- 早川書房 (1994年2月24日発売)
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感想 : 92件
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Amazon.co.jp ・本 (384ページ) / ISBN・EAN: 9784150304027
感想・レビュー・書評
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1991年第4回山本周五郎賞
小説も稲見さんも初読
いなみいつらさんとお読みする
1994年に癌のため亡くなっている
趣味が猟銃だったそうで
6話の短編からなる一冊ですが
各短編に野鳥が象徴的に登場する
“まれに見る美しさを持った小説”と評されていた
私は全く予備知識なしで読み始めたので
小説の流れがわからなくて、途中で解説を探した
もう古い作品ですから ネタバレと言っても
構成の部分を覚書程度に
プロローグで ちょっと仕事に疲れた青年が
川のほとりで雨にあい、近くにいた男性も
自分の車に誘う
その男は不思議な佇まいで石に野鳥を描いていた
青年はその絵の見事さに心打たれる
で、ここで多分長い眠りに入る感じ
そして、短編が始まる
イメージとしては
その石の鳥たちから出る物語
現代あり 海外あり 少年あり と
パターンを変え作者の幻想的なでもリアルな
自然の物語が繰り広げられる
レイ・ブラッド「刺青の男」に着想しているとのこと、ですが、その作品を全く知らないの -
著者は草木にも野鳥にも詳しくないらしい。それでも本著に登場する野鳥は珍しいものもあり、物語に効果を与える重要な役割を担う。短編集である。キャンピングカーをベースに、子供と猟をする話が非常に良かった。キャンピングカーというだけで胸踊るが、そこで仕留めた鴨を料理する。非日常のワイルドさを疑似体験した。
何かに詳しくない、というのは、その分野や世界が自分自身から抜け落ちているような感覚だ。鳥の名前を知らないと正確で色彩豊かな文章は書けないし、読み手ならば、名前が知らないと脳内イメージが名もなき野鳥一匹になる。小説で想起するイメージは、自らが体験した過去のデータベースとその組み合わせに限られる。それも悔しいので、最近、分からない単語はネットで検索しながら読んでいる。
キャンピングカーと雨。ウィスキーが合いそうな小説だった。もしかしたら、このイメージも結局は登場する固有名詞から連想し、自らの過去の体験を照らし合わせた、オリジナルなものかも知れないが。小説はそういう楽しみ方で良いかな、と。 -
男のお伽話という趣きの短編集です。一人の男が夢を見ているような設定ですが、短編自体に鳥以外の接点はありません。どれもこれも雰囲気の違う話で全く飽きません。
ハードボイルドな雰囲気のものもあれば、ジュブナイルっぽいものもあります。
途中何故か僕の敬愛する野田知佑さんの本の引用も有ったりして、とてもとてもわくわくしました。
そういう副産物を省いたとしても、皆味わい深い短編となっているので、是非皆様に手に取って頂きたい佳作となっています。
狩猟というものが持つ残酷な部分というのは、必ず誰かが処理してくれている血なまぐささを無視する傲慢さとつながっていると思います。自然を破壊するのは自然から命を間引いて食す人ではなく、自然から遠く離れた人々の手で行われます。
狩猟や釣りを残酷だという気持ちも分かるのですが、そこに関わっている人は自然を愛している人たちなので、自然に関心が無い人たちは情け容赦なく、死刑宣告の書類にサインをするのです。
閑話休題
とにかく、自然に包まれたくなる本です。今すぐ釣りに行きたくなります(僕は狩猟は無理) -
全てに鳥が絡む短編集で面白かったが、これが歴代のミステリランキングの上位に入る作品として評価されている点については、それほどかなぁという気がする。
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ハードボイルドであり冒険小説であり奇妙な小説でもある本書。ただ統一されているのは「鳥」にまつわる話で固められた物語であるということだ。著者の稲見一良さんがそうだったためか狩猟や自然にまつわる描写が丁寧で丹念。ある青年が出会った不思議な石を書く男性。彼の描いた石(鳥の絵)から物語が飛ばされていく。鳥という生態を通して生と死をまざまざと見せつけてくる。良かったのは「ホイッパーウィル」脱獄囚の狩りを頼まれた主人公をハードタッチで描く。これがたっぷりと読ませられた。
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日本のハードボイルドの中では
伝説的な作品と言われているこの小説。
実はハードボイルドというよりも大人のメルヘンという感じの
優しくてhappyな気分にさせてくれる短編集です。この小説は文体的にはハードボイルドだし
狩猟とかマンハントなんかがモチーフになってるんですが
実は思い切りメロウな大人のメルヘンなんですね。
そしてファンタジー。
魔法使いとかが出て来るわけではないんですが、
苦境に立たされる主人公を救うことになるアイデア
つまり筆者である、稲見一良さんの描く奇跡がなんとも良いんですよ。
暖かくて優しい奇跡を物語の中で描いてくれるんですね。
どんな奇跡なのか?という事を書いてしまうと
もしもこれから読む方がいらっしゃるとしたら
マズイのでもちろん書きませんが(笑)
ネタバラシしたいなぁと思わずにはいられないので
奇跡を必要とする登場人物たちの苦境だけ少し書きましょうか(笑)
6篇の短編が収録されていますが、ラストの2篇は最高ですね。
【波の枕】では東南アジア沖で乗船が火事になり
ただ一人で海に漂うという男の話。
この男いかつい顔の無愛想な朴念仁ではあるんですが、
陸に帰れば怪我をした鳥や小動物なんかを元気になるまで
介抱してやるような優しい男でもあるんですね。
で、だだっ広い海で一人ぷらぷらもうどうなってもいいか、
なんて諦めはじめているところでちょっとした奇跡が起きるんですね。
その奇跡というのが良いんだな、まさかそんな展開とは!!
