マルドゥック・スクランブル The 1st Compression 〔完全版〕 (ハヤカワ文庫JA)

著者 :
  • 早川書房
3.96
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本棚登録 : 1858
レビュー : 178
  • Amazon.co.jp ・本 (293ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784150310141

感想・レビュー・書評

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  • 漫画ミュージアムでたまたま開催されていた寺田克也原画展。マルドゥックシリーズの表紙は寺田氏が手がけている。

    少女娼婦のルーン・バロットはほぼ全ての指にブルーダイヤの指輪をはめたシェルという男の専属になった。

    ある時、シェルはバロットを車内に閉じ込めたまま爆発事故に見せかけて彼女を殺そうとする。…なんで私なの?問いながら意識を失うバロット…

    だがドクター・イースターとウフコックな彼女の意思を汲み取り、ぼろぼろになった破片から彼女を再生した。シェルという男の秘密を追うため。また今度こそ彼女を守るために。

    売買される少女たち、近親相姦、尊属殺人、少女の灰から造られたブルーダイヤ。被害者の乳房や指、眼球などに異常に執着するミディアムやミンチら畜産業者たち。なるほど、この世界観に寺田氏の作品はマッチしているなぁ…

    あまりにバロットの境遇がひどくて落ち込むけど、ウフコックが素敵でぐいぐい読んでしまいました。なんて男前な変幻自在な金色のネズミちゃん。

  •  賭博士・シェルの手により殺されかけたバロットはシェルの犯罪を調べていたドクター・イースターと人の知能を持った万能兵器のネズミ・ウフコックの手によって救われる。
     そしてバロットは二人と共にシェルの犯罪を暴くため奔走するのだが……。

     バロットは家庭環境から娼婦に身を堕とし過酷な人生を歩んできた少女です。彼女の家庭環境の一端は小説内の裁判シーンでも触れられますが、それだけに彼女がウフコックやイースターといった信頼できる大人たち(ウフコックは大人とは違いますが)に出会えたことが、そして彼らを信頼しようとしている姿がとてもいいな、と思いました。

     終盤の戦闘場面の迫力もかなりのものです。バロットはシェルの手により瀕死の重傷を負いますが、マルドゥックスクランブル09という緊急法令により、禁止された科学技術を全身に施されることで生き延びます。その際バロットは特殊な力を手に入れ、兵器でもあるウフッコクの力も相成り自身の力に溺れます。その描写も凄まじいものがあります。

     そしてバロットたちを付け狙うボイルドという強大な敵の存在や、禁じられた科学技術によって生まれたが故のウフコックたちの存在意義の話など読みどころは多いです。文庫で全三巻の作品ですが、あっという間に読み終えてしまいそうな気がします。

    第24回日本SF大賞

  •  未来? だと思われる世界。
     少女娼婦のバロットはシェルという男の情人になったが、ある日シェルによって殺されそうになる。
     ギリギリのところでドクターとウフコックに助けられるが彼女の体はボロボロ。しかしドクターの技術で姿形も普通に蘇る。
     彼女はその折り特殊な能力(電子機器の制御を乗っ取り思いのままにする)をもった。

     シェルは悪徳企業のマネーロンダリングの担当者で、沢山の女性を殺していた。ドクターとウフコックはその全貌を明らかにし、追いつめるため、バロットを助けて裁判に挑もうとするが、相手側からの執拗な攻撃を受けることになる。。。


     まだ話の途中のようです。
     主人公が娼婦だと言うこともあり、性的な描写があるので、好きではない方もいるかもとは思いますが、かなり面白いです。グイグイ読めてしまいます。

     彼女は生きるためにウフコックを相棒に銃器を操り、敵と戦っていくのですがこれが迫力満点!
     ハリウッドで映画化されそうなくらいです(^_^;) 
     あまり戦闘シーンが長いのは好みではないのですが、この本はよかったです。ちょっと敵があっけない? 感じもしたけれど。

