ゲイルズバーグの春を愛す (ハヤカワ文庫 FT 26)

制作 : 福島 正実 
  • 早川書房
3.78
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本棚登録 : 651
レビュー : 85
  • Amazon.co.jp ・本 (334ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784150200268

感想・レビュー・書評

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  • 古き良き時代のアメリカの、ノスタルジックな世界の中で繰り広げられる
    とってもロマンチックな世にも奇妙な物語。
    新しく変わっていこうとする現代と、古き良き時代の過去の時間とが交差する
    ファンタジックなロマンチックホラーの短編集。

    表題作の「ゲイルズバーグの春を愛す」を含む十のショートストーリーは
    どれにも温かな読後感が漂います。

    いちばんのお気に入りは
    ・もう一人の大統領候補
    次いで
    ・独房ファンタジー
    ・時に境界なし
    ・大胆不敵な気球乗り  

    そして、とあるストーリーの中では
    30年前に暮らしていたことのある街が出てきて吃驚。とても小さな田舎町で
    めったにお目にかかれない...だけどごくたま~に小説や映画に
    登場することがある街で、あの頃車で何度か走った峠に
    まさかこんなところで出会えるとは思いもしなかった...。

    私の中の古き良き思い出とも重ねて合わせて回想の旅をする
    心温まる幸せなひとときを過ごしました。

  • 懐かしさ、自分が自分であると同時に、もっと大きな存在を共有しているのだという感覚。
    「誰でもなく、どこでもない」。それでいて、「誰もがあなたであり、その時である」。自分は直接「それ」を知らないのに、ひたすら懐かしい。個人を飛び越えた記憶と、より大きな「私」の話。

    恋愛メインの話は2話しかないのだが、全体的に、不思議なときめきを感じる。甘くて、ロマンチックで、軽妙で。それでいて、潜在意識をくすぐられる感じがたまらない。どことなく、読んでいて初期の恩田陸作品を連想する。

    私は特に、「クルーエット夫妻の家」を読んで、胸がいっぱいになった。
    愛された家、魂が吹き込まれた家の話。主人公は家そのもの。でも、擬人化などでは決してない。時代を飛び越え、人の記憶を移させる、そんな家のお話。
    この短編の最後で、私はどうしようもなく切なくなって、涙ぐんでしまった。だって、これは、夢のような話だもの。「私たち」の話であると同時に、「もうどこにもない」人たちの話なのだ。そのことが、あまりに切なくて、でも美しくて、私はこのお話を読んで、苦しくなってしまった。

    だからこそ、この本の「訳者あとがき」を読んで、私は妙に納得すると同時に、少し、悲しくなってしまった。
    そっかぁ、そうだよね、と思ったのだ。つまり、この本の訳者・福島正実さんの言うことを「確かに」と思ったのである。
    福島さんは言う。フィニイが描くのは、積極的な現実拒否なのだ、と。現実世界にそっぽを向いて、自分からファンタジイを、自分の思い描く理想の世界を、作り上げているのだ、と。

    私の感じた「心地よさ」も、きっとこのせいなのだろう。現実からの逃避、自分を優しく迎え入れてくれる世界への憧れ。それをフィニイは、甘く、切なく、そして懐かしく描いているのだ。自分の生きている現実を否定したい人間にとって、それはまさに、夢のような世界だろうと思う。

    けれども、それだけではこんなに「懐かしい」気持ちにはならないだろう、とも思う。ただふわふわと夢を追っているだけで、<現実>というものから逃れられるほど、私たちの<リアル>は甘くないのだ。
    それでもフィニイがそれを「懐かしさ」として掬い取ることができるのは、やはり彼の感覚の鋭さ、「大きな無意識」を文章として著す確かなセンスがあるからなのだろう、と思う。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「「懐かしさ」として掬い取ることができる」
      巧い!一言で言い表しましたね。。。
      「「懐かしさ」として掬い取ることができる」
      巧い!一言で言い表しましたね。。。
      2014/06/20
  •  はるか昔 人に貸したまま返ってこなかった一冊(>_<)
     ようやくブコフで買い戻して、久々の再読( ´ ▽ ` )ノ

