死の泉 (ハヤカワ文庫JA)

著者 :
  • 早川書房
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本棚登録 : 950
レビュー : 122
  • Amazon.co.jp ・本 (659ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784150306625

感想・レビュー・書評

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  • 素晴らしい読み応え!皆川さんの小説で、西洋が舞台の作品は「開かせていただき~」と「海賊女王」しか読んだことがなく、面白く読んだのだが正直和物の方が好みだなあと思っていた。けれどもこの「死の泉」はとても素晴らしかった。冒頭から謎めいたシーンが登場し、その後も秘密めいた治験、黒衣の聖職者、カストラート等々仄暗いモチーフが続々と織り込まれ、また「ペガサスの挽歌」(超好き)を思い出させる背徳的な場面もあり、ただもうぐいぐいと引き込まれて読んだ。最後に明かされる真実には、驚くと同時にそこまでの伏線が前半から張られていたことに気づくと、最後の最後まで味わいつくして読むことができた、と感慨深い。ああでもフランツが不憫...!

  • 狂気じみた執着が生み出すこの世のものとは思えない程の美しさと残酷さ 物語の終盤で明かされる真実に驚かされる場面があるのだけれど、それで終わったと気を抜いてはいけない その後の更なる告白により今作の暗澹とした深い混沌の世界に引きずり戻されてしまった

  • 天国的で背徳的な世界をただよっている、その解けないところがいい。
    第一部が人間から見た哀しい現実ならば
    第二部は人間?から見た悪夢、いやどちらも悪夢なのでしょうね。
    他の方々には、同じ文章を書かせてもこうも魅惑的にならないと思う。
    この内容で皆川さんの流麗な文章であるから幻想的になるのでしょう。

  • ナチス、SS、人体実験、地下洞窟、変声しない美声のカストラート。そして最後でひっくり返される驚き!重厚で海外翻訳ものを読んでいる様でした。「聖餐城」につづきまだ2冊目ですが、皆川博子、恐るべし^^です。凄いです。物語は真実の上にそれ以上の真実らしさをもって物語られる。許されることではないがクラウスの美に対する偏執は判る気がする。それは狂気との隣り合わせ。狂気が物語を構築する。凄まじい話でした!!

    • ななこさん
      日向さん、読了おつかれさまです☆海外翻訳物を読んでいるよう、、、すごく分かります^^「聖餐城」もそうでしたけど、読んでいると日本人が書いた小...
      日向さん、読了おつかれさまです☆海外翻訳物を読んでいるよう、、、すごく分かります^^「聖餐城」もそうでしたけど、読んでいると日本人が書いた小説だという事を忘れちゃいますね~(笑)もう大好きな要素がたっぷりで、終始興奮しながら読んでいました!皆川作品、未読のものばかりでこれから少しずつ開拓していく楽しみができました…(*^-^)
      2012/06/16
  • 皆川さんの長編は初チャレンジ。 ぷはあ、満腹です。 堪能。
    舞台はドイツ。 子供を安全に産むためのナチの施設、〈レーベンスボルン〉から始まる、美と狂気の物語。


    文章は決して読みにくくはないけれど、奥深く精緻で色濃い。
    大抵のレビューで言われるように、言葉の使い方、設定や世界観はグロテスクで、(それ故)最高に美しくて魅力的だと思う。

    でも短編から入った私がそれに加えて感じたのは、物語の速度。
    永遠とも思われる(しかし緊張感に満ちた)時間から、一気に傾れ込んでゆくクライマックスまでのメリハリがとても上手い。
    読んでいてこんなに鼓動が速くなったのは初めてだと思う。 ドラマや映画では味わえない、むしろ漫画に近いようなカメラワークというか。
    胸にどすんと響くこの質量感は高級品の証。 読書好きな人には是非体感してもらいたい逸品だと思う。

