サマー/タイム/トラベラー 2 (ハヤカワ文庫JA)

  • 早川書房 (2005年7月23日発売)
3.52
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Amazon.co.jp ・本 (336ページ) / ISBN・EAN: 9784150308032

感想・レビュー・書評

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  • 田舎への閉塞感、未来への屈折した思いを掛け合わせた、「短時間だけ未来に跳ぶ能力」を発現させた少女を取り巻く五人の若者のジュブナイル時間SF。いやー青臭くて儚くていいですね!大まかなストーリラインはかなり好きです。膨大なSF作品を引用したタイムトラベル議論や、あらゆる要素が複雑に絡みながら一本の軸にまとまっていく展開は圧巻で、当時のSF評が高かったのも納得です。

    ただどうしても合わなかったのが、主人公たちによる頭の良さをひけらかすかのような会話劇(これは最終的に否定してくれたからまだいいですが)と、一見議論のように見えるけど議論になっていない大量引用による知識マウント合戦。もしかするとこういうのが当時の流行りだったのかもしれませんが、個人的には合わなくて結構キツかったですね…。ストーリーラインは本当に好みだったんですが。

  • #日本SF読者クラブ 悠有は「時を駆け抜ける少女」になった。1巻からのレビュー続きです。高校生5人組のプロジェクトは、騒動というか事件になり、悠有は時を駆け抜けた。青春も駆け抜けるもの。やはり青春SF小説だ。

     1巻のレビューで本書のタイトルを「夏/あの時/往く人」と解釈したが、まあいい線いっていたと思う。「往く人」というよりは、そのまんま「旅人」だったけど。あと、喫茶店「夏への扉」がキーとなっていた。「難しい言葉が出てくる」とか「読むのに疲れる」とかいうレビューもあるようだが、そこは悠有のように駆け抜けて(?)読めばよい。

     エピローグで、未来の出来事として大地震と原発事故が起きたとの記述があった。本書は2005年に出版されている。時代設定も同時代だ。すでに阪神淡路大震災もチェルノブイリ原発事故も起こっていた。でも誰か未来を見てきたヤツがいるに違いない。そう思うと楽しいじゃないか。

  • タイムトラベルについて、もう少し掘り下げてくれるかと期待していたが、あまり詳細を解明せずに終わったので残念でした。何だか消化不良な気がします。。面白そうな材料を残したまま、淡々と進んできたので、回収できるのかと心配してました。やっぱり回収は出来なかったけど、後半で一気に展開があり面白くなったのでそれなりに満足してます。

  • あの夏、
    放火事件が町を揺るがし、
    隣市との合併問題が議会を揺るがし、
    兄は精神病院の病室で頭の中だけ並行世界に住み続け、
    友人は住基ネットにハッキングをしかけて、
    BGMはシカゴのSaturdayInTheParkで、
    そして僕らはただいつもの「夏の扉」で本を読んでいた、
    あの夏。

    マラソン大会のただ中3秒間だけ未来へ時間旅行をした
    幼馴染を巡って、僕らがSFを読み漁り実験を繰り返して
    「時空間跳躍少女開発プロジェクト」に夢中になったあの夏。


    ジャンル:「頭のいい高校生が額つき合わせてうだうだ」系衒学小説。

    小難しい理屈と、大量のSF本を元ネタに一説ぶちまけるのがメインであるかのようなこの本の元ネタについていくのはちょっとムリだけど、やってることのSFくささに対して
    のんびりお話してるだけの登場人物たちを見てるのは楽しい。
    こういうところは米澤穂信みたいだなー。

    衒学趣味も好きですよ?
    ところで衒学的であるというときに、「衒学的」という言葉を使ってしまうと既に衒学的であるというのは面白いと思いませんか?

  • 再読。クセが強くて鼻につく語り口は、身体に悪いと分かっているのに時々無性に食べたくなるジャンクフードのような変わった魅力がある。全編に溢れる夏全開な感じは良い。涼の話にはついていけなかった。主人公がひた隠しにしてきた本心が明かされたときの心臓を掴まれたような感覚と、後からそれを思い出すときの苦々しさは青春小説っぽい。明言されない要素が残っており消化不良(悠有のおばさんは結局何者なのか?)。エピローグはアイディア盛り沢山で、ここだけで小説が何本か書けそうなほど。

  • SFと青春ものの親和性は高い。そのことを改めて思い知らされました。

    3秒だけ未来に跳ぶ幼なじみ。時空間跳躍少女開発プロジェクト。本に囲まれた自分たちの居場所。放火事件。最後の夏休み。
    頭のいい高校生たちがタイムトラベルについて、ああだこうだと理屈に理屈を重ねる。そんな様子を眺めている幼なじみの姿。意味のないものに熱中し、完成しないものに取り組む。
    何もかもが青春という名の箱に収められているよう。それはこの物語が主人公の回顧録だからかも知れません。
    現在の話として語られながら、不意に過去を振り返る記述を織り交ぜることにより、現在が過去になりそこにノスタルジィが生まれる。

    SFは未来を語りながら過去を語っているのかも知れない。だから青春と隣り合わせになるのだろうか。

    はじめから別れは示されています。別れがある前提で物語は進みます。
    しかしその別れは未来へと繋がる別れ。未来なんてろくなもんじゃない。そのはずだった。でもその未来は幼なじみの彼女に繋がっている。ならば少しでも綺麗にしておこう。
    その思いが、過去と今と未来を繋ぐ物語の幕を閉じるのです。

  • 青春時代のあの切なさは「置いて行かれ感」だったんだ!

