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Amazon.co.jp ・本 (496ページ) / ISBN・EAN: 9784150309831
感想・レビュー・書評
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前作グラン・ヴァカンスは終盤まで全体像が見えてこない話の展開に何度も挫折しかけ、正直あまり面白いとは思えなかったのですが、ラギッド・ガールを読み、やっと「廃園の天使」という作品の詳細が見えてきて「あれ?グラン・ヴァカンスってもしかして面白かったのか??」という気持ちになりました。今は読み返したくて仕方がないです。
さて、本作ですがいずれの短編も単独で読み応えのある作品ばかりで、非常に面白い短編集でした。特に表題作からクローゼット、魔述師までの流れが素晴らしいですね。人間を仮想現実世界に送り込むまでの現実的な課題とその解決方法はリアリティに溢れており関心しましたし、そこから生じる課題(現実に及ぼす影響やAIの人格問題など)は、我々のいる現実世界が同じ場面に直面した際の議論に活かせるのではと感じるほどでした。20年以上前にこういった視点から問題を提起し、物語に落とし込んでいた飛先生は本当に素晴らしいSF作家ですね。
また、表題作のラギッド・ガールは美醜やジェンダーの観点から見たSF作品として素晴らしい完成度を誇っているので、単体でも多くの読者の手にとって欲しいですね。自分の環境や年齢などによって捉え方が変わるかもしれないと感じたので、また時間をおいて再読したいと思います。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
前作「グラン・ヴァカンス」は評価を三にしようか四にしようか迷いましたが、今作を読んで四にして間違いなかったと感じました。
前作で語られなかった部分が短編を読むごとに明らかになり、気持ちいいです。 -
SF。シリーズ2作目。
〈数値海岸〉を舞台にした短編集。
一言でいうと、やっぱりスゴイな…、という感じ。
エロくて、グロくて、美しい。
全体的に、前作よりも分かりやすかったかも(あくまで比較的)。
もう1回『グラン・ヴァカンス』読みたくなる。
「蜘蛛の王」がベスト。アクションシーンが多くて読みやすいが、SF的アイディアに溢れていて、とても楽しく読めた。 -
前作「グラン・ヴァカンス」は、舞台となる仮想空間「数値海岸<コスタ・デル・ヌメロ>」の成り立ちやここに至るまでの経緯等がほとんど描かれておらず、謎が謎のまま幕を閉じる作品ですが、この「ラギッド・ガール」に収録されている作品群を読むと、その謎のかなりの部分が解明します。こちらを先に読んでも作品としては十分成立しますが、「グラン・ヴァカンス」を先に読んでおくことを絶対におススメ。物語の解像度が、相当異なってくると思います。
人間が仮想空間を”体感”するために、計算資産をできるだけ食わないように実レベルで開発された画期的技術「情報的似姿」。「ラギッド・ガール」に収録されている作品の半分は、この「情報的似姿」開発の経緯と展開を、生身の人間社会でのひとつのできごととしてサスペンスフルに描写しています。
「グラン・ヴァカンス」の登場人物たちは、全てAIでした。それと比べると、人間が主役の作品は平易で感情移入しやすいんだろうなぁ・・・なんて思いながら読み進めた鴨が浅はかでした(^_^;人間の登場人物たちの方が、数倍グロテスクで感情移入不能であるという、この驚き。特に、作品群のドライバーとなる阿形渓と杏奈・カスキの両女性キャラの異形ぶり、激烈ぶりといったら、正に夢に出そうなほどのユニークさ。特に杏奈・カスキは、作中では相当な美女であることが仄めかされているのに、読後のイメージは「気持ち悪い」の一言しか思い浮かびません。このキャラ設定、どこから想起されるんだろう。飛浩隆の想像力に脱帽。
人間の情動をコピーしたともいえる「情報的似姿」とは、生身の人間本体とは切り離されて独自に仮想空間を動き回る存在であり、人間社会のモラルや規範に縛られない存在です。それ故に、コピー元の本人の意思とは関わりなく隠された欲望や衝動がストレートに表出されてしまう、その醜さを描くのが、この作品群のテーマの一つなのかもしれません。
・・・とか理屈臭いこと書いてますけど、そんなお利口な理屈をこねる作品ではないことは、鴨も肌感覚でよく判りますヽ( ´ー`)ノとにかくグロテスクで醜悪で破壊的な作品ばかりだけれど、でも、美しいんです。破壊し、分解し、浸食する、そのシーンひとつひとつの美しいこと、艶やかなこと、そしてセンシュアルなこと。細かいロジックを突き詰めていけば、突っ込みどころはたくさんあります。が、そんなことを気にしていては楽しめない世界観だと思います。
