グッドラック―戦闘妖精・雪風 (ハヤカワ文庫JA)

著者 :
  • 早川書房
4.09
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本棚登録 : 1787
レビュー : 178
  • Amazon.co.jp ・本 (638ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784150306830

作品紹介・あらすじ

突如、地球への侵攻を開始した未知の異星体ジャム。これに対峙すべく人類は実戦組織FAFをフェアリイ星に派遣、特殊戦第五飛行戦隊に所属する深井零もまた、戦術戦闘電子偵察機・雪風とともに熾烈な戦闘の日々を送っていた。だが、作戦行動中に被弾した雪風は、零を機外へと射出、自己のデータを最新鋭機へと転送する-もはや人間は必要ないと判断したかのように。人間と機械の相克を極限まで追求したシリーズ第2作。

感想・レビュー・書評

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  • 前作のラストシーンにおいて、愛機・雪風から射出されたパイロット・深井零中尉。生死の境を彷徨った彼が覚醒したのもまた、雪風の機上だった。撃墜された旧機体から自己のプログラムを最新鋭実験機に転送することによって不死鳥の如く蘇った自律型スーパー戦闘機・雪風は、零が前線に復帰してからもなお、零を利用するかのような振る舞いを見せつつ不可解な行動をとり続ける。雪風の”意図”を理解できるのは、一体不可分の存在と化した零ただ一人。そんな中、異星体〈ジャム〉が作り出した人間のコピー〈ジャム人間〉がFAF内に潜入しているとの情報がもたらされる。人間と外見上は区別がつかない〈ジャム人間〉が誰なのか、FAF内が疑心暗鬼に陥る中、〈ジャム〉が遂に全面攻撃を開始した。四面楚歌の状況下、零と雪風はどうやってこの危機を突破するのか!?

    若干陳腐なタイトルに騙されると後悔する、認識/言語/インターフェイスの概念を揺さぶる超硬派な作品。ストーリーの大半は、登場人物同士の議論だったり独白だったりと、戦闘機のドンパチを期待して読むと「何この地味な展開」と肩すかしを食うと思います。しかし、そんな地味かつ内省的な展開を根気強く読み進めると、後半であっと驚く展開が待ち受けています。零も雪風も、どれだけ進化したら気が済むのか。

    何とグロテスクで、何とアナーキーで、そして何とスタイリッシュな関係性であることか。

    ラストシーンは混乱の極みです。混乱の極みではあるのですが、その美しさ、その激しさは「絵になる」SFの極北に位置すると鴨は思います。

  • 戦闘妖精・雪風シリーズ第2弾。
    もはや異星体ジャムとの戦争は舞台背景に過ぎず、メインは機械知性体と人間との衝突、あるいは交流になってきています。もちろん、ジャムの侵略がきっかけになっているのですが。
    特に深井零と雪風の絆は、前作のような零からの一方的なものではなく、双方向の信頼関係が確立しているようで、相手がコンピュータだろうがこういう存在を得られたという点で、深井零は幸せな男だと思います。

    前作ラストで自己転生した雪風は、作った人間の思惑を超えて高度知性体になっています。もう雪風は人間の言う事を聞かなくなるのでは?という危惧さえ持たされましたが、文字通り傍若無人に戦っていた雪風が危機に陥った時、助けを求めたのは零でした。その零も、ずっと意識が混濁した状態だったのに、目覚めよ、目覚めよ、と特殊戦のコンピュータたちが言っても覚醒しなかったのに、雪風のコクピットで、雪風のSOSを聞いて、ようやく目覚めます。

    その後の戦いにおいて、雪風は人間では零しか信用しません。一見何をし始めるか分からない雪風の意図を理解できるのは零だけで、それをコントロールできるのも零だけです。
    ジャムの手から脱出するために零を人質にし、それを止めずに任せた零に「thanks」と伝えたり。上官である司令部のコンピュータと強硬な態度で交渉したり。自分の知らない任務を調べるために勝手に出撃したがり、零に強引に出撃許可を出させたり。文中にもありますが、雪風は本当に野生動物のようです。決して人に慣れない猛獣で、唯一零だけを信頼のおける(あるいは役に立つ)人間と認めている。

