フリーランチの時代 (ハヤカワ文庫 JA オ 6-8)

著者 :
  • 早川書房
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感想 : 65
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  • Amazon.co.jp ・本 (316ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784150309305

作品紹介・あらすじ

「私は人類をたいらげたい」-火星やまと基地の隊員4名が体験した、あまりにもあっけないファーストコンタクトを描く表題作、太陽系開拓時代に孤独な宇宙船を駆るニートの日常「Slowlife in Starship」、いつのまにか不老不死を獲得してしまった人類の戸惑い「千歳の坂も」、そして傑作長篇『時砂の王』に秘められた熾烈な闘いを描くスピンオフまで、心優しき人間たちのさまざまな"幼年期の終り"を描く全5篇収録。

感想・レビュー・書評

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  • SF。短編集。
    粒揃いの作品集。どの短編も良い。

    「フリーランチの時代」
    ファーストコンタクト。軽く読めて良い。

    「Live me Me.」
    医療。人間と機械の境界。

    「Slowlife in Starship」
    スペースオペラ。これも軽い。AIのキャラが好き。

    「千歳の坂も」
    不老不死。森博嗣さんのWシリーズに似た設定。近未来はこうなるのかも。ディストピアですね。

    「アルワラの潮の音」
    長編『時砂の王』のスピンオフらしい。世界観もストーリーも濃密。長編も期待大。個人的ベスト。

  • 「Live me Me」が特に面白かった。ポップな感じを想像してたけど、いい意味で裏切られた。

  • あったかい。2、3、4がすき

  • 長編もいいけど、短編もおもしろい。
    さすが小川一水!!

  • フリーランチとはどういう意味かと思ったら、まじでフリーのランチだった。slowlife in starshipが、SF界のニートって感じで面白かった。この設定でライトノベルとかSFほのぼのコメディとか、いくらでも話が広がりそう。

  • 小川一水さん作品の3つめ。おもしろいわ。

    「フリーランチの時代」:ファーストコンタクトなのに全くドラマチックでないところがいい。生きるか死ぬかの選択でアッサリとエイリアンになることを選ぶシーンがいい。

    「Live me Me」:事故で肉体を失い、辛うじて残っていた脳の活動をシステムに差し出すことで身体を卒業して生きていく。肉体を失った後の自我、感情、愛の行方が感動的。

    「Slowlife in starship」:宇宙船で暮らすニートの話。宇宙船の中で猫を追いかけたりとか、まったりした感じがいい。

    「千歳の坂も」:科学と医学の発達により、延命処置が寿命を追い越すようになった時代。健康維持法が制定され、老いてはいけないことになった。老いる者には老化税や健康責任税が課され、役所の人間が不老不死処置にやってくる。死ねないって怖い。

  • さっぱりとした文章と豊かな人間の感情。すごくおもしろかった。

  • どれも面白かった~。読みやすい。

    『フリーランチの時代』
    「私は人類をたいらげたい」と物騒なことを言ってるけど、食べたい、同一化したい、という意味なんだと掘り下げられて面白かった。コメディ。同一化することで、メリットはデメリットは?と素朴に進んでいくのが良い。問題を生じるだろうけど、それは置いといてな感じで進むのも面白かった。軽く読める。

    『Live me Me.』
    機械の自分ではなく肉体のほうに語りかける母親を見るのは辛いなと思った。機械化する段階での、コマ数でのやりとりなど面白かった。ゲームやパソコンの進化を見ているよう。
    魂や思考を電気信号と突き詰めればそうなるが、機械に自我が宿るのも良かったな。記憶を蓄積し、思考の経験によって生まれたということかもしれない。
    私の連続性。どこから、いつから、を考えると恐ろしいが、肉体は無いんだし、私は私であるという認識と承認を繰り返すしかない。

