川の名前 (ハヤカワ文庫JA)

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  • 早川書房 (2006年7月7日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (496ページ) / ISBN・EAN: 9784150308537

感想・レビュー・書評

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  •  私にとっては、夏に地元の広瀬川で遊んだ少年時代を思い出す一冊です。和製スタンド・バイ・ミー。自然が好きな少年にぜひ読んでほしいです。 
    F.Y.先生

  • 夏休みの自由研究に野生のペンギンの観察をする。それだけ聞くと荒唐無稽ですが、そこにリアリティという説得力を持って来るのがこの作者のすごいところでしょうか。
    夏と少年の物語。少年たちはそれぞれ家庭の事情があり、越えるべきものを抱えている。重苦しくなく軽やかに、それぞれの挫折と成長が書かれています。子どもだからできないこと、子どもだからこそできること。大人の関わりは干渉となり手助けとなり。はじめ小学5年生という設定はこの物語のテーマに対して幼いのではないかと思いましたが、その幼さがもつ無茶が起爆剤として素敵に作用していました。
    物語の内容についてはここでは書きません。何故なら読んで欲しいから。作品のタイトル『川の名前』は実にこの物語を表わす言葉なのですが、なかなか手に取ってもらいにくいだろうなとも思います。少年たちの煌めきに共鳴できる、そんな作品だから大人にも子どもたちにも読んで欲しい一冊です。

  • 4人の小学5年生「カワガキ」の成長物語。キー・コードは川。現代の物語だが、郷愁を誘う。それはおそらく、作者自身が「喇叭爺」に象徴される、川から失われたものに強い愛着を持って作品を書いているからだろう。終章は予想通りではあるが、さわやかな印象と読後感を残す。

  • とんでもないことをしでかす小学5年生がいたもんだ。
    あまりに危険で、あまりに常識はずれだが、羨ましさを感じるところもある。一つの川の近くに暮らす人々、それを取り巻く人々。あるものは、ペンギンを保護しようとする。あるものは、ペンギンをお茶の間の話題のタネにショービジネスのネタにする。また、あるものは保護するでもネタにするでもなく、真剣に向き合い、自分の生まれや未来について、世界について思いを馳せる。
    川は同じなようで刻一刻と変わり続けている。そして、自然の中に生きる人間もそうである。ペンギンという小さな存在が、人生を大きく変えていく。
    世界に出ようとするということは、自分の足元を固めることでもある。この本に出会えて、自分の足元をしっかりと見つめることの、大切さを知った。

  • 【動機】
    川端裕人さんにて未読だったため

    【内容】
    小学五年生の少年たちの川をめぐる一夏の冒険。
    鳳凰池にやってきたペンギンの家族たちを中心に巻き起こる様々なできごとと、少年たちのアイデンティティの話。

    【所見・まとめ】
    この作者の小説が大好きで、当時大学の学部を決めたのも『リスクテイカー』という小説を読んだことがきっかけ。
    本小説もとても面白かった。

    ドキッとしたのはタイトルにもなっている「川の名前」の概念。
    自分がどこに立っているのか、どこから来てどこへ行くのか、そしてどこに帰るのか、そんなことを考えたことは一度もなかった。
    普段使用している住所が人間が作ったもので、街とか番地でしか自分の居場所を表現できないとか、気にしたこともなかった。いわんや、自分がどの川の流域にいるなんて、をや。
    自分がいかに好奇心が欠如しているかわかる。考えているつもりでも、欠けている。自分のことについても、周りの環境についても。

    川は海となり、世界へつながる。
    自分がどこのカワガキなのか、わからない。わからないまま旅をしているのかもしれない。
    これまで獲得したと思っていたアイデンティティと居場所は本物か?自然か?そんなことを考えてしまう小説だった。

  • 川の名前 (ハヤカワ文庫JA)

