時間不動産 (ハヤカワ文庫JA)

  • 早川書房 (1988年11月9日発売)
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Amazon.co.jp ・本 / ISBN・EAN: 9784150302801

感想・レビュー・書評

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  • [時間不動産]
     スプレッダーで体感時間を調節し、土地と家を時間単位で切り売りするというアイディアはおもしろい。けど、これってタイムパラドックスの問題に関しては、説明つかないんじゃないのかな。ここが時間ものでは一番重要なところだから、いまひとつかな。
     核爆発前の4時間だけを売りつけられた、という設定はおもしろいけど。

    [国民不在]
     けっこう好き。饒舌な文体だからか(^^;)?二重に取ってしまったIDのせいで、百年間も実際にはいない人の面倒を国が見てきたという設定はそれほど珍しくもないが(株の話のあたりはちょっと無理があるし)、そのIDだけを持っている国民に投票をさせようとして、人口だけが増加していくというアイディアは、皮肉が効いててなかなかいい。文字通りの「国民不在」なわけね。
     しかし、コンピュータに2桁の数字しか入らないとしたら、100歳になったらどうなるんだろう。その辺をもっとブラックに書いたらさらにおもしろかったんじゃないのかな。

    [ダ・ビ・ン・グ]
     「録音機」じゃなくて「録物機」なわけね。この人って、一つSF的な発想をして、その仮定の元に外挿してリアリティを出すテクニックが抜群にうまい。「海賊版」にノイズが入ったりとか、オートリバース、「孫コピー」とかね。裏ビデオとのアナロジーなんてなかなか。
     それで、そこから現実世界そのものがなにかのコピーなんじゃないかと疑いだすという展開というのは、まあわかるけど、このオチは安易だよな。

    [蜂の幸福]
     なんかどこがどうというわけじゃないんだけどいまいち乗れなくて、読むのに時間がかかってしまった。主人公がアンドロイドだったりして細かい設定は凝ってるんだけど。なんでかなー。

    [嫌煙権]
     この短編集では一番のデキ。「ダ・ビ・ン・グ」なんかと同じ手法だけど、切れ味はこちらの方が鋭い。致死性ウィルスのためにタバコを吸わない人間が白い目で見られる社会と喫煙の治療とを結びつけたのはさすが。
     ただ、このオチは無理矢理つけなくてもよかったと思う。

    [明日にのばすな]
     またとんでもないことを考えたな(^^;)。事前服役制度ですか。こんな制度の実現性はほとんどないと思いますが、ってそういうことではないっすね。
     相手が殺し屋を雇うところとか、襲われたときに正当防衛にするためのテクニックとか細かいディテールは隙なく作られてるんだけど、なんかサスペンスが盛り上がらない。論理的にエラー処理してるって感じかな。こういう話はドロドロした情念が感じられないとねえ。かといって単純にこれを長編化すればいいというものでもないだろうけど。この辺のことは作家の資質とかと関係するのかな。
     オチがあっさりしてるというか、肩すかしというかそれも問題だ。

  • 「時間不動産」しゃれてる。「こちらITT」に通じる感も。
    「国民不在」落ちはちょっと苦しいかな。
    「ダ・ビ・ン・グ」ちょっと筒井康隆っぽい。
    「鉢の幸福」アイデアがいいね。ヴィーガンやラッダイトも連想させる。
    「嫌煙権」星新一かな。
    「明日にのばすな」事前服役制度ってアイデアは秀逸。ハードボイルド感あり。

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著者プロフィール

草上 仁(くさかみ・じん)
1959年生まれ。1981年ハヤカワ・SFコンテスト佳作入賞。短篇『割れた甲冑』を「SFマガジン」1982年8月号に発表してデビュー。
1989年に『くらげの日』、1997年に『ダイエットの方程式』で星雲賞日本短編部門受賞。
1997年『東京開化えれきのからくり』でSFマガジン読者賞受賞。
近年も「SFマガジン」に続々と作品を発表している。

「2020年 『キスギショウジ氏の生活と意見』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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