魔法 (ハヤカワ文庫 FT フ 11-2)

  • 早川書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (526ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784150203788

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  • 著者のクリストファー・プリーストは「逆転世界」で世界の基盤をひっくり返す衝撃力に驚いた特別な作家だけに、「自在に姿を消せる魔法の力に恵まれた男女3人の奇妙複雑な関係」?に若干の不安を抱きつつ読んでみる。原題のTHE GLAMOURは魅力という意味で訳されるのですが、元々は魔法や呪文という意味だそうな。この深い意味を表す言葉によるすれ違いや、誤解を生じさせながら、爆弾テロによって記憶を失った主人公が記憶をたどるサスペンス小説かと思いきや、わかりやすいSFになるのか?を経由してその手を使う!?になります。不思議感満載のファンタジックな男女関係。信じてもらうって難しい。往年のハードなSFからは離れてしまった感じでしょうか?

  • テロに巻き込まれて記憶の一部を失ったカメラマン・グレイの元にスーザンという女性が尋ねてくる。
    彼女はグレイの恋人だというのだが、彼にはその記憶が一切なく…。

    というわけで、グレイとスーザン、そしてスーザンに付きまとう元恋人だというナイオールそれぞれの目を通して語られる三角関係。
    言ってしまえば『藪の中』。
    最初に『グレイが思い出したこと』が語られ、それは記憶障害だと『スーザンが本当のこと』を語る。
    ここまででほとんどの頁を使っている。
    ラストに『ナイオールがすべてを仕組んでいた』と告白して終わるのだけど…。
    不可視になれる能力を持った(透明)人間って言う設定はすんなり受け入れることができたし、ナイオールのパートまでの内容は非常に面白くて、特にスーザンがグレイの記憶を修正して語るパートは引き込まれた。
    で、あのオチ。
    ナイオールは神であるのか。
    あるいはグレイとスーザンは小説家志望のナイオールが生み出した物語の登場人物なのか。(もっともその場合もナイオールは二人にとっての神ということになるのだけど)

    だとしたら残念なのが、ナイオールがスーザンに渡した物語。
    現実の出来事が起こる前にそれについて書かれた『予言の書』のような扱いになっているのだけれど、能力の手ほどきをしたスーザンからもその姿を隠せるほど卓越した魅力(グラマー)の持ち主だと繰り返し語られることにより、スーザンに渡したあとでいくらでも『物語』を書き換えることができたのではないか、と思ってしまった。
    それゆえ、スーザンの恐怖、グレイの戸惑いが今ひとつ体感に落ちてこないというか…、突っ込みを入れたくなってしまってそこまでの緊張感台無しw
    いや、コレ、私が勘違いしているだけなのかもしれないんだけど。この辺を読んだ方はどう解釈しているのか、聞いてみたいところではあります。
    物語の構成とかは面白かっただけに、ここだけ引っかかるんだよなぁ。

  • 報道カメラマンのグレイと彼の恋人のスーザン、主な登場人物は二人なのに一人称、二人称と語り口は頻繁に変わる。今語っている「わたし」とは誰なのか。話し相手が語っていることはどこまで真実なのか。今対峙している人は実在してるのか。自分とは何なのか。読み進むにつれて混乱してきて、ラストでは頭の中が?だらけ。分からないことだらけだけど、面白かったー。

  • 映画「プレステージ」を観て、プリーストの衝撃は それなりに知ってはいたつもりですが…

    いやーとんでもないわ。
    途中で告白される、ある大きな要素「グラマー」。
    これで完全に世界観がひっくり返る。

    ふつうはグラマー=魅力=魅する力と考えますが、
    個人的にはまったくの正反対の印象。
    あなたがどちらの印象を受けるか
    そしてこの力を欲しいと思うかはともかくとして、
    前半の恋愛モノが一変しまくる事は保証する。

    ラストの一行でまたひっくり返す手法も見事。
    結局冒頭の、途中の、ラストの章は誰のものか?
    頭ぼーっとさせてくれること請け合いです!

  • クラクラする内容です。取り敢えず絶賛!

  • 最後が理解できなくてくやしい(T ^ T)
    読みやすいし、ファンタジー要素が出てからはワクワクもしたのに、最後の数ページで置いてけぼり。ナイオールなにもの?絵葉書どゆこと?

  • プリーストのPBを読もうと思ったが、文庫の未読本があったので先に。
    グラマーは英文法の魔法なんだなぁ

  • 5/20 読了。
    すべてのエンターテイメントには、今見ている/聞いている/読んでいるものは現実ではないと、提供する側もされる側も分かっていながらそれを一旦受け入れ、そのうえで<まるで信じているかのように>幻想を楽しむ、という大前提がある。不信という前提があるから安心して楽しみに身を委ねることができるのだ。プリーストは、その黙認契約を中心テーマに据えて物語るスペシャリストである。「奇術師」ではこの<エンターテイメントの大前提>を早々と登場人物に語らせ、手の内を晒しながらもトリックを仕掛けるというまさにタイトル通り奇術のような語り口をとっていた。「奇術師」より先に書かれた本作では、<エンターテイメントの大前提>が中心テーマであることは終盤までの隠されている。読者は物語内リアリティを巡る問題に翻弄され続けた結果、遂に謎を解き窃視愛好者を断罪するつもりが自らが他ならぬ窃視愛好者であることを発見させられるのである。エンターテイメントにおける観客とは物語に参与することなく一方的に<見る>者であるが、その<見る>者が無意識的に<見られる>者に対して行使してしまう生殺与奪権の恐ろしさを体感させてくれる傑作。

    ラストがあまりにも周到かつ巧妙なので、なるほどねー!と早合点してしまうのだが、スーザン視点の中盤とかめちゃくちゃ変な話w なんでこんなこと思いつくんだろう。「奇術師」の方がエンタメ性は高いけど、その代わり仕掛けも早い段階で分かってしまい(わざとだろうが)あまり上手くないなぁと思っていたら、本作は断片的な情報の出し方や話し手の人称の切り替え方などとてもスマート。なのに変な話具合では断然「魔法」の方が上なので、遅ればせながらプリースト恐るべし、と思わされた。

  • 読み終わりにかけて雲行きが怪しくなり、最後数ページは常時頭に?が浮かんでた。
    映画プレステージを面白いと思って筆者の小説に手を出したけど、期待してたSFミステリとは違ってて正直戸惑った。

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