時砂の王 (ハヤカワ文庫JA)

著者 :
  • 早川書房
3.72
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  • (36)
  • (6)
本棚登録 : 1484
感想 : 168
  • Amazon.co.jp ・本 (276ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784150309046

感想・レビュー・書評

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  • これは私には合わなかったというしかない。他のレビューでは結構評価が高いようだが、面白くないものは面白くないというしかない。未来で生み出された知性体が、ETの侵略を防ぐため、過去に遡っていき、現地の人々を指導するというもの。邪馬台国が最後になるが、歴史の分岐というあたりの理屈はなかなか分かりづらい。

  • あまり海外文学に詳しくないので、海外の作品をよく紹介してくれるラジオ「空飛び猫たち」を参考に選書しています。
    https://www.instagram.com/radiocatwings/

    たまーに日本の作品の紹介があり、こちらはそのうちの一つ。小川一水さんは、以前読んだアリスマ王の作品が本当によかったので、選びました。

    SFの真骨頂という感じの、ヒストリカルイフ、タイムトラベル、ターミネーター、クロノ・トリガー、シュタゲを凝縮(最高)。

    3世紀、邪馬台国の女王卑弥呼を襲う謎の増殖型戦闘機械軍、ET。ETは未来26世紀の世界を滅ぼしただけでなく、人類の完全殲滅を目論んで過去にまで出現するのであった。それを阻止すべく作られたのは、人形AIのメッセンジャー。メッセンジャーは絶望的とも言える充満年の時間遡行の旅へ。そして卑弥呼(彌与)とメッセンジャーのオーヴィルは出会う。

    歴史のイメージだと、御簾の中からは出たことがなさそうな卑弥呼さまも、この世界線では前線に出て戦うかっこいい女王です。そしてメッセンジャーオーヴィルの心にずっといるのは、26世紀においての恋人サヤカ。彼は何百との戦いを経て、疲弊しきっているが、決して諦めていない。そういう話ではないけど、影のあるイケメンに弱いもんですよね…。

    迫力のあるバトルと、そのアイデア力に感服する一作です。

  • #日本SF読者クラブ 人類はETが造りだした「バーサーカー」に敗れ去り、もはや滅亡は避けられない。人類は最後の望みを託し、人型人工知性体メッセンジャー達を戦略支援知性体「カッティ・サーク」とともに過去へと送りこむ。「人類滅亡」の未来を変えるというか、時間軸を分岐させるにために。ちょうど「ターミネーター」とは逆の設定となる。メッセンジャーの一人オーヴィルのハードで切ない物語にシビれる。しかしながら、最後は唐突ともいえるハッピーエンドを持ってこなくても良かったのではないか。どこかの分岐された時間軸で、ハッピーエンドの世界がきっとあるはずだから。何度も読んだお気に入りの作品。

  • 何かでオススメされていて、卑弥呼が戦うSF?なんだそれは面白そう、ということで購入。

    かなり詳しく書かれたレビューが沢山あるので、あらすじ諸々はそちらに任せます(笑)

    人類を手っ取り早く滅ぼすためには、時間軸を遡って、大した戦力を持たない時代に暴れれば楽だということですかね。

    クロノトリガーというゲームで、未来で宝箱取ったり敵を倒しても、過去の時代に行くと、まだ生きている(残っている)っていうのをなぜか思い出した。

    時間を使ったお話としては面白いのだけど。
    時間超越をして卑弥呼の世界に現れたメッセンジャーOが、どのような使命を負って動いてきたのかが書かれたパートについては、感情移入がしにくかった。

    人が有する感情の物語、として分かりやすく読みたかったのかもしれない。

  • 邪馬台国の時代にて、卑弥呼が1人のメッセンジャーと出会うところから物語は始まる。
    卑弥呼の人間臭さとか、理解力の高さも含めて、物語にすんなりと引き込まれた。

    メッセンジャーというのは人造知性体であり、ETと戦うために存在している。
    そしてETというのは人類に大損害を与えるために送り込まれた敵性勢力である。
    ということは割と冒頭の、26世紀の描写で明かされる。こういう分かりやすくてシンプルな構成は好ましい。

