楽園の知恵: あるいはヒステリーの歴史 (ハヤカワ文庫 JA マ 5-5 ハヤカワSFシリーズ Jコレクション)
- 早川書房 (2007年7月1日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (472ページ)
- / ISBN・EAN: 9784150308957
感想・レビュー・書評
-
いままで牧野修作品はまだ理解できる作品だったが、今回のこの作品はぶっ飛びすぎてなにがなんだかわからない混沌とした作品だった。しかし、なんとなく言いたいことと、聖書や創世記古事記といった書物をオマージュしているのがわかる。まぁSFというよりホラーっぽい作品だ。
詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
通勤に読むのに程よい短編集だった。
ホラー小説ではないはずだけど、怖さを感じる作品が多かった。
冒頭と最後の小説家の話、成功と充実は必ずしも等価ではないのだ。こだわりの枝を自ら手折るのは、敗北感と虚無感を抱え込む。心が殺されたのなら、体の死も必須だったということかも。 -
短編集。
個々の作品は独立しているようでもあり、繋がっているようでもあり、面白い纏め方をしているな、というのが第一印象だった。
『MOUSE』のあとがきで名前が挙がっていた山尾悠子に近いのはこちらのような……。
官能小説をパロディ化したような『インキュバス言語』をウッカリ電車で読んでしまって吹き出しそうになったw 『言語』をテーマにしたSFにこういうアプローチがあったとは。衝撃……いや、笑撃か? 面白いといえば、『演歌の黙示録』で見せたクトゥルー神話に対するアプローチも良かった。
硬質な雰囲気漂う作品でも『MOUSE』であったような皮膚感覚に訴える文体は健在。 -
序章、終章含めた15のお話からなります。
どれも面白いのですがいくつか抜粋。
○病室にて―感情を揺さぶるすべてのものが排除される、病とされる時代に生きる小説家。自身で小説を書くことを不能者の自慰と語る彼女は、なぜそれでも物語を紡ぐのか。
○いかにして夢を見るか―今までに一度も夢を見たことがない『私』が夢に想いを馳せ、夢を考える様子を描く。不可思議な世界感に入り込むための手助けか、ユーモラスな会話が魅力的。
○インキュバス言語―解説にはこう紹介されてます。『牧野節B面大爆発』。
日常会話をなんでもかんでも下ネタにもっていこうとするヤロウがどの世代にもおりますが、この物語には勝てないでしょう。 下ネタ変換は電車だけにとどまらず、海山風プレート成層圏を突破して月惑星衛星太陽系銀河ブラックホールホワイトホール・・・と続き最後は何故か聖書の天地創造の場面をエロで再現します。 とりあえず卑猥言語全開。面白すぎる笑
○中華風の死体―世界とは何か。神とは何か。この物語では娼婦である少女が見る夢が一つの世界をつくり、その世界の住民が見るそれぞれの夢が、またそれぞれの世界を作り出してゆく。 夢の住民が崇める「世界の創造主」が幼い娼婦だという事実、そして自分たちの本当の存在意義を知ることとなる。
あんまりグロがないのが残念! -
クトゥルフ×演歌や、成長し続ける生きた家などイマジネーション溢れている極彩色の短編集。読めば誰もがひとつはお気に入りの短編が見つかると思う。
-
…さて、もう一度最初のページに戻ろうか。ぐちゃぐちゃに書き連ねた悪夢のメモ。
-
表紙のイラストと中身の乖離がすごいw
「踊るバビロン」と「逃げゆく物語の話」はもっと読みたい。 -
すんごいなこの本。
スゴ本と読んでもいいのかもしれない。なんだろうこれ。
あたしの印象はインキュバス言語が筒井康隆を、家具の話が家畜人ヤプーへのオマージュ?
というもの。
ひとつひとつの内容は面白いし凝っていて、ぐいぐい引き込まれた。
パターンもかなり違うので飽きることもなく。
ただ、残念だったのはそれが収束していないこと。
最後にそれらが全部まとまっていたら、もう感激してたんだろうに。
まぁ、そういう楽しみ方だけじゃないよって言われたらそれまでなんだけどね。
全体の完成度だけで完璧、と、すべきなのか。 -
夢を見ない理由、死体に似た街、腐敗してゆく自分、地下室で蠢く父、時の王国におわす神、娼婦工場の太った女、演歌と神秘主義の密接な関係、妄想を媒体にする言語人形―現実の皮が剥がれたときに見え隠れする幻覚妄想恐怖戦慄神秘奇蹟を、ヒステリーの治療過程に見立てて並べてみせた、凄絶作品集。『傀儡后』で宇宙的悪夢を描いて日本SF大賞を受賞した牧野修が虚空の果てに見いだした、甘美なる知恵。
-
短編集。
牧野さんの短編はギュッと凝縮されてて読んでて時々衝撃を受けます。
凝縮されてるものはいろいろあるんですけど、
何つーか思いつくのは怖いとか不気味とかおどろおどろしいとかそんなのばっかり…だ…
そんな中で「逃げゆく物語の話」と「召されし街」がすごく好きな話。