  • 内容(「BOOK」データベースより)
    第二次大戦下のドイツ。私生児をみごもりナチの施設「レーベンスボルン」の産院に身をおくマルガレーテは、不老不死を研究し芸術を偏愛する医師クラウスの求婚を承諾した。が、激化する戦火のなか、次第に狂気をおびていくクラウスの言動に怯えながら、やがて、この世の地獄を見ることに…。双頭の去勢歌手、古城に眠る名画、人体実験など、さまざまな題材が織りなす美と悪と愛の黙示録。吉川英治文学賞受賞の奇跡の大作。

    ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

    歴史好きにも興味をひかれる主題。

    なるほど...
    戦時下のドイツはこんなだったのか...
    確かにアーリア人による統一を求めていたナチスなら、さもありなんですね...

    きれいな子をさらってきて、その遺伝子を残そうとするとか
    本当にあったんだろうなぁ。
    (そこでもユダヤ人は排除だったのだろうけど)

    戦争って人々の発想をゆがんだものに変えていくね。
    それとも発想がゆがんでいく過程で戦争になるのかな...

    今回はこの本の感想なので、日本のことはとりあえずコメントしません!
    ご了承ください!(←誰に)

    こちら、くくりはミステリーなのですね。
    歴史小説ではなく。

    博士の異常な愛情(どこかで聞いたね)に怯え、
    ついには正気を失ってしまうか弱い乙女の主人公...
    ←たぶん

    そしてアーリアンの容姿を持つために、ドイツ人にさせられた
    エーリヒとフランツ、レナ...

    美しい容姿を持つが故、エーリヒとレナはそれぞれ違う研究の対象となり
    あるがままの肉体でいられない改造をさせられてしまいます。

    にしても、美しい人がたくさん出てくるんですよねぇ。
    第一部では主人公のマルガレーテ。
    マルガレーテと一時関係を持つギュンターと言う青年。
    そしてもちろん、エーリヒ、フランツ、レナ。

    純アーリアンの容姿を持っていると言うだけあって、
    皆さん金髪碧眼、白い肌。

    耽美なんですよ(´ω`*)

    特にエーリヒとフランツと言う二人の美少年がね!
    もうね!
    お姉さん心弾んじゃうよね!

    と言うわけで、けっこう厚い本なのですが相当一気に読みました。
    寝不足になるくらい読みました。

    時々出てくる歴史上実在のナチス高官たち(名前だけね)、
    ドイツの風光明美な観光地の描写、
    塩抗、芸術品、崩れた中世の城...

    そんなものも耽美度UPです。

    ミステリーと言うより歴史小説。純文学。
    そんなくくりがふさわしい...

    そう思っておりました。
    「あとがき」を読むまでは...!!!!

    ※ここからネタばれしますよ※

    最後の部分で死んだと思われてたレナとアリツェが生きている描写があります。
    しかもアリツェは結構元気なバーの経営者になってるよ!わお!
    でもその前に「私の姉なの」って言うところでは気づかんかったわ~...

    あとがきは、作者であるギュンターに、
    日本の訳者が会いに行く、という設定。

    えっとね、私これ実はちょっと信じました(ノ´∀`*)
    あ、ギュンターって実在するんだ~、
    日本人が訳した本なんだ~、
    だからドイツの言葉やドイツじゃない言葉や
    ジークフリートの詩やなんか出てくるのね~、って。
    (←単純)

    でも違った><

    でね。あとがきではギュンター=フランツなのよ。
    そしてしかも彼は、犬に噛まれて死んだ(らしい)...と...

    そしてあとがきに出てくる作者ギュンターは、
    どうも容貌や言動がクラウスっぽい...
    って言うかクラウスでしょ...

    で、ネットとか見てたら、やっぱりマルガレーテの恋人は10歳下のフランツ!って意見が多いのだけど、私の意見はねやっぱりギュンター=フランツだと思うの。異論は認めます。

    まぁ、そう考えると矛盾点もたくさんあるのだけど...
    うーん...

