探偵は吹雪の果てに (ハヤカワ文庫 JA)

著者 :
  • 早川書房
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本棚登録 : 690
感想 : 55
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  • Amazon.co.jp ・本 (454ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784150307493

感想・レビュー・書評

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  • 東直己のススキノ探偵シリーズは、いわゆる第一期、つまり主人公の「俺」が20代後半から30代だった時代の作品(具体的に言うと『探偵はひとりぼっち』まで)しか読んでなかったので、このいきなり十年以上の年月が経過していて「俺」が春子と結婚し、別れ、そしてなんと中学生にもなる息子までいるという舞台の変化にあまり気持ちの良くないとまどいを感じたのは確か。

    生活スタイルや行動様式はあまり変わっていないようでいて、しかしながら確実に時間の経過というものを認識せざるをえない、主人公の「俺」を含めおなじみの登場人物たちの「老い」を感じざるを得ないところに一抹の寂しさを感じてしまう。

    とくにあまり登場シーンもなかったが高田とか。うーん、彼がチンピラ相手に大立ち回りを演じるシーンが毎回好きだったんだけどねぇ。

    この『探偵は吹雪の果てに』はススキノではなく道内の田舎町が直接の舞台。作者の田舎町とそこに住む住民に対する呪詛とも思える嫌悪感がにじみ出ているような。

    でもまあ、排他的な田舎の町って、日本中どこでもこういうところ、あるよね。常によそ者でありつづける宿命の転勤族には辛いのねん。

  • ススキノ探偵シリーズ。
    漢ってヤツは、オンナに弱いんだよね。
    驚きの急展開好きにオススメ。

  • 「俺」も人並みに年をとり、45歳という世間的にはそれなりの年齢になっているのが本作である。
    しかし、45歳になってはいても「俺」は変わらない。息子を持つ親父になっても「俺」は変わらない。
    誰がなんと言っても譲れないものは譲れないのだ。
    「俺」だけに通用する「俺ルール」が、けっこう好きだ。
    男という生き物はなんと切ないのだろう。
    甘ったるく、それでいて意地っ張りで、大切なものへの思いを胸に生きている「俺」が特別な存在なのだろうか。
    男は夢に生き、女は現実に生きる。
    まさに今回の騒動は、そんな男と女のしがらみが引き起こしたものかもしれない。
    このシリーズはどれも好きだけれど、中でも「探偵は吹雪の果てに」は最高レベルではないかと思う。
    何よりも物語の構成がいい。
    スピード感あり、サスペンス要素あり、切なさもあり。
    「俺」の不器用なあたたかさが心に沁みる。
    ハードボイルドは少し苦手・・・そんな人にも受け入れられる作品ではないだろうか。

  • 舞台が馴染みの町ではないからか、いまひとつ冴えない〈俺〉だった。何がどうなっているのかよく分からないまま話が進んでいき、最後の最後に一気に真相が分かる。もう少し道中でいろいろ分かっても良かったかなとも思うけど(小説としての盛り上がりに欠けるような…)、振り回されっぱなしの〈俺〉も嫌いではなかった。

  • 「探偵はBARにいる」シリーズ。こんなんだっけ?ポツポツ出てくる闘いシーンがこれ今必要?って感じで、探偵らしい謎を探っていくこともほとんどない、ただ流されているだけ、友人に頼んでどうにかしてもらうばかり。そして最後の50ページぐらいで出てくる老人がものすごいキーマンで、一気に片が付く。しかもいろんな人が銃撃ちまくりで死にまくり。事件解決が雑すぎる、日本なんだからそんな銃撃ちまくったらただじゃすまない。
    やっぱり小説より映画が面白いという少ないタイプのシリーズ。

  • ちんぴらに袋叩きにされて、“俺”は入院した。そこで偶然、病院の付添婦をしている昔の恋人と再会。彼女からの依頼で雪の田舎町まで一通の手紙を届けることになった探偵だが、町に着くなり身辺に不審な男たちの影がちらつき始め、理由も解明できないまま町を追い出されてしまう。やくざの組長の桐原の助けを借り、再び町に舞い戻った探偵に最大の危機が!雪原を血にそめる死闘の果ての意外な結末とは?

