第六大陸 1 (ハヤカワ文庫 JA オ 6-1)

著者 :
  • 早川書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (349ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784150307271

作品紹介・あらすじ

西暦2025年。サハラ、南極、ヒマラヤ-極限環境下での建設事業で、類例のない実績を誇る御鳥羽総合建設は、新たな計画を受注した。依頼主は巨大レジャー企業会長・桃園寺閃之助、工期は10年、予算1500億、そして建設地は月。機動建設部の青峰は、桃園寺の孫娘・妙を伴い、月面の中国基地へ現場調査に赴く。だが彼が目にしたのは、想像を絶する苛酷な環境だった-民間企業による月面開発計画「第六大陸」全2巻着工。

感想・レビュー・書評

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  •  “国際社会の流れは、協調と融和に向かっている。世紀初頭に中東で巻き起こった、アメリカとイスラム諸国の戦争も、時の合衆国大統領が世論に押されて無様な退陣劇を演じたことで、沈静化した。以来、むやみと軍事力を行使する国は、世界中から白い目で見られるようになった。いかに南沙の原油がほしいといっても、そのために戦争を起こすのは割に合わない。
     これまでの遺恨はそれぞれ我慢して、なんとか平和協力の道を探ろうという合意がなされた。五ヵ国合弁の南沙開発公社が発足し、暗中模索の末に考え出されたのが、まず資源利用とは関係のない施設を南沙に建設し、戦争を抑止するシンボルにしようという案だった。”(p.26-27)

    冒頭で説明されるこの世界の超近未来が、現実と余りにかけ離れていて悲しくなった。2003年の時点では、こういう夢を描くことがまだ可能だったのに、世界は真逆の方向に進んでいる。

  • 日本の民間企業が大富豪の資金援助の下で月面基地を開発する「第六大陸」。ロマンがあるねぇ。
    スポンサーとなるのは大富豪の娘さん。基地をつくる目的がなかなか明かされないが、結婚式場とはニヤリ。巻末でさらなる目論見がほのめかされかれて、そして動き出すあの大国...
    第一巻は建設着工までが描かれていて、土木やら建設やら泥臭い現場仕事に光が当たっているのがなんだか嬉しい。

  • 近未来の月開発をテーマにした、小川氏の得意とする技術系SFとなっており、タイトルは、月を5大陸に続く(南極大陸に代わる)第6の大陸と位置づけたものだそうです。

    おそらく多大な事前研究を経て描かれた舞台設定なのでしょう。

    本当に実現するのではないかと思えるほどリアルなプロジェクトストーリーとなっています。

    ある施設を月面に建設するという計画を立てた少女を中心に、主人公を含め様々な職業に従事する者たちが、計画の実現に向けて奮起し、数々の困難に対処してゆく。
    予算は1500億円――果たして月世界に最初のその施設は建設されるのか?

    本書を通して思ったことは、ただ空想で書くのではなく、実際に足を方々へ運んで、インタビュー等を重ねて出来上がっているからこそ、現実味を帯びてくるということです。

    これは私たちのビジョンであってもそうです。

    ただ思い描くだけでなく、今できることを一歩ずつ取り組んでいくからこそ現実味を帯びて、結果的には遠くまで行けるのだと思います。

  • お仕事紹介。月での建築について、リアル志向で、リアル施工で描かれます。気になるのは2003年に書かれたこの本と現在の差。多分こんなに進んでないよね。

  • デカい仕事をしたい方に。

  • こんな面白い本を書く人がいたなんて知らなかった(実は既に「天冥の標Ⅰ」を購入済みだった-未読なり(^^ゞ
    分野としてはクラークの「楽園の泉」の系統。

    近未来2025年資源の枯渇から世界が平和主義に舵をとり、経済的には元気を取り戻した日本のゼネコン、御鳥羽総合建設と国産ロケットの夢にこだわって民間のロケット打ち上げ会社を営む天竜ギャラクシートランス社が中部地方にあるレジャーランドを核にアミューズメント産業に取り組むエデン・レジャーエンターテイメント社の依頼により、月面に結婚式場を建設する事業に取り組む話。

