ライトジーンの遺産 (ハヤカワ文庫JA)

  • 早川書房 (2008年10月23日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (640ページ) / ISBN・EAN: 9784150309398

みんなの感想まとめ

臓器崩壊という奇病が蔓延する未来を舞台に、人工臓器を巡る人々の生き様を描いた作品は、主人公の特異な能力と彼の内面的葛藤を通して、深いテーマを探求しています。短編集形式で構成されており、それぞれのエピソ...

感想・レビュー・書評

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  • 再読。

    原因不明の「臓器崩壊現象」が多発する未来社会。謎の現象と共に人工臓器・臓器移植技術は発展し市場を独占したライトジーン社であったが、あまりに巨大すぎ力を持ちすぎた故に解体され現在はそれぞれ分割された臓器メーカーが移植に対応している。

    主人公はライトジーン社が研究の過程で生み出した人造人間・最強のサイファ(いわゆる超能力者)である菊月コウ。人造人間というとアンドロイドイメージだがコウはフランケンシュタインの怪物に近い。しかし見た目は普通の人間。見た目も年齢相応に老けてゆくしサイファとしての能力もあまり活用はしていない。
    ライトジーン社無き今は「自由人」として生き、ウイスキー代を稼ぐ為に臓器犯罪捜査に対応する市警第四課に小間使いのように使われている。
    監視役兼相棒の新米刑事タイスと共に、巷で起きる臓器にまつわる奇妙な現象・事件の解決に奔走する…。

    サイファであるコウ、監視役といいつつも突っ走り気味なタイス、謎の多い第四課課長・申大為、コウの兄であり現在は姉(サイファの能力で完璧な美女へ性転換した)であるMJ等キャラクターも濃く魅力的。
    臓器にまつわる事件も多彩。臓器研究・実験の末に産まれた怪物。違法な臓器移植、家の中にある母の死体に気がつかず暮らしていた娘、そしてコウとMJを巡る陰謀と意外な人物の正体。
    いかにもSFといった味付けだが、メインは人工臓器よりも中身をどれだけ継ぎ接ぎしても変わることの無い人の心の複雑さ奇妙さ、そして強さであるように思う。唯一平和な日常を描いた短編「ヤーンの声」の、人工声帯と己のトレーニング・技術によって唯一無二の歌声を得たヴォーカリストの話が一番好きだ


  • 内蔵が自立して脱走する話といえば『狐と踊れ』をすぐに思わせますが、本作では不随意な胃でも自分の一部として支配しなければ――敵に、殺られる。90年代までの神林作品の進展を読み返せば、ぞくりとさせるまず冒頭。世界は重厚になる一方、主役は孤高のサイディックでもMMHSでもなく、海賊課刑事よりヨレた中年男。文章の半分くらいコウのとりとめない雑想で、思索に酔うのももはや悪癖。神林長平作品ではすでに『魂の駆動体』でも老年が扱われましたが、『七胴落し』の少年の名残も見られるようなのです。

  • 体内の臓器崩壊現象が頻発する未来社会。かつて人工臓器市場を独占していた巨大メーカー・ライトジーン社なき今、臓器をめぐる奇怪な現象や犯罪が続発していた。都会の片隅で自由に暮らし、本とウィスキーを愛する菊月虹は、ライトジーン社が遺した人造人間。虹は市警の新米刑事・タイスと共に臓器犯罪を次々と解決するが、やがて虹と彼の兄・MJの出生の秘密に関わる陰謀が彼を襲う。傑作ハードボイルドSFの決定版!
    (1997年)
    — 目次 —
    アルカの腕
    バトルウッドの心臓
    セシルの眼
    ダーマキスの皮膚
    エグザントスの骨
    ヤーンの声
    ザインの卵
    あとがき

