タマスターラー (ハヤカワ文庫 FT 96)

  • 早川書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (318ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784150200961

感想・レビュー・書評

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  • ロマンチックで耽美的で凄惨な世界。
    タニス・リーのファンタジー小説は、私のなかでファンタジー熱が高まるたびに読みたいとは思っていたのだけど、やっと彼女の作品を手に取ることができた。

    タニス・リーのファンタジーといえば《平たい地球》シリーズが有名。シリーズには『闇の公子』『死の王』『惑乱の公子』『熱夢の女王』『妖魔の戯れ』がある。
    まだ世界が平らで、混沌の海に浮かんでいた遥かな昔。地底では妖魔の世界が栄え、世界には5人の闇の公子がいた。《平たい地球》シリーズは、公子たちと関わった人間たち、あるいは人間と関わった公子たちの物語だ。
    たとえば第一作『闇の公子』のあらすじ。
    絶大な魔力と美貌を誇る夜の公子アズュラーン。彼は夜ごと人間界で遊び、無垢なものたちを誘惑して愉しんでいた。彼が育て上げ寵愛した美青年シヴェシュ、残虐非道な女王ゾラーヤス、生まれる前にふたつに引き裂かれた魂シザエルとドリザエム……
    闇の公子の気まぐれないたずらは、あまたの人間の運命を変え地上を災いの種で満たしていく。

    《平たい地球》では、いとも簡単に死に、狂い、操ることのできる人間たちは、闇の公子たちの無聊と屈託を慰めるための道具だった(『ファンタジー・ブックガイド』参考)。
    このようなあらすじを読んだだけで、私は魅惑的な悪の力による残酷美の世界に酔いそうになる。なので、どっぷり酔いつぶれて二日酔いで頭がガンガン痛くなる前に、まずは短篇集から彼女の描く世界を覗いてみることにした。

    「インド幻想夜話」とのサブタイトルからも想像がつくかもしれないが、『タマスターラー』は一夜に一話語られる物語という形で、七篇の連作短篇集となっている。
    すべての舞台はインド。そこでは妖魔も悪鬼も当たり前のように人間界に存在している、現実のインドとは少しずれた世界。タニス・リーによって私は、その世界の過去、現在、未来を体験するのだ。

    どの作品も異国情緒が溢れる耽美的な雰囲気が漂っていて、それだけでどきどきしてしまうのだけれど、その背景にインドの神話や伝説が見え隠れしていることが分かると、さらにストーリーは面白くなってくる。
    たとえば第一夜「龍の都」。英国人の少年が妖魔に連れられて地下のナーガの都にいく……というストーリーは、インドの二大叙事詩のひとつ『マハーバーラタ』に登場する、ナーガ・ローカ(またはパーターラなど)と呼ばれる地底の都のエピソードが下敷きになっている(「訳者あとがき」参考)。
    また第五夜「象牙の商人」には悪鬼の暗殺者ラクシャサが登場するのだけれど、ラクシャサってインド神話に登場する鬼神の名でもあることを、私は初めて知った。そういうことからも、インド神話に興味のある方は面白く読めるのではないかと思う。

    また私が強く印象に残ったのは、業(カルマ)や輪廻転生という概念が、どの世界にも登場人物たちに強い影響を与えていたこと。このインドの思想、哲学といったものを英国作家のタニス・リーがファンタジーに昇華させているのが、とても魅力的だった。
    とくにそれらを強く感じたのが第二夜、狩人の物語「炎の虎」と、ひとつひとつの生命は、投げられたサイコロと語られる第四夜「運命の手」。そして第七夜の聖なる河が黄金に変じた遥か未来の魂「暗黒の星(タマスターラー)」。

    あと『世にも奇妙な物語』のメインテーマが流れてきそうな、コミカルでシュールな第三夜、知覚の夜「月の詩」や、百万もの貪欲な目が見つめる銀幕のきらめき「輝く星」の第六夜も印象深い。

    幻想的な模様が次から次へと浮かび上がる万華鏡を覗いたような気分。やっぱり美味しいお酒に酔ってしまったようで、だんだん楽しくなってくる、そんなタニス・リーの短篇集だった。

  • 古書購入

  • インド幻想夜話タニス・リーの短編ファンタジー7作品。 絶版と知って手放せない1冊になったものの、視力が良過ぎた昔は難なく楽しめても、今では文字が小さくて再読…出来るか否か。 翻訳も良いのだろうか。 タニスの作品はいつも心躍る。

  • これ、もしかして絶版になってしまったのでしょうかね。美しきインドの物語ですよ。虎に憧れ、自ら虎に喰われる男の物語は読んで十数年経った今でも鮮やかですよ。うわー。絶版?惜しいな。

  • 短編集だけど、すべての物語に確固とした世界観を感じる。すごい。こういうストーリーや描写が目標。

  • インドファンタジーに目覚めたきっかけがこの作品です。オリエンタリズム全開だといまでなら思いますが、それでも、インドの風景に対する視線は、イギリス人ならではなんだろうなと思います。タニス・リーって世界をどういう風に捉えているんだろうか。たぶん、余人とはまったく違う風に見えているんだろうなあ。
    これに出てくる幻の虎の話が恐ろしくて、美しくて、好きでたまらない。

  • 幻想的な雰囲気にホレた。
    緻密で綺麗というのは凄いと思う。

  • どうも“月の詩”の方が好評らしいですが。“暗黒の星”の方が好きです。ラストが意外だけどインドだな、と印象が強くて。

  • 初めて読んだタニス・リー。これでハマった。

  • インドを舞台にしたファンタジーの連作短編集。 

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