と私は思いました。
それから【デコイとブンタ】これは結構変わった設定で
デコイつまり鴨狩りなんかで使う木製の囮の模型ですね、
これが語り手の話なんですよ。
そのデコイがブンタという少年に拾われて大事に扱ってもらう。
その少年は一人で遊園地へ行くのですが観覧車のてっぺんで
置き去りになってしまうんですね、もちろんデコイも一緒に。
そして間の悪いことにその日からしばらく遊園地は休園の予定で
このままではずっと観覧車に閉じ込められたままになる。
もちろん、食料もないし、昔の話ですから携帯もあるわけなく
助けを呼ぶことも出来ない。
だけど、この少年あきらめないんですね、そこで奇跡が起きる、
そして少年に奇跡が起きるように、デコイにも何かが起きるんですね。
はい、どんなことが起きるのでしょうか??
どちらも見事なメルヘンですし、happyな気分にさせてくれます。
この本、久々に読んでおセンチになっていた私も元気になりました(笑)
ということでオススメですよ。
2017/08/20 21:12 -
鳥達に導かれるように不思議な物語の世界に惹きこまれて行きました。
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自分とはまったく接点のない世界を
体験できるのが読書の楽しみだとすると
この作品は、まさにそれをもつものだった。
正直、最初はなんじゃこりゃ、な感じだったし
しばらくは全く興味もない鳥の世界の話かと
つまんなくもおもったが、
読み進めるうちに・・・はまった。
それぞれの短編が実に愛おしい。
ハードボイルドな雰囲気もいいねえ。
この作者はもう亡くなっているとか。
藤原伊織も、亡くなってあとに作品を読んだ。
同じパターン。
残念です。 -
どの物語にも鳥が出てくる。鳥をモチーフにした短編集。
ストーリーの中で特に盛り上がるシーンがあるわけでもなく平坦に進んでいく話ばかりなのに、なぜか目が離せず無意識のうちに次から次へと読み進めてしまう不思議な本だった。気づけば読了していた。
自然や鳥の描写が美しく、自分までその場にいるのではないかという臨場感に浸れた。 -
その目には誇りのごとき鳥がいる/これは男性の琴線に触れるタイプなんではないかという気がする/プロローグの石に描かれた鳥のエピソードで引き込まれた/この早朝しかないという写真を撮ろうとするカメラマン助手の前にめったに見られないシベリヤ・オオハシシギが現れる/猟師のサムは美しいハトの大群と出会い大変な目に遭う/密猟に憧れつつも失敗し続ける男の前に密猟の上手い少年ヒロが現れ弟子入りさせてもらうことになった/ケンは保安官の依頼で三人の脱獄囚を追跡することになった。オーキィとの邂逅がとろけるようにカッコいい/デコイの「俺」と少年ブン。
【一行目】川の流れに手を入れた時だった。ああ、この夏も終るな、とぼくは感じた。水が冷たかったのだ。九月の初めの、遅い午後だった。
読んだのは単行本です。 -
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ハードボイルドというほどハードでもなく、幻想的というほど幻想的でもなかった。
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人からオススメされて読みました。
鳥をテーマにした連作短編集。
透明な文体というのか、読んでいてスッと入ってくる。
美しい文章でした。
天才的な狩りのセンスを持つ子供と一緒に狩りをする話がお気に入り。 -
もしもあなたが稲見さんのことを知らなかったら、それほど勿体ないことはない、そしてこれからその作品を読める幸せをぜひ味わってほしい。鳥を介した6編の物語。時にハードボイルドで、時にジュブナイルな作品集。作者の生き様が感じられる、稀有で美しい作品。
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短編集。
一番よかったのは『密漁志願』。 -
信頼のおける読友さんからのおすすめされ読みました。読書スランプの中、時間をかけ読みました。自然と鳥、そしてそこに登場してくるいろいろな人物の思いや人生、モヤモヤしたものはなく、どれも一本筋が通っており、読んでいて心地よかったです。特に密猟者と少年が交流する『密猟志願』源三爺の美しい回想『波の枕』贋作鴨と口の聞けない少年の冒険『デコイとブンタ』にとても惹かれました。どの章もラスト一文に余韻があり、美しさが散りばめられていると感じました。作者の言葉選び、言葉遣いは物語の語り手として完璧です。素晴らしい。感謝。
