レフト・アローン (ハヤカワ文庫 JA フ 2-3)

著者 :
  • 早川書房
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本棚登録 : 159
感想 : 16
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  • Amazon.co.jp ・本 (347ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784150308384

感想・レビュー・書評

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  • レフト・アローン / 初出 S-Fマガジン 2000年5月号 (宇宙塵 193号 (1995.7) 改稿)
    猫の天使 / 初出 『2001』 早川書房 (2000.12)
    星に願いを ピノキオ二〇七六 / 初出 SF Japan 2001年春季号
    コスモノーティス / 初出 S-Fマガジン 2002年2月号 (「コスモノートリス」 改題)
    星窪 / 書き下ろし
    解説 「No Network, No Life...」 (川口晃太朗)

    カバーデザイン・フォトコンプレックス 瀬戸羽方 +WONDER WORKZ。
    装幀 岩郷重力 +Y.S
    印刷 精分堂印刷
    製本 明光社

  • 新しい作家さん探訪シリーズ(勝手に命名)。

     なかなか地力ある感じで好印象だ。

     パワードスーツの戦士を描く「レフト・アローン」、猫の視覚を借りてなにかを見る「猫の天使」、本作品集のうちベストだと思う、人工知能がウェットウェアと証する人間に入り込むという斬新な物語「星に願いを ピノキオ二〇七六」、イマイチの「コスモノーティス」、手紙文体で読みにくいからパスした「星窪」。

     良かったので、ほかの作品も探索しようと思う。なんかSFだけではなく、作品は幅広そうだから楽しみだ。

  • う~ん。ちょっと気になる、と言うか読んでみようかなあ、と思う長編を見つけたのですが読んだことの無い作家さんだったので短編集をまず買ってみました。
    で。今悩んでおります。

    表題作になっているレフト・アローン。…実はあまり好みでない… あまりにも暴力的だし、設定に納得できないと言うか、話の展開について行けない、と言うか。まあ火星での各国の戦闘は納得するとして。国家の損益を分ける重大なワクチンを運ぶのが戦闘員1人と非戦闘員1人の計2名なのが納得できない。まあ隠密行動として大人数で動けなかったとしても、そのA級クラスの戦闘員に精神が壊れかけてる非戦闘員(しかも女性)をくっつける設定に納得できない。ん~。自分がゲームとかしないのでどうしても仮想現実とか、現実と非現実を取り違えている若者の描写とかに点が辛くなってしまうのは認めます。が。ちょっとダメ、でした。私は。

    ところが2作目の猫の天使。コレ、良いですね~。こういう日常の延長線上にあるような近未来設定のSFは好きなんですよね~。コスモノーティスはなんとなく、昔大原まり子さんの書かれたSFとかを彷彿させるような、筒井康隆氏の作品を思い起こされるような。人間の進化の果ては一体どこに?のような。微妙にノスタルジィを感じる設定でした。
    そして星窪。コレは好き、だな。自然に対する評価とかはそうかなあ、と思う点が多々ありますが。(花は何故美しく咲くのか、と言う件がありました。花の形や色は他の動物や虫をひきつけるためだったり、自己の遺伝子を存続させるために進化し、競争している訳ですよ。それを勝手に人がみてこの花は美しい、とかこの動物は美しくない、とか言ってるのは人の勝手だと自分は思うのですが)

    う~ん。どうしよう。今度こまめに古本屋をチェックしてみようかなあ…

  • ワルシャワ、ポーランドなどを舞台とした作品です。

  • タイトルに惹かれて買ったけど、表題作はちょっと苦手。心に残ったのは次の2篇。
    『猫の天使』 「夏への扉」、「タフの箱舟」に次ぐ猫活躍SFと勝手に認定。
    『星窪』 登場人物の間でやりとりされる手紙の書き言葉が美しくて、ああ、日本人でよかった。

