星界の紋章2: ささやかな戦い (ハヤカワ文庫 JA モ 1-2)

著者 :
  • 早川書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784150305529

作品紹介・あらすじ

故郷の惑星が帝国の領地となったために、意に反して、強大なアーヴ星間帝国の貴族となったジントは、宇宙港で帝都へ向かう戦艦を待っていたのだが…そこに現れたのはひとりの少女。彼女の名はラフィールという。同じ戦艦に乗りこむ見習い士官だったが、彼女にはもう一つの身分があった。皇帝の孫娘にして帝国を継ぐ王女だったのだ。-王女とジントの冒険行を、SFマインドたっぷりに描く話題のスペースオペラ第2弾。

感想・レビュー・書評

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  • アーヴ星間帝国の貴族になった少年ジントと、帝国の王女ラフィールの冒険を描いたSF小説です。前作『星界の紋章Ⅰ』の続きからになります。

    最初にあらすじから。ジントとラフィールは、帝国の王女と貴族という身分を隠して、人類統合体に追われる身となります。戦艦から脱出した後、二人はフェブダーシュ男爵領に不時着しますが、そこで男爵に囚われてしまいます。ジントは、前男爵スルーフの助けを借りて、ラフィールを救出。そして、二人はスファグノーフ侯国を目指しますが、そこはすでに人類統合体の手に落ちてしまっていたのでした。地上人になりすまして、レジスタンスと協力しながら、帝国の救援を待ちます。一方、帝国は、スファグノーフを奪還するために、トライフ提督率いる大艦隊を送ります。

    この本の魅力の1つ目は、やっぱりジントとラフィールの関係だと思います。二人は、異なる世界の出身で、互いに理解しにくいことも多いけど、それでも一緒にいることを選んで、信頼を育んでいくんですね。地上での逃避行のシーンは、本当に面白かったし、微笑ましいものでした。ジントは、宇宙では戸惑っていたけど、地上ではラフィールを守るために勇気を見せます。また、ラフィールは、王女としてのプライドがあるけど、ジントに対しては素直さを見せるんです。二人のキャラクターが成長していく様子が、見ていて嬉しかったです。

    もう一つの魅力は、アーヴという種族の描写です。アーヴは、人類の一派でありながら、人類とは違う歴史や文化を持っています。彼らは、自分たちの誇りや矜持を大切にして、恐れを知らないくらいに勇敢に戦うのですが、その生き様は、人類統合体や地上人にとっては、理解できないもの。それでも、アーヴの行動には、彼らなりの理由や意味があるのです。この本では、そんなアーヴの歴史や社会構造などが詳しく語られていて、彼らの性格や思想を垣間見ることもできました。アーヴは、人類とは違う人類という感じで、とても興味深い種族だと感じました。

    この本は、SF小説としても優れていると思うけど、それ以上に、人間の心や感情を描いているところが素晴らしいと思います。互いに違う世界の人間でありながら、共に成長していくジントとラフィール。彼らの関係は、人類とアーヴの関係の象徴と言えるのではないでしょうか?SFファンだけでなく、人間ドラマが好きな人にもおすすめです。

  • 再読なので感想は1巻と同様。

  • ★それもいいであろ、半径一〇〇光年で信頼できるのはあの者しかいないのだから……。(p.140)
    ■10のポイント
    ・前巻からの続き。フェブダーシュ男爵領からの脱出をはかる。
    ・フェブダーシュ男爵はみみっちぃ野望と見栄により生命を賭けるハメになった。
    ・男爵の元配下、セールナイやグレーダやアルサは今後どうなる?
    ・ジントとラフィールの死生観。地上人とアーヴの価値観。
    ・読者は地上人だがアーヴの価値観を頭では理解できるのでジントの堅さに違和感。
    ・前フェブダーシュ男爵はなかなか楽しいキャラなので、また出演してほしい。
    ・「門」があるスファグノーフ子爵領に到着したがすでに交戦中だった。
    ・敵占領下のクラスビュールに着陸。ラフィールにとって初の地表で立場逆転。
    ・開戦。辺境のイリューシュ王国を占領した四ヵ国連合の真の狙いは。
    ・最後にマルカ一味とやらが登場。

