空の都の神々は (ハヤカワ文庫 FT シ 8-1)

  • 早川書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (576ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784150205379

作品紹介・あらすじ

遠い昔、光の神イテンパスと闇の神ナハド、黄昏の女神エネファが戦った。激戦のすえ勝者となったイテンパスは、僕たるアラメリ家の人々を通じ、空中都市スカイから世界を統べはじめた-そして現在、辺境の小国の首長イェイナは世継ぎ候補としてスカイへ招かれた。胸に秘めた復讐のため命がけの後継者争いに身を投じた彼女は、奴隷として使役される神々に出会う…。名だたる賞に輝く、遠大な時空を疾る人と神々の物語。

感想・レビュー・書評

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  • 宇宙を作った3人の神々が争った末にできた世界。末の妹は死に、兄は捕らえれて子神たち同様人間の身体に押し込まれ、唯一神として真ん中の弟が支配している。唯一神より力をもらって人間界を支配している一族の後継者争いに巻き込まれた若い女性が主人公。世界観が細かく作り込まれていて魅力的だし、主人公が争いに巻き込まれ死の恐怖に怯えながら、自尊心を忘れずに力強く自分を貫こうとする姿勢に引き込まれる。でも神々の力の前では、人間がひれ伏して当然とする前提がなんだかなという感じ。面白かったけど。

  •  すごい、すごい物語。
     壮大なハイ・ファンタジィにして、目眩くスペクタクル作品でした。

     解説からあらすじを引用。<blockquote> はるか昔、<大渦巻>によって創られたこの世界で、三柱の神による激しい戦いのすえ、光の神イテンパスが勝利した。黄昏の女神エネファは殺され、敗れた闇の神ナハドとその子どもたちは、以後はスカイという名の空中都市で、イテンパスの僕である人間の一族アラメリ家の者たちによって奴隷のように使役されることになる。
     そんなスカイの都へ、アラメリの長たる祖父デカルタの後継者争いに参加するため、辺境の小国ダールの首長であった十九歳のイェイナが招かれる。野蛮とされる民の出身ゆえ、イェイナは富も力もなく、はじめはスカイの宮殿で生き延びることさえ困難に思えるが、やがて少しずつ頼ることのできる味方を得てゆく。そして、イェイナがスカイに来たのにはもうひとつ、暗殺とおぼしき母の死の真相をさぐる目的があった。アラメリの家長の交代の儀式が近づき、またイェイナの復讐すべき相手がわかりはじめるにつれ、この世界の根幹にまつわる大きな秘密も明らかとなってゆく……。</blockquote> このあらすじからも分かるように、とても多くの要素が含まれる、重層的で重厚なハイ・ファンタジィです。
     ストーリィの根幹は、圧倒的な存在感で目前に広がる異世界を舞台にしたハイ・ファンタジィ。そこへ、ミステリィやサスペンス、そしてラヴ・ストーリィといった、エンターテインメントの要素がふんだんに盛り込まれていきます。
     こういう、様々な要素を詰め込んだ作品は、往々にして収拾が付かない、散漫な方向へと流れてしまいがちになるものなのですけれど、作者はその秀逸なストーリィテリングの才能によって、これだけ盛り沢山の作品を鮮やかにまとめ上げ、なめらかで筋の通った、美しい織物へと編み上げた上で、すべての要素が破綻せず、また、すべての要素を使い切って、物語を終わりへと導くのです。
     陳腐な言い回しになってしまいますが、ジェットコースタのようなストーリィ展開が、読み手をまったく飽きさせず、先へ先へとページを繰り続けさせてくれます。気を持たせつつ、それでいて、惜しげもなく種明かしをし、どんどん深まっていく謎と、どんどん明確になっていく謎の両面に、ただ翻弄され続けて、あっという間のラストシーンです。

     読了後、上質の作品を読んだあとにだけ味わえる、あの穏やかな満足感に浸れます。
     佐田千織氏の翻訳も素晴らしいです。

     ファンタジィというジャンルには、あらゆるジャンルが包括されうるのだなあと改めて思い知らせてくれた作品でした。解説によれば、本作は三部作の1作目でもあり、2012年後半に続刊が刊行予定とのこと。ここから、どういう風に物語が展開するのか、今からとても楽しみです。

  • これは神話のかたちをとった人間の欲望の物語です。
    見る者の望むかたちをとる『夜の君』は己の欲望を映す鏡。
    隷属する神々の力を行使した悲惨な有様は欲望が暴走した結果。
    あまりにも愛しすぎたがゆえの憎しみも束縛したいという欲望の果てなのです。
    イェイナが持つ情の深さは欲望とは違う相手と分かちあう何かなのだと思います。