    物語の主軸はあくまで邪馬台国でのETとの戦いなのだけど、随時、未来の話が挿入される。
    未来の話は決して明るい話ではなく、敗走に次ぐ敗走。

    ETとの戦いで劣勢に立たされたメッセンジャーは、その時間軸を捨てて過去に遡る、ということを繰り返していた。
    そんな背景が徐々に明らかになっていくので、卑弥呼の時代での戦いの意味が、自分の中でどんどん重みを増していくのが分かった。

    時間軸が枝分かれした結果、未来から見知らぬ仲間が参戦してくる展開は本当に熱かった。
    これぞ時間戦争の妙!と言ったところ。

    そして全メッセンジャーを統括するカッティを通じて、地球の各地での戦況が伝わってくるのも良かった。
    時間という縦軸だけではなく、地域という横軸でも物語に広がりが生まれて楽しめた。

    文句なしに傑作だった。時間戦争を扱ったSF小説として、自分の中で必読本入り。

  • 西暦248年、不気味な物の怪に襲われた邪馬台国の女王・卑弥呼(彌与)とその従者の幹であったが、突如現れた「使いの王」オーヴィルと人語を発する剣カッティに命を救われる。

    彼らは2600年後の未来から来た人工知性体で、太陽系奪回軍の参謀総長である知性体サンドロコットスのサブユニットとして創られた有体知性であるメッセンジャー・O(オリジナル、個体名はオーヴィルを選択)と、遡行軍統括の時間戦略知性体カッティ・サーク(女性の声で本体は別の場所にある)であり、彌与が襲われた物の怪は「ET」と呼ばれていた。

    オーヴィルは西暦2598年に、人類の第一拠点である太陽系中枢府で生まれた。彼は人類が知識化したほとんどの情報をすでに保持していたが、人と関わることで、データでは得られない人間的な感性を育む期間が設けられていた。そこで出会ったのが補給廠の窓口で、受領者の頭にコーヒーをかけていたサヤカ・カヤニスキアであった。オーヴィルはいかにも人間的な行動を取るサヤカに興味を持ち、惹かれ合い、2人は付き合い始めた。彼女と関わることで愛を知り、そして別れを知った。
    オーヴィルの根底にあるものは、メッセンジャーとして与えられた最優先命令としての「人間への忠誠」ではなく、救えなかったサヤカとの記憶、その彼女が望んでいた言葉。「人に忠実であれ…」

    オーヴィルたちが創られた目的であり、サヤカと別れなければならなかった理由でもある、人類の敵ETとは、何者か(ETクリエーター)によって創り出された増殖型戦闘機械で、様々な形態のものが存在する。そしてその目的は人類の根絶であり、既に地球は壊滅させられていた。だが、その後の宇宙戦争において劣勢を悟ったETは、今よりはるかに弱小の過去の人類を掃討するため、時間遡行を行った。

    一方、人類の存続を目的とするオーヴィルたち知性体も時間遡行を行うが、ETに先を越され、再遡行が必要になる。カッティは、ETが通過する時間枝を見捨て、一気に十万年前に遡行するという無機質な作戦を提示するが、人と触れ合い、感情を獲得しているオーヴィルたち一部の知性体はそれに反発した。結果的に、十万年前に定住してETを迎撃し続ける部隊と、時間枝の分岐点を守りながら遡行を繰り返して十万年前に向かう部隊とに分かれた。

    後者のオーヴィルたちは、四百回以上の戦いの末にようやく本隊との合流を果たす。
    そこでカッティから、クリエーターの正体が一億二千万年後、化学合成細菌から進化を遂げた生命体であることを知らされた。
    クリエーターは時間遡行理論を手にして過去を調査し、地球人の無人観測基地の設置により、自分たちの先祖である細菌類とその母星が一度壊滅しかけていたことを突き止め、その復讐のためにETが送り込まれたという。

    その途方もない事実と遡行戦の疲労により、オーヴィルは極東の小さな島(後の邪馬台国)で、ステーションを築いて凍結に入った。そして千二百三十年後、ETの出現により眠りから目覚め、邪馬台国の女王を助ける。
    その時代は、十万年前から勝ち続けてきた人類側の遡行軍と、未来を喰い荒らしてきたETとの、時間戦略的な拮抗点であり、決戦の時であった。