    ■アーヴについての簡単なメモ(アーヴ流の呼び方はめんどうなのでなるべく書かないようにします)

    【星界の紋章(1)一行目】よく晴れた夜空。
    【星界の紋章(2)一行目】この年はフェブダーシュ男爵領暦で一三六年にあたる。といっても、男爵館の公転周期が短いため、男爵領の一年は標準年の三分の一ほどしかない。


    【アーヴ】元は宇宙をまたにかける武装商人だったが都市船「アブリアル」内ですべて自給自足できていたので武家の商法のようだった。《アーヴ、その性、傲慢にして無謀》紋章Ⅰp.140と言われる。ある時期の研究により「門」を開くことができるようになり、無用の争いを避けるためにもその技術を独占することにし、「アーヴによる人類帝国(フリューバル・グレール・ゴル・バーリ)」略称「アーヴ帝国」を設立した。おそらく拠点となる決まった星を持たず宇宙船内で生きていると思われる。
    【アーヴ人】遺伝子操作により青い髪で若々しく美しい。はるか昔のルーツは地球人。どうやらおそらく日本人の一部と思われる連中が独自の文化を守るため地球を脱出し、今日中可能惑星を探すための道具として長期の宇宙旅行に耐える人工生命体として数十体作り上げ送り出されたのがアーヴだったようだ。青い髪は人間と区別し単なる道具であることがわかるように設定された。その後勝手に独立し宇宙とともに生きる民族となった。自分たちのことを「星たちの眷属(カルサール・グリューラク)」と呼ぶことを好む。《いまでは宇宙が故郷だ。》紋章Ⅰp.132。アーヴは「機械のパーツだ」と人類統合体は言い敵対している。アーヴ人は誇りを重視し気高くあろうとする。逃げることを考えないのでジントは困惑することがある。
    【アーヴ人の味覚】薄味を好むのでジントなんかにとってはちょっと物足りない。
    【アーヴによる支配】一五〇〇ほどの有人星系と二万以上の半有人星系を支配している。政治はおおむね被支配惑星の自治に任せるが「皇帝」を立てたとしても帝国の書類上は「領民代表」となる。帝国への反抗、離脱は許されない。制限は二点のみ。(1)恒星間飛行が可能な宇宙船の建造は認めない。代官である領主が認めれば保持はできるが武装は不可能。もともと「門」の無制限な利用により戦争が起こることを避けるのがアーヴ帝国設立の理由だったようなので当然と言える。(2)帝国星界軍の募集事務所を置く。星界軍に所属したり領主の配下になったとき被支配惑星の領民ではなく帝国の国民となる。応募者の妨害は許されない。
    【アブリアル】ラフィールの姓の元になった大昔の都市船。まあ、イメージ的にはマクロスかなと。当時の戦闘は戦闘機(高機動戦闘ユニット)によるもので、菱形の編隊、これもやはりマクロスのダイヤモンド・フォースな感じを組んでいた。指揮官が先頭の機体に乗り、それが前衛翔士、次席が後衛翔士、左右の機体の操縦士は列翼翔士。その編隊が二つ集まり、二部隊を指揮官機と同僚機が率い、計十機になるので指揮官は十翔長と呼ばれた。都市船アブリアルの時代、戦闘ユニットは全部合わせても一〇〇機から二〇〇機だった。その総指揮官が百翔長。それらの呼称が現在の軍の中にも残っている。
    【アブリアル】アーヴの故郷と言える都市船。改装を繰り返し現在も帝宮として現役。
    【アブリアル一族】皇帝一族。ラフィールが属する。怒りの抑制が苦手。
    【アブリアル司令長官】ドゥサーニュと思われる。マーティンに最初に現れた侵略艦隊のトップ。友好条約には応じなかった。外交官でもあり、皇太子でもある。
    【アルサ】フェグダクペ・アルサ。フェブダーシュ男爵の元で働いていたがラフィールに協力する。
    【遺伝子操作】アーヴでは遺伝子操作はアーヴという芸術作品を作るための技術のようなもの。美的見地からそれを行う。
    【イリューシュ王国】ハイド星系がある王国。八つの王国のうち唯一銀河外縁部にある。
    【エルフ耳】『星界の紋章』第一巻の表紙カバー絵はラフィールを描いているが、エルフ耳をしている。これはアーヴ全般ではなく「アブリアルの耳」と呼ばれアブリアル家の家徴らしい。これでも家の中では耳が小さく若干の劣等感を抱いているらしい。
    【エントリュア・レイ】スファグノーフ候国唯一の有人惑星クラスビュール、ローハウ州、ルーヌ・ビーガ市の市警察犯罪捜査部警部。
    【王国/フェーク】帝国は八つの王国から成る。それぞれに国王がいるが、その中の領主たちは皇帝直属なので王という地位は形式的なものであり実質的には地域の名称のような扱いとなっている。それぞれの王国は帝都ラクファカールにある八つの「門」に対応しつながっている。そのうち七つは確率の問題で銀河中央部にあるが、「イリューシュ王国」ひとつだけ外縁部である「第十二環」に存在し、他の銀河につながっていると考えられている。ハイド星系はその第十二環にある。


