Self-Reference ENGINE (ハヤカワ文庫 JA エ 1-1)

著者 :
  • 早川書房
3.67
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本棚登録 : 2704
感想 : 260
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  • Amazon.co.jp ・本 (400ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784150309855

作品紹介・あらすじ

彼女のこめかみには弾丸が埋まっていて、我が家に伝わる箱は、どこかの方向に毎年一度だけ倒される。老教授の最終講義は鯰文書の謎を解き明かし、床下からは大量のフロイトが出現する。そして小さく白い可憐な靴下は異形の巨大石像へと挑みかかり、僕らは反乱を起こした時間のなか、あてのない冒険へと歩みを進める-軽々とジャンルを越境し続ける著者による驚異のデビュー作、2篇の増補を加えて待望の文庫化。

感想・レビュー・書評

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  • "P, but I don’t believe that P.(p.3)"

     昨年の年末に読んだ『文字渦』に続いて、2冊目の円城塔。予想に違わず、トンデモなくぶっ飛んでいる!
     この本のあらすじ(そんなものが仮にあれば、の話だが…)をまとめるのは、僕には少しばかり荷が重いので、裏表紙の紹介を引く。
    "彼女のこめかみには弾丸が埋まっていて、我が家に伝わる箱は、どこかの方向に毎年一度だけ倒される。老教授の最終講義は鯰文書の謎を解き明かし、床下からは大量のフロイトが出現する。そして小さく白い可憐な靴下は異形の巨大石像へと挑みかかり、僕らは反乱を起こした時間のなか、あてのない冒険へと歩みを進める―"
    一読して理解できる人がいたら、ぜひお目にかかりたい(笑) 何を食べて育ったら思いつくねんとつっこみたくなる荒唐無稽なアイデアが、これでもかと炸裂している。この途轍もない「法螺話」を面白がれるかどうかで、大喜びする人と同じくらい、肌に合わない人が居そうな類の本だ。

     本書は、「自己言及のパラドックス」と「因果律の崩壊」という2つのモチーフによって緩やかに結びついた、ほとんど独立した22のパートからなる。モチーフのうち前者について少し説明すると、これは論理学におけるパラドックスの一つであり、例えば「この文は偽である」といった文のことを指す。仮にこの文が真であるとすると、まさにこの文が主張していることからこの文は偽であることになり、偽であればこの文の否定が正しいはずだからこの文は真であることになり、そして真であれば…と無限に続く(最初にこの文が偽であると仮定した場合も同じ)。これが、本書をSelf-Reference "ENGINE"と題する所以だろう。つまり、自己言及文を宣言することにより、自分の尻尾に齧り付こうとしてグルグルと回るような、永久の運動が駆動し始める。
     本書の舞台は、"イベント"以降、時間がお行儀よく揃って進むのを止め、複線化してしまった未来の世界である。時間も空間もすべてバラバラに弾け飛び、因果は巨大知性体によっていとも簡単に書き換えられていく。あったことがなかったことになり、なかったことがあったことになる。
    "彼女と一緒にいた短い時間、僕たちはより本当に近いことを話そうと努力した。この頃には沢山のことが、なにがなんだかわからなくなっていて、本当のことなんてそう簡単には見当たらなかった。そこにあった石ころは目をはなすと蛙になっていたし、目をはなすと虻になっていた。昔蛙だった虻は昔蛙だった自分を思い出して、虻を食べようと舌を伸ばそうと考えて、それとも自分は石だったのかと思い出して、それをやめにして墜落していた。(p.11)"

     雑に言ってしまえば、全くもってナンセンスなSFである。それぞれのパートから惹起されるイメージは面白い。一方で、それら相互の関連性はごく薄く、設定も放りっぱなしの感があって、全体が「拡散」しているような印象を受けた。少なくとも、読者が意味を理解できるようには書かれていない。そもそも、果たしてこの本に「内容」があるのか? あたかも、無機質な何かが、不明な規則に従って出力を吐き出し続けているような。あるいは、気紛れに流れる電気信号を種に、微睡みのなか生成される映像のような。それがまさに作者の狙いかもしれないと確かに思わなくもないが、好みでは『文字渦』に軍配が上がる。率直な感想を述べると、本作はinterestingではあったが、残念ながらあまりexcitingではなかった。