     やっぱり「愛の手紙」は名作だね( ´ ▽ ` )ノ
     刊行当時、かなり話題になった( ´ ▽ ` )ノ
     表紙絵も、ね( ´ ▽ ` )ノ
     並行宇宙コインの話と合わせて、ほんとフィニィってかの名画「ある日どこかで」の元ネタだと痛感( ´ ▽ ` )ノ

     どの話も四分の一くらいでオチが読めちゃうけど、ストーリーやアイディアより雰囲気を楽しむ作品だから、まったく気にならない( ´ ▽ ` )ノ
     気球乗りの話なんか、たまんないよね( ´ ▽ ` )ノ
     表題作に代表されるようなノスタルジーも、しっとり共感できる( ´ ▽ ` )ノ
     一時代・地域への深い深い愛着なくして書き得ないドラマ( ´ ▽ ` )ノ

     訳者の福島大先生が不思議がってる アメリカ人の郷愁好み、その後は日本でもすっかり定着したよね( ´ ▽ ` )ノ
     テレビも映画も、回顧回顧( ´ ▽ ` )ノ
    「三丁目の夕日」とか( ´ ▽ ` )ノ

     本書が気に入ったら、「ふりだしに戻る」「マリオンの壁」もぜひ( ´ ▽ ` )ノ
     見てなかったら、映画「ある日どこかで」(と、そのリチャード・マシソンの原作本)もね( ´ ▽ ` )ノ

    2018/10/10

  • 2012.08.27

  • まず邦タイトルが素晴らしい。人知を超えたもの達。幻想と少々の恐れと。

    ジャック・フィニイの短編集。表題作は古き良きたたずまいを残すゲイルズバーグに訪れた近代化の波と、それを押しとどめた摩訶不思議な出来事の話。

    収録されている最後の作品、時間を超えたロマンス「愛の手紙」が有名。(カバーイメージの作品)

    ブルックリンに住む男が、ある古い机を買った。その机には秘密の引き出しがあり、投函されなかった手紙が入っていた。男は手紙に返事を書いた。およそ80年前の女性に対して。そして次の隠し引き出しをあけると・・・

    他、「大胆不敵な気球乗り」もお気に入り。全体的に、世にも奇妙な物語的な雰囲気がする。

  • 懐古趣味のSF。こんなにワクワクしたSFはウェルズ、ヴェルヌ以来。大袈裟なロボットとか銀河とか、そういう話も面白いですが、ジャックフィニィのこの作品群は仰々しくなく、疲れた時に読むと優しく迎えてくれます。実際に仕事で追い詰められていた時、本屋さんでたまたま見かけたこの1冊に救われました。
    どれも面白いですが、気球とラブレターのお話が印象深く心に染みています。

  • 久しぶりに読んだ!高校時代読んだのはハードカバーだけども訳は同じだから懐かしかったです。愛の手紙のラストが訳によってだいぶ変わるのが印象的…。やっぱりフィニィの現実に真っ向から対立する懐古主義、しかもかなり限られた世界というのが結構自分のツボだなあと思う。他の作品ももっと読もう!

  • 読むとなんともいえないあたたかく切ない感覚に、じんわりとつつまれる。
    ペシミスティック・ロマンティック・ファンタジィ。先がどうなるか気になって仕方がないスリル感もありながら、懐古的、退廃的な空気が漂う。ふしぎとそれがとても魅力的。

  • 刑の執行を数日後に控えた死刑囚は、独房の壁に絵を描くことを希望したのだが・・・(「独房ファンタジア」)ノスタルジー溢れる短編集。

  • ゲイルズバーグの春を愛す
    悪の魔力
    クルーエット夫妻の家
    おい、こっちをむけ!
    もう一人の大統領候補
    独房ファンタジア
    時に境界なし
    大胆不敵な気球乗り
    コイン・コレクション
    愛の手紙

    訳者あとがき

    ・‥…━━━☆・‥…━━━☆・‥…━━━☆

    「愛の手紙」は以前、別訳の「机の中のラブレター」(『不思議の扉 時をかける恋 』(角川文庫))で読んでいたが、訳者が違うと、作品の雰囲気って違うものだね

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