    【階級】軍では軍の階級のみがすべてであり宮中での序列は関係ない。
    【カイト】四ヵ国連合平和維持軍憲兵。
    【カシュナンシュ】アーヴ情報局長官。トライフ提督とは個人的確執があった(恋のさや当て)。
    【技術系四科】造兵科、造船科、造機科、光子科。
    【ギュムリュア】軍匠十翔長。ゴースロスの整備・点検の総責任者。機関士長という感じか。女性。
    【教育】アーヴは貴族制であり、幼少時の教育は家風を叩き込むためにも家庭内で行われる。人格が定まっていないうちに他者に教育をほどこさせる学校のような施設は問題外。
    【空識覚/フロクラジュ】アーヴ特有の能力。空識覚器官を使い宇宙船の感じること、宇宙船の周囲の様子がすべてわかる。空識覚器官は一億からなる個眼からなり近いものとしては昆虫の複眼。ふだんは頭環で隠されている。
    【クー・ドゥリン】ジントのデルクトゥーでの友人。
    【クラスビュール】スファグノーフ侯国領唯一の有人惑星。初代の時代にテラフォーミングされた。人口三億八千万人。自転周期は約三十二時間だが、生活時間は二十四時間とし、完全に分離させているので惑星の昼と夜が生活時間とはずれる。
    【クランドン市】惑星マーティン唯一の都市。三つの複合機能建築からなり、オムニⅠ、オムニⅡ、オムニⅢと名付けられている。ジントが暮らすコリント家はオムニⅢにあり、首相官邸はオムニⅠにある。
    【血縁】アーヴは遺伝子をいじくりまわしたり、遺伝子のやりとりをしたりするので貴族といえど血縁をまったく重視しない。重要なのは家風の継承であり遺伝子の継承ではない。
    【光子科/ファズイア・ダテュークリール】技術系四科のひとつ。思考結晶を扱う。
    【皇族】アーヴ皇帝は世襲だが、継承者の資質を考慮できるようアブリアルの姓を共有する八つの王家から選ばれる。①スキール王家②イリューシュ王家③ラスィース王家④ウェスコー王家⑤バルケー王家⑥バルグゼーテ王家⑦スュルグゼーデ王家⑧クリューヴ王家。ラフィールは最後のクリューヴ王家に属する。必ず軍役につかねばならない義務がある。ドゥネー星界軍大学に他の階級の者より早く入学でき十翔長までは半年で昇格できる特権があるがその後には特権がなく罰則等も普通に受ける。順調に飛翔科翔士の十二階を昇り帝国元帥に達すると帝国艦隊司令長官に親補される。平時には一兵も指揮しない職だが次期皇帝になることがほぼ約束される。それが決まれば年上の皇族や二〇歳と離れていない年下の皇族は予備役編入を願うのがならわし。一代限りの皇族になることもできるが「ボース」姓となり身分も貴族と格下げとなりアブリアル姓は名乗れなくなる。ほかあれこれややこしい。
    【ゴースロス】ジントがデルクトゥーから乗り込んだアーヴの最新鋭巡察艦。練習艦隊に属している。が、訓練生が乗っているわけではなく、新鋭艦なので、こなれるまで練習艦隊に属して訓練する。戦艦として特に巨大なわけではないが、帝国その他の人類世界の中で現在最強と思われる戦闘力を持つ。
    【子育て】《子の遺伝子を彫琢して育てる。それで親になるんだ》紋章Ⅰp.88
    【言葉】《いつでも皇族のことばは都合よく解釈されるものなのだと、父が話していたのを思いだす。》紋章Ⅱp.39