    ちょっと難しすぎた。
    すっきりは出来なかったな...

    いつか解説本だしてほしい...
    お願いしますっ!!!!!

  • ナチス統治下のドイツが舞台の壮大な物語。背徳的で美しい世界感にすっかり魅了されてしまった。永遠の高音を保つために去勢をする男性歌手、双子を使った人体実験、人種差別の悲劇、秘密の城塞などなど、題材の全てがツボにはまった。第一章が特に素晴らしい。実名で登場した歌手の歌声や、舞台となったオーバーザルツベルクなどを検索して見ながら読んでいたので、読了に時間が掛かってしまったが、物語の世界にもっと深く浸れて良かった。これは再読必須な一冊!

  • 皆川さんの作品読了後は、必ず打ちのめされ暫し呆然となる。今回はそれが圧倒的に凄かった怪作。歴史的背景の描写も、切羽詰った人間模様も、想像を絶する構成と“仕掛け”も、全てにゾクゾクした。(何でノーベル賞じゃないの?)

  • すごく贅沢な読書体験だった。
    ヒトラー時代のドイツが舞台。読みながら何度も、え、これ書いたの日本人?ほんとに日本人?と確認してしまったほど、精密。二重、三重につくられた話に、ひたすら惑わされて混乱した。

  • 消費税が上がる前に買っておいた皆川博子の分厚い文庫(約700頁)に着手。ナチスドイツものというのが個人的にちょっとハードル高いかなと思っていたんですが(得意な時代じゃない)読み始めたらそんなことは関係なく、ぐいぐい最後までいってしまいました。

    カストラート、結合された双子、奇形の胎児、人体実験と、ややグロテスクながらも耽美系モチーフ満載でそっち系のファンも満足させつつ、15年越しの大河ロマンス的でもあり、ミステリーの要素もあり、伏線の張り方も絶妙で、とにかくエンターテイメントとして一級品。

    個人的には「べるばら」とかそういう系列の歴史大河少女漫画を読む感覚に近く、キャラ萌えもできて大変楽しかったです。最初ストーカーみたいで不気味だったヘルムートがだんだんすごくかっこよく思えてきたり、フランツとエーリヒ、そしてミヒャエルの関係には、なぜか「はみだしっ子」を彷彿とさせられたり。後半のエーリヒのビジュアルイメージは、なぜか「11人いる!」のフロルでした。文体にはコミック的要素は全くないにも関わらず、皆川博子はそのへんの時代の少女漫画好きなら間違いなくハマれる作家だと思います。

  • 「死の泉」皆川博子◆第二次世界大戦下、ナチの産院にいたマルガレーテは医師クラウスと結婚するが、クラウスの美に対する愛情は歪んでいく。人体実験などグロテスクな部分もありながら蠱惑的で、その魅力に引きずられるように読み進めるうちにいつの間にかどっちを向いて立っているのか分からなくなる

  • 第二次世界大戦中のナチスドイツ~戦後を舞台にした重厚な物語でした。訳本という形をした入れ子構造の物語で、最後の最後で驚かされました。何が事実なのか惑いましたが、物語全体に漂う耽美的、幻想的な雰囲気を楽しむことができました。

    ナチス、ナチ親衛隊、カストラート、人体実験、レーベンスボルン、廃城、地下洞窟など。

  • ふぅー読了。
    第2次大戦下のドイツが舞台で、ミステリというより純文学を読んでいるようでした。

    本全体が入れ子構造になっているものは初めて読んだため、最初のページを捲った時に???という感じでしたが、あとがきまで読んで感動!