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点数は3.5にしたいのだけど、どちらかといえば4寄りといったところ。ハードボイルドの嫌なところが結構出ている。それは、童心とか男の夢といった、男の甘えのようなもの、そもそも童話のようなものをハードボイルドの文体で描くという試みは、そのような甘えを感傷や哀傷であると勘違いしており根本的にまちがっているとしか思えない。その意味で、マンハントの話や子どもとの交流の話は全く受け付けない。
反面、海で遭難していたら亀と鳥がいたという話はとぼけた味わいがあって楽しい。生と死のはざまの厳しさというものも、トビウオを食べるシーンで印象的に表現されている。とぼけた味わいと厳しさのバランスが、実にリアル、
最後の話もなかなかよい。人間同士のドラマではないのにきちんと最後にクライマックスがあるのが素晴らしい。そして風船の絵がすごく美しい。
各話のベースになる石に絵を描く男の話も地味によかった。 -
稲見一良という作家との出会いは『このミス』である。見慣れない作家が過去にもランクインしているのを見て興味を持ったのが最初。寡作家だったので当時その作品は比較的手に入りやすく、文庫化されていた作品は容易に手に入った。
物語の構成は世俗に疲れて旅に出た若者が出会った男が紡ぐ物語という構成を取っている。その男は石に鳥の絵を描くのを趣味としており、それら石に纏わる、もしくは連想される話という趣向が取られている。
「望遠」はCM会社に勤める男が撮影用の写真を撮るため、何日も寝ずに待っていたが、そこに稀少種の鳥がいるのを発見するという話。仕事を取るか、己が心底欲する物を取るか、惑う瞬間を描いた作品。
「パッセンジャー」は危険と知りながらも敵対する村の近くへ狩りに行った男が目の当たりにする鳥の大量虐殺の話。
「密漁志願」では癌を患って退職した男が狩猟中に出会った少年とのふれ合いを描き、「ホイッパーウィル」ではネイティヴ・アメリカンの脱走兵とそれを捕まえに行った男を描く。
「波の枕」は老人が若かりし頃、難破した船から辛くも逃れて亀に捕まって漂っていた夢を、「デコイとブンタ」は狩猟用の木彫りの鴨の彫刻と少年の冒険譚といずれもメルヘンチックな話。
これらに共通するのは自然の恩恵に対する敬意と慈しむ心だ。読書と銃と狩猟を趣味とした作者が人生の晩年に差し掛かって残そうとした自然に対する思いが優しく、また時に厳しい警告を伴って心に染み渡っていく。
泥臭ささえも感じさせる男の矜持、不器用さ、腕白少年のカッコよさ、自分の主義を愚直なまでに死守する姿勢など、忘れかけていた人間として大切なものを思い出させてくれる。
便利さが横行した現在ではもはやここに書かれている内容はもう既に一昔前の話、老人の昔語り程度ぐらいにしか感じてくれないかもしれない。でも十人のうち一人でもこの稲見一良という作家が残したかった物を感じ取ってもらえればそれで本望ではないだろうか。
私はこの作品を手に取るまでにはずい分と時間が掛かった。ずっと積上げたまま、読むその日が来るのを待っていた。その待っている最中に作者の人となりを知る機会があった。彼自身が癌に侵され、闘病生活の末に生き長らえた事。しかしまだ病巣は残っており、いつ再発してもおかしくない事。そんな背景から彼が高齢になって作家に転身した思いが作品に乗り移っていることを知った。
そしてこの作品に出てくる人物は作者の分身だ。稲見氏の生き様さえも見え隠れして、それまでの歩みを、またはこれからしたいであろう事が語られている。一人の人間として尊敬の念を自然と抱かせてくれる、そんな作品だ。
男ならば是非とも読んでほしい珠玉の短編集。私は永遠にこの本を手元に置いて決して離さずにいようと思う。
稲見一良の作品

((((;゚Д゚))))ガクガクブルブル
((((;゚Д゚))))ガクガクブルブル
泣かせるハードボイルド。
しかもわざとじゃない。
本来長編になるところを、
体力ないので短編になってしまったという感...
泣かせるハードボイルド。
しかもわざとじゃない。
本来長編になるところを、
体力ないので短編になってしまったという感じ。
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私は山本周五郎賞を読み進めて初めて出会いました 初めての作家さんだったので先にwikiを読んでご病気から作家へ専念を決心した事を知りました 日本人作家さんとしてはあまりお見かけしない作風だなと思いました