    【サリューシュ】前衛翔士。ゴースロスの先任砲術士。鋭い目付き。由緒ある姓を持つ男性。操舵士でもあるようだ。戦闘隊長といったところか。
    【サンガリーニ】サンプル・サンガリーニ。「人類統合体」がアーヴの帝宮アブリアルに派遣している大使。
    【時空泡群】細かな理屈はともかく、宇宙空間で時空泡群があったらそこには艦がいると思えばいいようだ。
    【思考結晶/ダテューキル】まあ、コンピュータみたいなもんかと。感情はないので人間の命令は聞くが人工知能として自律的に思考・分析を行っているようだ。《混乱は人間の重要な属性であり、彼らから混乱をのぞいてしまえば見るべきほどのことはたいして残らない、と解析しきっていたから。》紋章Ⅱp.60
    【死生観】アーヴの軍人はわざわざ命の危険を侵すことはしないが、戦いを挑まれたり誇りをけがされたりしそうになると徹底抗戦し容赦ない。そして逃げようという発想すらないのでジントは苦労する。《そのときまで生きていたいし、きみにも生きていてほしいんだよ》紋章Ⅱp.104
    【ジムリュアの乱】かつて星界軍と地上軍に分かれていた頃、地上人主流の地上軍が大規模な反乱を起こしたが、それを首謀者の名前を取って「ジムリュアの乱」と呼ぶ。鎮圧後即座に地上軍は解体された。
    【銃】凝集光銃は安全と発射の中間に設定すると探照灯として使える。
    【主計科】ジントがアーヴ軍で就く予定の事務方の役目。食料や備品の点検で日が暮れる。ある意味最重要部署。
    【主計修技館生活諸規則】ジントが頭に刻み込むようにと渡され格闘した。古い規則は削除せず様々な補足をつけることで矛盾点を回避している。そのせいで膨大なデータとなっている。古代ローマの法律ようなタイプか。
    【出生の秘密】アーヴでは「出生の秘密」がある場合が多い。成人するまでは自分の出自(遺伝子)がわからなかったりする。成人すると遺伝記録を閲覧できる。《出生の秘密があったほうが、子どもの人格は豊かになる》という考え方がある(紋章Ⅰp.90)
    【翔士/ロダイル】深紅の腰帯を身につけている。
    【進化】ラマージュ《進化の萌芽は遺伝子異常として摘みとられる。遺伝を意のままにできる力を手に入れたとき、人類が行ったのは、けっきょく、自らの進化を封じこめることであった。吾が帝国でも御身らの国々でも変わりあるまい。進化を恐れるゆえのこと》紋章Ⅱp.185
    【人口】アーヴの人口は二五〇〇万人ほど。ほとんどが士族(リューク)で(スイーフ)は二〇万人程度。ジントはアーヴ人種でないにもかかわらず、閣下(ローニュ)の称号を持つ一六〇〇家ほど、家族を含め二万人もいない「諸侯(ヴォーダ)」の一人となった。なお、アーヴ人以外も含めると国民は一〇億人、領民は九〇〇〇億人ほど。
    【ジント・リン★】視点役としての主人公。惑星マーティンで暮らしていた茶色い髪を少年。政府主席ロック・リンの息子。母は鉱山監督だったが事故で死亡、ジントは母の面影も覚えていない。コリント家で育てられティルの妻リナに対しては母親として愛情を抱いている。アーヴ帝国侵略艦隊来訪時に父ロック・リンがおこなったある取引によって波乱の人生が始まる。帝国貴族になった後の正式な名前は「リン・スューヌ=ロク・ハイド伯爵公子・ジント」。基本的にはずっと役立たずの立場に甘んじている。とりあえずものごとが通り過ぎるのを待つタイプではある。《あとでちゃんと怒るから》紋章Ⅱp.57。《ジントは――卑怯にも――気づかないふりをした。》紋章Ⅱp.59。ふだんはわりと温厚で飄々とした性格だが感情の起伏は大きく自己の価値観の押しつけ度もけっこう強い。
    【人類統合体】かつてスーメイ星系でアーヴが発見したのと同様、平面宇宙を利用する技術を発見し、アーヴとは異なりその技術を充分な対価を支払えば広く公開した。アーヴに言わせるといたずらに争いを広げるだけだと思われ、実際にそうなった。そうして分かれていった星間国家のひとつが「人類統合体」で人口は六〇〇〇億あまり。「ノヴァシチリア条約」の中心国。民主主義を標榜しすべての災厄はアーヴによるものと考えている。
    【スファグノーフ侯国領】唯一銀河外縁部にあるイリューシュ王国に属し、スファグノーフ門を持つ。有人惑星としてクラスビュールがある。ソスィエ・ウェフ=サイラル・ダグレーがヤクティア戦役で大功を樹てスファグノーフ星系を与えられ惑星クラスビュールをテラフォーミングした。家紋は「銀の枝と蝸牛/ヤーズ・シュレンナ・ル・クラスビュール」。ゴースロスを脱出したラフィールとジントが到着した。
    【星界軍/ラプール】アーヴの軍。
    【制御籠手/グーヘーク】アーヴは左手にはめた制御籠手と音声入力で操船する。合成皮革製と多くの金属パーツで構成されており、肘まで覆う長さがあり、小さなディスプレイがついているようだ。
    【性別】アーヴの性別は外見からはわかりにくい。男女ともに同様に美しいので。
    【正論】《前から思ってたんだがよ、正論をきくってのは、どうしてこういらいらするもんなんだ?》紋章Ⅱp.263
    【セールナイ】フェブダーシュ男爵の家臣のひとりだったがラフィールに心酔する。
    【善人】《エントリュアの見るところ、善人には二種類あった。消極的な善人と積極的な善人と。前者は感謝されるが、後者は自分以外の誰も満足させない。》紋章Ⅱp.218
    【造機科/ファズイア・セール】技術系四科のひとつ。機関を設計する。
    【造船科/ファズイア・ハル】技術系四科のひとつ。船体を意匠する。
    【造兵科/ファズイア・ロウボン】技術系四科のひとつ。兵器を考案する。


