- Amazon.co.jp ・本 (311ページ)
- / ISBN・EAN: 9784150200305
感想・レビュー・書評
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確かこの作品、映画化もされましたよね。
残念ながら見てはいませんが。
魔法こそ出てきますが
よくあるファンタジー作品に出てくる魔法とは
一線を画しますし
実際には炸裂はされません。
つまりこの作品を読んで感じることは
このような非現実な術は
ただ同然で出来るわけではなく
必ず何らかの対価を支払わねばならぬということ。
そのためにラモンは
自らの大事なものを「担保」に
するわけで…
他のファンタジーとは毛色が違いますので
読む際には注意。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
4/26 読了。
ダンセイニの本領は短編だと思っていたけど長編もいいな。びっくり箱的なギミックとしての魔法ではなく、魔法が存在する"世界"を描き出す美しい文章。荒俣宏の訳文が素晴らしい。
影を生み出す"物体"であることを重要視する主人公ラモン・アロンソ及び城の人びとと、物体を軽んじ精神の世界に遊ぶ魔法使いの二項対立。「すべての根源は一つ」と説く魔法使いにとって金は無価値なものだが、地に足をつけて生きるラモン・アロンソたちにとっては必要なものだ。影=物体なんて無価値だと言い切れないのは、アネモネが語る影の思い出のせいだろう。このシーンの美しさが全編を通して1番印象に残っている。もちろん、魔法使いの寂しくも美しいラストシーンも甲乙つけがたいけど。 -
荒俣氏だったのですね、訳。私内的にファンタジー=『魔法使いの弟子』というくらい、ファンタジーを読む楽しみ、異質な世界とこちらの世界のあわい、を童話めいた道具だてで、はっきりとそこに出現させ、みせてくれる本。漠然とピレネーという境界を、そしてそこで分断された近代と中世という時間と土地を、閉じた扉とともに想像してみる。ファンタジーってやはり世界を取り戻すことだと思う。