沈黙のフライバイ (ハヤカワ文庫 JA ノ 3-9)

著者 :
  • 早川書房
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本棚登録 : 721
感想 : 75
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  • Amazon.co.jp ・本 (264ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784150308797

作品紹介・あらすじ

アンドロメダ方面を発信源とする謎の有意信号が発見された。分析の結果、JAXAの野嶋と弥生はそれが恒星間測位システムの信号であり、異星人の探査機が地球に向かっていることを確信する-静かなるファーストコンタクトがもたらした壮大なビジョンを描く表題作、一人の女子大生の思いつきが大気圏外への道を拓く「大風呂敷と蜘蛛の糸」ほか全5篇を収録。宇宙開発の現状と真正面から斬り結んだ、野尻宇宙SFの精髄。

感想・レビュー・書評

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  • いやー、良いですね!端正で引き締まった無駄のなさ、それでいて躍動感溢れる、まさに正調ハードSF。

    リアルに現在進行形で研究されている科学技術をベースに想像力の翼を広げた、「SF」という言葉を聞いて喚起されるイメージそのままの短編集。シンプルな文体の行間から立ち現れるビジョンの鮮烈さがハンパないです。
    ビジョンの喚起力を優先させた故か、物語としては尻切れトンボな話が、正直多いです。「えっ、そこで終わり?」というところでブツッと終わる感じ、起承転結の「転」で放り出されます。が、その放り出され方が、心底ポジティブなその先の展開を暗示させる形で、とても心地良いヽ( ´ー`)ノラノベ風であまり深みのない人物描写も含めて(※鴨注:決して貶しているわけでなく、それ以外の要素で十分勝負できるのがSFという文学ジャンルの強みです)、実に王道ハードSF。アイディア一本勝負、余計な装飾は必要ないタイプの作品群ですね。SF者として、非常にスッキリと読了できました。

  • 理系脳に良い刺激になるなあ。
    スーツの話がお気に入りで、アミノ酸をリサイクルって発想がすごい。

  • ―――アンドロメダ方面を発信源とする謎の有意信号が発見された。分析の結果、
    JAXAの野嶋と弥生は異星人の探査機が地球に向かっていることを確信する―静か
    なるファーストコンタクトがもたらした壮大なビジョンを描く表題作、一人の女
    子大生の思いつきが大気圏外への道を拓く「大風呂敷と蜘蛛の糸」ほか全5篇を
    収録。宇宙開発の現状と真正面から斬り結んだ、野尻宇宙SFの精髄。


    初めて手を出した野尻抱介の宇宙SF短篇集。
    端的に言って、捨て作品なしの傑作。

    収録されている5篇のうち、古いものは15年前に書かれているにも関わらず、そ
    のことを全く感じさせない。どころか、未来に向かう光のようなものを感じられる。

    描かれているものを理解するために基礎的な地学の知識はいるにしても、ここま
    で爽やかに宇宙へのロマンを謳ったSFを俺は知らない。

    どの短篇も甲乙つけがたいけれど、「大風呂敷と蜘蛛の糸」が一番掴みやすいス
    ケールから始まっていて想像が広がったかな。





    「できっこないですか?」
    これが爆弾になった。

  • 短編集。SF。ハードSF。
    難しめの内容で地味な印象も受けたが、読み進めていくと、どの作品にも大きな希望に溢れたビジョンがある。
    既読の『南極点のピアピア動画』『ふわふわの泉』も含め、著者の作品の特徴は”明るい未来”か。
    特に好きな作品は以下2作品。

    「片道切符」火星探査。帰ってくる必要はあるのか、というテーマらしい。解説にある通り、楽観的な決断が清々しい。好き。

    「ゆりかごから墓場まで」タイの池で始まり、火星まで。閉鎖生態系をつくるスーツ。終盤はプチ『火星の人』ぽいかも。良作。

  • 日本SF大会米魂の分科会「SF小説の文章技法」で取り上げられた小説『大風呂敷と蜘蛛の糸』が収録された短編集。表題作、大風呂敷、どれも面白かった。
    野尻さんの文章は本当に巧い。難しいのに、読みやすい。とても淡々としていて、するする物語が進むが、時として思わず涙が出てしまうほどに心を揺さぶられる。冗長なだけが文章ではないということを強く考えさせられる。
    個人的には『轍の先にあるもの』という短編が強く心に残っている。

  • 専門的な言葉がたくさん出てきて、たぶん私にはこの本を理解する素養が足りてないのだと思う。物語性はほとんどないが、それを求めるのは違うのだ。深くは理解できなくても、新しい何かに夢中になる熱意はよく感じられた。特に「沈黙のフライバイ」は、こんな異星の知的生命体とのコンタクトがあったとは想像してなかったので驚いた。理解はできなかったけど、面白かったです。

  • かな~り前から著者の名前は知っていたが、作品を読むのは初めて。
    SFと言うカテゴリーなんでしょうけど、ちゃんとした科学的な裏付けがあっての内容なので、現実とかけ離れた印象がありません。
    アイソン彗星が消滅してしまったと言う悲しい出来事がありましたが、やはり宇宙は、偉大で、広大で、魅力的な世界です。

  • やっぱり表題の「沈黙のフライバイ」が好きかなー。
    でも「轍の先にあるもの」のワクワク感もいい。はやぶさの動向に盛り上がって一喜一憂してた頃を思い出しました。

  • 死亡フラグが違和感なく立ってしまう物語.今回非科学ロケットの方.

  • 『退廃した未来』ではなく、『少し不思議』な世界でもなく。
    テクノロジーが発達した先に実現するのではないかと思わせる、正しく『サイエンス・フィクション』な短編集です。
    宇宙への憧憬、未知への挑戦、子供のような好奇心に溢れた5編の物語。
    にわか宇宙熱な今時の気分にぴったりな一冊でした。

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