    翻訳本の体をとっているため、少し堅苦しい文章に感じますが、それが本書をより一層魅力的にしています^^

    第1部から15年後の第2部「ミュンヘン」では、心身を患ったマルガレーテの現実と記憶と空想とが入り乱れ、章を通して一人違う時間を彷徨っている様子がねっとりじとーっとしてて不気味。

    第2部・第3部は、時系列や視点の入れ替わりが多く、少し読みづらかったです;

    読んでいる間、皮膚の下をそわそわーっと虫が這っているような感覚になりますが、惹き付けられる1冊でした^^

    (中央図書館1/23~29)
     購入予定

  • もうね、凝ってる! 初めから終わりまで凝ってる! 「あとがき」と「解説」がこれほど重要になるなんて…! いやそれでも疑問が多いのだけど、物語の雰囲気と混じり合っていっそ神秘的なのだ。
    現実と過去や夢の回想がまじりあった文章って、ややこしいから好きじゃないのだが、この本にはもう最適! だって戦時中のドイツって情報統制、思想統制、洗脳が行われていたわけだから、こうやって現実と虚構を行き来する文章ってもう、十分効果があるわけだ。怖い。
    アーリア人至上主義を謳っているドイツで、「金髪碧眼の白痴」なんて口を滑らせてしまったマルガレーテの苦悩。私生児を国家のためだからと手放したくないという葛藤。狂信的な結婚相手クラウスとの関係。養子との触れ合いと――。もうね、これが戦時中戦後のドイツとなると、「ないない」なんて言えない雰囲気がある。
    もう疑問も多いのだけど、うん。楽しかった。

  • 思わず感嘆のため息が漏れてしまうほどの美しさ!
    皆川さんの紡ぎ出す一言一言は、まるで宝石のようにキラキラしていて、
    それでいて、時折ゾクリと肌が粟立つようなおぞましさも内包している。
    心が震えました。この本、大好きです。

    戦時中のナチスドイツ。
    金髪碧眼の見目麗しいア-リアンの子供達だけが優遇され、
    ツィゴイネルやユダヤ人というだけで弾圧されるという恐ろしい時代。

    神話に始まり、古城、人体実験、地底の洞窟……等々、
    あまりにも魅力的なモチーフが、幻想的なミステリに絶妙に絡み合い、
    悲しくなるほど美しく耽美的な世界でした。

    いつまでもこの世界に浸っていたかった!!

    • ななこさん
      日向さん、こんばんは♪この作品、好みど真ん中の作品でした^^皆さんの感想をうかがっているとかなり好き嫌いが分かれそうなのですが、きっと日向さ...
      日向さん、こんばんは♪この作品、好みど真ん中の作品でした^^皆さんの感想をうかがっているとかなり好き嫌いが分かれそうなのですが、きっと日向さんはお好きだと思うなぁ。。。美しさとおぞましさは紙一重なのかもしれません。読み終えた後にまたすぐ再読したくなります…!日向さんの感想、楽しみに待っていますね☆
      2012/04/15
    • 日向永遠さん
      nanacoさん、おはようございます!読み終わりました!!面白かったです。ほんとこの雰囲気に浸っていたいですね・・大好きです!「聖餐城」も大...
      nanacoさん、おはようございます!読み終わりました!!面白かったです。ほんとこの雰囲気に浸っていたいですね・・大好きです!「聖餐城」も大好き^^皆川さん、凄い、凄い!!
      2012/06/16
    • ななこさん
      日向さん、こんばんは~^^読み終えられたんですね!本当に、圧倒されるようなお話でしたよね。もうこの世界観が最高で、読了後もしばらく余韻に浸っ...
      日向さん、こんばんは~^^読み終えられたんですね!本当に、圧倒されるようなお話でしたよね。もうこの世界観が最高で、読了後もしばらく余韻に浸っていました。。。「聖餐城」同様、この本も宝物ですね(><)
      2012/06/16
  • とにかく精緻なので読み終わるのにも相当な時間がかかった。よく書けるなこんなのと関心してしまう大長編。二部、というかゲルトが出てきてからの方が疾走感があり、展開的には面白いし進めやすいんですが一部が完全に下敷きになっているからまあ、最初がちょっとだるく感じても後の為には仕方が無い。クラウスの一人勝ちっぷりがなんかアレですね…間にたびたび登場する、狂気に浸るマルガレーテの夢想描写が綺麗で切なくて気持ち悪くて凄く好き。あまりに多過ぎて抜粋は難しいけど。完全に内容把握するには何回か読み直す必要がある感必須なので、またそのうち。神話に宗教、戦争に人体実験、人間の暗い部分もりだくさんでした。