     ただ、少なくとも、こうして円城塔を2冊読み終えて一つ言えるのは、この作者、そしてこの本でしか見ることのできない唯一無二の景色が間違いなくある、ということである。








    以下、メモ。
    プロローグ Writing
    冒頭。全称∀と存在∃の違いについてか?
    まどろっこしい可能性の網羅・列挙は、論理学・数学、もっと言えば自己言及のパラドックスの前提となる排中律を意識して?
    1 Bullet
    2 Box
    “こんな箱が波打ち際に落ちていたら”→Echo?
    再帰性、少ないパーツからほとんど無限大を生み出すという点が「自己言及」と関連
    “解体不可能な爆弾が存在しないように(p.48)“→量子力学のエンタングルメントを連想した
    3 A to Z Theory
    この名前といえばあの物理学者/数学者ね、と分かる名前がチラホラ
    4 Ground 256
    トメさん
    "壊される速度よりも速く複製してしまえばよいではないか。"←Box
    5 Event
    計算としての自然現象→量子シミュレーション
    "無数の宇宙を新造するのに、無限の情報量は必要ではなかった。"
    「小説家」の比喩
    6 Tome
    自己増殖オートマトンと自己消失オートマトン
    7 Bobby-Socks
    自己増殖する(ように見える)靴下の山(というユーモア)
    8 Traveling
    9 Freud
    "祖母の家を解体してみたところ、床下から大量のフロイトが出てきた。"
    一番わけが分からない話。あまりの気の抜け具合に頭が痛くなる。フロイト→夢?
    10 Daemon
    11 Contact
    12 Bomb
    "I believe that P, then P is true."
    13 Japanese
    『文字渦』っぽいテーマ。「日本文字」なる架空の言語。
    14 Coming Soon
    「予告篇(トレーラー)」。本書全体の構造にとって大事なパートのように思えるが、その実、ただ思わせぶりなシーンの連続でしかないかもしれない。
    15 Yedo
    喜劇計算。独立な話としても面白く読める。
    16 Sacra
    自己消滅オートマトンと自己免疫疾患。
    17 Infinity
    リタ再登場(本当に同一人物?←「私」が複数いることの示唆)
    Writingの、無数の本の中から所望の一冊を探す話の反復。
    いわゆる区間縮小法がモデルだろう。そもそも体を構成する分子のconfigurationが同じ人間が2人いたとして、彼らは似通っていると言えるのか、という問題。
    18 Disappear
    巨大知性体たちの「あらかじめの滅亡」
    "人間が彼らの絶滅の理由を知ることができないとされる理由は単純だ。ありえそうな滅亡の理由を人間が思いつく先から、その理由で滅びたわけではないと過去を改変するような時空構造として、彼らは絶滅したのだと考えられている。証拠がどんどん後出しされる推理小説には終わりようがない。はじめから終わってしまっていない限り。"
    19 Echo
    リリカルな挿話。結末が近づいている予感。
    20 Return
    エピローグ Self-Reference ENGINE

  • ◆結論 ~ 星の数 ~
    ★★★:「費用と時間」をかけても読んで欲しい、「内容」が非常に良い(30%)

    ◆感想文 ~ 読む前、読んだ後 ~

    ◇読む前の感想

     組込み技術者養成合宿の実行委員の方に「面白い本、ない?」という質問に答えて頂きました。
     そのときの二冊のうちの一冊がこの本です。(もう一冊はグレッグ・イーガン著「プランク・ダイヴ」)
     地元図書館で検索してみたら置いてありましたので、借りました。(^^)

    ◇読んだ後の感想

     うひゃあ。
     この本は、自分が理解できるか、理解できないかのギリギリの線を攻めてきます。
     その結果、半分ぐらいは理解できませんでした。(-~-;)グヌヌヌ。

