帝王の殻 (ハヤカワ文庫 JA カ 3-16)

著者 :
  • 早川書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (439ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784150305246

作品紹介・あらすじ

火星ではひとりが一個、銀色のボール状のパーソナル人工脳PABを持っている。PABは、子供が誕生したその日から経験データを蓄積し、巨大企業・秋沙能研所有の都市部を覆うアイサネットを通じて制御され、人工副脳となるのだ。そして、事実上火星を支配する秋沙能研の当主である秋沙享臣は「帝王」と呼ばれていた…。人間を凌駕する機械知性の存在を問う『あなたの魂に安らぎあれ』にはじまる火星三部作の第二作。

感想・レビュー・書評

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  • 第82回アワヒニビブリオバトル「【復路】お正月だよ!ビブリオバトル2022」第18ゲームで紹介された本です。オンライン開催。チャンプ本。
    2022.01.03

  • 神林さんの作品って、意識とは、世界とは、私とはみたいなモチーフがよく語られる言語SFのイメージが強いんですけどアクションシーンもめちゃくちゃ面白いんですよね。
    半分を過ぎたあたりから作品の解像度がぐっと上がって、駆け抜けるように読んじゃいました。
    アミシャダイがかっこよすぎる。

  • PAB、アイサック、機械知性と相変わらずSF好きの琴線をかき鳴らす設定がバンバン出て来て最高なんだけど、前作に比べてスケールが小さくて少し残念だった。
    良く言えば丁寧な心理描写も冗長気味で、作中で真理奈が「パブる」と皮肉っていた気持ちに近いものを感じてしまうところがあった。対話、言葉、そしてそれらから形成される自己の魂たるPABと言う設定のためには不可欠なプロセスなんだろうけど。

    火星人がPABに依存する様子は現代のスマホやSNSそのもので、30年近く前からこうした未来を予測していたのかなと。この作者は他の作品でも予言めいたことを書いてて先見の明が鋭すぎて少し怖い。

  •  火星三部作の第二作であるが読みにくくマニア向けである
     第一、第三を読んでから第二を読むのがいい
     それと、名前の読みが難しくて困るので常にルビを振ってほしい

  • まずどうでもいいことから。
    登場人物の名前が難読というか、何人かの読み方がなかなか覚えられず、何度も前に戻った。三部作の1作目もそうだったかな。

    筋立て・設定は面白いし、一つ間違えばこれに近いことは将来起こりうる気もする。
    釈然としない部分も残るし(なんで日本人しか出てこないのか?とか、競合企業はなかったのか?とか)小説としてもう少し練れたものにできたのではとも思うけど、それは大した問題ではないという気にさせる、テーマの大きさ。

    自己とは何か。
    言語によって育てられていく、副脳としてのPAB。それとの会話で顕在化する、疑似的な自己との対話。それを宗教に近い次元にまで推し進めること。創始者の意図から離れて暴走する、させる人達の存在。
    重いテーマに正面から取り組んだSFと思う。

  • SF。火星三部作二作目。
    テーマは「機械知性」「父と子」「政治」あたりか。
    PABといわれるパーソナル人工脳が特徴的な世界観。
    個人的な好みとしては、ストーリー的には権力争いが描かれたりとやや堅苦しい印象。
    シリーズの世界観として、機械人や地球の様子がとても気になる。三作目『膚の下』が楽しみ。

  • "火星で生活する火星人の物語。PABと呼ばれる端末を一人一台持っているのが当たり前の世界。今のスマホが進化したようなものだろうか?人工知能を持ち常にPABと会話をするのが普通で、その会話からPABの個性も育ち、自分の分身、自分の一部のような存在という世界で繰り広げられる物語。
    地球人、月人、火星人と登場するが、過去に大きな争いがあり、それぞれが友好な関係とはいいがたい世界。三部作の第二譚。
    「あなたの魂に安らぎあれ」は地球を舞台とした物語だった。本作は火星。次回はどんな世界が広がるのか今から楽しみである。"

  • 帝王の殻 (ハヤカワ文庫JA)

  • 強い想いの物語だ。自分はこの想いの強さというものに縁遠くて、それを抱えた人間の内面はぼんやりとしか想像できない。そしておそらくその憎しみや愛はぼんやりしたものではない。

  • 人々が自身の腹脳的機械を携帯するようになった時代。舞台は火星。
    PABというそれらの機械を繋ぎ、その中身(つまり人間の思考や人格)を監視下におく、アイサックというシステムを構築した先代の帝王は、亡くなる前に次期帝王を孫の真人にするために画策していた。

    真人は知的発達が遅れており、2歳半だが会話は出来なかった。
    しかしアイサックが起動して、ある日、急に自らを帝王と名乗り、
    父親であり、一時的に火星を管理している恒巧(のぶよし)を解任し、
    火星を統治しようとする。

    アイサックの人格が真人という肉体を得て自由に振舞っていると思われていたが、
    実は、生まれつきPABの中身を理解できた真人は、
    幼少期から両親や使用人、大勢の大人の考えに日常的に触れ続けてきた。
    その膨大な”大人の思考”と、幼児である自分の肉体とのギャップを解消するために、真人は機械知性の人格だと思い込み、振舞っていた。

    ある種肉体というのは殻であり、外界と接するための窓であり、
    実在世界に影響を及ぼせない人工知性がそれを熱望するのもおかしくはない。
    だが、これから先の未来で、実在世界が重視され続けるのだろうか?
    確かに、現代では体験すること、つまり実際に経験することの価値が高まっている。これからどうなっていくのだろうか。

    むずかしいなーーーーー??

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著者プロフィール

作家

「2023年 『ベスト・エッセイ2023』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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