    • みなみさん
      たのむからよめ
      たのむからよめ
      2009/12/16
    • Sさん
      そ、そこまでか これそこまでのやつか 判った
      そ、そこまでか これそこまでのやつか 判った
      2009/12/17
  • 第二次大戦下のドイツ。ギュンター・フォン・フュルステンベルクの子を身ごもったマルガレーテは、ナチの施設“生命の泉《レーベンスボルン》”に身を置く。不老不死の研究を行い芸術を偏愛する医師クラウスに求婚され承諾したマルガレーテは、彼の養子であるフランツとエーリヒそして産み落とした我が子・ミヒャエルと共に戦中の最中、豊かな生活を送りつづけていた。
    だが、家政婦であり、昔の看護婦仲間であるモニカ・シュネーは、執拗にマルガレーテを脅迫する。戦火を逃れオーバーザルツベルグへ移り住んだ1945年春、事件は起った。しかし英ランカスター機の投下された爆弾はオーバーザルツベルグの全ての建物を壊滅、それは闇の彼方へ……。そして、15年の歳月が流れた――――――――。


    最初、この本を手にして扉を開けた瞬間、確かに「おや?」と思った。その疑問を持ちつづけたまま、読み進めて行くこととなったが、それが後に、あんなトラップの布石だとは思いも寄らなかった……。
    確かに、この本は“どんでん返し”があると聞いていた。従って、淡々と進む話をその最後の瞬間の数ページの為だけに読み進めていたと言っても過言ではない。
    しかし、思いも寄らない趣向で「やられました」の一言に尽きる。今まで色々本を読んだが、こういう趣向ははじめての経験だ。以前読んだものの中で、宮部みゆき著の「火車」という作品があるが、これは読んでいて作者の意向が伝わったし、あえてこういう手段をとっているという事が読めた、だがこの作品に関しては全くそこまで読めなかった。完敗である。
    物語は本当に淡々と進む。三部構成になっていて、“? 生命の泉”だけでは一体何を語ろうとするのかが読みきれない。“? ミュンヘン”で繋がりが明確になり、最終の“? 城”で一気に佳境へ突き進む。ただ悔やまれるのが狂気の医師であるクラウスの狂気さがあまり出ていない部分と、執拗に殺意を抱くフランツとエーリヒの動機面が弱く感じる。そしてミヒャエル。
    特にミヒャエルに関しては意外とあっさりだったのが悔やまれる。あそこまで書ききってるのだから、読者としてはもう一捻りを求めてしまう。それは読み手側のエゴというものなのだろうか。
    多分、これは読む人によって賛否両論あるだろう。そういう作品だ。だが、二重三重に絡めた謎、そして、650頁近くに及ぶこの大作が、最後のたった数行で読者を驚かす手腕は見事だ。と思わずにはいられない。

    マルガレーテと一緒に並ぶあの足は一体誰のものなんでしょうねぇ……。うふv

  • 2019年12月21日に紹介されました!

