すべてのまぼろしはキンタナ・ローの海に消えた (ハヤカワ文庫FT)
- 早川書房 (2004年11月9日発売)
本棚登録 : 236人
感想 : 27件
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
Amazon.co.jp ・本 (192ページ) / ISBN・EAN: 9784150203733
みんなの感想まとめ
幻想的な物語が織りなす中編三部作で、メキシコのキンタナ・ローを舞台にした奇譚が描かれています。著者の晩年に書かれたこの作品は、読者を美しいエメラルドグリーンの海の冷ややかさと、心地よい空気に包まれる世...
感想・レビュー・書評
-
著者晩年の幻想小説、中編三部作。
メキシコ湾とカリブ海の間に突き出た半島キンタナ・ローの沿岸を巡る奇譚。
原題は"Tales of the Quintana Roo"――なので、
邦題に日本語の静かなパワーを痛感、カッコイイ。
昔、カンクンへ旅して骨折して帰ったきた人の話は……
しなくていいですね(笑)。
そこまで行ったことがなくても、
沖縄の海に浸かった経験のある向きには、
美しいエメラルドグリーンの海に、
その色味から冷やかさを想像し、
熱気に包まれて火照った身体を
クールダウンしてくれるのを期待して駆け込むと、
実は――ぬるい、
物凄く生ぬるくて「騙された!」と叫びたくなる、
あの気持ちを思い出していただけるかと思いますが、
この連作のページを捲っていて、そのときの気分が蘇りました。
空気がトロンとして、実に心地いい。
もっと難解、あるいは奇抜過ぎて
着いていけない作風を想像していたら、
いい意味で肩透かしを食いました。
我々の現実の生活の延長線上、
あるいは曲がり角の向こうにある奇妙な世界の話。
しかし、箱メガネで覗いた水に反射するのは、
侵略や格差といった歴史や経済の深刻な問題なのかもしれない……。
ところで、ラテンアメリカ文学者・越川芳明氏による解説が
素晴らしい。
著者の来歴と、収録作のバックボーンと思われる事象について
過不足なく伝えてくれている。
読者が文学の解説に求めているのは「●●さんと私」のような
エッセイ、内輪話などではないのだ。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
先日読んだ短編集とは全く趣が違っていたけれど、これはこれでよかった。特に「リリオスの浜に流れついたもの」は雰囲気がとてもいい。自然が人間の手によって滅ぼされるのではなく、いつか死そのものが恐ろしい生命を備えて逆襲してくるかもしれない、というある登場人物のセリフは、3編に共通する不穏さを表しているようで、そこにSF的な要素が多少感じられるかな。
-
●2026年1月1日、いま図書館で借りて読んでいる「マッチング・アプリ症候群」の著者が執筆のために潜入したマッチングアプリにて取材対象の相手男性とマッチングしたきっかけが共通のファンであるSF小説家だったと書いてあった。それがこのジェイムズ・ティプトリー・Jr.。【23~24ページ】
-
ティプトリー好きとしては、読めてよかった。
-
面白かった。海にまつわる短篇集。南国にぶらぶらしに行きたくなる。
-
(後で書きます。必要と友情、噂話と片言のコミュニケーションの間にかろうじてまぎれこまされる怪異な(そして私のものではない)経験)
-
分かったような、わからないような
現在の人類が汚染する海
支配と被支配との関係
そんなハードなテーマを語っているのかも知れないが
フワフワとしたファンタジーとしても読める。 -
キンタナ・ローの浜辺を舞台にした3篇の短篇を収録。
著者はSFで有名だが、こちらは幻想小説というかファンタジーというか、普段の作風とは少し異なり、作中ではゆったりとした時間が流れ、静謐な雰囲気が漂っている。
名手と名高い浅倉久志の訳文も素晴らしく、まるで本当に海辺にいるような心地にさせられた。
この本だけが何故かハヤカワ文庫FTからの刊行。この1冊だけいつものSFレーベルでないのはちょっと不親切かも。 -
-
「リリオスの浜に流れついたもの」
「水上スキーで永遠をめざした若者」