     四次元空間と四次元時空の違いは知っていたので、そこは迷いませんでしたが、魚雷(のようなもの)が過去方向に旋回してどうのこうのと言われても、さっぱりイメージが・・・。
     なのに、その上位概念であろう「粉砕時間流」については、箸にも棒にも・・・。(-~-;)グヌヌヌ。

     そんな難解用語がバシバシ出てくるのに、凄く面白かったです!
     自分が理解出来ている、出来ていないは横に置いて、先のストーリが気になっちゃうんです!
     (自分の場合、いつもは逆で、難解用語が多過ぎると読む気が失せてしまうんです。)

     ということはつまり、文芸作品として非常にクオリティが高いからなのかなぁ・・・と思いました。
     良い意味で、日本語の単語や文章を徹底的に実験的に操作しまくっていて、癖のあるその表現が癖になるというか・・・。
     また、この本全体に流れているテーマ、各章のテーマも、自分好みのテーマで、非常に興味深かったです。

     例えば、「無」というと真空のようなものをイメージしそうになりますが、真空には空間も時間もあります。
     「無」すら存在しない「無」。
     そんな「無」を想像することは可能なのでしょうか・・・。
     仏教の「色即是空」と同じものを感じました・・・。

     例えば、「無限」についても興味深い記述がありました。
     無限に意見を集めることは、何も意見を集めないことと等しい・・・。
     確かにその通りかも知れません。
     理屈では無く、感覚で理解できます・・・。
     ふ、深いです。

     最後に、この本では非常に辞書のお世話になりました。
     こういう本は、有り難いです!
     自分の語彙力が鍛えられますので。
     忘れないように、備忘録のため、調べて単語を箇条書きにします。
     (読みが分からないもの、意味が分からないもの、などなどです。)

    夙に…ずっと以前から。
    敷衍…おし広げること。
    粗忽…軽率。
    紙魚…シミ目の昆虫の総称。
    矩(かね)…模範となるもの。
    固陋…古い習慣や考えに固執して、新しいものを好まないこと。
    論駁…相手の論や説の誤りを論じて攻撃すること。
    褶曲…地層が曲がること。
    軛… 自由を束縛するもの。
    窘める(たしなめる)…よくない点に対して注意を与える。
    鷹揚(おうよう)…小さなことにこだわらずゆったりとしているさま。
    快哉…ああ愉快だと思うこと。
    白紙(タプラ・ラサ)…白紙状態の意。
    結構…全体の構造や組み立てを考えること。
    哄笑…大口をあけて笑うこと。
    容喙(ようかい)…横から口出しをすること。
    挙措(きょそ)…立ち居振る舞い。
    驚倒…非常に驚くこと。
    やぶさか・やぶさかでない…「やぶさか」は、物惜しみするさま。「やぶさかでない」は、努力を惜しまない。(誤解して覚えていたので要注意)
    危急存亡の秋(とき)…故事成語。
    莞爾…にっこりと笑うさま。
    趨る(はしる)
    擾乱(じょうらん)…入り乱れて騒ぐこと。
    首肯…うなずくこと。
    バリンアント(P197)…誤記? バリアント(variant)ならば「別形」という意味。
    空隙(P212)…すきま。
    扶持(ふち)(P214)…主君から家臣に給与した俸禄。
    徒食(P215)…働かないで遊び暮らすこと。
    裡(うち)(P230)…物事の行われる状況を表す。
    免疫(P235)…病原体や毒素、外来の異物、自己の体内に生じた不要成分を非自己と識別して排除しようとする生体防御機構の一。
    覆滅(P237)…完全に滅びること。
    僭称(P237)…身分を越えた称号を勝手に名乗ること。
    滂沱(P260)…涙がとめどもなく流れ出るさま。