    【地球】人類の故郷。
    【ディーシュ】主計十翔長。ゴースロスの書記長。男性。人間の面倒を見る責任者。そのままだったらジントがその配下についたと思われる。
    【帝国貴族/ルエ・スイーフ】ジントは父のせいで帝国貴族になった。
    【偵察分艦隊】名称とは裏腹に強力な武力を持ち、力任せに敵領域をのぞき込むことを使命とする分隊。
    【ティル・コリント】ロック・リン主席の秘書官。妻はリナ。ジントはコリント家で育てられたようなもの。
    【デルクトゥー】惑星。宇宙港はお祭り騒ぎ。《デルクトゥー人は時間のつぶし方を知っている。》紋章Ⅰp.34。人名は姓名の姓の方が先に来るのでマーティンなどとは異なる。
    【ドゥサーニュ】バルケー王。帝国元帥。帝国皇太子。次期皇帝。帝国艦隊司令長官。《この戦、わららが敗けたほうが、人類にとってよいのかもしれません》紋章Ⅱp.194。ハイド伯爵家を創設した。
    【ドゥビュース】アーヴ皇帝ラマージュの息子。ラフィールの父。
    【特殊兵科】主計科、空挺科、軍医科、技術科、警衛科、法務科、看護科、軍匠科、造兵科、造船科、造機科、光子科、航路科、軍楽科がある。
    【トライフ・ボルジュ=ユブデール・レムセール】アーヴの提督。アーヴには珍しくがっちりした体格。好戦的な感じ。トライフ家の紋章は「歎く雉」。


