ロミオとロミオは永遠に (上) (ハヤカワ文庫JA)

  • 早川書房 (2006年7月21日発売)
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本 ・本 (448ページ) / ISBN・EAN: 9784150308551

感想・レビュー・書評

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  • 近未来、日本人だけが地球に残されて
    化学物質や産業廃棄物の処理に追われる
    そんな中で
    「大東京学園」を首席で卒業すれば
    将来は約束される
    苛酷な入学試験レースを乗り越えて
    ほっとしたのもつかの間
    さらなる試練が待ち受ける
    アキラとシゲルははたしてどうなる?

    恩田陸さんらしいドタバタ感満載の
    2006年の作品

  • 近未来の日本で、エリートを目指す"大東京学園"の生徒たちのキャンパスライフが描かれた本。いわばサバイバルゲーム。
    初版が2006年だということを考えると、恩田さんは先見の明があったということか。

    残酷とも言えるエグいシーンも多く、個人的にはこの作品は好きになれそうにないが、現代、というか昭和のカルチャーが廃退的文化、歪んだ遺物として描かれていて、ちょっと衝撃を受けつつも、未来の人類から見たら確かにおかしな価値観なんだろうと思えることもあり、不思議な感覚で読んだ。

  • 昭和のサブカルチャーへの憧憬とアイロニー
    大東京学園を舞台に、日本の現代史をおさらいする

    恩田先生のオカマキャラにハズれナシ
    今回は妖艶な“アタミ”

    退廃した地球に残された日本人のエリートになるために、難関を越え大東京学園に入学したアキラとシゲル
    果たしてエリート中のエリートへの近道“卒業総代”になるのは誰か?
    アキラの兄の消息は?
    キョウコとは?
    新宿クラスの脱走計画は成功するのか?

    すべては後編へ

  • 近未来の東京。
    様々なものが規制され廃止された世界で
    理不尽な学生生活を生きる男の子達。

    将来、こんな不自由な世の中に
    なるのではないかと不安に思う一方、
    中に出てくるたくさんのサブカルチャーに
    ニヤニヤしながら読んだりして。

  • 近未来の汚れきった地球。
    超エリート高校「大東京学園」の卒業生総代となり、特権を手に入れることを目指して過酷な入学試験を突破したアキラとシゲル。
    ひとたび入学すればいかなる理由があろうと外に出られない学園で、不条理なルールと命がけの過酷な訓練に明け暮れることになった彼らは、少しずつ疑問を膨らませてゆく。


    恩田陸版『死のロングウォーク』か?(我ながら古い…)それとも、恩田陸版『No.6』か?という不条理世界に、サブカルチャー愛が特大盛りにのっけられて、もはや器から溢れてテーブルの上までだばだばになったような。
    むむ、何だか気持ち悪い。
    でも、感想は下巻まで読んでから。

  • 近未来、汚染された地球に取り残された挙句、文化すら取り上げられて倹しく暮らす日本人たち。エリート養成校「大東京学園」へ入学すれば将来が約束される──そんな希望と野心を持って全国から集まった男子たち。彼らを待っていたのは過酷な労働と競争だった。

    上巻では、主人公・アキラとともに世界観を学んでいきます。そして、行方不明になった兄の謎に迫っていく。
    友達のアキラ、一方的に敵視してくるリュウガサキ、新宿クラスのシマバラたち、妄執に駆られた教師のタダノ、謎の少女・キョウコ。髭のおじいさんは校長なんでしょうか。
    果たしてアキラとシゲルはどうなるのか。アキラの兄はどうやって学園から脱出できたのか。
    気になるところで下巻です。

  • 発行は16年前!荒廃した地球に取り残された日本は大東京学園に優秀な男たちを集める。生徒は将来が約束された卒業総代になることを目標に、命をかけた定期試験(戦車とドッチボールとか)に挑み、ランク上位を目指す。汚染された夢の国!拷問器具扱いの観覧車!折りたたみ式の橋!昭和と未来の合わせ技のような世界観に、地球が荒廃したらこんな未来もあるかもと妙な現実味があります。キャッチーなタイトルから、アキラとシゲルのBLを想像するも上巻では良いパートナーといった風。2人は新宿クラスに落とされるのか。気になる終わり方です。