キャラがぶっ飛び過ぎていて鴨的には☆5つまでには行かない感じですが、でも次作が出たら絶対買います!楽しみです! -
中短編集でありながら、どれもがっつり効く。作品間でのクロスオーバーが多く見られるのも楽しい。例えば硝視体<<<〈非の鳥〉、ミランダ≒著作人格、チョコレートの感触と香り≒父の指についたランゴーニの髪の匂い、など。人物関連もいっぱいあるけど省略。単純に父=安奈かと思ったけど、阿形渓でも面白いか。p.88、過剰な感情移入故の懊悩かと思いきや異常な嗜虐性向故の官能だった、というのをさらりと吐露する描写が安奈の静かな狂気を感じさせて一番怖かった。リアルと数値海岸が互いにどうなっていくのか、続きが気になる。
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長編よりも中小編の方がやはり切れ味が有ると改めて思いました。
前作「グラン・ヴァカンス」の伏線を回収していく中編集。
あちら側とこちら側の視点で描かれるどちらの世界も美しい文体で綴られ、
最早中毒気味です…次回作が楽しみ過ぎます!
「魔述師」「蜘蛛の王」辺りが個人的には好み。 -
グラン・ヴァカンスを読み終えてから、だいぶ時間をおいての読了。
飛作品には、生と死が溢れている。
生と死が、モザイク状に作品を形造っている。
数えきれないほどの側面があるように見えても、生と死には実は境界はなくて、時には全く一続きのものにも見える。
どのように生きるのか。
自分の、どの欲望に沿って生きるのか。
どのような死を選ぶのか。
自分の、本当の欲望はどんな形なのか。
そんなことを問われている気がした。 -
『グラン・ヴァカンス』を読んだのはたぶん1年ぐらい前だけど、これは連続で読めば良かったなー。
『グラン・ヴァカンス』を読んだときは、”数値海岸”、”夏の区界”…etcと一つ一つの単語からも感じる凄まじいこだわり、静謐ってこういうことだなと思わされる文章力からなる見事な世界の美しさに圧倒された。そして、それとは全く正反対とも思えるんだけどやはり美しい残酷な痛み・苦しみの表現、これも本当に凄かった。
本書でも飛浩隆の書く世界の美しさというのは改めて感じ入った。が、それよりも彼の書く世界というのが”数値海岸”の中だけでなく、ちゃんと現実の理論があってフィクション(数値海岸)があるとまで練られているところが驚きだった。もちろん、この現実の理論もフィクションではあるのだが、まるで別世界か遠い未来でも見てきたんじゃないかと思えるほど虚構が理に敵っている。第三作が本当に楽しみです。 -
前作、グラン・ヴァカンスの続編。
表題作はアンソロジーで先に読んでいたがいまいちピンとこなかった部分があった。だが前作のグラン・ヴァカンスを読んだあとではすっきりした。
グラン・ヴァカンスの続き、別視点からの話なんだなと。あのVR世界の開発者や大途絶の原因の事件を描いている。
いつもどおりの残酷な世界。思うにこのようなVR世界だと世界破滅ものが不自然ではない。んまあ現実世界以上に魅力的なものをもってこないと説得力がないが。
箱庭世界で神として世界をコントロールしたい、徹底的に破壊したいのは人間としての業なのかと読後に考えた。
VR技術として「似姿」という方法をもってくるのは非常にリアルだ。面白い。
さて、三部作の最終巻はいつ出版されるのかなと…… -
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作家「飛浩隆」はSFとしてのフレームワークがしっかりしている事が好きな理由であるが、SFであるのに多彩な色・香り・風景・音などを感じられる希有な作家であると理解している。物語の内容については前作で語られなかった背景や、異なる平行時間の物語の入った短編集。期待が裏切られることは無いと約束する。
SFファンでなくとも本シリーズは読んでいただきたい作品の一本である。またこれは個人的ベストSFランキングの中では比較的近年にランクインした作品でもあり間違いなくベスト3に入る。
追伸:いつも読み返す時期は冬~春であり、これから暖かくなって行き、初夏を迎えるまでには「夏の扉」を読み返してみたくなる不思議な物語。 -
「グラン・ヴァカンス」に引き続き、とても良かったです。「夏の視硝体」は前作の後で読むと切なくなりました。
個人的に最も印象に残ったのは「魔述師」。これ、未来版『非実在青少年』問題…ですよね?