    と書くとなにやら奇想天外な話に聞こえるが、現在に技術の発展系で実際にそんなことが可能ではないかと思わせる話である。

    既に、月面に人類が降り立ち、地球の軌道上では宇宙ステーションでの長期滞在も果たし、月までロケットを飛ばそうという時代である。世界中が紛争をやめて一丸となれば月面基地の建設はおそらく今現在でも可能ではなかろうか。
    本書の中で著者はかなり綿密なリサーチで実現の可能性を語っている。もちろん今すぐ実現が可能というわけにはいかないので「お金や重さの数字の桁をいじってありますが」と本巻のあとがきで著者自体が暴露はしているのである。また、「トロフィーエンジン」という便利な発明が出てきてこちらも「楽園の泉」と同じパターン。

    技術的な考察とアイデアに加え、ストーリーが面白いのです。先ずは真のクライアントが桃園寺妙という物語が始まるときには13歳の少女。一大コンチェルンの一人娘で天才少女、それが故に友達になってくれる人がいない(と本人は思っている)さらに母の死をめぐっての父親との確執そんなゴールデンタイムのドラマみたいな動機が元になっているプロジェクト。総予算一千五百億円、期間十年で月面に作るのが結婚式場である。そんな話を2巻の長編に膨らませるのであるから著者の実力や如何であります。

  • 未来がバラ色すぎてちょっと居心地悪かったけど
    テンポもいいし、ツボおさえてて面白かった

  • 苦手なSF部はナナメ読み(^_^;)

    泰と妙のエピソードは泣きそうだった。

    小川一水、やっぱり好き。

  • 月に結婚式場を作るという、ちょっとバカバカしい話ではありますが、その過程は結構リアリティがあって、宇宙開発ものが好きな人には受けるかなあと思いました。個人的にはあまり面白いとは思いませんでした。

  • 西暦2025年。サハラ、南極、ヒマラヤ――極限環境下での建設事業で、類例のない実績を誇る御鳥羽総合建設は、新たな計画を受注した。依頼主は巨大レジャー企業会長・桃園寺閃之助、工期は10年、予算1500億、そして建設地は月。起動建設部の青峰は、桃園寺の孫娘・妙を伴い、月面の中国基地へ現場調査に赴く。だが彼が目にしたのは、想像を絶する過酷な環境だった――民間企業による月面開発計画「第六大陸」全2巻着工!
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    SFって面白いんだな、と思い始めてる。小川一水さんの作品はこれで二冊目。
    SFがサイエンス・ファンタジーなのか、スペース・ファンタジーなのか、スコシ・フシギなのかさえよく分からなくて敬遠していた。ムズカシイお話しなのだと。SF映画のイメージが、虫の形をした宇宙人との戦闘だったり、宇宙を股に掛けて繰り広げる戦争だったり、そのせいかも知れない。
    そういうのもあるだろうけど、それだけではないらしい。
    月に「私の基地」を建てたい少女と、それを支える祖父と青年。そして、様々な分野でそれを実現しようとする人たち。下巻で物語がどう着陸するのか、楽しみ。

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著者プロフィール

’75年岐阜県生まれ。’96年、河出智紀名義『まずは一報ポプラパレスより』でデビュー。’04年『第六大陸』で、’14年『コロロギ岳から木星トロヤへ』で星雲賞日本長編部門、’06年「漂った男」で、’11年「アリスマ王の愛した魔物」で星雲賞日本短編部門、’20年『天冥の標』で日本SF大賞を受賞。最新作は『ツインスター・サイクロン・ランナウェイ2』。

「2022年 『ifの世界線  改変歴史SFアンソロジー』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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