  • 2018.2

  • 「子どもを本好きにする10の秘訣」>「生き物・自然」で紹介された本。

  • うーーーん。いや、少年たちの冒険物語として面白くないわけではないし、川とか自然とか報道の問題とかその辺も著者の思いが伝わる割と中身の濃い感じのお話なんです。 でもねえ…やっぱりいくら何でも非現実的過ぎる。子どもたちが大人もビックリする程わかってる・見えてる部分とそうじゃない部分を併せ持つ存在である事は考えてもどうにも”大人の”もっと言っちゃえば”作者の”目線としか言いようがないものが混じりすぎる。あと林間学校の運営とかあんなの絶対ありえない。報道の暴走部分でもいくら何でも子どもにあれはさせないってのあるし。その辺が色々合わさって物凄く非現実的に仕上がっちゃったのが残念。

  • 川端裕人の初読み。
    児童文学かと思いながら手にとってみた一冊。

    冒頭。
    恐竜を発見?うん、やはり、ファンタジーだね・・・と思いきや、読み進めるとすぐに、そうではないと分かる。

    青春モノ・・・と呼ぶには登場人物たちは幼いし、少年達の冒険譚と言い切るには、リアリティもあるしテーマ性も深く感じる。
    ・・・と言いつつも、この物語を一言で表すならやっぱり、「少年達のあるひと夏の冒険」ということになるのだけれど(笑)。

    子を持つ親としてはありえない冒険だけれど・・・・最後の大冒険はやっぱり「トンデモ」に違いは無いけれど、そのバックボーンとなる事前設定は示されているので、そんな「トンデモ」な展開にもそうそう大きな違和感はなく物語に没頭できる。少年期特有の悩みと、友情、苦悩からの脱皮など、忘れかけていたような懐かしい気持ちをたくさん蘇らせてくれるこの本を、声を大にして「名作だ」と呼びたい。

    大人にも子どもにも読んでほしいと思える一冊。
    活字の苦手な子どもでも楽しめるように、映画かアニメかになって、より多くの人の目に触れてほしいと思った作品。

    ★4つ、9ポイント。
    2016.11.07.図。

    ※夏休み終盤の風物詩となっている(?)皆が紫のTシャツを着込んで24時間生中継する番組って・・・(笑)。

    ※カルガモ親子の行進、矢ガモ、玉川のアザラシ・・・現実世界でも似たような騒動は何度か目にしてきたが、その裏でも実は、本作で描かれたような報道モラルを問われかねない問題が勃発していたのかもしれない、と思ってみた。


    ※自分の「川の名前」は、何だろう?
    「寝子屋川」かな、「荒川」かな。

  • 後半の疾走感がよかった。
    自分の川の名前を知りたいと思ったよ。

  • 小学5年の夏休み。たぶん子ども時代の最高峰。
    この黄金の時間を、川を切り口にしつつ、個性的な男子3人組+優等生+奇妙な爺さんを軸にして、オカルトもファンタジーも一切ぬきで奇跡的な物語に仕立て上げた作者すばらしい。
    自然の描写、川というものに関する深い考察、カヤック競争の様子、美味しいネタをハゲタカのように漁るマスコミ陣のありさま、いずれも膨大な資料や知識を元にしていると思われ、たいへん好感が持てた。
    子どもたちの内面も丁寧に描かれていて、やはり良い感じ。5年生といえば、ちょうど自我が主張を始める頃で、自分の「こうありたい」気持ちと周囲からの視線との齟齬に気づき、いろいろ悩むものなのだ。
    面白くて魅力的な男子がそろっているが、なかでも鳳凰池の主っぽい風格を持つ「河童」くん、最高。

  • 多摩川の支流の支流の小さな保護池でひっそりと暮らすペンギンの夫婦を発見した少年達が、夏休みの自由研究で彼らの観察をする事を思いつく。平和に思われた日々もある時にエサを探して狩りに出た雄ペンギンを見た人からマスコミに漏れ、一大騒動に発展するのだった。

