復活の地 3 (ハヤカワ文庫 JA オ 6-5)

著者 :
  • 早川書房
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本棚登録 : 502
感想 : 35
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  • Amazon.co.jp ・本 (479ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784150307707

作品紹介・あらすじ

皇権排除を画策するサイテン首相は、スミルらを襲った大規模余震を機に国家権力を掌握、星外進出を見据えた軍備増強を推進していく。いっぽうセイオのもとには、100日後の第二次震災発生という衝撃の情報がもたらされる。復興院総裁という権力を失った彼が、"予知された災害"に対して講じた方策とは?そして、迫りくる国家崩壊の危機に、摂政スミルがくだす最後の決断とは?-未曽有の国家再生ドラマ、全3巻完結。

感想・レビュー・書評

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  • 3冊あわせて9時間ぐらいで読了。

    惑星レンカを統治するレンカ帝国。豊かな大地と穏やかな気候で暮らす帝都トレンカを謎の大地震が襲う。逃げ惑う民衆、容赦なく襲いかかる自然災害、そして暗躍する各国の思惑と政権を狙う内閣。レンカ帝国は再び平和な街を築く事ができるのか。

    というお話。1巻を震災の最中に読んでいて、あまりにも震災とリンクしすぎてて辛かったので1巻読んでから1年間続きを読めなかったのですが、先月から読み直しました。
     地震、津波、人災、政治など様々な箇所が昨年の震災と重なって、読んでいて辛い箇所も多々あります。そんな未曾有の大災害に立ち上がるセイオ・ランカベリーを始めとしたアクの強いキャラたちは、どいつもこいつもクセが強くて読み手を飽きさせません。帝都を救う強い気持ちはいつしか傲慢になってしまうセイオ、政治とは無縁の世界から一転して一国の政治を担うことになる皇女スミル、密かに国家転覆を狙うサイテン、傲慢な都令シンルージなど、キャラは様々。数百万人の命を奪った震災の中でレンカという一つの国を巡って、それぞれの思惑が交錯します。
     小川一水さんの作品は時砂の王、天涯の砦に続いて3つ目になります。SF作品は余り読まない私ですが、小川さんの作品はわくわくするので毎回楽しく読んでいます。小川先生の作品は中盤辺りから大体絶望が広がっていくのですが、この作品は絶望からスタートするため、道を切り開いて行くセイオたちの姿に胸が熱くなることもしばしばでした。
     2巻で彼らは大きな決断と絶対的なピンチに追いやられます。3巻では絶望的な状況に立ち向かう彼らの姿に、終盤は目が潤みっぱなしでした。

  • 朝、通勤電車で読んでいたら、つい2駅乗り過ごしていた。危ないところだった。
    面白かった!

  • 全三巻を通して、作りこまれた世界観や設定と、その中での人々の行動に考えさせられ、そして熱くなる作品でした!

    舞台となるのははるか未来、人類が宇宙間の国家で暮らす星間国家の時代。未曽有の震災に襲われた惑星レンカを描きます。

    読んでいて、相当な作りこみが感じられます。大震災により混乱する民衆や行政の姿が、個人それぞれの視点、そしてよりマクロな視点からも詳細に描かれます。

    人々それぞれの行動、起こる事件が一つ一つリアルで、SFという設定を忘れさせるほど。

    震災直後の描写が落ち着いたと思ったら、そこから新たな内閣の誕生、軍部の暗躍、権力闘争やクーデターといった国内の争い、一方でレンカをめぐって海外勢力も、それぞれの思惑をもって動き始める。そして民衆も政治に対し不審や不満を抱き始める。

    話は震災直後の人々の助け合い、という崇高で甘いものを描きません。徹底して泥臭く、そしてきな臭い人間たちの争いを描きます。

    そして2巻結末にはレンカに訪れる新たな危機の存在が明らかになり……

    作品を構成する要素がとにかく多彩です。震災をめぐる人間ドラマかと思ったら、そこから政治、経済、外交、国防、さらには民族や障害者をめぐるエピソードが次々と現れ、
    一方でレンカの混乱に乗じようとする者、自分の使命を果たそうとする者、それぞれの行動がよりストーリーを熱くする。

    単に国の復興を描いた熱血な感動ストーリーでなかったのが良かった。震災という国家存亡の危機からの混乱、そして良いもの、悪いもの、すべてを描き切ったからこその、真の国家の復興が描かれた作品だったと思います。