    『Slowlife in Starship』
    あらすじにニートってあるけど、ニートじゃないような。フリーターとも違うし、しいていうなら個人事業主が適当かと。めっちゃ働いてるじゃんとしか。外部の人間との折衝を断っているという意味で使いたかったのかな。
    ミヨへの扱いが、本当に機械?感情ある?と疑いの余地を残しているのが面白い。そしてそれをちゃんと自分がそう受け取っているだけかもしれないと自覚するのも良かった。
    組織のスピノールと個人の集合体のベルターという世界観が面白かったな。
    ベルターが存続できる理由は技術の進歩による完全な自給自足生活なんだろうけど、やっぱりうっすら社会的つながりというか、セーフティが無いと個人の存続は難しいと思うんだよな。
    最小単位のまま生きていける世界っていうのはそれはそれでユートピアだと思う。弱くても一人で生きていける世界になって欲しい。
    はやぶさが出てきたのが良かったが、ちょっと出してみた感が否めない。意味を汲み取れなかった。現代と地続きであるというフックだったのかな。

    『千歳の坂も』
    最後まで読んでから、タイトルの意味って二年坂、三年坂から来てる?と思ってしまった。ただの思いつき。
    不老不死にさせられる、という社会が面白い。自殺薬が魅力的に見えた。
    人口増加で大変なことになるんじゃないかと思ったけど出生率はどん底っていうのが、自然の力なのかなんなのか。学校教育が衰退するな。
    また、定命と非定命の戦いも面白かったし、なんだかんだ、安瀬と羽島が何度も顔を合わせて会話を繰り返すのが良かった。
    ディストピア社会なのにどこかとぼけた面白さ。

    『アルワラの潮の音』
    冒頭の人間の正体を忘れていたので、ラヴカの憎しみが面白かった。ク・プッサ視点だと好きな女の子という描写ながら、あれ?飲まず食わずで踊らされるのひどいな?とか、母親に売られた?つらとか思える箇所もあり、しかし見過ごしていた。確かにつらいしひどい。憎むの超わかる。
    人間を養分にしてETが繁殖するのがめちゃくちゃ気持ち悪くておぞましくて吐き気を覚えながらも興奮した。
    科学を知らないながらも、よくわからないすごいものを魔法として捉えているからこそアレクサンドル達を受け入れられたんだろうな。適応が早い。
    ファーストコンタクトモノのようで面白かった。

  • 面白かったです。未来の話、過去の話。
    「千歳の坂も」がとても好きでした。いつのまにか不老不死を獲得した人類が辿る混乱と争い…老衰や病死が無くなるのと引き換えに、老いているから新しいものに目が向かなくなって産業も衰退するというのは現実感がありました。死なないから新しく命を生み出すのも一握りの人々で。
    そんな世界で、不老不死になることを拒否した人物と、彼女を追い続ける役所の男の、何百年ものお話。
    「お互いによくもまあここまで」となるラストが好きでした。羽島さんも安瀬さんのなぜ生きる、いつ死ぬ…が知りたくてずっと、それこそ姿が変わってまで、何十光年もかけてたどり着いたと思うと。途轍もない時間でした。
    「Live me Me.」「アルワラの潮の音」も好き。「時砂の王」を読んだのは昔々だったけれど、こちらもハードな古代SFでした。

  • しっかりしたSF的考察がありながら、主人公をうまく設定することで重くなりすぎずロマンを感じさせる話に仕上がっていると思う
    2作目は事故でサイボーグ化していく過程が、どこか冷めた視点で淡々と語られながら、それでいてどことなくウエットな絶妙な距離感で書かれている

    最後は時砂の王のスピンオフ作品
    超生物と原始社会の人間が戦うというのはこの作者が繰り返し用いる表現だけど、原始社会の人間の視点から彼らが圧倒的に不利な状況に振り回されながら必死にもがき理解しようと努める姿は天冥シリーズにも通じるものがある
    機械や超生物のような極めて合理的なものと対比することで人間らしさとはないかを逆に表すという、合理的な展開を得意とする硬派なSFとは逆方向の表現が同居しているのが魅力的と思う

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著者プロフィール

’75年岐阜県生まれ。’96年、河出智紀名義『まずは一報ポプラパレスより』でデビュー。’04年『第六大陸』で、’14年『コロロギ岳から木星トロヤへ』で星雲賞日本長編部門、’06年「漂った男」で、’11年「アリスマ王の愛した魔物」で星雲賞日本短編部門、’20年『天冥の標』で日本SF大賞を受賞。最新作は『ツインスター・サイクロン・ランナウェイ2』。

「2022年 『ifの世界線  改変歴史SFアンソロジー』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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