草を結びて環【たま】を銜【くわ】えん (ハヤカワ文庫SF ケン・リュウ短篇傑作集 4)
- 早川書房 (2019年6月20日発売)
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感想 : 29件
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Amazon.co.jp ・本 (336ページ) / ISBN・EAN: 9784150122362
作品紹介・あらすじ
揚州虐殺のなかを生きた遊女を描いた表題作、満州で巨大熊を捕獲しようとした探検隊が出会った悪夢「烏蘇里羆(ウスリーひぐま)」など全7篇を収録
みんなの感想まとめ
歴史の暗い側面を描きつつも、力強い生き様を描いた短編集です。揚州大虐殺を背景に、美貌と知性を駆使して生き延びようとする遊女と下女の物語が中心となり、偶然や運命の不公平さが浮き彫りにされます。作品には、...
感想・レビュー・書評
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殆どがSFとは言えず、血生臭い話しが多いのだけれど、読後感はさわやかな名人芸。
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王朝が明から清へ替わる頃。揚州大虐殺をモチーフに美貌と知性を駆使して生き延びようとしたひとりの遊女と下女。生死は偶然でゆえに不公平。それが天の定め=運命なら、知恵と才覚で運命に逆らえ。自由と公平を結草銜環の故事に包んで謳った味わい深い短編。
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中国風 おもしろい
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表題作と、その姉妹編『訴訟師と猿の王』が読んでいて辛いし痛い、でも人の為す悪行をこんなにもまざまざと見せつけられて、何も感じずに通り過ぎることなど出来ない。
歴史と創作が巧みに結びついて映像的な印象を生み出し、「○○年、揚州大虐殺」という名称に集約されるこの事件を――残虐な行為を――私の脳裏に刻みつけた。
さえずる鳥たち、翡翠の指輪、羊の群れ、処刑の短剣・・・。 -
表題作が、辻村七子先生のおすすめということで、はじめて手に取りました。ただ、ただ、凄い……!一作目の烏蘇里羆を読了した時、とにかく凄いという感想しか浮かばず、ずっと「すげぇな〜すげぇよ〜」と、変なテンションになりました。読み慣れてない分、言い回しや表現が難しい箇所も多かったので、一作品ごとゆっくり読みすすめましたが、どの作品も強烈に印象的でした。表題作の「草を結びて環を銜えん」、「『輸送年報』より『長距離貨物輸送飛行船』」が特に気に入りました。
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歴史や小説からヒントを得て深い話にしていく手法はSFなのか?草を…の文章が美しい。揚州大虐殺の話・緑のまひわと雀。この人は短編の方が深く美しく書けるのかもしれない。
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ケン・リュウ短編集4冊目。ファンタジーと呼ぶにはヘビーな作品。史実がベースになってる話もあって、カテゴライズしがたい作品集に思える。
「烏蘇里羆」 苫前町三毛別の事件が元ネタなのだろうか。妖怪(動物)が機械の体を手に入れるのは「良い狩りを」と同じ。
「草を結びて環を銜えん」「訴訟師と猿の王」 読んでる間、頭の中でロックがずっと鳴ってる感じ。昔からマルコムXとか感情移入しちゃうけど、平和な運命にあることを有り難く思ってた方がいいのだろうな… -
ケン・リュウ「草を結びて環を銜えん」読了。SF短篇集。同タイトルの緑鶸と雀のお話は中国の民族紛争に関連してとても切なく美しく思った。最後のマヒワの囀りがより一層感慨深かった。
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この方のお話、細胞レベルで刺さる…
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結草銜環
背が微かに緑がかった、
翡翠の指輪を銜えた鶸。
読み終わった後に表紙の絵を見ると、
とてもやるせない気持ちになります…
魏顆結草
楊雀銜環
いずれも恩返しの故事成語ですが、揚州十日記(まさかの)に置くことによって報いというものを徹底的に否定する。雀に、どんなに冷血な化け物と思われようとそれでも、緑鶸の毅然たる姿勢の美しさ。
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軽蔑されたひとりの女は、三十一名を救いました。
運命に逆らい、なしえることをおこなったのです。
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真実はつねに、歌と物語のなかに生きてきた。
自由に、自由に、自由に。
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人の世の理のようなものが透けて見える気がする。
日本オリジナル第二作品集その2。 -
2021.9.18 93
とても良かった。素晴らしい。 -