    少年たちが輝いてい過ぎて、自分の青春とはかけ離れていますがそれでも川に惹かれて、自分たちの居場所と自然をリンクさせて飛び込むあたりは自分の中にもあるものだったので共感しました。野田知佑氏の提唱するカワガキを増やす運動にまさに通じる所があり、自然の未来を明るくするためには、自然を好きな大人を養成していくしか方法は無いんだと思います。

    この本はある意味物語性よりもその辺りの啓蒙要素が多い気がします。僕は好きですが人によっては説教臭く感じるかなあ。

  • 小5男子4人の夏休みペンギン騒動。

  • 道路、線路の表示がない地図で川を辿りたくなる。

  •  これまで長期の休みは写真家の父と海外で過ごしていた小5の脩。桜川で不思議な生き物(実はペンギン!)を見つけ、夏休みの自由研究の題材として観察を始める。

  • まあこれも、少年文学の王道にのってはいるけれど、ちょっと少年には難しいなんやかやもあるのかなあと思ってみたり。

  • 20140301読了。
    自分が子どもの時、身近な自然と共に育っただけに、子どもの側から見た大人たちの身勝手さがよく理解できた。
    郷愁を誘う懐かしさや、自分が子どもの時にできなかったことをカワガキたちがやり遂げていく羨ましさ、そして、大人が思っている以上に子どもは子どもなりの論理を持っていることに共感を覚えた。
    ラストの納め方はちょっと…賛成できない。

  • 小学校5年生のごく普通の少年たち4人が主人公です。(解説には菊野君と
    亀丸君と河邑君の3人となっていますが、手嶋君も主人公の一人だと思う。)
    主人公たちは、
    自分の居場所がわからないという悩みを持っています(悩みの大きさに大小はありますが)。
    それを解決するためには、自分の立ち位置を知ることが必要なのですが、
    そのための出発点として「川の名前」という概念を紹介しています。
    例でいうと、
    大宇宙の、太陽系第3惑星地球の、日本列島の本州島の関東平野の多摩川水系のXX川に住むわたし、ということになります。
    日本国の東京都のXX区のXX町1丁目に住むわたしという概念とくらべたら、
    違いは一目瞭然でしょう。
    ここを出発点に、ひと夏の経験(ペンギン・サマー)が彼らを成長させます。

    自然とのかかわりをバランスよい視点で描いていると思います。
    自然保護万歳じゃないのが気に入りました。
    (250グラムのステーキとか黒毛和牛の焼肉をがんがん食いながら、自然についてえらそうなことを言ってると、神様の天罰があたりそうだから・・・)

    喇叭爺は、RPGのゲームにでてくる仙人やね。
    一見何言ってんだかよくわかんないんだけど、
    この人の言っていることの意味をつかむことがイコール物語の全体像をつかむことになる、
    って気がする。

    2010/10/31

  • 割合ファンタジーぽいのかと思ったら、意外にしっかりした内容。

    小学生のとき、こんな夏過ごせたら楽しいやろな~。

    ゴム丸も河童も手嶋もどんどんいいキャラになるし。
    微妙な年頃の感性を捉えた感じで読み応えあった。

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著者プロフィール

川端 裕人(かわばた・ひろと):1964年兵庫県明石市生まれ、千葉県千葉市育ち。文筆家。東京大学教養学部卒業。『ドードーをめぐる堂々めぐり──正保四年に消えた絶滅鳥を追って』『おしゃべりな絶滅動物たち──会えそうで会えなかった生きものと語る未来』(ともに岩波書店)、『我々はなぜ我々だけなのか──アジアから消えた多様な「人類」たち』(講談社、科学ジャーナリスト賞・講談社科学出版賞受賞)、『科学の最前線を切りひらく!』(筑摩書房)、小説に『ドードー鳥と孤独鳥』(国書刊行会、新田次郎文学賞受賞)、『川の名前』(早川書房)、『銀河のワールドカップ』(集英社)など多数。色覚をめぐる絵本に、『いろ・いろ 色覚と進化のひみつ』(絵・中垣ゆたか、講談社)がある。

「2025年 『新版 「色のふしぎ」と不思議な社会』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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