神狩り (ハヤカワ文庫 JA 88)

  • 早川書房
3.45
  • (21)
  • (33)
  • (60)
  • (10)
  • (4)
本棚登録 : 295
感想 : 41
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (243ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784150300883

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • この物語における神とは、超自然的ななにかであり運命のようなもの。それに抗わなければ、変えなければ、と行動する者たちと、仕方ないのだ、さだめなのだ、と抑え込もうとする者たちは古代から今にいたるまでいた(いる)。主人公たちは、情報工学、言語学や物理学、霊感能力まで動員して、神と戦おうとする。それを抑え込もうとする霊感能力者、そして神。科学とはなんのためのものか、という物語でもある。

  • 評価が...分からない。

    神という存在を「論理記号が二つ、十三重の関係代名詞を用いる言語」という具体的な事実で現したのはすごい、のだろう。
    神を"狩る"という発想も面白い。

    ただ、結局神狩りは尻切れトンボのような形で終わっており、「神に勝負を挑んだ男の物語」というような印象。

    SFに読み慣れている人だともっと感じることは変わってくるのだろうか??

    内容はおいといて、文章や雰囲気は嫌いではない。
    ミステリ畑でも活躍しているみたいだし、とりあえず山田正紀の他作品も読んでみよう。

  • 他人に向けて書いていないので、話が分裂的ですがオレは健康であります。

     まず、タイトルが面白い。神狩り。神を狩る?おいおい、ちょっと待てよ。そんなのありか?そもそも神とは何なのか?まあ、規定できてしまったら神ではなくなってしまうのだが。少なくとも、神は俺達よりも上位の存在であることは間違いないだろう。
     分かりやすく言えばこういうことだ。三次元の存在である人間が、自らが産み出した二次元の存在に殺される。普通は干渉不可能だろう。だが、主人公はそれをやろうとする。それも「狩る」という単語が示すように、神に対するあからさまな敵意を持って。
     この小説では、その不可能な行為を言語論理学で実現しようとする。キーワードとしてヴィトゲンシュタインの残した「語りえぬことについて「我々は沈黙を守らねばならない」と言う語が出てくる。このルールを破ろうとする主人公達は神からの干渉を受け、仲間が次々と殺される。
     この小説で描かれる神は悪の性質を持っている。神が人を殺すのは裁きなどではなく、一種の娯楽、ゲームとして捉えられる。更には、キリストは神に預言を託されたのではなく、神に弄ばれたのであり、だからこそ彼は死に際に「神よ私を見捨てるのですか?」と言ったのだと言う、面白い解釈をしている。
     最大の難問であった、どうやって神を狩るのか?と言うことだが、これには「言語」がポイントになっている。神が人間をゲームにおびき出すためにわざと人間に示す「神の言語」それを解明することにより、神と同次元の存在になろうとしたり、攻撃を加えようとするのだ。
     神の言語と言う発想には感心した。そもそも神は絶対者であるのだから、言語を持つ必要はないと思っていたが、人間が言語をもてるのに神がもてない訳はないし、もしかしたら、神は言語上に生きている存在?で、人の言語は物理的力を持たないが神の言語にはその力があるのでは?神の言語で神を殺せるのでは?などと妄想した。
     しかし、世界の限界は私の言語能力の限界であるのだとしたら、神の言語を解明したとき、私自身が神になるという皮肉な結果が待っているのではなかろうか?では一体どうやったら神に勝てるのか?少なくともその答えを神が教えてくれることはないだろう。

  • 最近ではミステリの分野にもその活躍の場を拡げ、駄作を書かないSF作家山田正紀。その類いまれなデビュー作。

    人間には理解しえない言語体系のなかに存在している”神”。その”神”が世を支配し、自らの存在に近づこうとするものを排除している。その存在に気づいた主人公が、”神”の正体を暴こうと細い糸をたぐり寄せていくが、彼に手を貸そうとした仲間たちが次々と倒れていく。

    物語はあと一歩。神の正体の一歩手前で寸止めになる。それゆえに、読者に想像の快楽を残すという、寸止めの美学を見せている。短いながら、重厚で、思弁、哲学的な深みを感じる作品。これがデビュー作とは信じられない。続編『神狩り2 リッパー』が上梓されたが、こちらは賛否両論を呼んでいる。

  • 元になった中編がSFマガジンに発表された当時、儂は高校生でけっこう夢中になって読んだ記憶がある。十代で読むべき小説のひとつだ。今読むと、大上段に振りかぶり過ぎて、何処に振り下ろしたらいいのか判らなくなったような印象がある。ちょっと考えるネタになるエンターテインメントとして、展開も早いし面白い。

  • 起承転結の「転」以外は面白い。そんな小説。

    最初、タイトルをパッと見て神が指す概念はアジア的、土着的、つまり多神教の神だと思った。要は妖怪ハンターみたいな感じだと。しかし、この作品の神はキリスト教的な一神教の神。そいつをパソコンと古代文字の解析でやっつけるというとんでもない発想に心震えた。が、物語の絶頂部分が今一盛り上がらず神とは何かにも踏み込まず、あれと肩透かしを食らう。でも最後のまた神に挑むワクワク感はテンションが上がる。

  • こういうスケールの大きなSFも日本にもあったのだな。

  • やっぱり少し古いね/ 古さなりの堅さがある/ 押井守が小説を諦めた一作だと、少し気負いすぎた/

  • 謎の古代文字の解明をめぐるあれやこれやまでは面白かった。緻密な論理建てによる言語学の知識も興味深かった。
    かなりエンタメに偏ってはいたけれど、「人間」対「神」の対立の構図はわくわくしたし、時間がたつのも忘れるほど夢中に読み進めることができた。途中までは。。。。


    なのに、あっさりと神と交信可能な霊能者が登場し、それまでの緊張感は一気に失われてしまった。え、だったら霊能者に聞けばいいじゃん!古代文字とかどうでもよくね?と思ってしまった。あと、ジャクスンっていったい何者だったの?なんで人間側を妨害してたの?火星に古代文字???何のために?????人間が火星に行くのを神が妨害してる?????何のために??????
    「神」のイメージ設定がぶれまくり。
    前半が面白かっただけにただただ残念な結末でした。

  • 古代文字をとっかかりとし、神を暴こうとする作品。古代文字の特徴から理論的に神が証明されていく展開は面白い。神という絶対的な存在と主人公たちを襲う事件は証明途中であるはずの神をより強く表しているよう。展開に単調さも感じてしまったが、高みに上がっているのか、落ちぶれているのかが分からない主人公の行く末はぜひ見てみたいと思いました。

全41件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

1950年生まれ。74年『神狩り』でデビュー。『地球・精神分析記録』『宝石泥棒』などで星雲賞、『最後の敵』で日本SF大賞、『ミステリ・オペラ』で本格ミステリ大賞、日本推理作家協会賞を受賞。SF、本格ミステリ、時代小説など、多ジャンルで活躍。

「2023年 『山田正紀・超絶ミステリコレクション#7 神曲法廷』 で使われていた紹介文から引用しています。」

山田正紀の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
フランツ・カフカ
宮部みゆき
伊坂 幸太郎
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×