虐殺器官 (ハヤカワ文庫JA)

著者 :
  • 早川書房
4.13
  • (1756)
  • (1719)
  • (750)
  • (152)
  • (49)
本棚登録 : 11543
レビュー : 1547
  • Amazon.co.jp ・本 (432ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784150309848

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
  • 映画化されると聞いて「その前に読もう!」と思ったのに、読み終えるまでに8カ月もかかってしまった…。先に映画の方が良かったのかもしれない…。読みながら…「これ今、現実に起きていることそのまんまだ…」と何度も思った。驚きの連続だった。

    3章あたりから馴染んできて読み終えるのが惜しくなった。伊藤氏の思念のようなものが漂っていて、どういう気持ちでこのストーリーを書いていたのだろう…と思うと、途中でつまってしまって涙が出そうになった。

    わたしが感情移入できたのは、アレックス。あとはウィリアムズ。ルツィアとジョン・ポールも。
    主人公は…最後のちょっと前まで迷彩色で透明っぽい。終り頃に主人公にだんだんと骨がついて肉が出来て人になっていく感じがした。

    この作品を読みながら偶然にも宗教の本と経済の本を読んだ。宗教の本読んでよかった。あれを読んでいなかったら途中で挫折していたかもしれない。

    膨大な量の『ことば/言語』の物語。ずっと余韻にひたっていたい。新しい作品がもう読めない…というのが残念でなりません。


    ●屍の上に築かれた、ぼくらの世界。374ページ

  • 初めましての作家さん。故人だったとは・・・
    SFって、苦手意識が強く働いてしまうので
    普段は避けているんだけれど、読んでみたら、
    頭の中に知らないうちに忍び込まれた様な
    やられた感に打ちのめされてしまいました。
    なんか、リアル過ぎて惚けてしまいました。
    アニメ映画化してるということなので、探してみましょ。

  • SFというと「行き過ぎたテクノロジーが人類に牙を剥く」という未来に向けて書かれるイメージがあるけれど、この作品はそうではなかった。むしろ今現在の「ぼくらの世界」、今ある平和に対して課題を突きつける。
    壮絶な戦場の描写、近未来的生活風景、「平和」を享受する人々の罪の在り処とあり得べき罰、その先にある赦しの希求、どれも面白かった。

  • 三部作の中では最も好み。
    言葉がもたらす洗脳をテーマに戦争・テロリズムに切り込んだSF小説。かなりストイックかつハードボイルドな趣。登場人物の掛け合いは映画みたいにオシャレだし、シェパード大尉と同僚の軽口など楽しめましたが、全編ほぼシリアス。
    作中ギクリとする言葉が何個もあり考えさせられた。
    人は基本見ないものしか見ないし自分の半径50メートルが平和ならそれでいい。
    よその国で今起きてる虐殺より、自分を取り巻く日常を守る習性が悲劇を拡散させている。
    フィクションの壁を挟んで安全圏にいた読者をも共犯者にひきずりおろすような底力がある(引きずり下ろすといったが、ただ当たり前の事実に気付かされるだけかもしれない)
    知らないでいることは悪なのか。知ろうとしないこそ悪なのか。善悪とはなにか、正邪とはなにか。
    妻子を亡くしたジョン・ポールの選択は非情で過激だが、カウチに寝そべってピザやポテチを摘まみ、テレビの戦争映画に一喜一憂する私達は聖人気取りで彼を断罪できまい。

    映画も視聴済みだが、エンターテイメントしてはあちらのラストのほうがまとまりがよかった。
    原作のラストは蛇足と見る向きもあるが、個人的には気に入ってる(なんとなく浦沢直樹「MONSTER」と同種の雰囲気を感じる……)
    シェパードと亡き母の確執も挿入されるが、記録された言葉や映像は現実を補強するだけで事実を担保するに足り得ない皮肉が、作品の主題に通底していてぞくりとする。

  • 虐殺器官、読了。残り100頁の時に覚えたラストへの危機的予想より100倍マシだったけど、ジョンポールの供述は一部感心したけど、まあ、エピローグの展開はよめてしまったので、嬉しいような、わたしの予想なんて当たらないでほしいようなフクザツな

    主人公の最後の最後の最後のトドメが母親だったのは、哀しいよね。きっとそんなことなかっただろうに。地獄は頭の中にあるからね、その時の自分の感情にすべてが左右される。それにしても最後のこの虚無さ、ピザはやっぱり虚無の象徴だなあ?シャーロット思い出すんだよないつも

    わたくしのトラウマを擽ぐる言語は、アメリカに混沌と戦争を起こしたそうなので、まあ、ていうか、親のことで悩む社畜はこれ読むのつらくないですか???