    彌与は「使いの王」に従い、ETとの戦いに身を投じた。その中で倭国(日本)を知り、世界を知り、「使いの王」の苦しみを知った。そして、彌与はオーヴィルを苦しみから救いたいと願った。たとえサヤカの身代わりだとしても。それから二人は閨を共にするようになった。
    しかし戦況は圧倒的に不利となり、彌与は味方である高日子根の愚行により負傷、カッティは自爆、オーヴィルは深傷を負い死亡。人の軍は希望を失ったかに見えたが、彌与が立ち上がり、声を張り上げ宣言した「人類は負けない、海を渡ってでも生き残る」と。

    その時、空に超巨大戦艦が現れ、オーヴィルによく似た男の姿があった。彼は二十一世紀時間軍パスファインダーのオメガと名乗った。彼の時間枝は、彌与の決意によりたった今産まれ、そして未来からの援軍はつまり、人類の勝利を意味していた。

    オメガの時代に、オーヴィルたちメッセンジャーの戦いは、魏志倭人伝の御伽噺として伝えられていたが、オメガはオーヴィルの亡骸に触れて記憶を引き継ぎ、全てを理解した。メッセンジャー・Oであり、「使いの王」であったオーヴィルの意思は、同じ頭文字を持つオメガに引き継がれた。

    オメガはETとの戦争を終結させた後、元いた時間枝で大勢の人々に歓迎されていた。その中で、不思議な格好をした沙夜という名の娘に出会い、胸の高鳴りを不思議に思いながら声をかける。あの日のオーヴィルのように。



    270ページと少なめの長編小説だったが、上記の要約できていない要約以外にも、オーヴィルの同僚のアレクサンドルが恋人シュミナに向けて書いていた児童文学の話、高日子根の彌与に対する思惑や、オーヴィル亡き後、おそらく従者の幹と彌与が結ばれ、その子孫の沙夜と、Oの意思を受け継いだオメガが出会ったであろうことなど、魅力的な内容を含んでいる。また、1963年に優秀なパイロットとして少しだけ登場したハルトマンは、史上最多の撃墜記録を持つ、実在したパイロットのエーリヒ・ハルトマンであり、オーヴィルが史実を利用して人選するという話のつくりには、卑弥呼に関しても言えることだが、歴史的興味を掻き立てられた。
    未来の知性体であるオーヴィル視点の記述では、本のことを「私製書籍ー脆くてハンドリングの悪い、恐ろしく低密度なデータベースだ。」というように
    書かれていたことも印象的だった。
    あえて苦言を呈するならば、カッティとオーヴィルの死後、彌与たち人の軍が海を渡り漢土に逃げ切ったとしても、それからETに滅ぼされずにどうやって生き延びたのかと言うこと。オメガのいる二十一世紀には超巨大戦艦が造られるほどに発展していることにも疑問が残る。
    とはいえ、そこまで考えさせられた本作は、史実を基に時間遡行や宇宙戦争を絡めた壮大な物語であり、その広大なスケールを見事に書き上げた「時間SF小説」の傑作だった。

  • 壮大なタイムパラドックス、タイムリープSF小説。宇宙規模の戦いの歴史をコンパクトにまとめて居るけれど内容はかなり重め。でも文章は非常にこなれていて非常に読みやすいです。人類を救うために作られたクローン?人造人間?のメッセンジャーと言われる人々が、奮闘して人類を滅亡から救おうとするのですが、敵も味方も時代を超越して戦うので26世紀頃と卑弥呼の時代と紀元前10万年を入り乱れてで壮大極まりありません。
    パラレルワールドの何処か一つでも人類が生き残る未来があれば、そこを死守するという人類の大義と、今この時に愛着を持ってしまったメッセンジャーオーヴィルの奮闘が次第に目的がずれて行く所がとても美しい。
    結末迄美しい名作です。

  • 邪馬台国に未来の戦士が降り立ち機械群と戦う!

    例えると、ナウシカの所にターミネーターがやって来て風の谷の人達やペジテの人達と協力して悪意を持ってるオーム達に絶望的な戦いを挑むといった話!


    タイムパラドックスは置いといてアイディアが面白い!SFってやっぱりアイディアだよねと思わされる一冊!

