泣き婆伝説 (ハヤカワ文庫JA)

  • 早川書房 (1993年1月21日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (288ページ) / ISBN・EAN: 9784150303860

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  •  今で言えば、『ブラック企業』という言葉が当てはめられるだろう古タイヤ専門のオデュッセイア産廃(有)に勤める守屋伊策は、タダ同然で社長が所有する山林に古タイヤを捨てにトラックを走らせていた。その途中で道に迷った伊策は大量に舞う蚊と遭遇する。そこで「退魔軒」と書かれた不思議な中華料理屋に入った伊策だったが、その店はどこか異様で。結末の後、この世界はどうなってしまうのだろう物語世界の未来を思わず案じてしまう吸血鬼ホラー。――「干し若」

     人間の絶対数の膨張により、『地球化』した惑星に人類は移住する必要があった。かつては居住不能の烙印を押された惑星を『地球化』するために派遣された調査チームのひとり五堂勝の職は、微生物などを調査する『ミクロ探査』だ。そこで五堂が見たものはウィルス一個より小さな世界に立ち並ぶ人工の建造物だった。極微の人々が完結した世界を観察することになった五堂がコミュニケーションとして取った行動によって、彼は神のように祭り上げられてしまう。美しい恋物語が重なり、ひとりの人間の変化の物語として、切ない余韻が残る。「神はいかに、人を愛したか」

     ということで、全八篇。吸血鬼ホラーの次にはサンタを巡る奇跡の物語があり、地球の救世主となった地球外知的生命の命を狙う殺し屋の話もあれば、都市伝説のような出来事が絡む熊本の選挙戦(実際のモデルがいるらしい)まで、多様な物語が並んでいます。一番印象に残ったのは、「神はいかに、人を愛したか」で、他には「干し若」「泣き婆伝説」が特に好きでした。ホラー寄りの作品が多かったのも個人的にはすごく嬉しい作品集でした。

  • 表題作他7篇収録。

    解説 / 大場 惑
    カバー・口絵・挿絵 / 横山 えいじ
    初出 / 『SFマガジン』'91年8月・11月号、’92年2月・4月・6月・9月・12月号、『小説CLUB』'92年11月号

  • タイトルがものすごいインパクトを与えるSF短編集。コメディっぽい話や切ない話など色んな種類の話が楽しめます。タイトルになっている泣き婆伝説も選挙の話でありながらもSFというすごい話。他には『メモリアル・スター』が考えさせられるお話でした。

  • 表題作を含む8編からなるSF短編集。
    とある吸血鬼一族の末裔との邂逅「干し若」、個人用リモコンが普及した世界での痴話げんか「リモコンウォーズ」、汚物が集まってしまうヘド地の家に引っ越してしまった阿部一家の闘争記録「闘う!阿部家」といったコメディ色の強いものから、死者を模した泥人形に会える星「メモリアルスター」、地球外から来たセチのもたらした技術で豊かになった世界で殺し屋に舞い込んだ驚きの依頼「"セチ"に向かない職業」のようなSF色の強いもの、クリスマスにとある老夫婦に訪れたプレゼント「アニヴァーサリィ」のような心温まる1編などバリエーションに富んだ作品を収録。
    故郷熊本での事実をモチーフにした選挙戦の顛末を追う表題作「泣き婆伝説」は地域色も強く異色な作品となっている。
    お気にいりの一編は不毛にみえた惑星で見出した小さな世界の姿を描いた「神はいかに、人を愛したか」。

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著者プロフィール

熊本県生まれ。「美亜へ贈る真珠」でデビュー。代表作に『地球はプレイン・ヨーグルト』『怨讐星域』「あしびきデイドリーム」(星雲賞)『未踏惑星キー・ラーゴ』(熊日文学賞)『サラマンダー殲滅』(日本SF大賞)、そして映画化した『黄泉がえり』や、舞台・映画化した『クロノス・ジョウンターの伝説』など。

「2022年 『未来のおもいで 白鳥山奇譚』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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