    【荷物】《そなたはわたしのたいせつな荷物なんだからな、怪我してもらってはわたしが迷惑する》紋章Ⅱp.48
    【年齢】アーヴの年齢は見た目からはわからない。十五歳くらいまでは先祖と同じように成長し「成長」と呼ぶ。その後二十五年ほどかけて外見的には十歳ほど加齢し「成熟」と呼ぶ。その後は死ぬまで老けない。不老だが不死ではない。知性が破壊される前に生命活動を止めるようデザインされており、寿命はおおむね二〇〇歳から二五〇歳。
    【ノヴァシチリア条約】→四ヵ国連合


    【ハイド伯爵家】《ハイド伯爵家の創設物語は英雄譚じゃなくて、犯罪劇なんだよ。マルティーニュの人たちは、みんな、ぼくと父を憎んでいる》紋章Ⅰp.41。紋章旗の図柄は緑地に赤くレズワンという、鳥のように見えるがじつはマルティーニュの海を泳ぎまわる有毛魚類の一種が縫いとられている。実物はけっこう間抜けな感じの動物だが旗にするとそれなりの威厳がある。
    【反帝国クラスビュール戦線】帝国から独立して自分たちで貿易等をしたい一派。帝国そのものには特に反発心を抱いてはいない。ジントたちの前に現れたのはマルカ、小男の葬儀屋、口髭を左右で赤と黄色に塗り分けているミン、壊し屋ビル、大男のダスワニ。
    【人質】アーヴに人質は通用しない。
    【ファラムンシュ・ウェフ=ルサム・ラザス】帝国元帥にして軍令長官。軍事面のトップと思われる。
    【フェブダーシュ男爵】アーヴにも俗物はおり、気高くない。能力は意外に低くはないと思われる。自分ではアーヴらしいとイメージしている小さな王国を築き地上人の女性たちに君臨していた。ゴースロスを脱出したジントとラフィールが最初に到着した星系。いろいろ思惑が重なり、王女であるラフィールを軍務中であるにもかかわらず強引に引き留めようとした。《ここではおれたちが正義なのだ》紋章Ⅱp.51
    【フェブダーシュ男爵の父】先代男爵の父は地上人だったようなので現男爵の成金趣味はうなずける。母親が成り上がり、自身も造船翔士まで昇った。なかなか老獪で楽しい人物。《おお、少年よ、負け惜しみということばをきいたことは?》紋章Ⅰp.245
    【フェブダーシュ男爵領】フェブダーシュ男爵をトップに置く新しい国家。辺境にあり、領民は約五〇人。反物質燃料の作成で利益を得ている。
    【星たちの眷属/カルサール・グリューラク】アーヴはよく自分たちのことをそう呼びたがる。
    【平面宇宙/ファーズ】理屈はともあれ、われわれの宇宙とは完全に独立し別の物理法則が支配する一次元の時間と二次元の空間からなる宇宙で、要するに「門」を通るとそこに入り、超光速移動が可能になる。まあ原理は異なるだろうけど「ワープ」できるようになるくらいに考えておけばよいかと。この宇宙にいる限りは通常宇宙で起こっていることは何もわからないし、自分たちの位置もわからない。