  • 西暦248年。不気味な物の怪に襲われた邪馬台国の女王・卑弥呼は、2300年後の未来からやって来たと語る男に救われる。
    彼の居た未来において、地球は滅び、人類は謎の戦闘機械群によって殲滅されようとしているのだという。
    そして時間を遡行してまで人類の完全殲滅を狙う機械群から人類を守るために、彼は最終防衛線である3世紀の邪馬台国にやってきたのだった。

    あらすじだけ見ると、ターミネーターみたいな話ですが、面白かったです。
    何せ邪馬台国。何せ卑弥呼。
    未来人と古代人の組み合わせですよ! 大変興味を惹かれました。

    普段SFはほぼ読まない上に、タイムトラベルの話なので、私の頭では理解しきれないところも多く、また、卑弥呼の時代の用語が馴染みがなくて読みにくいと思うところも多々あったのですが、それでも卑弥呼やオーヴィルといったキャラクターが魅力的で十分楽しめました。

    物語は卑弥呼目線の今とオーヴィルの過去が交互に語られます。
    オーヴィルの現状や背負ってるものがだんだん分かってくると、色々と胸に迫ってきてな…。
    人類を守るために過去へ行く。過去を変える。でも勝てない。また過去に行く…を繰り返して、何度も何度も戦ってきて、最後の砦が卑弥呼の時代だったというわけなのですが。

    過去に戻り過ぎて、変え過ぎてしまって、もう自分が生きていた時代には二度と帰れない。
    それが分かった時、やっとサヤカとの別れが胸に迫ってきました。二人はもう二度と会えないと分かって、別れたんだと。そしてそれを選んだのだと。

    別れた時はそんなに何も思わなかったけれど、卑弥呼とオーヴィルの会話でそう言われた時に、ぶわっとくるものがありました。切な過ぎる。
    でも私は卑弥呼派だったので、その後彼女がオーヴィルの実質的な妻になったのは喜びましたが(笑)

    普段SF読まない人でも楽しめると思います。
    そんなに長くないですし。

  • 26世紀、謎の戦闘機械によって地球は壊滅的な被害を受け、人類滅亡へのカウントダウンが刻一刻と進む中、それに抗おうと人類は自ら作り出した人工知性体を過去へ送り込む。目的は敵が現れる前に地球を抑え、出現時に壊滅させることである。それに対して敵も時間を遡るようになり、戦闘機械と人工知性体による際限り無い時間遡行戦争が始まった。幾度も過去への遡行を繰り返すうちに人工知性体のオーヴィルがたどり着いたのは3世紀の邪馬台国。そここそがが未来の全人類の存亡を懸けた最終防衛線であった!

    幾度も戦闘機械と対戦して勝ったり敗れたりしながら邪馬台国にやって来て卑弥呼に出会う。話の舞台はいいと思うし、オーバーテクノロジーはそうなんだけど、それでも制限をつけることでその時代にあった戦い方をしているのは面白いですね。
    紀元前98579年から紀元2598年までの超長期に渡る壮大な物語で、時間枝が幾重にも生まれる中で何が正しくて何が正しくないのかといった葛藤も書かれています。1つの世界を守ることで他に生まれたいくつもの世界を見捨てるのは良いのか?みたいな。
    ただやっぱりキャラクターが薄いというか感情移入しにくいというか感銘を受けないというか・・・主人公が魅力に欠けるのかな。なんだろうこの消化不良感は?
    ふーん、ふーん、ふーんって感じで読み終わってしまいました。

    SFは現実には存在しない架空の未来の技術を使い、それでどういう話を仕立てあげるかっていう作者の想像力がメインだとは思いますが、それでもやっぱり小説としてキャラクターといったものや、文学的なテーマとかも必要だと思うんですよね。
    それがちょっと感じられないかなーって。

    そんな批判めいたことを書きましたが、手離しでオススメはしませんけどそこそこ面白かったですよ。
    SFものとしては比較的読みやすいと思います。

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著者プロフィール

’75年岐阜県生まれ。’96年、河出智紀名義『まずは一報ポプラパレスより』でデビュー。’04年『第六大陸』で、’14年『コロロギ岳から木星トロヤへ』で星雲賞日本長編部門、’06年「漂った男」で、’11年「アリスマ王の愛した魔物」で星雲賞日本短編部門、’20年『天冥の標』で日本SF大賞を受賞。最新作は『ツインスター・サイクロン・ランナウェイ2』。

「2022年 『ifの世界線  改変歴史SFアンソロジー』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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