  • 神同士の戦に敗れた神々を兵器として使役する選ばれた民とその都の物語。とは言うもののあまり戦争描写はない。むしろ人間ドラマ的。神々はギリシャ神話のようにあくまで人間らしく、愛憎に苛まれ、傷つき悩み続ける。文章と専門用語、世界観は難解だけどちょっとしたミステリー感もあり、読んでいて飽きはこない。SF好きだけど恋愛小説もOKな人向けかな。

  • 「可愛い系とかっこいい系の人外に同時に求められちゃう強いけど弱いワタシ」のテンプレどおりのストーリー。女子中高生がかりそめの全能感を味わうにはいいんでないの、というのが感想。

    ファンタジーなんだからいいでしょって言われればそうなんでしょうけれど、ただその場でめいっぱい毅然としてるだけで、セックスの上手なイケメンに愛されるってそれはまた随分すてきなお話ですね。最終的に相手にあげられるものが自分の体って、笑っちゃったけど、その後で寒々しい気持ちになった。その挙句に神に転生して世界がひっくりかえるって、セカイ系にもほどがあるよ...

  • ローカス賞受賞の帯に惹かれて購入。購入してから読むまで大分時間が空きましたが読み出したら一気読みでした。最初の一文で主人公がその状態?と言うところからひきつけるのが上手いなあと思いました。

    神々が兵器である、と帯に書かれていたのが斬新で手に取ったのですがなるほどこういう意味なのかと。人と人が意思疎通を行うために使われる言語も異種族との交渉ではかくも意味合いが違ってくるのかと思い知らされた気がします。それでもやはり分かり合うことは可能なのでしょうか。そんな可能性と期待を未来に持つのは人間だからこそと思いたいところです。

    ぶっちゃけ主役の女の子よりも彼女の母と祖父の確執や母親の過去の方が興味引かれるところでした。確かに彼女は中途半端なその場しのぎはしない人ですね。

    それにしても続きが出るというのが気になりますね。どんな感じに続くんだろう。個人的にはココで終わらせたほうが座りがよい気もするのですが。その辺りも踏まえて是非次も読みたいな、と思います。

  • 視点が最初わかりづらいが、わかるにつれて物語も見えてくる。
    三部作らしいですが、ここで終わりで十分かと。

  •  遠い昔の戦いで敗れた神々を、人間がしもべとして使役している世界を描いたファンタジー。
     後継者争いに巻きこまれた国王の孫娘が、日陰の存在となった神々と一緒に、自分の母親の死の真相を探っていくメインストーリーには何とか入り込めそうだったのだが、気が強いのに、運命に逆らえず、悲劇のヒロインを演じる主人公に感情移入できず、最後は惰性で読み切った。ハーレクイン・ロマンスのようなファンタジーが好きな人向け。

     巻末に用語集や付録がついていることから察せられたが、世の中のファンタジー作家の例に漏れず、この本の作者も一度作った世界観で続編を作りたくなったらしく、3作目まで出ているらしい。

  • 久しぶりにタイトル&表紙買いした一冊。

    期待して読み始めたものの、読後感はイマイチ。
    自分の読解力が足りないのは認めるが、それを抜きにしても読むのが疲れる小説だった。

    文章が直訳というか、何を言いたいのか一読では理解できないことが多く、何度読み返しても意味が分からず結局諦めて先に進むことも・・。

    また、とにかく説明不足(巻末に世界観の補足等があったが)というのも辛かった。
    登場人物が何を思い発言しているのか、何故その考えに至ったのか、どういう設定が背景にあるのか等があまり描写されず、全てが唐突な感が否めない。
    その為、非常に感情移入がしにくく、物語に入り込めなかった。

    世界観自体はとても魅力的なので、そのあたりの説明からじっくりと話を広げ、人物を丁寧に描写していけば、素晴らしいファンタジー小説になったであろうだけに、とても残念だった。

  • 神々の戦いの後の世界、勝利した神のしもべが納める国の王位継承争いに、属国の女王が巻き込まれる話。力を持ち、人間etcを作った人=神というタイプの神様は、やっぱり人間臭い。
    翻訳本なせいか、元々の作風のせいか、ややわかりづらく、読み進めるのに時間がかかる。特に感動はない。でもシリーズ作があれば読みたい感じ。……と思ったら、三部作の1作目だった。今のところ2作目まで翻訳出版済み。

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