  • そんなに上手くいくかな?と思う部分もあるけど、大災害をめぐって描かれる人々の姿がリアル。
    国民はもちろん、役人、政治家、軍部、外国勢、そして王……純粋に国のために復興をめざす者もあれば、私欲のために権謀術数をめぐらす者もあり…
    権力者や役人だけでなく、民衆も含めたいろんな人の視点・立場から災害に立ち向かう姿が描かれていて、読み応え抜群。

  • 波乱はなく予想し期待した通りの結末、まさにお手本のような大団円を迎え三部作が終幕。おもしろいのだけれど、ご都合主義的な進め方が要所要所で気になるシリーズでした。

  • SFではあるが、権力闘争の様子がリアルに描かれている。

  • 災害の描写がすごくて人死にまくっておまけに人種差別の問題まで…途中しんどかったけど、キャラの立たせ方とか、惑星レベルの規模の大きい話と人間一人一人の泥臭さにフォーカスした小さい話との絶妙なバランスの取り方が素晴らしかった。話の終わりに近づくにつれてどんどん引き込まれて行く感じがたまらなかった。

    正直言ってスミルとセイオがまさかくっつくとは思ってなかったな。ただ、過度な描写もなく本編を邪魔しない絶妙なラインでストーリーが作り上げられていたので安心した。
    ソレンスとサユカはずっとやきもきしていたけれど、災害が落ち着いた最後の最後で解消されたのタイミングばっちりだった。このお話では彼らはあくまでもスミルとセイオの引き立て役だった。立たせ方が上手だ、好きになってしまった。スピンオフ希望。
    サルカンドの恋が叶わなかったのは逆にしっくりきた。叶わなかったけど鼻歌歌ってご機嫌なあたりサルカンドらしい。ごめんね。
    特に好きなキャラはヘリトとグインデル〜こういうモブっぽいキャラこそストーリーには欠かせない。

    小川一水はキャラ作りの天才かも。間違いなくみんな生きてたし、まだまだ彼らの活躍がみたい。読み終わるのが寂しくて。

  • 100日後に迫った第二次震災の被害を最小限に止めようとするセイオ・ランカベリー 
    復興院総裁の座を追われた彼が取った方策とは「あらゆる立場の人間に、結束して帝都を守ってもらう」というものだった。 

    現政権は、皇権排除を画策し、星外進出を見据えた軍備増強を進め、星外列強は、ふたたび起こる震災を機に、惑星レンカへの影響力を強めようとしていく。 
    様々な思惑が錯綜し、ついに運命の日を迎える。 

    みんなが組織・しがらみを超越し、ひとつになる流れはやはり感動します。 

    おくづけの参考文献を見ると関東大震災、阪神淡路大震災などをベースに書かれたことがわかります。 
    あの時ああしておけば・・・という問いかけの答えがここに書かれている気がします。 
    ただ、そういう反省やフィードバックがその後に発生した東日本大震災に活かされたのかどうか。 
    耐震化や初動とかは、かなり改善されていたのかな? 

    国家再生ドラマとしては、読ませると思います。 そこはさすが小川一水。 

  • 5:すごく面白かったです。一気読みでした。ストーリーや人物の心情描写よりも、震災のメカニズムや規模など数値的なことに描写の重点が置かれている(気がする)ので、よく練られたプロット(とか台本とかレポート)を読んでいるような気になるのが唯一、残念な点でしょうか。
    他の星の利益や思惑が絡んできたりなど、(現代社会にも通じる)社会的な問題も取り上げられた割には、何となく予定調和的に終わってしまいましたし。ラブ面もそんな具合で……。ああいう関係は大好きなんですが、もう少し詳細な描写が欲しかったな、と思うのです。
    いえ、何だかんだとイチャモンをつけてしまいましたが、人々が団結して街を守ろうとする姿勢やキャラクターの成長、セイオの小気味いい物言いなどなど、ノンストップで読んでしまったほど大好きな作品です。マイナス評価も含めて大好き=かなり好き。
    3巻はカタルシス〜! 地の文が平気な方にはおすすめです!

  • ご都合主義ですが、爽快です。

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著者プロフィール

’75年岐阜県生まれ。’96年、河出智紀名義『まずは一報ポプラパレスより』でデビュー。’04年『第六大陸』で、’14年『コロロギ岳から木星トロヤへ』で星雲賞日本長編部門、’06年「漂った男」で、’11年「アリスマ王の愛した魔物」で星雲賞日本短編部門、’20年『天冥の標』で日本SF大賞を受賞。最新作は『ツインスター・サイクロン・ランナウェイ2』。

「2022年 『ifの世界線  改変歴史SFアンソロジー』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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