  • 一番好きな本。

  • 8/7読了。
    前から薄々感じてはいたのだが、私は恩田陸と「サブカル」に関して意見が合わないということが、本書を読んで決定的になった。
    20世紀のサブカルと大きく出た割に戦後の話しかしていないのは、恩田さんなりの<私のサブカル>領域なのだろうからいいとしても、資本主義と大量消費を悪として描いておきながら、昭和の東京五輪の年にタイムスリップして未来の自分たちを苦しめたデカダン世紀末を主人公たちに繰り返させるエピローグが「実は、ハッピーエンドのつもりだった」?「愛とサブカルチャーがある限り、世界は続くと思っていたが、愛もサブカルチャーも経済の論理に飲み込まれ、暴力的な力を持ってしまった」?ちゃんちゃらおかしーわ!!!
    少なくとも恩田陸が本書で取り扱っているような戦後のサブカルは、最初から経済の論理で動いているはずだ。だって高度経済成長期に生まれたカルチャーなのだから。それにイチャモン付けて日本はつまらなくなった、1964年に戻って美味しいとこだけやり直したいって、ただの「昔は良かった」型のノスタルジーだろうが。そもそもディズニーランドをこういう扱いにするのがムカつく!!!悪を一点に託しすぎでしょ。斜に構えてる割に、独自の視点からサブカル論が語られるわけでもなく、資本主義の罪と大量消費の不気味さを説く手つきも極めてワイドショー的(ここはあえてそうしてるんだと思うけど)で、別に上手い皮肉になってるとも思えないし、何より個々のディテールに対して特別な愛情を感じない。おそらく恩田さんが愛しているサブカルチャーのシンボルであるはずの≪アングラ≫だって、テレビ文化を不気味になぞる地上のイベントと差別化できていないし。オタクをうっすら馬鹿にするようなことを書いてるけど、自分こそ<サブカル>の表面を撫でてるだけで、思い入れのあるものなんて何もないのでは?

    いや、実のところを言うと私は恩田陸のことをオタクだと思っているのだが、本人がそう思いたくないようなので、私は恩田陸に関して恩田陸と解釈違いを起こしている。そのストレスが本書でマッハ。14年前に出た本にこんな負のエネルギーを持つのは馬鹿げているのはわかっている。何をこんなに怒る必要があるのか、恩田さんは立派に世紀末を生きた人間であって、私は物心ついたかつかないかの子どもだったに過ぎないのに?
    解釈違いといえば、とんねるずをモデルとしたキャラを出して貴明側のキャラにイニシアチブ持たせてるのも完全に解釈違い。でもこの2人なかなか死なないから、「実は未来人がトンネルを抜けてタイムスリップしてお笑いやってるのがとんねるずってことだ!?」と思ってたら憲武側のキャラが地雷で木っ端微塵になって笑ったけど。

    と、以上のように、この小説の根底にあるサブカル礼讃に見せかけた大衆文化蔑視(正確に言うならば、恩田さんが良しとするものしか好意的に描かれない世界観)には嫌悪感を持ったのだけど、大東京学園のコンセプトは面白いし、文章はリーダビリティが高いし、上下巻一気に読ませる楽しい小説ではある。特に大東京学園で次々開催される試験は、昔のバラエティ番組を大いに参考にしてるとしても、よくこんなに考えつくなぁと感心する。コマ劇場に暗黒舞踏の霊が出るとか、『メモリーズ』でのサラリーマンたちの会話とか、近未来にはずなのに「牛乳ビンを入れる箱みたいに、蝶番のついた木の蓋」とかいう書かれた2002年当時でも既に消えかけていただろう例えがスッと挟まれていたり、細部でも思わず笑ってしまう要素がある。

    プロットは本当に書きながら考えたんだろうなぁという感じで、いいキャラなのに影が薄くなっちゃう奴がいたり、思わせぶりな会話の秘密が地の文でささっと説明されて終わっちゃったりするのが惜しいんだけど。中でもシゲルとキョウコの過去の処理はどうなんだろう。そもそもキョウコを出す必要があったか疑問だけど、恩田さんて必然性考えてキャラ作るタイプじゃないものなぁ。そもそも論でいうと、最後まで読んでもアキラとシゲルにあまり思い入れることができなかった。ふたりは結構早い段階でバラバラのクラスになってしまうし、再会したかと思えば新キャラのキョウコがあいだにいるし、脱出計画も別々に進めて当日行き当たりばったりで一緒になるようなもんだし、特別な対という感じがしない。むしろ新宿クラスにはトンネルの中で手を繋いで一緒に死んじゃうやつらがいたり、大凧に乗って空から脱出を試みるも撃ち落とされて一緒に死んじゃうやつらがいたりして、こいつらのほうがよっぽど「ロミオとロミオは永遠に」だよなぁ。でもアキラとシゲルはこの物語が終わってからこそ、狂乱の時代に未来の秘密を抱えて生きる特別な対になるんだからいいのかな。とにかくタイトルはちょー好き。

  • 疾走感溢れる学園モノSF。
    思考をどっぷりドリップさせてくれる。
    今でさえ懐かしいお菓子や雑誌や歌や映画、実在のものをパロった施設や台詞が登場し、そこここに哀愁と切なさが入り交じってなぜか終始そこはかとない不安が付きまとう。
    でもだからこそ時々垣間見せる期待と高揚感が気持ち良く、わりと分厚い1冊をさくさく読めた。
    下巻が楽しみ。

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著者プロフィール

1964年宮城県生まれ。92年『六番目の小夜子』で、「日本ファンタジーノベル大賞」の最終候補作となり、デビュー。2005年『夜のピクニック』で「吉川英治文学新人賞」および「本屋大賞」、06年『ユージニア』で「日本推理作家協会賞」、07年『中庭の出来事』で「山本周五郎賞」、17年『蜜蜂と遠雷』で「直木賞」「本屋大賞」を受賞する。その他著書に、『ブラック・ベルベット』『なんとかしなくちゃ。青雲編』『鈍色幻視行』等がある。

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