現在リアルに起きている論争に関しては、フィクションを愛する者の端くれとして規制に反対ですが、この作品内の<ダイ・イントゥ>の行動には一定の倫理的正当性がある、と感じてしまう。そんな自分に気が付いて少しだけぞくっとしました。
フィクションは現実を直接的に変えたりはしないけれど、優れたフィクションは現実を解釈する私達の内面を揺さぶる。
文章の持つ力というものを見せ付けられた気分です。 -
読後、その本のことが頭から離れない…思考が止まらない。そう思える作品が良い本だと思います。この作品がまさにそうでした。
読むだけで痛い。心の奥底まで震える。
自分の深層心理に触れられた気がする。
圧倒的情報量に頭がクラクラした。
次々移り変わる場面…現実世界や仮想現実の区界。家にいながら色々な世界を旅することができる。遥か上の視点から旅をすることができる読者はゲストよりも贅沢かもしれない。
グラン・ヴァカンスと同じく、至る所に散りばめられた残虐性に、その倒錯的な美しさにやはり惹かれてしまう。残酷なのにも関わらず、何故こんなにも美しいのか。圧倒的な文章量なのにも関わらず、最初から最後までつまらないと思う言葉がない。好きだなと思う文章が沢山あって読むのが楽しくて仕方なかった。ここまで壮大な小説は他に読んだことがない。その設定が、舞台が、唯一無二で本当に好き。好きという言葉でしか表せないのがもどかしい。心から愛している。
きっとこの作品に、文章に恋をしている。
この残酷で美しく病める世界にいつまでも囚われていたい。 -
前作がまさかの今作の書くためのプロローグだったとはね・・・してやられた。素晴らしい作品でした。
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廃園の天使シリーズ2作目。
1作目のグラン・ヴァカンスとはもちろん違う舞台だが、文章や描かれるものは美しく、また水面下で取り返しのつかないことになっているかのような静けさからの恐ろしさ、迫力がある、それに官能的。
読み進まずにいられないとはこのことです。 -
グラン・ヴァカンスの周辺の短編集。
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「廃園の天使」シリーズ2作目にあたる中篇集。
前作『グラン・ヴァカンス』の虫喰いになったピースが少しずつはまっていき、<数値海岸>や<大途絶>の全体像が朧げながらみえてくる。
複雑に構築された世界観は、SF初心者かつ完全文系人間の自分には理解するのがかなり難しい…。
とはいえ、圧倒的なワードセンスの妙と、常識というラベルがペリペリといともたやすく剥がされていくような感覚は中毒性があり、ぐんぐん読んでしまった。 -
中短編5編
グランヴァンカスの世界が,その成立事情や理念,崩壊のプロセスなどわかる仕掛けになっている.短編それぞれも面白いが,グランヴァンカスを読んでなかったら★は3かな -
解説:巽孝之
著者プロフィール
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