ウロボロスの波動 (ハヤカワ文庫 JA)

著者 :
  • 早川書房
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本棚登録 : 114
感想 : 11
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  • Amazon.co.jp ・本 (436ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784150308155

作品紹介・あらすじ

西暦2100年、太陽系外縁でブラックホールが発見された。その軌道を改変、周囲に人工降着円盤を建設し、全太陽系を網羅するエネルギー転送システムを確立する-この1世紀におよぶ巨大プロジェクトのためAADDが創設されたが、その社会構造と価値観の相違は地球との間に深刻な対立を生もうとしていた…。火星、エウロパ、チタニア-変貌する太陽系社会を背景に、星ぼしと人間たちのドラマを活写する連作短篇集。

感想・レビュー・書評

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  • SFマガジン1999年5月号:エウロパの龍、10月号:小惑星ラプシヌプルクルの謎、2000年2・3月号:ウロボロスの波動、8月号:ヒドラ氷穴、2001年2月号:キャリバンの翼、の5篇に書下ろしのエインガナの声を加えて、2002年7月ハヤカワSFシリーズJコレクションから刊行。連作短編集。AADD(人工降着円盤開発事業団)シリーズ1作目。2005年9月 ハヤカワJA文庫化。AADDと地球側の価値観の違いが面白い。緻密な世界構築に堪能しました。ファーストコンタクトな部分には、わくわくします。次作に期待。

  • 古本屋で購入しました。面白かったです。

    最初小型ブラックホールとか人口降着円盤とかなんじゃらほい?と思っていたのですが(まあ読み終わっても正直なんじゃらほい、ですが…)段々と本筋に引き込まれてしまいました。
    当初、短編集とは知らず長編だと思っていたので最初の話が終わったときあれ?と思ったのですが全部同じ世界観で描かれた世界なので長編ともいえなくはないですね。
    最後まで読むとああ〜としみじみしますね。面白かったです。
    そして小川一水氏の後書きも面白かったです。

  • 一読しただけでは置いて行かれそうな舞台設定。設定に重きを置いて良く解らないままドラマが進行して行ってしまうのかと思いきや、最終的には引きずり込まれました…登場人物の半分以上が男前な女性。惚れてまうわ~
    「ウロボロス~」に出て来た黒川さんがお気に入りでしたが、「エウロパ~」でジョブチェンジして出て来たのが嬉しかったな。総じてAADDという組織を描いた人間ドラマでもあります。続編読もう~
    小川一水氏の解説は多分、ハードSFに馴染が無いと激しく同意出来るような(笑)

  • 一読しただけでは舞台設定のイメージが掴めずに、苦戦しましたけれど、ネット等でブラックホールやら何やらのコトを知ると、途端に面白味が増す作品になりました。

    環境やツールが個人の有り様を変え、やがては社会構造さえも従来とは異なる物になり、それが私達の存在する社会との差異を生み出していくという構図は元々好きな設定ですし、太陽系の開発というあまり広がり過ぎていない舞台も地に足のついた物語として読み応えがありました。

    この作品の後にも長編が二作あるようで、ファースト・コンタクトがテーマだそうです。宇宙に進出した人々と地球に残る人々でさえ既に意識や社会の構造が相成れないこの作品世界、異星の知性と果たして対話は可能なのかどうか・・・面白そうです。

  •  期待の林譲治作品連作6編。表紙がこどもっぽいのでちょっと不安だったんだが、楽しみにしていた作者でもあり、順番に読み進めることにした。

     しかし、表題作「ウロボロスの波動」を読み終えた段階で次に進む気がなくなった。要するに「くどい」。早し作品全体に言えるのだが、くどい。

     次の「小惑星ラプシヌプルクルの謎」「ヒドラ氷穴」「エウロパの竜」「エインガナの声」「キャリバンの翼」については、時期を見て再読したい。AADDシリーズに期待しているんだがなぁ。

     林という作家を発見した異星人とのファーストコンタクトものを先に読むことにしよう。そっちはとても興味があるから。

  • 面白かった。好みにぴったり合っていて、ついつい気になって他のことをほったらかして最後まで読んでしまった。

  • 数百年後、人類は小型のブラックホールを天王星の衛星軌道に捕らえ、人工降着円盤としてエネルギーを取り出すことに成功する。物語はそのブラックホールの開発のために発足した組織「AADD」に所属する人々を中心に織り成される。地球というくびきにとらわれることのなくなった人々は、明らかにその思考方法、人生観を変貌させていく。

     短編連作。「エウロパの龍」がお気に入り。あとは「ヒドラ氷穴」かな。表題作は微妙だった。最後の「キャラバンの翼」はどうだろう、展開や志向する方向は好きなんだけどしっくりこない。巻末、解説で小川一水が、しっかりと組織を描けていると評していたけれど、逆説的には組織とそれに所属する人々の属性は構想できているけれど、人は描けていないと思った。それほど作中のキャラクターが埋没している。もっとも印象的な人間としてラミアを挙げることはできるけど、彼女はあくまで「地球」の人間であって、評価に値しない。黒川なんかは面白いと思ったけれど(だからこそ彼が主役の「エウロパの龍」が気に入った)掘り下げが足りない気がする。というか日本人が多すぎなのがちょっと納得いかなかった。なんかせこい! と思ってしまうのは私の心がせせこましいからでしょうか。

     ただ発想はとても面白いと思った。なんといっても人工降着円盤の発想が秀逸。人類のエネルギー問題の解決方法としての説得力がしっかりとあった。軌道上の巨大建造物と惑星、衛星がすれちがうタイミングとかとてもダイナミック! 対消滅のエネルギー抽出方法がおざなりだったのはまあ目をつむってもいいくらい。しかしこれは作者が後書きで書いてもいたけれど、確かにプロローグに過ぎない。ファーストコンタクトものなんだな。出版当時、記憶が確かなら野尻抱介「太陽の簒奪者」が同時期に上梓されていたけれど、ルネッサンスの時期なのかね。

  • 「エウロパの龍」がとても面白かった。
    地球外知的生命とのファーストコンタクトかもしれないところ、物語上はそこは問題にはならず、惑星開発上の問題(先住知的生命体を保護するために開発を取りやめるかどうか)との関係だけが焦点となり、極めて淡々と対処されていく。
    こんなにも冷めたファーストコンタクトものは初めて読んだ。

  • -

  • 2007.08.15

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著者プロフィール

林 譲治(はやし・じょうじ)
1962年、北海道生まれ。ナイキミサイル基地訴訟で揺れ、千歳基地が隣接するという環境で育ったため、
幼い頃より軍事や防衛問題に関心を抱く。戦略シミュレーションの原案などで活躍後、作家デビュー。
確かな歴史観に裏打ちされた作品で人気を集める。
著書は『戦艦大和航空隊』『異邦戦艦、鋼鉄の凱歌』『新生八八機動部隊』(以上小社刊)、
『帝国電撃航空隊』『超武装戦闘機隊』(電波社)、『星系出雲の兵站』(早川書房)など多数。

「2020年 『技術要塞戦艦大和 (3) 珊瑚海海戦!』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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