虐殺器官 (ハヤカワ文庫JA)

著者 :
  • 早川書房
4.12
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本棚登録 : 11576
レビュー : 1549
  • Amazon.co.jp ・本 (432ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784150309848

感想・レビュー・書評

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  • 文体の作りが馴染めないまま後半に突入。内面的な情報がおおく、情景描写が少なく想像力を試される。

    4章ぐらいから、動きのある展開。

    人間は、やはり争いなしに生きられないものかと…殺しあうことで得る平和、それに手を染める人間とは…テーマが深くて、一回では、理解しがたい。

  • 良かった点:
    ・技術面での充実した調査。特に材料系の調査は充実していたのではないか。
    ・ミリタリーものらしくない一人称語り。新鮮。
    ・虐殺器官という設定。興味深い。

    悪かった点:
    ・技術間の発展の格差。これだけ発達した材料系・生体系技術があるのに、自動翻訳やら生体探知器やらが存在しないのは考えにくく、近未来の発達に統一感がなく不自然。
    ・知識の陳列:カフカやらオーウェルやら、なるほど単語は多いがどれもがあまり肉付けに寄与しておらず散発的。「神は死んだ」の引用のくだりはニーチェの言うところとまるでずれているが、意図したのか調査不足か?
    ・心情が読めない:主人公の内省と行動が結びついていないように感じる。悪役しかり。虐殺器官の掘り下げがもっと欲しい。

    総評:
    設定は面白いのに、物語に当てる焦点のピントがずれていると感じた。

  • 奇しくも9月11日に読み終えたのがこれ。ネット上で非常に評判の高いSFってことで読み始めたのだけど、しばらくはIDタグを埋められた人が出てくるくらいで、未来設定が出てこないため、ハードボイルドかミステリ小説かと思った。

    また、作品の書き出しはブラッドベリやディックのように、ある意味詩的で思わせぶりだったり、死のイメージの回想だったりして、ウーンちょっとなあと思ったが、読み進めるうちにどんどん読みやすくなってくる。

    さらに、舞台も大筋のストーリーも、ハリウッド映画のような迫力が有り、文体を含めてかなり翻訳物の「洋物」を意識しているが、途中で自分の体験からの「死」を語ったりするあたりは、日本人の作家らしく理解しやすい。

    内容的には、直接手を下さないが世界中の虐殺に関与するテロリスト(というか、煽動者)の暗殺のために、ヨーロッパやアジア、アフリカを飛び回る特殊部隊の男の話で、かなり現実に沿っている様な内容のため、SF初心者にもとっつきやすい。

    個人的には、第2部(プラハ)の時点でオチは読めてしまったものの、最後まで面白く読めた。ただ、これはSFか?どうだろう?

    途中で文学ネタから生物、映画、ネットネタまで細かく広く散りばめられているあたりも、サブカル魂をくすぐられるため、ネットで人気がでるのもよくわかる気がする。

    あまり作品を残していない作家だそうなので、少ない作品を集めてみようかと思う。

    ただなあ、ハヤカワの文庫が入るブックカバーが少ないんだよなあ…。

  • 非常に面白かった。これぞSFという感じ。特定のテクノロジーという媒体を通じて、人間の姿を、内面をありありと描き出す。淡々とした筆致で描かれる残虐な戦場の光景というアンバランスさから引き込まれた読者は、もはやその冷徹に社会を見通し、吟味する視線からは逃れられない。言語というものを通し、そして文化、哲学を通して人間の主体性の問題について正確に言及するやりとりの深遠さに加え、物語の筋も秀逸でエンターテイメントとしても完成されている。間違いなく傑作。作者の夭逝が惜しい。

  • タイトルからして、グロテスクなものを
    想像しがちだったけど、読んでみると
    人体の破壊描写とかはあるけど
    殺人快楽のようなものではなかった。
    どストレートな長編SFで、内容自体は
    少し難しかったけれど文体が
    とても読みやすかった。
    後半のジョン•ポールの虐殺文法の
    あたりからグッと面白くなった。
    『言葉』と『人間の死』への関係性を
    深く考えさせられた。

    作者が34歳の若さで亡くなっており、
    虐殺器官と、もうひとつ『ハーモニー』
    という遺作のオリジナル長編があるので
    そっちも読んでみたい‼︎

  • 冒頭の描写が鮮明に焼き付いて、個人的には美しいと感じた。確かにルビは好き嫌いがはっきりわかれるだろうなあ、とも。かく言う私もこの手のルビやカタカナは苦手なタイプ。でもまあ、そこはSFやし(?)、と割り切って。癖なくさらさらと読んでいける。人を選んでお勧めしたい一冊、かな。

    "ことば"に関心を持っている者として、"罪"や"死"に関心を持っている者として楽しめた。延命治療云々、痛覚ゾンビ云々。

    内と外の問題なのかなと思った。

    『ハーモニー』も読もうかなあ…。

  • 本屋さんで見かけておもしろいのかな~と思って手に取った

    アメリカの近未来、戦争が商売になる(今も?)
    テロ対策として徹底された情報社会
    貧しい国などで起こる内乱虐殺
    虐殺の起こる国にみえる人影・・

    わりとすっきりする結末でよかった
    罪の意識とかそういう話はちょっとむずかしかった

    若くしてなくなってる作家さんらしく、
    巻末のお母さんの言葉に涙涙・・><
    やりたいことがいっぱいあって、しかも才能があった人が早くに死んじゃうのはやりきれない

  • もしかして、今あちこちで繰り広げられている紛争を予言していたのかと思ったほど臨場感があり、斬新というかエキセントリックな兵器や装備の説明でどうにか、これがSF小説だということを思い出した。

    クラヴィスとジョン・ポールは鏡合わせのような、一対ともいうべきキャラクターだと思う。どちらも家族を失い喪失感を抱え、一方は虐殺を遠回しに仕掛け、一方はそれを制圧する。そしてそんな恐ろしい残酷な現場に関わりながらも、頭の中は妙に冷め正気を保っている、というような。

    特別な存在だったルツィアを目の前で失い、特別な絆と罪悪感を感じさせていた母が、自分のことをさほど心に留めていなかったと知ったクラヴィスだからこそ、「虐殺の文法」を用いてアメリカを虐殺の場にしてしまうラストは納得。

    日本語による作品なのに、ちょっと翻訳されたような、海外SFやミステリのような文体も魅力的だった。

    「虐殺の文法」ももちろん作りごとなのだけど、でも実は現実に存在していてもおかしくない…と思わせられる現在の世界情勢が、やりきれない。

  • 題名のエグさからは想像もつかないほどの繊細な心理描写、文章の美しさは圧巻でした。

    ホラーではなくSFであり、専門用語を知らなくてもそれを補うだけの物語と筆者の考察力によって終始楽しんで読むことができました。

    哲学、世界情勢に興味がある人は是非手にとってほしい作品でした。

  • 大きな衝撃を受けた。一つの世界をここまできれいに造り上げた作者の手腕に感嘆した。

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著者プロフィール

1974年東京都生れ。武蔵野美術大学卒。2007年、『虐殺器官』でデビュー。『ハーモニー』発表直後の09年、34歳の若さで死去。没後、同作で日本SF大賞、フィリップ・K・ディック記念賞特別賞を受賞。

「2014年 『屍者の帝国』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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