エリコ (下) (ハヤカワ文庫)

  • 早川書房 (2002年1月10日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (464ページ) / ISBN・EAN: 9784150306878

感想・レビュー・書評

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  • (上巻の感想からの続き)
    この物語において一番意表を突かれたのは主人公エリコ、その人だ。男から性転換した娼婦という設定ならば、通常は美人でありながら腕っぷしも立つ、そう田中芳樹氏のシリーズキャラクター、薬師寺涼子のようなイメージを抱いていたが、谷氏はあえて逆を行った。
    北沢慧人という男でありながら女性として生きる道を選んだエリコは、虐げられていたひ弱な過去と、どこか自分が普通とは違う違和感に対して正直に向き合った結果であり、女性となり、類い稀なる美貌と絶妙なプロポーションを持ちながらも、逆に元男ということで美女に対して引け目を感じるようになっているのだった。

    なるほど、そういえばそうなのかも知れない。男として劣っている事を認め、女性になる事を決意したエリコはいわば、逃避者なのだ。そして見た目も心も女でありながらも、やはり女ではないことに時折気付かされ、心を痛める。その痛めた心を癒す拠り所は男勝りの腕力を誇る女性、胡蝶蘭の豊満な胸の中に抱かれるその時なのだ。これこそエリコの不完全さを表している。女性でありながらも女性の母性を求める、このアンバランスさはどうだろうか。

    谷氏はあえてエリコを強いキャラクターとして描いていない。元男でありながらも華奢なその体はあらゆる敵から自分の身を守る術を知らない。胡蝶蘭、愛甲ヨハネ、シャオチン、棚橋らの助けがなければ全然苦難を乗越えられないのだ。

    しかし、物語の終盤、エリコは自分が完全に女性になった事に気づく事で強さを得る。それは正に「母は強し」ともいうべき、精神的強さだ。
    男が完全に男を捨て去った時に強くなる。本書はエリコにこういう設定を持ってきたことが非常に特徴的なのである。

    そして物語の後半に現れる巨敵、弘田という政治家。極端な選民主義者であり、他者を自分の野望を達成するための道具としてしか見ない男―家族までもだ!―。その男が唱えるスローガンに美しい日本人を目指すというのがあり、非常によく似た人がいることに気付き、苦笑した。
    1999年に書かれた本書において谷氏はこういう政治家が約10年後に出てくることを予想していたかのようだ。

    最後に、本書に出てくる「クラヴィウス事例」なる設定について。
    端的に述べれば、月面都市に移住した各国の子供たちの中で突出した才能を発揮し、リーダーシップと執るのが日本人だというのがこの事例の内容だが、これはなかなかに面白い。過去の歴史と現在の世界を振り返れば、世界に散らばり、成功しているのはユダヤ人と華僑と云われる中国人であるのだが、ここで敢えて谷氏は月面で力を発揮するのは日本人とした。
    私はこの設定を読んだ時に、ある話を思い出した。日本人というのは西から流れて最後に極東の地に辿り着く事が出来た民族だから強いのだという説があるそうだ。山岳登山家でもある谷氏がたびたび極限状態に陥ったときに垣間見た日本人の粘りとか強さなどもこの設定には反映されているのかもしれない。

  • クローンが入り乱れ、日本人の遺伝子改良にまつわる謀略が明らかになっていくなか、舞台は月へ。
    上巻ほどのバイオレンスとエロスはやや鳴りをひそめる。
    そのかわりというか、寺尾医師と小青の恋、寺尾医師の妻への愛情、愛甲ヨハネの思わぬ無法者化、エリコが実感しつつある愛甲への恋心などなど、下巻はロマンスの色合いが濃い。
    それはそれで、一種、上方の心中ものを見ているみたいで面白い。

  • 近未来が舞台のSFエロアクション。
    面白いんだかなんだか、わからなくなる。

  • 主人公は女性に性転換した娼婦。23世紀の日本(大阪)等を舞台に、陰謀に巻き込まれつつ、己が存在に苦悩する。ハードコア・トランスポルノ・バイオSFかなぁ?

  • エロすぎ Too much

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著者プロフィール

1951年兵庫県生まれ。青年海外協力隊などを経て作家デビュー。SF小説、冒険小説、山岳小説など広い分野で高い評価を得ている。96年「白き嶺の男」で第15回新田次郎文学賞を受賞。主な著作に「航空宇宙軍史」シリーズ、「覇者の戦塵」シリーズ、『白き嶺の男』などがある。

「2019年 『硫黄島航空戦線』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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