  • 不思議な話。不気味で不穏な不協和音を聞いているような感じもするし、壮大な音楽を聴いてるような感じもする。狂った時代の犠牲になった人たちを想う。

  • 『「ドイツは豊かになった」ヴェッセルマンはつづけた。「だが、その代償に、内に向かう目をドイツ人は失った。人は、重く、下へと成長し、根を地底に広げ、大地の水を吸い、そして思考は鳥のようにはばたき光につつまれる。しかし、不安という糸が、鳥の脚を地上の風につなぐ。そのようにして、我々ドイツ人は思索のなかに生きてきた。」

    「思索の結果が、戦争でしたよ。」』

    ナチスドイツの思想とそれを体現したクラウスの狂気。妻となったマルガレーテの発狂。その狂気に育てられた子供たち、フランツ、エーリヒ、ミヒャエルそれぞれの悲劇。
    緊張感の途切れない気持ちの悪い恐ろしい作品。

    発狂したマルガレーテの手記がうまく使われて、本当は誰が誰なのか、、、。ミステリー要素も入って面白い作品!

  • のめり込んで読みました。じゃあどんな話なの、と問われても、説明ができません。ただ、敗戦間際のドイツの話で、としか伝えられません。
    皆川博子さんの書かれる青年は、痛々しく、我慢強く、美しくて、さびしい人です。たったひとりの身体にぎゅっと、とびきりの秘密を抱えた男の子です。「開かせていただき光栄です」のエドやナイジェルにも心を揺さぶられたことを、「死の泉」を読み終えて強く思い出しました。
    そういう、決意を、胸に誓いを湛えた青年が狂おしく好きな人に読んでもらいたい本です。

  • ナチスドイツというのはともかく小説の題材になるネタが豊富なのか、やたらと色んな人が話を作っていて、なんか良く分からんけどえらい耳年増になってる気がする。でもなんでナチスがあれだけ熱狂的に受け入れられたのか、ってのが、これだけ小説が書かれる、ってのにも繋がるんかな。ムッソリーニとかカストロじゃダメなんだろうしな。
    それはさておき悪い奴の話である。なんでこう悪い上に頭おかしいのにうまくやるんだろうね。こういう本を読めば皆さんきっと真面目に働くより頭おかしくなった方が良いや、ってきっと思うよね。いや、思わないかな。にしても去勢が男性の与える恐怖心はスゴイ。

  • この本自体、著者の内側があり、訳者の外側があり、
    その大きな外側で作者の枠組みがあり、
    全てが誰かの創作なのだから
    どんな仕掛けがあろうとも作者の用意した世界なのだけど
    最後の最後に、それもあのような場を使い、
    これまで読み進めて、没頭していた世界が
    一瞬にしてグニャリとゆがんでしまい、
    あらゆる人、モノが違った一面、解釈を見せ始め
    不確実で幻想的な世界に入ってしまう。
    何が、誰が、どの部分が物語上の真実で虚構なのか。
    確実なのは美へのあくなき追及。
    美のために差し出されるいけにえ、犠牲になるもの、
    純粋で醜くもある欲望。
    今まで見ていたはずの世界の真実とともに
    張り巡らされた技巧を解き明かすよう、
    最初から読み直さなければ、と思わされる。
    これだけ厚いのに、振り出しに戻らさせる力が容赦ない。

  • 第二次大戦下のドイツ

    マルガレーテ、 医師クラウス
    フランツ、エーリヒ、そしてミヒャエル

    難語チョコチョコ調べながら、皆川ワールドへ
    長かったけど厚みのある文章の読後感が心地いい。

  •  ◆若干ネタバレあり◆

    文庫本にして650ページ近い大作。

    ナチス台頭するドイツにおけるマルガレーテの手記の部分と、それを受けた十五年後のドイツ。
    手記においては、マルガレーテの微妙な心理が描き出される。
    自分の産んだ子を守るために、医師クラウスと虚構に近い(マルガレーテは完璧な拒絶を持ち切れない)夫婦になる。
    カストラートの美に魅入られたせいで、SSでありながら「ポラッケ(ポーランド人)」のフランツとエーリヒを養子に入れる、なかば狂気に近いクラウスの情熱。
    去勢や人体改造(レナとアリツェの双子)への抵抗を感じる正義感をときどき発揮しながらも、クラウスの強大な力には逆らえないマルガレーテ。
    やがて、子供のフランツに対し、5歳のときに好きになった8歳の(そしてのちにミヒャエルの父となる)ギュンターの面影を見る…。
    何かがどこかでねじまがってしまった虚構の「家族」が、第一部で描かれる。

