今宵、銀河を杯にして ハヤカワ文庫JA

著者 :
  • 早川書房
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本棚登録 : 292
感想 : 20
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  • Amazon.co.jp ・本 (392ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784150305185

作品紹介・あらすじ

惑星ドーピアにあるあまたの戦闘車輌の中でもっとも長いパーソナルネームを持つ戦車、マヘル‐シャラル‐ハシ‐ハズ。その名づけ親である操縦士アムジ・アイラ一等兵と僚友クアッシュ・ミンゴ二等兵は、非地球生命体バシアンに対し自らの新戦術論を立証すべく意気込んで地球からやってきたカレブ・シャーマン少尉を新しい車長に迎えたが…不条理な闘いの中、不死身の宇宙戦車との奇妙な友情と連帯を描く戦争SFの傑作。

感想・レビュー・書評

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  • SFとも言えるしファンタジーとも言える。地球から遠く離れた惑星ドービア軍の所属車輌のうち最も長い名前を持つ戦車と、酒と女を愛する凸凹戦車兵コンビと自らを天才と信じる若き新任戦車長の少尉の奇妙な道行きの物語。
    軍属のコンピュータが発狂して野生化し、人間そっくりの「オーソロイド」(物語の舞台となる惑星ドービアに移り住んだオーソリアン(人間)に造られたアンドロイド)は色を好み、ゲリラとなったドールロイド(ロボット)やドービアへ侵略してきた非・地球生命体バシアンの襲撃、現地に居る謎の存在アコマディアン…と序盤から情報がてんこ盛り。

    コメディ色は「銀河ヒッチハイク・ガイド」、設定としてはゲーム「ニーアオートマタ」にイメージが近いか。
    いわゆる「意志を持つ機械」ものだが、主要機械(主要戦車?)のマヘル‐シャラル‐ハシ‐バズは問われない限りは応えないし辛辣気味でもある。例えばトランスフォーマーのようなハッキリした「人格」は見せない。しかし、いつの間にかマヘルの事をただの戦車を超えた相棒や仲間の1人として見ている。その視点は人間よりも動物(ペット)に近いかもしれないが…車長のカレブ、戦車兵のクアッシュとミンゴと並びマヘルも憎めない愛すべき「キャラクター」に変化させるのは流石。
    終盤で触れられる惑星ドービアの真実、生命とは何か?という部分はフワッとしていて物足りない気も。説明も途中から挟まれて理解しにくい部分もあり…主要人物(マヘル含む)を好きになれるか、で評価が分かれそう

  •  飲んではハイに
     醒めては灰に
     飲もうで
     今宵
     銀河を杯にして


    最後の文章
    「三人に感謝して、今夜はわたしが奢ろう」
    の読後感のすがすがしさが素晴らしい

  • 飲兵衛でだらしなく、だが妙に憎めない、そんな戦車兵たちの不思議な戦闘行動を記録した一冊。
    とりあえずは飲みたくなる。不思議な愛嬌がある本でした。

  • なんとまぁ。神林流・どたばたB級コメディ映画風SF。マヘル-シャラル-ハシ-バズ。戦車のパーソナルネームが長すぎて中枢コンピュータが発狂するっていう出だしからかなり愉快だけど、人間二人が真面目に不真面目なのがおかしい。ラストに少尉がマヘルに「哀しい機械」と同情するのにぐっときた。正常って難しいね。とりあえずウイスキーというものが大変素敵な飲み物のように錯覚した。こんなに愉快に飲んでくれるんだから錯覚も仕方ない!

  • 割と文体が翻訳書みたいだった。

  • 「愛と平和」

  • おカタイ内容を想像して読んだら、そうでもなかった。
    楽しんで読めた。
    憎めない登場人物がイイ。

    この著者にとって、ネコとニワトリはなにか特別な存在なんでしょうか。

  • 人間と他の生命・機械の意思疎通ものは考えさせられるものがある。おふざけも多めで楽しめる作品だった。

  • 「飲んではハイに/醒めては灰に/飲もうぜ/今夜/銀河を杯にして」…ということで、タイトルの「杯」は「さかずき」ではなく、「はい」。タイトルからしてすでにダジャレ風味だが、内容も惑星ドーピアで戦う地球軍の戦車“マヘル-シャラル-ハシ-バズ”とお気楽一等兵&二等兵+自称天才新人少尉を中心にごくごく軽いノリで転がって行く戦争SF。とは言え、機械と人間をめぐるテーマそのものは非常に神林作品らしいもの。「雪風」は無機物らしく冷え冷えとした意識を持つ機械が登場する作品だが、こちらでは同じように意識を持つにしても、もっと情緒的な、有機的な“生命”の感じられる機械が登場する。
    軍を脱走して野生化したコンピュータ、最も望むものは「愛と平和」と答える戦車、そして種の生命維持に必要なエネルギーを集合体として保有する“生命場”の担い手の一端としての有機アンドロイド。人間同士だけでなく、機械とも“心が通う”世界に美しさを覚える神林氏が、氏らしい論理展開で組み立てた“生命場理論”は、確かに美しい。人は一人では生きられない。人だけでなく、あらゆる生命・非生命が、一人/一個では存在を維持できない。そこに必要な、絆や連帯を、あえて科学めかして説くところが、何とも神林節だと感じる。
    しかしそうしたテーマはあくまでも、銀河を杯に飲んではハイになり灰になる男たちが酩酊しながら不条理な戦争の端でふらふらしている物語の一部でしかないのが、今作の軽やかさ。一種独特のロマンチシズムが漂うスラップスティックSF、読みやすく楽しい作品。

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著者プロフィール

作家

「2023年 『ベスト・エッセイ2023』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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