駆けてきた少女 (ハヤカワ文庫 JA ア 3-7 ススキノ探偵シリーズ)

著者 :
  • 早川書房
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本棚登録 : 571
感想 : 41
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  • Amazon.co.jp ・本 (524ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784150308650

感想・レビュー・書評

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  • 巻を重ねるに連れ、かつてこのシリーズが持っていた荒々しいパワーや魅力が静かに、しかしはっきりと失われているのを感じるにも関わらず、思わず次を「もしかしたら?」と手に取って読んでしまう不思議。

    長編小説を読んでいると、この後半の展開で、残りのページがこれくらい・・・・・え?これって物語を収束できるの?と思う瞬間がある。

    本作は、正直言ってラストはまさにドッチラケ、と言う感じである。もうなんというか延ばせない締め切りが来たので取りあえず終わらせました、というイメージすら感じる乱暴な終わり方。がっかりというよりも、むしろ呆気にとられたというような読後感。

    解説を読むと(普段は解説などというものは読まないのだが、あまりにも呆気にとられたので小田急線の車内で思わず読んでしまった)この作品は作者の東直己の「ススキノ探偵シリーズ」ではない別の二つの作品とそれぞれ対を成す、というか三つの作品を読んで初めて本作の伏線が収束する、と言ったような構成になっているのだそうだ。

    まあ、それならそれでいいのだろうけど、解説を読まないとそういうことがわからないのもどうかと思うし、単独で完成していない以上、やっぱりこれは失敗と言うしかないんじゃなかろうか、端的に言って。

    要するに、一ファンとして読後非常に非常にがっかりした、ということなのだ。早い話が。

    ただ、
    「ラムのせいで、世界が楽しい。いい感じだ。不気味なものを見ても、それほど狼狽えずに済みそうな程度に、酒が優しく俺を勇気づけてくれている。」
    この一文だけは最高。

  • 再読。
    以前に読了したのをすっかり失念して文庫本を買ってしまった。

    この作品を書いたあたりの東直己は北海道警察の不正問題に対して、かなりの憤りを抱えていた時期で、同じ事件に関わる物語を主人公を変えて、「熾火」「ススキノハーフボイルド」、そして「駆けてきた少女」と後押し三作品も仕上げている。

    本作、「駆けてきた少女」では、相変わらずのススキノ便利屋を主人公にバラエティ豊かなバイプレーヤーを脇に従えて(たまに主役になるけど)、物語は進められて行く。

    のっけから腹を刺される便利屋。
    脂肪が邪魔して致命傷にならなかったことをネタに笑われながら犯人を探していくあたりが軸になって、居残正一郎の道警不正暴露レポート、去勢ショー、高校生の死亡事件などが次々と織り込まれていく。すごい構成力だと思う。

    繰り出される会話は、北海道弁丸出しでダジャレを織り交ぜながら、たまに文学的な話題を口にするという、飲み屋での会話そのものみたいで愉快だ。


    元道民としては、どうしても読んでしまうシリーズなのだ。

  • ススキノ探偵シリーズ7作目らしい。
    初めて読んだ。
    「探偵はバーにいる」は、映画で観た気がするのだが?
    こんな感じだった?
    全然覚えてない。