「デッド・リーフの彼方」
海から去来する幻想を、海の美しさや神秘性をあらわにしながら描く三編。
「水上スキーで永遠をめざした若者」が一番好みだった。
サンゴ礁のある豊かな海で、朝日ののぼる海を疾走する水上スキーとそれを駆る若い男。そして現れる古の都の姿。一枚の絵画のように美しい情景だ。
環境破壊や観光地化、海という大自然やマヤ族の文化からの復讐、など詩情を感じさせる美しい物語と込められた作品の意味が、ティプトリーの作品のなかでもとりわけきれいにまとまっている連作だと思った(ティプトリーには自身の持つ過剰な何かが噴出している作品が多いと思うので)
解説が背景から作品の意味まで詳しく書いてくれていて良かった。 -
ユカタン半島キンタナ・ロー州を舞台とした3つの連作短編からなる海洋幻想小説です。幻想的なフワフワ感に、現実のやるせなさを混ぜ込んだような作品になっています。
-
南アメリカの浜辺の匂いがする、海を舞台にした幻想小説三編。
大きく、穏やかでうつくしい海に包まれたような気分になりました。
「リリオスの浜に流れついたもの」という短編が、どことなく少女小説っぽくて好きです。
キンタナ・ローの海に現れる不可思議なものたちは、自然開発に伴い、まぼろしのように消えゆくものに対する、ティプトリー哀しみを表現したものなのでしょうか。 -
ついついキンタローと空読
-
硬派な女性SF作家の世界幻想文学大賞受賞作。SFではなく、ファンタジーにカテゴライズされるようですが、僕にはイマジネーション豊かな純文学寄りに読めました。SF界の権威というオーラを纏わない、等身大の作家の自然な姿が感じられるような3つの連作中篇。ポール・オースターやスティーヴ・エリクソンの諸作品、ル・クレジオの『海を見たことがなかった少年』『パワナ』などが好きな人にお薦め♪
-
8月5日読了。SFの名手による、これはファンタジー?3編の印象的な短編を収録。キンタナ・ローとはメキシコ東の、カンクンなど観光地の近くに存在する海岸地域のようだが、各編で語られる神々・歴史・自然から立ち上る上質の酒のような、コクと旨みに満ちた小説だ。どのお話もラストにちょっとゾクっとさせられるような、幻惑させられるようなヒネリが効いており、ミステリ仕立てであるとも言える。うまい書き手は何を書いてもうまいのか?
-
同著者の『愛はさだめ、さだめは死』が面白かったから。私は、こちらのほうはすんなり読めた。だって「ファンタジー」に分類されているのだから。同じ著者の他の作品と比較しながらまとめて読むと、この人の凄さがわかるような気がする。とにかく不思議で、でも面白かった。文学の分類にケチをつけたい気分のときもあるけれど、でも整理目的であれ、初めて本を手にする人にとってであれ、何らかの指標が必要なことは認めます。図書館も書店も、そういう意味ではなかなか「ぶっ飛んだ」真似はできないけれど、「私の本棚」は私だけが配架できるのだ。この愉しみ、悩み、筋肉痛。ぶっ飛んでやる!??
-
この作家さんはSF作家だと思ってたんですが。これはファンタジー。(ハヤカワ文庫FTだしね 笑)
海行きたくなった。太平洋とかじゃなくて、もっと底抜けたみたいな海(そんなどこにあんの) -
物語自体はまあまあ面白いってところだけど、文体がすごくいい。個人的には文体だけで読める。
-
ティプトリー.Jrというだけで高評価を与える奴がいそうでいやになる。<br>
まあ、俺もティプトリー.Jrというだけでいくばくかの金を払ってしまう愚か者なのだが...。とりあえず、大人のSFファンなら金をドブに捨てる覚悟で買ってしまうだろう。<br>
<br>
さて、ティプトリー.Jrは初めて。サンリオ含めて全冊購入済みだが、「接続された女」すら読んでいないのだな。<br>
で、この連作短編の感想。<br>
<br>
これはラファティですか?酒を飲んでいない素面のまたは欝状態の。<br>
ラファティの短編集の中にコッソリ紛れこませても、全然分からんだろう。「水上スキーで永遠をめざした若者」なんて題名からしてそんな感じに思えてしまいますが、どうでしょう。<br>
この本が好きな人におすすめの本
ジェイムズ・ティプトリー・Jr.の作品