  • 人類が原因不明の「臓器崩壊」に見舞われている近未来を舞台にしたSFの連作短編集です。

    人工臓器のメーカーであるライトジーン社が解体され、この会社によってつくり出された人造人間のコウこと菊月虹は、ライトジーン市警察中央署第四課の申大為の依頼で仕事を引き受けつつ、自由人としての生活を享受しています。彼らには、「サイファ」と呼ばれる、ひとの心を読んだり操ったりすることのできる能力があり、新米刑事のタイス・ヴィーや、コウとおなじくライトジーン社によって生み出されたもうひとりの人造人間であるMJらとかかわりながら、さまざまな事件を解決していきます。

    ウィスキーをこよなく愛するコウの、カッコ悪くてカッコいい生きざまに魅かれました。

  • 映画「ブレードランナー」の影響を色濃く残す作品。発表当時は朝日ソノラマだったせいかライトノベルを意識した表現方法などもありますが、ただのライトノベルでは終わらない神林作品。
    臓器を変えていって長寿命化したでも脳も健康でいられないのではないかというのが現代的な不安になるかと思います。じゃあ、脳を少しづつ変えていったらどうなるのだろう?自分というものは維持できるのだろうか?などと思い巡らせてしまいます。

  • ライトジーンの遺産 (ハヤカワ文庫JA)

  • ある日突然、四肢や臓器が崩壊する原因不明の奇病が蔓延する未来。
    人類の危機を救うのは、人工臓器メーカー。しかしその人工の臓器さえ、奇妙な事件や奇怪な現象を巻き起こす。
    臓器自体が、臓器を使っている何者かが、臓器を造るメーカーが。
    かつて奇病の研究の中でライトジーン社に生み出された「人造人間」・コウは、自由人として気ままに生きることを望みながら、たいていいつも臓器がらみの事件の捜査に駆り出される。彼の兄・ユウ、彼を使う刑事・申大為、そして新米刑事・タイスによって。

    特殊能力を持ちながら、「自分の手を使った方が早い」と嘯き、ウイスキーと紙の本をこよなく愛するコウ。記憶とか、魂とか、人生とかについて、それは一体なんなのだろうとじっくり考える連作短編集。

  • とても良かった。表紙絵の遠藤浩輝のマンガにしばらくハマってた。

    主人公はウィスキー好きの自由を満喫している人造人間。
    皆さんがおっしゃるように、とても読みやすかった。厚さの割に、あっという間に読み終わってしまった。

    「自分の気の持ちようで世界はいかようにも変化する、というのは正しいかもしれないが、自分の気持ちというのは自分だけで独立しているものではないことに気づかない限り、気分は変えられないものだ。」
    神林作品を読んでいると、その時その時に、自分が抱えている心の中のもやもやを、代弁してくれる表現を見つけることが多い。それで悩みが霧消するわけではないけれど、モヤモヤが言葉に変換されて目に見えるオブジェクトになるだけで、心が軽くなった気がするのは確か。歯医者で歯石を取ってもらった直後のように。(また時間が経つとモヤモヤに包まれるのだけれど。)
    戦闘妖精雪風や敵は海賊でも同じような体験をした。

  • 「本はうるさくなくていい」の一文が輝くハードボイルドSF。大変に大変におもしろかった。しかも「神林作品を初めて読む人にすすめやすい」と噂の通りの読みやすさ。どの章も好きだけど、対になる<エグザントスの骨>と<ヤーンの声>は良かった。各章の題名が社名と対応の人工臓器になっていて社名ABCDとんでXYZで並んでいるので、E〜W社のつくる臓器と<ライトジーン社の遺産たち>の物語もあるはずよね…と想像するのもまた楽しい。(<ザインの卵>で謎も残さず美しく終わってるので、間を続編として求めるのは野暮だというもの。)

  •  人間に臓器崩壊現象が発生する未来。人工臓器メーカー「ライトジーン」によって造り出された人造人間の菊月虹は超能力を用いて臓器犯罪の解決に協力していた……というもの。
     各章毎に物語が完結しており、神林長平作品にしては珍しく読みやすくて、何を表現したいのかはっきりと分かる作品。それ故、分量こそ多いものの、気軽に読み進められました。
     他の超能力SF作品のように爆発が起きたり派手なバトルが起こったりせず、主人公が独特の思考(哲学)によって事件の真実を解明するといったミステリーのような作品。