    ジャムが何なのか?について、確かに宇宙人というのは、人間が認識できる存在だとは限らないし、もしかしてとっくに地球を侵略されているのかもしれません。この作品は1992年から、シリーズ第1弾の『戦闘妖精・雪風』に至っては1979年から発表されてますが、今の時代でも全く古く感じさせない設定ばかりです。著者の知識と努力と先見には本当に敬意を表します。

    状況はどんどん複雑怪奇になり、最後は誰が敵かコンピュータさえ判断つけかねる事態になって、完結しないまま終わります。でも、零と雪風の関係については、完成されたということだと思います。少佐の元に戻るのが、腕時計だけではありませんように。

  • 雪風シリーズ2作目。
    前作の、「友人だと思っていた奴から置いてけぼりを喰らった衝撃」とは また少し異なる感じの読後感。

    零と雪風は、必要とあらば相手を切り捨てることが出来るし、お互いにそのことを理解していて、だからこそ固い信頼で結ばれている。その関係を“愛”と呼んでしまうところに痺れた。

    ようやく接触することになるJAMの本体との対話も興味深い。
    自分の認識で把握出来ない敵にどう向き合えばいいのか。

  • さらにはまった。雪風の〈I have control / I wish you luck... Lt.FUKAI〉にやられた~
    「人型アンドロイド」とか「中央コンピュータ」でなく、「戦闘機」に意志があるふうに感じるという設定がいいなあ。ジャムの『我は、我である』も最高!『おまえはだれだ』に対する究極の答えだし。
    深井さんの精神的成長も物語の軸で、なんのために生きているのか、に対する答えはたぶん一生かかっても普通はわからないんだけど、深井さんはだんだん自分の周りにも人がいるって分かって、関わらずにはいられないことを知るのだ。「他者とのコミュニケーション」がテーマなのかな。
    他者とは人間だけに非ず。異星体ジャムも戦闘機も含まれているところが只の小説と違う。

  • 第一作目で充分完結しているように思えたが、このような形でさらにスケールアップして続くとは思わなかった。
    機械と人間の複合生命体という概念、ジャム人間、哲学的存在としてのジャム。
    一作目は人間が機械から拒絶されることで、あまりにもそれが完璧に美しく終わっていた。が、今作は機械との共生を、主人公の零の成長を通して納得感のある形で描かれる。この物語はこれからどうなっていくのが、全く読めない。

  • 途中まで、機械の固有意識と人間の意志の近づかなさを読んでいたように思うのだが気づくと機会と強くつながってきた深井零によって分かり合おうとする存在になっていく。
    愛という言葉を持ち出すのは私は陳腐だと思ったが、本当にそうなのだろう。
    昨年発売された短編集「いま集合的無意識を、」や長編「ぼくらは都市を愛していた」で”機械に使われる人間”という像が出現したような気がするのだが、それよりも雪風では分かり合おうとする努力、敬意が強い気がする。
    というか、あおの2冊で提起した問題の一部をこの作品で答えている気がする。深井零という特殊な人格であるがかれはそれをクリアした。


    零の変化と、異星体ジャムの変化。軍医のフォス大尉や元情報軍の矢頭少尉が加わって、クーリィ准将の性格もわかるようになって物語として動いていく。

    外部の変化と零やそのほかの登場人物の心情がどちらも丁寧に書かれていると感じた。

    この雪風の第2巻で私は機械に対する危機感やそれとの衝突ではなくて次の段階に移ったことにひどく高揚した。
    この作品は私が生涯にわたって読み返したい本の中に入った。