    【マーティン】惑星。ハイド星系の宗主惑星と思われる。恒星間移民船「レイフ・エリクスン」で移住してきた人類の末裔が暮らす。惑星改造技術に頼らなくてすむ酸素大気惑星だった。奇妙な動植物が繁殖していたが移民たちは惑星の生態系を壊さないよう慎重に人口を増やしていった。
    【マルティーニュ】惑星マーティンが帝国に併呑された後の名称だと思われる。
    【ミンチウ】デルクトゥーでもっとも人気のある球技。
    【門/ソード】ユアノンの第二形態。簡単に言えば超光速航行のための出入り口となっている。既知の門は約三〇〇億個。紋章Ⅱp.187あたりからいろいろ説明があるがよくわからない。帝都ラクファカールにある八つの門は帝国を構成する八つの王国につながっている。そのうちの七つは確率の問題で銀河中心部にあるが、ひとつ「イリューシュ門」がつながっているイリューシュ王国のみは外縁部である第十二環にある。


    【ユアノン】謎の粒子。正体は不明だがエネルギーとして利用は可能。外宇宙に出ようとしてた人類にとって燃料を積載しなくてもかまわなくなるので福音となった。
    【ユーンセリア】前衛翔士。ゴースロスの先任通信士。原色の青といえる髪の女性。しっとりとした落ち着きのある物腰。
    【与圧兜/サブート】宇宙服のことかと。
    【四ヵ国連合】アーヴ帝国以外に星間国家は四つある。「人類統合体」、「ハニア連邦」、「拡大アルコント共和国」、「人民主権星系連合体」。四つ合わせた人口は一兆一千億ほど。いずれも民主主義を標榜している。長期にわたり戦っていたがアーヴに対抗するため対立をやめ軍事同盟の条約を結んだ。ジントとラフィールが出会った十二年前のこと。自分たちは「民主主義諸国」を名乗ることが多く、アーヴは「四ヵ国連合」と呼んだ。自由を標榜するが、アーヴに向けて開戦しスファグノーフ占領したとき、アーヴ憎さで青い髪に染めてはいけないというどこぞの校則のような決まりを設けたりし自由を台無しにしたり、占領した惑星の政府を「奴隷政府」と称したり成熟していないところがある。


    【ラクファカール】アーヴの帝都。
    【ラフィール★】主人公。惑星デルクトゥーにいたジントを迎えに来た翔士修技生。アーヴ皇帝ラマージュの孫娘。正式な名前は「アブリアル・ネイ=ドゥブレスク・パリューニュ子爵・ラフィール」。「ラフィールと呼ぶがよい!」(星界Ⅰp.63)というのは特別なことなのかも?
    【ラフィールの父】ユーモアセンスはあるらしい。お気楽な言動をラフィールは回想している。そのせいでラフィールは自分が猫の遺伝子を持って生まれてきたかもと心配していた。
    【ラマージュ】アーヴ皇帝。女性。若く見えるがほぼ一〇〇歳。ラフィールはその孫。
    【理念】ラマージュ《歴史をかえりみるに、個人が持ってこそ理念は美しく輝く。国家が持てばたいてい悲惨な結末を生む。国家の理念は臣民を無用の死に追いやる。帝国は理念なく存在し、多様な人類社会を統合することにのみ専念しよう。》紋章Ⅱp.185
    【領主】アーヴ帝国が被支配惑星に差し向ける代官。交渉の窓口でもある。その惑星の産物等による貿易の権利を唯一持つ。
    【レイフ・エリクスン】恒星間移民船。マーティンを発見後記念碑として惑星軌道上に係留されていたがあるとき謎の爆発をし、それが現在の「マーティン」の月となっている。
    【レクシュ】百翔長。ゴースロスの艦長。女性。ラフィールの遺伝子提供者。ジントの感覚では母親。ラフィールは慕っており、自分の遺伝子上の母であることを好ましく思っていた。
    【恋愛と結婚】アーヴは結婚しない。永遠の青春の中で生きるアーヴに結婚という制度はそぐわない。《狂おしいほどに激しく燃えさかり、跡形もなく燃えつきる》のが典型的なアーヴの恋愛。まれに長続きしたり、死ぬまでいっしょに過ごしたりすることはある。必然的に親は基本的には一人しかいないことになることが多い。「父の娘」とか「母の息子」と呼ばれる。「そなたの遺伝子が欲しい」というのはもっとも真剣な愛の告白。ラフィールは自分が「愛の娘」かどうか心配していた。いっときは父親と自宅の飼い猫の遺伝子からつくられた子どもかもしれないと考えていた(アーヴの技術では可能)。
    【レリア】十翔長。ゴースロスの副館長。兼先任航法士。水色の口ひげの男性。親しみやすい感じ。
    【ロック・リン】帝国艦隊が来たときの政府主席。ジント・リンの父。妻は鉱山監督だったが事故で死亡。侵略艦隊来訪時にアーヴとある取引をし、そのせいでジントの人生は難しいものになった。ロック自身は自星の利益を最大限護るためにそうしたが、全国民からは裏切り者と思われている。帝国貴族になった後の正式な名前は「リン・スューヌ=ロク・ハイド伯爵・ローシュ」。