  • 読み応え充分な内容。
    俺も歳取ったな…と前半は流して読んでいたら、怒涛の後半はドンチャン大騒ぎ。
    シリーズの伏線にもなっていて、おぉ!おぉ!とシリーズを読み返したくなりました。

  • 老齢の恋愛を描く。ススキノ探偵シリーズの中でも出色の出来。

  • 2015.12.17

  • こういうのはもう、聞き飽きた。こいつらは、オリジナリティというものに恵まれていない こういう怪我は、薄汚い、クズの金で治すべきだ 失楽園ミルトンのだぞ。渡辺淳一のじゃなくて。そこんとこ、間違えないでくれ。間違えないよ。あんたはクリスチャンなのか?親がな。だから、正義の陣営に入っちまった人間が、どれほどバカんなるか、それは知ってる 寄る年波には勝てない 卑下ひげ 今年で、45 になる もう60よ、私 俺の知識はいつも中途半端だ いわれ謂れ 女の腐ったみたいなヤツ 付添婦 深川市 清田区のホスピス 斗己誕 スピーカーはボーズ 奥寺御殿 心朗らかにシャワー・トイレを使った 坪内翁おきな この歳になって、自分のコミュニケーション能力が、目の前でめきめきと向上するのを感じて、俺はしみじみと老け込むには早い、と自分に言い聞かせた。まだまだ頑張ればいろんなことができる。 「人間てよぉ、なぁ、あんた、お客さん、スケベなもんがないと、生きてけないべさ。それは、田舎でも都会でも、同じだ。スケベなしじゃ、人間は生きてけないんだ」「スケベで汚いものば、スケベな汚いまんまで転がして置いたら、ダメだべさ。生きてること自体が、悲しくなるべさ」「俺はなぁ。…その、あそこでスケベな物を買うヤツのことを考えると、哀れで哀れで、侘しくて、情けなくて、やり切れない気持ちになるんだよ。あんな汚らしい、残飯やらゴミやら、すんごい臭いんだ、ひでぇニオイなんだ、そんなとこさ行って、スケベなもんを買うヤツのことを考えると、もう、哀れで侘しいさ」優等生たちは、居心地が悪そうだった。オチコボレたちは、わざと威嚇的な、押しつけるような態度で、我が物顔に振舞っている。情けなくて、心が薄ら寒くなるような光景だった。 兎唇としん=ミツクチ したっけ! ケンジ君を守るために、このまま斗己誕で骨を埋める気はない。豊平から来た、オカリナ奏者 ドンケルとヴァイセンを試してみた UA 青空 たかす鷹栖インター ウクライナの連中 スノー・モービル 金属バットの高校生 散弾銃 腐った鰊のような匂い 目は、両方とも、潰れているようだった。口を大きく開けているが、歯は見えなかった 。腕が、普通とは逆に曲がっていた。 士別でも、名寄でも、どこでもいい。 『レオン』や『ホームアローン』とは違う。現実は、映画じゃない、下手するとこっちが殺されるかもしれない。 「俺は勘違いはしていない。ただ純子が生きているから、それが嬉しいだけだ」 官依存根性が骨身にしみている

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著者プロフィール

一九五六年札幌生まれ。本郷幼稚園中退、本郷小学校卒、東白石中学校卒、札幌東高等学校卒、小樽商科大学中退、北海道大学文学部哲学科中退。
現場作業員、ポスター貼り、調査員、ガードマン、トラック助手、編集者、広告営業、コピーライター、受刑者など諸職を転々。
一九九二年『探偵はバーにいる』(早川書房)で小説家としてデビュー。同作は、一九九三年『怪の会』激賞新人賞受賞。
二〇〇一年『残光』(角川春樹事務所)で日本推理作家協会賞受賞。

「2010年 『北の作家 書下ろしアンソロジーvol.2 utage・宴』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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