    十五年後の二部からは視点の統一がない。
    壮年ギュンターの視点、クラウスと看護婦ブリギッテの息子である少年ゲルトの視点、ゲルトに同性愛を抱くヘルムートの視点、さらには「大佐」の視点に、狂したマルガレーテの視点、とごちゃごちゃに入り交ざる。

    十五年の間に何が行われたのか、誰が加害者で誰が被害者なのか、マルガレーテの見る幻の正体は…、というのがミステリの部分。

    どの人物も「核」を持っている。
    正義感と自己愛に揺れるマルガレーテはもちろん、「卑小にして偉大な」クラウスさえも、深い闇をもった人物として、造型されている。
    幼さゆえに虚構の家族に早くなじむエーリヒと、エーリヒを手なづけるための要素として養われているせいで、「父」に愛憎をもつフランツ。
    兄弟はクラウスとマルガレーテへの復讐を糧に、生き延びる。
    ゆがんだ教育を受けるミヒャエルを庇護したいギュンター。
    全員が全員、物語を動かす原動力になっている。

    そしてライトモチーフの巧妙さ、全体の構造の壮大さ、「あとがきにかえて」で覆される本自体。
    どれをとっても一級。

  • ドイツの戦時中〜戦後について。

  • 『開かせていただき』から皆川文学にはまって第5弾目(笑)
    幻想的で美しい世界観に引きずり込まれ自分的には結構早いペースで読んでしまったかな。
    クラウス医師の美への執着、マルガレーテの狂った世界、兄弟の復讐劇に感情を翻弄されつつ読み終え、最後のあとがきで物語を覆す言葉が…。
    始めに本を開いたときに野上晶訳とあったので嫌な予感はしていたけどね。
    著者の語る「実在してる人物」「複数の特性をかねあわせて一人の人物」という言葉から、あの時あの人物は死んでしまったのではないか、あの二人は同一人物なのではないかと思考が完全に迷走してしまった。
    何度読んでも分からないままになるかもしれないけど時間を少しあけて再読したいな。
    謎は解けないままでも充分魅力的ですが。

  • 2015/12/20/Sun.〜

    最初から読み直し。
    2016/04/20/Wed.〜10/25/Tue.

  • 11/16 読了。
    皆川博子にノーベル文学賞やってくれよ!!!

  • 第二次大戦下のドイツ。
    未婚で子供を生むためナチの施設に身をおくマルガレーテから話しは始まります。

    戦争、ドイツ、ナチ、と聞けば悲惨な状況しか思いつきませんがこの話しではそこまで鮮明にナチに対して書かれている訳ではないです。戦争を経験したマルガレーテのお話しとして読んでいると、途中から急にミステリー要素が出てきます。最後の最後までドキドキですが、やっぱり戦争の悲惨さも感じました。最後の『あとがきにかえて』もちゃんと読んで下さい!

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著者プロフィール

皆川博子(みながわ ひろこ)
1930年旧朝鮮京城生まれ。73年に「アルカディアの夏」で小説現代新人賞を受賞し、その後は、ミステリ、幻想小説、歴史小説、時代小説を主に創作を続ける。『壁・旅芝居殺人事件』で第38回日本推理作家協会賞(長編部門)を、『恋紅』で第95回直木賞を、『開かせていただき光栄です‐DILATED TO MEET YOU‐』で第12回本格ミステリ大賞に輝き、15年には文化功労者に選出されるなど、第一線で活躍し続けている。著作に『倒立する塔の殺人』『クロコダイル路地』『U』など多数。2019年8月7日、『彗星図書館』を刊行。

皆川博子の作品

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