    【惑星改造技術】要するにテラフォーミング。ユアノン推進の研究は始まった頃すでにこの技術は確立されており金星や火星で実践されていた。アーヴではいくつもある専門の「惑星改造技師組合/ガリュール・ファゼール・デイウイム」が請け負う。大昔、地球で数十億年かかった行程を大幅に短縮して再現する。クラスビュールは着手から約五十年でテラフォーミングを完了した。

  • 最初にジントの生い立ちから始まったので、てっきりジントの物語なのかと思ったら、どうも今作を読む限りではラフィールが主役の話のような気がしてきました。
    突然帝国に侵略され、徹底抗戦を叫ぶ地元の人たちを裏切って帝国の貴族の身分を手に入れたジントの父。
    そんな父親のせいで、成りあがり貴族としての居場所のなさを抱えるジント。
    ジントと父の対立、または裏切ったと見せかけて地道に抵抗の火を育て続けた父の真実、などの話かと思っていたのです。

    ところが、ジントが士官学校へ向かうために乗ったっ戦艦が、反帝国勢力に攻撃され、ジントを逃がすために発射された小型機は、息をひそめて気配を隠していた弱小男爵領で捕獲されてしまいます。
    自身の領地を守るため、ジントとラフィールを監禁した男爵のもとから脱出した二人の行動の結果は後味のいいものではありませんでした。

    表紙の絵だったり、ジントとラフィールの会話だったりからユーモアSFのつもりで読んでいたので、突然の、生き残りをかけた闘いの厳しさに、目が覚めた想いでした。

    貴族には貴族の生き方があり矜持がある。
    それを守るためならどんな手段を取っても…というのは、ジントよりもラフィールこそが皇帝の孫として日々突きつけられたものなのです。

    男爵領から脱出しても、逃げついた先は反乱軍に制圧された場所。
    生活様式も言葉も通貨も違う異国で、今度はジントがラフィールを守ります。

    ね、最後の一巻は『王女の帰還』になりそうじゃないですか。

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  • ジントが活躍できてよかった。いいとこ見せないとねえ。

  • ラフィールとジントの逃亡劇がこの巻の話のメイン。話の場面が前触れもなくコロコロと変わるので、読んでいてちょっと戸惑ったが、年頃の2人が対立しながらも互いの理解を深めていくという過程をじっくりと読むことが出来た。ただ、あとがきのように自分もジントの視点から物語を読んでいたので、ラフィールが何故終始不機嫌なのか心情があまり理解できなかったというのが正直な所。3巻も引き続き読んでいきたいと思います。

  • 図書館から借り出したら、すでに書庫の本になっていた。
    歴史を感じる。

  • 一作目の一月後に出てる。

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著者プロフィール

1962年、兵庫県生まれ。SF作家。92年、短編「夢の樹が接げたら」でデビュー。アニメにもなった『星界の紋章』シリーズや、日本SF大賞を受賞した『突変』など、著書多数。

「2023年 『夢のまた夢 若武者の誕生』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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