    (参考:評価基準)
    ★★★★★:座右の書である、または、座右の書とすべきである(10%)
    ★★★★:自分の知り合い、友人、家族全員が読んで欲しい(20%)
    ★★★:「費用と時間」をかけても読んで欲しい、「内容」が非常に良い(30%)
    ★★:暇な時間で読めば良い(20%)
    ★:読んでも良いが強く薦めない、他にもっと良い本がある(20%)

  • 22のパートからなる連作短編集風の長編(?)。言葉運びの優雅さに何度もヤられてしまいました。パートの幾つかで、セルフパロディのようにダレた話になっていたのだけが少し残念(SF的にはアリなのかな)。

  • アニメ『ゴジラS.P』きっかけで本書を手に取った。
    イベントなる時空破壊現象後、巨大知性体らが演算戦を繰り広げる世界。
    非常にバラエティに富んだ22篇もの複雑な短編から構成されているが、解説がめちゃくちゃ丁寧で全篇のあらすじをまとめてくれているため、読後復習になり大助かり。
    『三体』を彷彿とさせるような「Contact」と、何もかもがいい意味でぶっとんでる「Yedo」が好き(「八丁堀の巨大知性体」「サブ知性体ハチ」などのパワーワードw)

  • 生成文法で有名なチョムスキーは、長年の研究の末に人間の特徴を言語の再帰性に見い出した。つまり自己言及が出来るというのは人類固有の能力であり、また再帰とはプログラム上において一行で無限を示す方法でもある。『SRE=自己参照エンジン』という永久機関を想起させる表題で、円城塔はボルヘスの創造した無限空間を仮想メモリ空間上に再現する。そこでは神学論争は科学情報と融合し、バベルの図書館はデータ上の構造体として復元される。その上再帰性に加えもう一つの人間らしさ=感情がここには刻まれており、笑いや感動も楽しめる鮮烈作。

  • 「んー、なんだか面倒くさい人が書いた面倒くさそうなお話だなあ。
    こういう男子いたよなー」

    と面倒くさい気分で読み始めましたら

    いつのまにやら萌えキャラやら
    かわいこちゃんやら
    おじいちゃんやおばあちゃん

    論理的すぎて、突き抜けちゃったアレとかコレとかいっぱい。



    解釈の仕方は読者それぞれで千差万別だろう、それを伺ってみたい気もする。




    とりあえず、読み終えての感想を一言であらわせば


    it's CUTE!

    かわいらしい小品がいっぱいつまったらカワイイになった。


    いや、感想として自分でもどうかと思うよ。
    でもカワイイなあと思っちゃったんだからしようがない。


    この作品、結構好きだなぁ。

  • すごくずるい。けむにまくような人を喰ったような文章で霧の中を進むよう。
    序盤は全く入り込めず苦痛を感じながら読み進めていたが、慣れてきたせいか徐々に面白く感じてきた。
    これほど風景を想像しながら読み進めることが困難な作品もあまりないと思うが、そこに固執せずに読み進めるのが正解のような気がする。短編で全体を組み立てる手法もユニークで面白い。

    TomeとかJapaneseとか笑ってしまった。想像力をフル回転させて巨大知性体の姿を思い浮かべよう。

  • 22篇の短編から成っており、それぞれが独立した形をとっているが全体を通すと繋がっている。
    故意にか自分の理解力が乏しいのか定かではないがレトリックが難解で完全に理解することが難しかった。というか理解できていない部分が大半である。しかし文章を読み進めることが苦ではなくむしろ言葉の組み合わせに美しさ?というか心地の良い奇妙さを感じ感動を覚えた。
    人類の技術が人類の手を離れ知能が発達していった社会(シンギュラリティー)での巨大知性体、超越知性体、アルファケンタウリ星人の話や畳一面に敷かれたフロイト、脳の増幅化に成功し自らを箱の中に閉じ込めたエコー、未来側の狙撃手に向かって発砲し続ける頭に銃弾の埋まった女の子など何がなんだがわからない。
    正直この本を説明するのは無理だと思う。読まないとこの雰囲気は伝えられない。面白いので読んで見てください。個人的にはComing soonが好き。あとユグドラシルが可愛い。おわり

  • 床下に22体のフロイトの死体??????
    文書が自分で消失する?????
    未来から銃撃をうけた女の子?????