    虐殺器官の主人公がひたすら愛おしいよ。頭がいい人がマジでぶっ壊れて吹っ切れてしまったときのサイコパスとは異なる狂気さ。深淵を覗き込み過ぎたのと、愛する護りたい人がいなかった捨て身さよ

    でもわたしはやっぱり妻子を愛してたのに、愛人がいる男がちょっとよくわからないけどね。どっちも愛してるなら愛人といた自分を悔やむ必要がない、やっぱり家族を裏切ってる負い目はあったのか、じゃあ、裏切んじゃねえよ、それを超えて愛人を愛してるなら罪悪感をみせんじゃねえよクソ男が

    こどもは親に囚われるんだよ、えいえんに。

    たぶん、先に映画観てたら原作読まなかったから、わたしがニートとかで死んでるときに公開しててよかった、ような。なんで観なかったんだろ、謎。記憶ない。映画館調べなかったな。やっぱり紙の本で読んだほうが愛着あるよ

  • ミニタリー用語に疎いんで、ちょいちょい引っかかりつつ読了。
    それでも「屍者の帝国」より遥かに読みやすいです。伊藤さんが描き切ったのが読みたかったなぁ。
    タイトルの印象で何かロボット的なものが暴れ回るのかな?と思ってたけど違いましたね。
    アクションもあるけど哲学的な言葉こそが鍵。
    言葉、言葉、言葉への作者の拘りを感じる。
    解説で賞取りで「肝心の虐殺器官が具体的に描かれていないと批評された」と書かれてたけど、この作品ではそこは重要じゃないんだなと感じました。
    それが具体的に何であろうと、幸せな日常のために犠牲にしてしまうものがあるってこと。
    ルグウィンのオメラスの話を思い出しました。あれは良心のある者は去って行くけど、この主人公の決断は…
    やけっぱちなのか、更に強い正義感なのか、ミイラ取りがミイラになるような結末だけど、これを間違ってると言えるのか?と突きつけられた気がしました。

  • 序盤は「SFは苦手じゃぁぁぁ(´Д` ) 」と感じたものの、ルツィアと出会ったあたりから一変する。面白いじゃないか。

    死が身近であり、他者を暗殺する仕事をしつつも、身内の死について思い悩む主人公。この彼が虐殺器官なのかと思いきや、実は…?
    最後のオチも面白かった。序盤の舞台設定が語られるシーンさえクリアすればとても面白い作品だった。粘ってよかった_(┐「ε:)_

    しかし、この緻密な作品が10日ほどで書き上げられたとは(書籍化する際に2割ほど加筆されたとはいえ)驚きである。

  • 僅か長編2作を残し早逝した伊藤計劃氏の処女作。例えば『地獄の黙示録』や『メタルギア』に通じるハードボイルドな軍事ドラマで、エンターテイメント性が極めて高い。

    9.11を契機とした戦争の変質を鋭い感覚で捉え、比較的近未来の「秩序ある戦争」と「無秩序な戦争」へ昇華させ重厚な作品に仕上げている。”ザ・ロード・オブ・ザ・ジェノサイド”や虐殺器官など言語選択も俊逸だ。ゲームのようなワクワク感を味合わせ、しかし小説としての体も保ち、後半に至るほど哲学的でもある。

    難点は洋作品のような洒落っ気のあるフレーズを導入し白々しさがテンポを奪っているが、洗練された文章と構成はデビュー作とは思えないクオリティの高さである。偉大な才能が失われたことが惜しまれる。

  • SFバイオレンスな本かと思っていたのだが、
    全然違くて、最近読んだ本の中でダントツで良かった。
    誤差のない時間を生きてきたのもあって、私が感じ取っている時代の一部がつめ込まれてる気がした。

    先にハーモニーを読んでしまっていたのだけれど、読んでない人はこちらを読んでからハーモニーを読んだ方がすんなり納得できると思う。

    生きていたらもっと素晴らしい作品を残していただろうに、残念です。

  • 伊藤計劃作品
    「言葉」の持つ力を改めて考えさせられました。
    またラストの展開にも衝撃を受けました。

著者プロフィール

1974年東京都生れ。武蔵野美術大学卒。2007年、『虐殺器官』でデビュー。『ハーモニー』発表直後の09年、34歳の若さで死去。没後、同作で日本SF大賞、フィリップ・K・ディック記念賞特別賞を受賞。

「2014年 『屍者の帝国』 で使われていた紹介文から引用しています。」

虐殺器官 (ハヤカワ文庫JA)のその他の作品

伊藤計劃の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
伊藤 計劃
伊坂 幸太郎
村上 春樹
村上 春樹
米澤 穂信
ジェイムズ・P・...
有効な右矢印 無効な右矢印
ツイートする