- Amazon.co.jp ・本 (287ページ)
- / ISBN・EAN: 9784150307363
作品紹介・あらすじ
「わたしが目を覚まさないように気をつけて」隣室に棲む土気色の肌の女は言った。指の付け根で目を擦りながら-この世界すべてを夢見ているという女の恐怖を描いた表題作、物理的に実行不可能な密室殺人を解明する驚天動地の推理劇「超限探偵Σ」、無数の算盤計算によって構築された仮想世界の陥穽「予め決定されている明日」ほか、冷徹な論理と呪われた奇想が時空間に仕掛ける邪悪な7つの罠。文庫オリジナル作品集。
感想・レビュー・書評
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仮想現実な短編集って聞いて読み始めたけど、ちゃんと読んでないと夢オチとの違いが分からず、行ったり来たりしてしまった。まあでも、話自体は面白かったかな。久しぶりに小説読んだ気がした。
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SFというととっつきにくいという人もいそうだが、「世にも奇妙な物語」が好きな人ならハマりそう。細かい理論は置いておいて、悪夢のような世界観と構成の妙を楽しむのがよい作品。個人的には「刻印」「予め決定されている明日」が好き。
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読み進めながら、あ、これ中学の時に読んだことある本だわと気づいた。当時より面白みが感じられなかった
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表題作のほか「超限探偵Σ」「脳喰い」「空からの風が止む時」「刻印」「未公開実験」「予め決定されている明日」の計7編を収録。「夢」や仮想現実をモチーフにしたSF短編集。どれも変化球が仕込んであって、読み手の想像の「斜め上」のオチがある。
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2015年、20冊目は小林泰三のSF(?)短編集。全七編。
現在は入手困難な1冊。実際は数編差し替えて、同じくハヤカワ文庫から『見晴らしのいい密室』として出てるらしいです。自分はBOOK・OFFの¥108コーナーで入手。
今回のお気に入りは「刻印」がベスト。SF的設定ではあるが、小難しい理論少な目で、普通にホラーの短編に納められてても通用すると思える作品。大オチは、らしさ全開。
次いで表題作「目を擦る女」。コレもホラー短編集に納められてても通用しそうな感じ。
「未公開実験」は、氏のコミカルな面が出てて好き。登場する四人の会話回しもイイ。理論的な部分は、正確には、半分も理解してないだろうけど……。そして、『家に棲むもの』収録の「肉」、『大きな森の小さな密室』収録の「正直者の逆説」「遺体の代弁者」へと繋がっていく。
「脳喰い」は小林泰三、お得意の時間軸を、前後させながら、物語を収束させていくパターンのSFホラー(?)。
「空からの風が止む時」はこの中だと、比較的オーソドックスな部類のSF。しかし、オトの父は結局……?この大オチはチョット予想出来なかった。
以下二編は少々、ネタバレ的だが、上位概念、ヴァーチャルオチ。
「予め決定されている明日」はデジタルの裏側を超アナログで描く設定+ヴァーチャルオチで特に目新しさはない。しかし、読後感は(肯定的に)良くない。
「超限探偵Σ」。コレは正直、ごめんなさい。ミステリーとして、コレはやっちゃいかんでしょう。
SFもあまり得意ではないジャンルだが、なかなか楽しめた。
★★★★☆の評は結構甘め。 -
ホラーバカに「あれ、SFっていいかも。。。」と思わせてくれました。ただちょっと二足の草鞋は否めないでしょうか。。。
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“「馬鹿な。君はわれわれが架空世界の住人だと言うつもりなのか?」
「架空ではなく仮想です」Σは冷静に訂正した後、宙に向かって叫んだ。「さあ、正体を現すがいい。われわれを監視しているのはわかっているんだ」
「おい。いったい何を言い出すんだ?」警部の顔が青くなった。
「今回の現象がエラーによるものだとは思えません。不合理なことが出鱈目に起きているのではなく、ある種のシナリオにそって密室殺人が行われたように見えます。つまり、誰かがこの仮想現実に干渉して演出しているはずです。そして、そのようなことをした人物がその事件に関与する者を観察するのは自然なことです」
Σの言葉は一見荒唐無稽のように思える。しかし、それが現状を説明し得る唯一の仮説であることも確かだ。論理は完璧で一分の隙もない。わたしはあらためてΣの推理力に感服した。”[P.71_超限探偵Σ]
「目を擦る女」
「超限探偵Σ」
「脳喰い」
「空からの風が止む時」
「刻印」
「未公開実験」
「予め決定されている明日」
「刻印」の最初のドアのやりとりでちょっと笑ってたら恋愛ものに発展して驚いた。オチもしっくりきてよかった。
あと、「未公開実験」の終わり方最高。
“そういえば、今まで部屋の鍵を掛けたことがなかった。一人暮らしだし、金目のものもないので、外出する時もいつも開けっ放しだ。普段はそれでも平気なのだが、事件の現場がすぐ近くらしいこともあって、少し心配になってきた。
僕は玄関とベランダの鍵を掛けた。部屋の鍵はこれだけ。簡単なものだ。いや。待て。トイレにも窓があったはずだ。小さくて人間なら入れないだろうが、エイリアンはどうだろうか?いちおう閉じておいたほうが無難だろう。僕はトイレのドアを開けた。
トイレの中に等身大の蚊がいた。
僕はすぐさまドアを閉じた。ゆっくりと深呼吸をする。”[P.170_刻印] -
ホラーな小林泰三が好きな私にとってはSFすぎていまいち。