    ????????????????

    円城塔さんが脚本を担当された『ゴジラSP』がめちゃめちゃめちゃ面白くてそれまで微塵も興味なかったゴジラシリーズ(と東宝特撮)にハマるくらいだったので読んでみたけどずっと何の話をしているのか分からなかった。私の頭が悪いせいがほとんどなので、意味わからないならわからないで良い。ただ、一人称で進んでいく『否定の否定』みたいな、ラノベみたいな語り口がただでさえ話がややこしいのに余計訳わからなくてずっと「わかりたい、気になる、理解したい」と思えないのがしんどかった。
     でも発想はめちゃめちゃめちゃおもしろいことだけは伝わった。文庫化でフロイト2体増えてるって何?????(爆笑)正気じゃねえ...。(褒め言葉)ここで「円城塔は合わなかった」で終わりたくない...って切実に思うくらい発想と設定の遊び方は面白かったので、違う作品をまた読んでみようと思う。

  •  たとえば、『ダ・ヴィンチ・コード』は息もつかさぬ展開で、一気に読まされたにもかかわらず、読後、もの凄く不満が残った。その含蓄の浅さはさておいても、小説でなければならない必然性がないのだ。アクションの連鎖なら映画のほうが効果的ではないか。
     本書『Self-Reference ENGINE』は小説であらねばならない手応えを感じさせてくれる。それでいて至って軽く不真面目な語り口。しかも語り得ぬことを、ヴィトゲンシュタインのように沈黙せずに、とにかく、何とか語ってしまったのだ。

     もちろん映画にはできないだろう。20の短編にプロローグとエピローグのついた22の断章(文庫化に際し、2編増えた)。それぞれの短編はまあ、映画にできるかも知れない。死んだ祖母の家を取り壊したら、床下から22体のフロイトが出てきて、親族が困って会話を交わす。十分映像化はできる。シュールな短編映画。
     しかし22の断章が醸し出すヴィジョンは映像化できまい。『虐殺器官』の帯に、宮部みゆきの「私には三回生まれ変わってもこんなのは書けない」という讃辞が載っていたが、可能性の問題としてならば、才能に恵まれ、修練を積めば『虐殺器官』の執筆は手の届く地平にあると思うのに、『Self-Reference ENGINE』は宇宙が三回生まれ変わっても書けそうにないという気がする。

     何かが起こった。それをイベントと呼ぶ。そのイベントとは時空構造が壊れてしまったことらしい。時間が順序よく流れなくなってしまった。その原因は人工知能が進化して自然と一体化して巨大知性体となった、その知性体が関係しているらしい。巨大知性体たちは時空構造を元に戻そうとたがいに演算戦を繰り広げている。

     何だか解らない? ジグソウの最後のひとつまでかっちりと嵌って「解った」とならないと気が済まない向きにはほとんどストレスフルな小説だろう。だいたい時間の前後関係が成り立たなくなった世界など記述可能ではないし、われわれの脳では理解できるはずもないのだ。自然と一体化した巨大知性体というのは、結局のところ世界がコンピュータ上のシュミレーションと化したといっているのではないだろうか。その巨大知性体同士の演算戦とは世界の書き直し合いということだろうか。
     作者はそんな風に安易に説明してくれず、鯰の像が消えたとか、靴下が生きているとか、奇天烈な断章を語るのだ。でもどこかでジグソウのピースがかちっと嵌っているらしいというあたりが知的興奮をかき立てるのだ。

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著者プロフィール

1972年北海道生まれ。東京大学大学院博士課程修了。2007年「オブ・ザ・ベー
スボール」で文學界新人賞受賞。『道化師の蝶』で芥川賞、『屍者の帝国』(伊
藤計劃との共著)で日本SF大賞特別賞

「2023年 『ねこがたいやきたべちゃった』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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