  • せつない.なんだか胸がいっぱいだ.
    別にハッピーエンドと言っても問題ないないようなはずなのに.
    たまらなくせつない.
    たぶん.幼馴染とかがどこかにいってしまう小説は.自分にとって一番しんどいシチュエーションなんだろう.
    しんどい.
    久々に正統派の青春タイムトラベルをよんだきがする.
    しあわせにせつない.・

  • 予想以上の時間の加速具合に驚きました。まさしく時間を駆け抜ける勢い。でも前巻とはタイプが違うけど、同じ雰囲気がたしかに残っている気がします。喪失感と葛藤と前進が僕が感じた主な物語の構成要素でした。地図の使い方も納得の出来。それと作者の短編は何編か読んでいたんですが、リンクが好きなことと朧気に作品の傾向がつかめた気がします。この作品をかなり気に入ったので、他の作品も読んでみます。

  • 感想は1巻に。

  • 伝えようとしているところは悪くないとは思うが、好みではなかった。物語として描ききれていないように感じるというか、終盤の強盗計画にしろ、主人公の感情の動きにしろ、いずれも唐突感を覚えてしまう。バラ撒いた街の描写、社会の描写、各年代における街の地図、各種SF(TT)作品への憧憬、そういったものをもう少しまとめられるとよかったかなと。どうにもバラけてしまった印象を覚える。

  • この人の作品の面白さはカタストロフにある。最後のどんでん返しという奴だが、今回はそれを最後の前に置いているので最後のあれがストンと落ちる。速いストレートを見せつけられた後のフォークボールを空振りするかのごとく。だからこそ、あの落ちがある意味小気味いいのだ。なお、この作品は2005年の本である。ここは強調しておこう。つまり、良くも悪くも預言書の類になっているのだ。SFにとっての悪夢とあとがきに書いてあるにも関わらず。

  • 2016.8 21

  • 細部細部はおもしろい。キャラが立っていて、SFというより、ミステリーでもあり、雰囲気や舞台も良かった。
    ただ、全体的にちぐはぐ感が強く、いろいろ詰め込もうとした結果、崩壊している。

  • 最初は読みにくいなと思ったけど、いつの間にか没入してた。
    最後の地図オチというのはよくわからん。また読みたい。

  • 手の届く最良のものをつかまえて、そいつと共に歳をとれ。クライマックスへの盛り上がりが勢いよく、随所に盛り込まれるSF論も嫌みがなかったです。9年前の小説ですが、なんか最後の方で色んな予見が当たってしまっていて苦笑い。それにしても、時をかける少女は、いつだって未来へ一人でかけていくもんなんですね。ハインラインの「夏への扉」みたいな、ご都合主義なラストじゃないのも良かったです。女の子が強く未来へ向かっていく姿は、清々しいです。

  • これは好みが分かれる作品ですねー。
    私はどうも付いていけなかった…。
    置いてきぼりにされた感じ。

    状線だと思いきや違ってみたり、のんびりな展開だなぁと思っていたらいきなりフルスピードになったりで
    どうも世界観に浸れなく残念です。。

    万人うけはしなそうだけど、ピタリとハマれば面白い作品だと思います!

  • SF青春小説にミステリーの要素も加わった下巻。各節に差し込まれる地図について、(なんで昔の地図なんか付いているんだろう...)としか読み終わっても気づかず、レビューみながら何やら地図オチとやらがあるみたいなんですね...再読しないとダメですね...

  • ラストは嫌いではない。
    でも、その先を考えると・・・切ない。

  • ある日突然タイムトラベル能力を身に着けた女子高校生とその仲間達の一夏の交流を描いたSF青春小説。

    主人公達のキャラクター設定が皆そろって劇画的で、細かな設定等も含めてリアリティは全く感じられなかったが、地方に住む現代の高校生の閉塞感は、なかなかうまく描かれていた。

    印象的な猫が登場する点や、主人公達の溜まり場となる喫茶店の名称など、「夏への扉」を始めとした過去のタイムトラベル小説へのオマージュにも溢れた作品。

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著者プロフィール

【新城カズマ・作】  生年不詳。作家、架空言語設計家。1991年『蓬莱[ほうらい]学園の初恋!』(富士見書房)でデビュー。『サマー/タイム/トラベラー』(全2巻、早川書房)で第37回星雲賞受賞。現在、大河歴史ロマン〈島津戦記[しまづせんき]/玩物双紙[がんぶつぞうし]〉を鋭意刊行準備中。

「2013年 『ドラゴン株式会社』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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