  • ああもう5をつけるよ。

    人間的、機械的、と言ってしまうのは簡単だ。
    だがその土台をどう定義する?
    その基準をどう伝達する?
    人とは? 機械とは? “わたし”とは?
    ガトリングガン並の勢いで、普段の生活では棚上げされているあれこれを突きつけられる1冊。
    1作目より視点は深く、人物も世界も深く濃くなったSF。
    雪風の格好よさったらない。
    そして桂城少尉がドストライクすぎて転がった。

  • 戦闘妖精雪風の続編。
    単なる戦記モノでもなく、戦争を通じた人間ドラマでもなく、社会派でもなく。シンプルにこれはエンターテインメント。SFである。
    人口知能テーマで、高度に発達した電子頭脳と人間の関係がうんたらとかいうともはやテーマとしては陳腐ではないかと思われるが、それはこれでもかというほどの博覧強記なマニアックな描写が強烈なリアリティを持たせてじっくり読ませるし、無駄にキャラが出てきたり無駄に饒舌だったりしないし、本編に無関係なエピソードもなければ、意味のない恋愛や性描写もなく、ひたすら冷徹なまでにフェアリー世界を描いている。凄い。
    最後はいよいよこれからってところでメイヴ雪風が飛翔して終わるって、これは「さらば宇宙戦艦ヤマト」じゃないんだから!という読後感。続きを読めってことですな。

  • 戦闘妖精・雪風シリーズ第2弾
    生まれ変わった深井零と雪風の新たな物語
    ただ依存するだけであった雪風との関係、自身の戦いの意味を見つめることで、自身のあり方を再認識し周囲への関わり方を変えてゆく深井大尉。軍医のエディス・フォス大尉、過去の自身を喚起させる雪風の新フライトオフィサ桂城彰少尉との関わりを経ることで自身の変化と向き合い雪風との関係性も変化していく。メイヴという新たな体を得た雪風、フォス大尉にもたらされたツールも駆使して機械の戦闘知性体としてそのキャラクターを確立してゆく。愛する/人と機械の複合生命体というようにフォス大尉が評した深井大尉と雪風の関係性の描写も素晴らしい。
    ジャムとの接触、戦局も新たな局面を迎えFAFの面々も重要な選択を迫られることとなる。
    ジャムの発したことば「われはわれである」
    同じツール(ことば)を使うが故に、決して相互理解が叶わないのではと思わせるひとことであった。
    新たな戦場への零と雪風の飛翔で物語は幕を閉じる。

  •  戦闘妖精・雪風シリーズ2作目。

     三ヶ月間意識のない零を心配するブッカー少佐とか、部下を誰一人失いたくないブッカー少佐とか、ブッカー少佐は天使なところがおおい。

     零は雪風のことを愛している。自分の一部を失おうともそれを守ろうとするほどに。その愛こそがジャムの、人間の理解しがたいところであり、だからそれが戦略の要となればいいのに。

     コミュニケーションというものが根底のテーマとしてあるが、それそのものが何れ程に意味を持つかというのがよくわかる。意思疏通ができないことから起こる、ジャムと人間の擦れ違い、戦闘。

     桂城少尉がいちばん人間らしくおちゃめでキュートになってた。ビフテキ3ポンド!!!

     ロンバート大佐は娘とかにすごい甘そう。雪風の「わたしを信じろ」とか、零が雪風を疑わずに真意を理解するところとか、1作目とは全く違う意味でドキドキしたし、面白かった。

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著者プロフィール

1953年、新潟県新潟市生まれ。79年、短編「狐と踊れ」で作家デビュー。『敵は海賊』、『戦闘妖精・雪風』シリーズなどで数多くの星雲賞を受賞し、95年、『言壺』で第16回日本SF大賞を受賞した。『魂の駆動体』、『永久帰還装置』、『いま集合的無意識を、』、『ぼくらは都市を愛していた』など著書多数。SFファンの圧倒的な支持を受けている。

「2017年 『フォマルハウトの三つの燭台〈倭篇〉』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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