- Amazon.co.jp ・本 (463ページ)
- / ISBN・EAN: 9784150302818
感想・レビュー・書評
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最初に読んだのがいつかは憶えていないが、一九八八年十二月十五日発行の初版なので、今から20年くらい前のことだろう。それ以来手に取ったことはなかったので、内容は全然憶えていなかったが、「あとがき」を読んで初めて天王星の衛星「エリヌス」が架空の存在であることに気づき、最初に読んだときもそうだったことを思い出した。舞台になっている衛星が実在しようがしまいが、この物語の現実感は、少しも損なわれない。「惑星CB-8越冬隊」と同様、主要な登場人物がみんな死んでしまう結末は、なんともやりきれないが、戦争の話だから仕方がないか。物語の最初の方で、サイボーグのオグが投射機(マスドライバ)を使い、宇宙服もなしにむきだしの体でエリヌスの空を弾道飛行する場面が印象に残る。
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第2次外惑星動乱勃発記念、第1次外惑星動乱をたどる祭り!
外惑星動乱集結から20年の天王星の衛星エリヌス。作品発表時にはまだ到達していなかったボイジャーからの天王星の写真を見て、エリヌスの天の半分を覆うその光景を想像するとまた格別!
航空宇宙軍史はSFではあるけれど、宇宙に進出していった人間の意識の覚醒や変化は描かれない。
そこにあるのは、地表で繰り返されてきた利権争い、搾取、謀略といった歴史の冷たい延長。本来なら英雄となるようなサイボーグとなった戦士も使い道がなくなって、凍りつくような地下居住区にひっそりと隠れ住む。宇宙探査への大きな目的も自然の力によって達成されないという以前に人間同士の意識の前に可能性を閉ざされてしまうという悲しさ。
燻し銀のような登場人物たちが必死に抵抗しても歴史のうねりのなかでは虚しいばかり。太古からの天王星の光に照らされた地味ながらハードな物語のラストが胸にしみます。 -
西暦2123年の太陽系を舞台にしたこの物語は、ある意味でガンダムの世界に似ている。もちろん、巨大なモビルスーツなどは登場しないが、印象的な登場人物が次々の見せ場を作り、むなしく散っていく。このむなしさがこの物語の奥底にある。
それにしても、どんどん殺すものだ。読んでいてびっくりしてしまう。しかし、それがこの物語の大きな意図なのだろう。最後の8行の静寂が、この大冒険活劇のすべてを包み込んでしまう。ため息と共に。
2006/5/30