    けど主人公のキャラが立っていて、
    面白かった。
    ケータイ嫌いとか、
    タバコふかして酒飲みながら、半身浴とか。

    1作目から読んでみようと思った。

    一日で読めるくらい、読みやすい本。

  • ススキノ探偵シリーズを最初から読んできて、
    本作まで到達。

    なぜ「俺」が刺されたか?
    刺した犯人は、なぜあのような顛末になったのか?
    そして、最後の最後の後日談…

    本作を読んだだけでは、わかりませんでした。

    解説を読むと、本作は同じ東直巳のハーフボイルドシリーズの「ススキノ・ハーフボイルド」、畝原シリーズの「熾火」との3部作になっている模様。

    このままだと、モヤモヤが残るので、
    ススキノ・ハーフボイルドと熾火も読んでみようと思います。

    本作だけでは、スッキリしないので
    ⭐︎2つです、

  • 悠然とあたりを睥睨へいげい 若い燕 キチ…ええと、今の言葉で言うと、世界に一つだけの花の中で、兎に角、何かこう頭の中で主張が渦になって止まらない、…頭の中で主張や真理が唸りを上げて飛び交い、沸騰している人、常に悪意に満ちた声に攻撃されている人、という逃したいて、そういう人が経営or運営している喫茶店や食堂などが、あんな外観をしていることが多い 拗音ようおん 稀の上にも稀だろう 地産地消が大切 鴨鴨川 蜷川 高中正義のサウダージのあの淡い哀しみも加味したつもりの命名だ 耳に快いこころよい 屯するたむろする キャバクラや射精産業に勧誘する連中だ 白石区しろいしく 天花粉てんかふん 道庁赤煉瓦の庭を突っ切り 高砂の一夜雫 勝呂麗奈 自分の短慮を悔やんだ 這々の体 君子危うきに近寄らず 化膿姉妹 金浜突飛〜 中山峠 盤渓学園 シボレー・カプリス むこ無辜の民 渡世 スリー・ピースのスーツ 柏木香織 登場人物諸賢の健闘を讃え 花岡組支配 足刀 ミンボーの女 逮捕連行される伊東四朗が 監督の伊丹十三はヤクザに顔を切られたんだったなぁ クラフトワークが好きだから それにはブライアン・イーノで応酬するんだ ひとつの型を教えたんだよ クロック・ムッシュ 去勢ショー トランスベスタイト 大橋巨泉が絡んでるはずだ ヒポクラテスの誓い 公序良俗に反する 福建省 こべつさわ小別沢トンネル ノウハウが確立されてるんですね 衷心ちゅうしん 呻いて 斜里町 栄転なのか左遷なのか

  • 古書購入

  • ちょっとした行き違いからガキに腹を刺されて入院した“俺”は、見舞いにきた自称「霊能力者」こと濱谷のオバチャンの依頼で、女子高生の家庭調査を引き受けるハメに。軽い気持ちで手を付けたこの一件と、自分を刺した犯人探しとが交錯した時、すでに札幌の闇に蠢く巨大な陰謀に巻き込まれていることに、“俺”は気づくのだった。いまどきの高校生に翻弄されながらも、ススキノの中年便利屋が奮闘する軽快ハードボイルド。

  • 畝原シリーズ「熾火」、ハーフボイルドシリーズ「ススキノ・ハーフボイルド」の2作品とリンクしている物語。
    別に「駆けてきた少女」だけでも十分に話は出来上がっているけれど、3冊を読めば事件の裏に隠された「駆けてきた少女」ではわからなかった面も見えてくる。
    面倒なことが嫌いなくせに、やけにおせっかいなところもある。
    そんな憎めない「俺」も、気づけばけっこうな年齢になっている。
    それでも、基本的なところはまったく変わらないのが嬉しい。
    ススキノという限られた地域を舞台に繰り広げられる物語は、一匹狼的な探偵が巻き込まれるのは不相応なほどいつも壮大だ。
    今回も、警察幹部を含む闇の癒着問題から、海外マフィアを巻き込んだ見世物ショーまでスケールは大きい。
    そんなスケールの大きさなんて関係ない。
    自分の周りだけしか見えていない、ある意味汚れていない女子高生の思いはまっすぐだ。
    望むことにやけに正直で悪びれない。
    「俺」はどこか気後れしつつも、彼女に協力することを約束する。
    何の得にもならないのに、そうやって首を突っ込んでしまう「俺」が好きだ。
    そして、いつも影ながら…たまには突撃隊長を兼ねながら行動する高田が好きだ。
    ハードボイルドというものに暗いイメージがあったけれど、このシリーズを読むようになって意識が変わった。
    こんなほろ苦い明るさのあるハードボイルドもいい。

  • ススキノ探偵シリーズ。
    《俺》はビルの8階にあるスナックで飲んだ後、そのビルの階段で若い男女に出会う。女性が嫌がっているらしいのを見て男を窘めると、女に唆された男にナイフで刺されてしまう。
    腹の脂肪が厚いお陰で傷は浅く済んだが、犯人は捕まらない。

    入院中に見舞いにきた霊能力おばちゃん・濱谷に、最近濱谷のところに入り浸っている女子高生のことで相談を受ける。
    退院すると女子高生の素性を調べ始めて、更に自分を刺した犯人も追い始める。
    その内、犯人と思われる男を割り出すが、その犯人・加賀埜という男と仲間のもう一人が別々に遺体で発見される。


    なんというか、あれもこれも 色々な人間が複雑に絡んで、あちこちに話が飛んでいく感じです。

    柏木のことも居残のことも、サンドラのこともちょっとスッキリしない。
    うーん、でもこういう終わり方もあるのかな。
    苦いけれど。

    でも相変わらず途中、面白いんですよね。

  • 再読なのに、解説を読んで時制問題に初めて気がついた。言われてみればそうですよね。
    作品自体はいつも通りの魅力が詰まっているので、今回は解説に加点して満点にしよう。
    いつ読んでも色褪せない名シリーズです。

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著者プロフィール

一九五六年札幌生まれ。本郷幼稚園中退、本郷小学校卒、東白石中学校卒、札幌東高等学校卒、小樽商科大学中退、北海道大学文学部哲学科中退。
現場作業員、ポスター貼り、調査員、ガードマン、トラック助手、編集者、広告営業、コピーライター、受刑者など諸職を転々。
一九九二年『探偵はバーにいる』(早川書房)で小説家としてデビュー。同作は、一九九三年『怪の会』激賞新人賞受賞。
二〇〇一年『残光』(角川春樹事務所)で日本推理作家協会賞受賞。

「2010年 『北の作家 書下ろしアンソロジーvol.2 utage・宴』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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