するのが難しく感じられるけど、そういう情報共有と監視の何が問題なんだろう?
    ということをよく考えられる。

  • 本当に、久しぶりのSFです。
    中国のケン・リュウの3冊目の短編集……。
    「母の記憶に」
    この人のは優しいSFなので、SFに慣れていない人でも物語が読める人なら楽しめます。
    余命二年、といわれ、娘の成長を見たい一心宇宙を旅する仕事(かどうかは書いてないけど、私がこの著者なら仕事にする)を選び、七年に一日だけ帰ってくる母と娘の物語です。
    娘はあっというまに母の年を追い越し、結婚し、子どもが生まれ、年老いていく……。
    これだけ空想が現実に追いついてしまったいま、SFにまだなにかできるの余地があるのかなぁ、と思っていたけど、まだなにかできそう、です。
    でも、書き手が若くなった(というより世代が変わったのかも)のを最近しみじみと感じるよ。

    2020/03/25 更新

  • 中国系アメリカ人ケン・リュウの日本オリジナル短篇集第3弾は全9篇収録。
    読んでいて感じたことが2つ。
    ひとつは、前2作と比べアジアらしさが薄れていたこと。もちろんアジア系が主役の作品もありますが、第1弾「紙の動物園」や第2弾「もののあはれ」で表現されていた東洋文化や(欧米から見た)ポジションといったものは本書では息を潜めていました。これは、第1弾と第2弾が本邦初翻訳だったため、意図的に「わかりやすい」作品が選ばれたからかもしれません。いずれにせよ、ケン・リュウという作家の多様さを感じることに。「重荷は常に汝とともに」は滅んだ異星人の文明を探る物語ですが、ウィットに富んだ展開に昔懐かしい欧米SFの雰囲気を感じたり、「レギュラー」には直球のハードボイルドを体感できたりしました。ちょっと、ケン・リュウの見方が変わったかも。
    ふたつは、テクノロジーの進化、それによる人類への影響を比較的肯定的に捉えていること。近頃我々も身近に感じるテクノロジーの進化。これをさらに突き詰め、変容する人間の在りようとその是非を問う作品はもちろん本書に限りません。個人的には、グレッグ・イーガンが頭に浮かびやすいのですが、これまで読んだ作品としては、テクノロジーの進化に警笛を促すものが多い印象です。進化そのものを否定することはありませんが、進化がもたらす負の側面、その恐さを教えてくれたものでした。ところが本書は、一定の負の側面を認めつつも、進化や変容する価値観に折り合いをつけようとしているかと(ただ、その歩み寄りのスタンスを皮肉に捉えているとも読めますが)。「パーフェクト・マッチ」では人類を情報管理する大企業が登場します。かつては成敗されるべき大企業ですが、本書では果たして…。その他、「ループのなかで」や「残されし者」にもそういった印象を受けました。「残されし者」では、かつては賛美される主人公のスタンスが、本作ではただ悲しい(むしろ滑稽?)だけ。こういったスタンスの変化はテクノロジーの進化がより我々の身近なところに進出してきているからかもしれません。

    さてさて、本書も満足の作品でした。いまから第4弾が楽しみです。

  • AIやバイオ技術の急速な進歩に期待と不安を多くの人々が思う為か多くの未来予測が多く出ている。それらを読むのも面白いが、SFとして割り切って楽しむのもありかと思った。SF短編集。その中で特に未来のSiri を彷彿させるパーフェクトマッチが良かった。

  • ケン・リュウの短編集。
    個人的な趣味嗜好にここまで合う作家はあまりいない。
    題材として考えられるプロットを、豊かな叙情性で彩った表題作や、某有名ヒーローと対峙するヴィランを通じて書かれる異なる視点「カサンドラ」など、スポットにあたった人に想いを馳せさせる名品が揃っています。

  • なつかしのSF味

  • 『紙の動物園』からケン・リュウに入った人からすると、意外に感じられる作品が多いかもしれない。ケン・リュウと言えば中国系アメリカ人というバックグラウンドをひしひしと感じさせる文体や、家族の絆を丁寧に描写した短編が得意だが、本書には割と尖った話が多く収録されている。

    「レギュラー」なんかはモロにハードボイルド調のSFだし、「状態変化」も情緒を感じさせるドラマチックな設定とオチが見事。

  • ケン・リュウの短編傑作集その3
    バラエティ豊かだわ

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