新⭐︎ハヤカワSFシリーズ「母の記憶に」からの再読。どの話も読むたびに胸に沁み入るような感覚だが、特に初読では気づかなかった「長距離貨物輸送飛行船」の、何も起きなくともそこにある温かさが良かった。表題作「草を結びて環を銜えん」も素晴らしい。ケン・リュウの短編はたとえ凄惨な出来事や悲しい結末を迎えていても、先に続く光を示してくれるのが好きです。
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「「輸送年報」より「長距離貨物輸送飛行船」」:気候変動対策としてジェット機よりも燃料効率がはるかにいいツェッペリン型飛行船が長距離輸送の要となった、並行宇宙の世界観。
「シミュラクラ」:ケン・リュウはこういう何気ない言葉の端に鋭利な刃物をひそませるのがうまい。ハッとする親は多いのではないか。
アンナ・ラリモア「ひょっとしたら、わが子を、絶対的な依存と自我の独立とのあいだのごく短い時期に留めていたいというのは、すべての親が夢見るものかもしれない。その時期、親は完璧で無謬の存在として見られている。それは愛情に偽装した支配と征服の夢だ。リア王が娘のコーディリアに抱いていた夢だ」
「訴訟師と猿の王」:「草を結びて環を銜えん」に引き続いて、満州族による揚州大虐殺の書き換えられた歴史がテーマ。
猿の王「おまえは今、記憶と言ったな。おまえが読んだあの本を書いた王秀楚(ワン・シュウチュウ)をどう思う?」
田皓里(ティエン・ハオリ)「わたしと同じ、普通の人間だ。賄賂を贈り、危険から身を隠して生き延びた」
猿「それでもあいつは見たものを記録した。あの10日間に死んだ男や女が百年後に思い出してもらえるように。あの本を書くのは勇敢な行いだった――考えてもみろ、いまだにあれを読んだだけで、その人間は満州族に追いかけられるんだ。王秀楚もかた英雄だったとおれは思うね」
猿「英雄なんてものはいないんだよ、田皓里。史可法(シ・クァファ)は勇敢で同時に臆病だった。有能で同時に愚かだった。王秀楚は侵略者に媚びて生き延びたが、同時に偉大な精神の持ち主だった。おれはいつも我儘で見栄っ張りだが、ときには我ながら驚くようなことをやってのける。おれたちはみんな、普通じゃない選択肢を突きつけられた普通の人間だ――いや、おれは普通の妖怪だけどな。そんなとき、英雄的な理想が、おれたちを化身にしたがることがあるのさ」
田「わたしはただの怯えた年よりだよ、猿公。どうしたらいいかわからない」
猿「わかってるとも。あとは受け入れるだけだ」
田「どうしてわたしなんだ。わたしがいやだと言ったら?」
猿「揚州の人たちは百年前に殺された、田皓里、それはどうしたって変えられない。だけど過去は記憶の形で生き続けるし、権力を握った連中はいつだって、過去を消して黙らせたい、幽霊を埋葬したいと思うようになる。おまえはもう過去について学んだんだから、何も知らない傍観者ではいられない。おまえが行動しなければ、皇帝と血滴子によるこの新たな暴力、この抹消行為に加担することになる。王秀楚と同じように、おまえも今や目撃者なんだ。あいつと同じように、どうするか選ばなくちゃいけない。死ぬときに自分の選択を後悔するかどうか、今判断しなくちゃいけない」
猿の王の励ましを受けられた田皓里はしあわせ者だ。正しい選択ができるように、わたしにも勇気を!
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優しい物語を書くひとだ。
ケン・リュウの傑作短篇集第4弾は星雲賞受賞の「シミュラクラ」など計7篇収録。第1弾から読んできたものとしては、著者の優しさを再確認する一冊だったように思います。「紙の動物園」や「母の記憶に」といった家族愛をテーマとした作品群のひとつとして本書の「シミュラクラ」があげられるかと思いますが、一度離れてしまった心を再び結びつける巧みさには感心せざるを得ません。これ、たった数十ページで描いているんですよね。物語の起伏にうまくSF的ガジェットを活用しているのでしょうが、最後の一節だけでゴールを決めてしまう「シミュラクラ」はまさにセンスの固まりかと。
中国史(特に清成立の過渡期)を題材にした表題作やその姉妹作「訴訟師と猿の王」のほか、「万味調和――軍神関羽のアメリカでの物語」は中国系アメリカ人らしい作品。最近中国史に興味を抱きつつあることもあり、とても興味深く読み進めることができました。
これら3篇はSFとは言い難い作品ですが、「烏蘇里羆」の味のある近未来世界観(日本版スチームパンクというのでしょうか)であったり、飛行船が主流となったもうひとつの世界を描く「『輸送年報』より『長距離貨物輸送飛行船』」などはSFが与えてくれるワクワク感を味わえてとてもよかったです。どちらの世界観ももっと堪能してみたいなぁ。
ということで、いつもながら期待を裏切らないケン・リュウでした。次作も期待! -
相変わらず染みる。1番SFぽさが薄い?これはこれで好き。
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短編のとれもが珠玉。特に表題作『草を結びて…』と『訴訟師と猿の王』。登場人物が自分の人生を自分で生きる為に、知恵と勇気と自分が決めた正しさに従って闘う姿に言葉を失う。中国にはいつ平和な時があったのだろうかと思う。学ぶ学ばずを問わず孔子の心を理解する者のほとんどは迫害を受け、論語はもちろん多くの学問を修めたであろう者が奸計を巡らせ民を搾取した。
本書を読み、また新しい中華文化や習慣、歴史の知識を得た。本書の中にある美しい文化が、永く残っていけば良いと思う。
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