  • ドSF。科学がぎっしりつまっております。
    細部まで理解するのは難しいけれど雰囲気だけでも十分な気も。
    「猫の天使」と「星窪」が親しみやすい。

  • 『クリスタルサイレンス』『ハイドゥナン』を読んでから

  •  不思議なのは「クラゲ」が現れるたびに、多かれ少なかれ、それが漂っていく方向へ画面が動くことだった。つまり、あたかもガブリエルが「クラゲ」を眼で追っているような映像になっている。そして、たいていの場合、「クラゲ」は教会の壁に当たると、その壁沿いにしばらく移動しながら、だんだんと消えていった。たまには窓枠のあたりや柱の影に、淀んでしまうものもあった。これはいったい何を意味しているのだろう。
     過去の映像を表示していたウインドウを閉じて、再び現在の映像をフォアグラウンドに持ってきたとき、僕は「あっ」と声をあげてしまった。一度に五、六匹の「クラゲ」が、画面を横切っていったからだ。しかも次から次へと現れては、ほぼ一定方向へ漂っていく。その方向を逆にたどれば、どこから漂い出しているのかがわかりそうだった。
     ガブリエルも同じことを考えたのか、あるいは大量の「クラゲ」にいちいち気をとられていられなくなったのか、今まで眼で追っていた方向とは逆向きに視線を移した。そして視野の中心に、「クラゲ」の供給源を見据えた。僕は思わずうなった。
    (「猫の天使」本文p.143-144)

  • 『レフト・アローン』、『猫の天使』、『星に願いを ピノキオ二〇七六』、『コスモノーティス』、『星窪』の5編からなるSF短編集。<br />まず言いたい。めちゃくちゃ面白かった!<br />おそらく俺が今まで読んだ(数少ない)SF小説の中で一番面白かった。<br />きっちりハードSFでありながら、難解すぎず、文章もリズム良く読みやすい。<br />そしてなにより、そのファンタジックな世界観。その想像力に感服した。<br />以下それぞれの短評。<br /><br /><br />『レフト・アローン』はヴァーディグと呼ばれる仮想世界と、フィゾーグという現実世界を行き来する主人公のサイボーグ傭兵(?)は、戦いに明け暮れ、何も信じられない中、パートナーである女性だけは信じようとする。そんな恋物語(そんな体裁ではないがw)。<br /><br />『猫の天使』は法を犯した動物実験によって、猫の視覚情報をリアルタイムでモニタリングできるようになった主人公が、或る朝目覚めると、その猫がテロ現場に閉じ込められ、内部の情報源はただその猫のみとなって・・・という話。これは個人的には大傑作。まず猫の見ている世界について、フィクションにしろ、非常に興味深い仮説が提示されていて、もうそこだけで心躍った。それからの展開は王道ながらも、最後の締めもしっかりほんわか決まり、文句のつけようがない。猫まっしぐら。<br /><br />『星に願いを』は、人間の幼児の脳に自分のコピーをダウンロードして、自分のクローンを作り出そうとする人工知能と、それを追うネット警察との勝負から、親子愛、復讐心、そして男の友情を考えさせられる良作。オランウータンの悲哀は迫ってくるものがある。<br /><br />『コスモノーティス』は、遥か未来、テラフォーミングで惑星環境を人間に適応させるより、自分たちの遺伝子をいじって環境に適応した方が早いと気付いた人類が、さまざまな種を生み出し、その新人類たちが裸で宇宙空間で生きられるようになった時代の話。著者の頭はどうなってるんだっていうほどの飛びぬけた幻想SF世界に魅了されて、ちょっと変な文体(なぜか主人公を「君」と呼びかける)も気にならないほどハマってしまった。才能のなせる業か。<br /><br />『星窪』は、160年の時間と距離を超えた、天体観測ロマン。隕石の意志がわかるという画家と主人公のひいひい祖父さんの間の文通を通じて、壮大な宇宙観、生命観を提示する。隕石ネットワークは考えただけで血が沸く。ほんとこの人天才。

  • 脳のアクセス権修復中

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著者プロフィール

ふじさき・しんご 1962年、東京都生まれ。米メリーランド大学海洋・河口部環境科学専攻修士課程修了。科学雑誌『ニュートン』編集室に約10年間在籍。英科学誌『ニューサイエンティスト』に寄稿していたこともある。1999年に『クリスタルサイレンス』(朝日ソノラマ)で作家デビュー。早川書房「ベストSF1999」国内篇1位となる。現在はフリーランス。ノンフィクション作品には生命の起源に関連した『辺境生物探訪記』(共著・光文社新書)のほか『深海のパイロット』(同前)、『日本列島は沈没するか?』(共著・早川書房)がある。小説には『ハイドゥナン』(早川書房)、『鯨の王』(文藝春秋)など多数。



「2019年 『我々は生命を創れるのか 合成生物学が生みだしつつあるもの』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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