エリコ (上) (ハヤカワ文庫)

  • 早川書房 (2002年1月10日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (448ページ) / ISBN・EAN: 9784150306861

感想・レビュー・書評

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  • いやあ、いいね、この世界観。大友克洋氏の『アキラ』に通ずるものがある。
    谷氏のSF小説は初めて読んだが、実に躍動感があり、物語世界の構築がしっかりしている。山岳冒険小説よりもこちらの方が好みだ。
    映像化するなら押尾学氏、マンガ化するなら、士郎政宗氏か先に挙げた大友克洋氏あたりだろう。

    何よりも登場人物が非常に魅力的だ。
    男から性転換したエリコを筆頭に、類い稀なる怪力を誇るエリコの幼馴染みでルームメイトの女、胡蝶蘭(カチョーラス)。20世紀から生きているという噂のある情報屋、源爺。姑との軋轢であえて老婆に変る手術を受けた30歳の“老婆”、咲夜姫。長髪で中性的な容貌を持ちながらも、強引な捜査で危険の香りを漂わせる刑事、愛甲ヨハネ(これはいささか少女マンガ趣味ともいえるが)。エリコのクローンでありながら、残虐な貌とかつての弱かった男性時代の性格を併せ持った慧人ことワイレン。倒錯性交ショーの司会者でありながら、エリコを支援しつつ、寺尾医師との愛に身を投じるミズ・ヤンことシャオチン。風体の上がらぬ風貌で、ぼやきを呟きながらも警察たちを出し抜く探偵、棚橋。
    彼らに加え、動物の組織を埋め込む違法な手術を受けた改造人間(フリークス)が横行する。サイの角と怪力を移植された一角獣。犬の鼻と脳を移植された殺し屋、などなど。

    そして舞台は大阪、上海、東京から月面研究都市クラヴィウスと移っていく。

    谷氏の描く未来像は派手派手しくなく、淡々と描写するからすっと頭に入っていくように感じた。月面へ降り立つシーンからクラヴィウスの景観など、よくある作者独自の逞しい想像力で構築した未来テクノロジー理論を熱く語り、どうだ、すごいだろうといわんばかりに読者をその世界観に引き入れようといった肩肘張った印象がなく、そこにあるかの如く語る筆致には好感が持てた。
    これは数多存在する少し先の未来を描いた映像が横行しているおかげなのか、それとももはやここに書かれていることが絵空事でなく、そう遠くない未来であるように認識できているからかもしれないが。
    (下巻の感想に続く)

  • 舞台は大阪の近未来。主人公は美貌のコールガールだけれど、実は違法な性転換手術をした、元男性、北沢慧人、今の名はエリコである。
    SFとしてのテーマは、遺伝子改良なんだけれど、ともかく、アクションには素人で、本来そういう荒事はするはずのないエリコが、問答無用でチャイナマフィアと特務警察の間にはさまれ、逃走しなければならなくなる!
    この持っていき方が凄くスマートで、舞台が大阪だというのも新鮮。

  • 近未来、性転換した高級娼婦であるエリコが、怪しげな事件に巻き込まれていく。
    ややこしくて一口ではいえないが、兎に角次から次へと何かが起こる。波のように押し寄せるピンチを体を武器に乗り越えていくという凄い小説。

  • 主人公は女性に性転換した娼婦。23世紀の日本(大阪)等を舞台に、陰謀に巻き込まれつつ、己が存在に苦悩する。ハードコア・トランスポルノ・バイオSFかなぁ?

  • エグすぎ

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著者プロフィール

1951年兵庫県生まれ。青年海外協力隊などを経て作家デビュー。SF小説、冒険小説、山岳小説など広い分野で高い評価を得ている。96年「白き嶺の男」で第15回新田次郎文学賞を受賞。主な著作に「航空宇宙軍史」シリーズ、「覇者の戦塵」シリーズ、『白き嶺の男』などがある。

「2019年 『硫黄島航空戦線』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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