  • ある種の超能力をもった人造人間が主人公となり、人工臓器に絡んだ陰謀に関わっていく全7編の短篇集です。全編中々に味わい深い作品が揃っていますが、多くの謎が明らかにされる「ザインの卵」が特に良かったです。

  • 神林作品の中ではさらりと読める連作集ではないでしょうか。
    思念を読み、思念を力に変える能力を持つ“サイファ”、その始まりの人造人間――のはずなのに、主人公はひどく人間くさい。否、人間社会を満喫している。
    人工臓器を使うことを余儀なくされた都市での、酒と本を愛する気ままな男の事件簿のようである。

    ライトノベル調に説明すると“四十路に入った俺の兄貴は17才の強気美女だが全然ときめかないぜ(俺は)”だった。
    ――間違いはないはずだ(笑)。

    “だから友よ、生の本を読め”

  • 副題は「人造人間 菊月虹のΨ難」。
    超能力は疲れるし効率が悪いとぼやき、ウィスキーを嗜みつつ古本の頁をめくり、家賃の催促に怯えながら生活の糧を得るための仕事を探す。
    優雅に見えなくもない貧乏生活を飄々と楽しむ最強の人造人間。
    その出自と能力のせいで、厄介事に次々と巻き込まれるのです。
    グロテスクな描写もあるし、哲学的戯れ言が長いところもあるけど、ライトな読み心地です。
    楽しめました。

  • 面白かったー!身体の臓器が壊れていく奇病が人々を怯えさせる世界と、そこに生み出された二人の人造人間。特殊な設定が活かされたストーリーにいつしか夢中になってた。

  • 腕、心臓、眼、皮膚、骨、声、そして卵子。ヒトを形づくる器官と臓器を人工的に作れるようになった未来。人工器官もヒトに属する限りヒトの情念と無関係の只のパーツとしては存在しない。人造人間、自由人、超能力者、人工器官製造会社、警察と様々入り乱れるSF大作だけど、一気に読めて面白過ぎ。

  • コウさんがヘタレかっこいい
    タイスがかわいい
    MJがかっこいい

  • なぜか人間の臓器が崩壊してしまうという奇病が突然蔓延し、人類は高度な人工臓器の開発と臓器移植技術により最初の混乱から脱した。
    その後、人工臓器市場を独占していたライトジーン社が解体され、臓器製造は各部門ごとに新たな会社として独立した。
    主人公の「菊月虹」は、人工臓器をめぐる犯罪を取り締まる中央署第4課に雇われている。実は彼はかつてライトジーン社が製造した人造人間で、「サイファ」と呼ばれる特殊な共感能力を持つ。普通人の思考を読んだり、思念の力だけで、普通人の心臓をも止めたりできるスゴイ能力だ。
    彼はある事件で知り合った新米刑事タイス・ヴィーと共に人工臓器が絡む事件を解決する…
    こんなに派手な設定なのに、アクションは少ない。最初はちょっと拍子抜けした。本とウィスキーを愛する主人公のコウさんが、社会との関わりを最小にしている自由人で、40代という体力はないが自己の確立したオトナで、さらに「テレパシーより喋ったほうがラク」という考えの持ち主だからなのかもしれない。
    中篇7話の連作で一話ずつ事件が解決するので、先をあせらずゆっくり読めた。コウさんが容疑者にされる「ダーマキスの皮膚」とタイスのはしゃぎっぷりが可愛らしい「ヤーンの声」が面白かった。

  • 臓器崩壊現象が多発する未来では人工臓器が主流。オール人工人造人間の主人公は感応力的な超能力でその日暮らしをしていた!…というハードボイルドホームドラマ。

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  • 好きな雰囲気のSFだ。ウイスキーが飲みたくなる。続きはないようなので残念。著者の作品は読んだことがなかったので、この機会にほかのものも読んでみたい。

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著者プロフィール

作家

「2023年 『ベスト・エッセイ2023』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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