     とにかく続きを追って読んでみたいと思います。天地明察も積ん読になってるしwww(^^;
     早く進めなきゃ

     星は4つでつけましたが、厳密には★3.5 と言うところでしょうか。
     話がどうなっていくのか解らないので、ここで★を決めるのもどうかとは思いましたが、とりあえず。

  • 漫画版の一巻だけ読んでいたから、割とすんなりと入り込めたけれど、そうじゃなかったら、印象が違うかもしれない。
    アースより成熟した印象は「完全版」であることも少なからず影響していると推定。それをさっぴいても、青臭さはなりを潜めた。かな。完全にいなくなったわけではないが。

    小説なのに映像的。派手なアクション。スピーディーな展開。エンターテインメイト性が高く、えぐるところもあり。モチーフがワンパターン。そんなあたりが、そこはかとなく、リュック・ベッソン臭い。(嫌いではないが)

  • 登場人物紹介と簡単なバトルによる第1巻

  • アニメ化など話題にのぼることが多くて、ようやく手にした本書だが、予想以上にグロいシーン、ハードなシーンが多かった。特に敵の殺し屋グループがヒドくて、こんなのアニメ化したらどうなるん? 見るに耐えるのか? と下世話な興味がわくレベル。

    物語の基本構造はごくシンプルで、復讐譚を兼ねた成長物語。
    社会の底辺にいた少女が、たまたま社会的に成功した男に拾われ、専属の娼婦となるが、彼の商売のため、計画的に殺害されそうになる。そこを一組の事件屋がレスキューし、「スクランブル09」という法令にしたがって少女を再生させる。彼女はすべての事情を受け入れ、自分を殺害しようとした相手を追い詰めるため、戦う力を手に入れる。三部作の第一作である本書はだいたいここまで。

    シンプルに成長物語とはいっても、主人公の心の動きがきちんと描き出されなくては、まったく説得力のない話になってしまう。その点、この作品では、主人公バロットの心の傷や弱点をきっちり描き出し、それらがどう変化し、さらには暴走するかを丁寧に追いかけている。
    また、バロットを保護する事件屋たち――科学者のドクターと人工的に生み出された万能ネズミのウフコックが、とにかくよく出来た人間(ネズミ)で、鉄壁の安心感があり、バロットの凄惨な過去とうまく釣り合いがとれている。

    ウフコックの支援を得て、肉体的にも精神的にもすっかり生まれ変わったつもりでいたバロットだったが、彼女が最大のピンチを自分で招いてしまうところが興味深かった。その理由というのがもう、すべての人類に共通するんじゃないかという根源的な理由で、うわぁ、と思った。
    身体能力を人工的に強化すること、また生まれつきの才能ゆえに、バロットの戦闘能力はチートといえるレベルまで上がったのだが、これまで支配ばかりされてきた彼女が、他人を支配できる側にまわったとき、彼女は力に溺れ、他者をいたぶることに快感を覚えはじめる。支配と服従は人の心の根源に根ざし、表裏一体の関係だということ。人間は聖者ではないので、しっかり教育しない限り「これまでひどい目にあわされた」→「だから自分は他人をひどい目にあわせないようにしよう」というふうにはならないのだ。

    これがウフコックに言わせれば、力の「濫用」にあたる。「濫用」に対してトラウマを持つウフコックは、それ以上バロットを支援できなくなり、最大のピンチに陥った。
    もちろんバロットはこのことをすぐに理解し、いたたまれないほどの後悔にさいなまれるのだが、もう手遅れかもしれない。というところで次巻に続く。

  • 未成年娼婦の主人公バロットが、自分を「殺し損ねた」男に、マルドゥック・スクランブル09で得た技能を駆使し、復讐をしようとする話。
    登場人物の名前がいいなぁ。横文字のSFってただでさえ用語を押さえないといけない上に人物名まで覚えづらいと全然乗れないから。キャラに関連した名前をつけてあると覚えやすいね。
    SFといってもどちらかと言えば能力バトルものに近い。ガジェットも想像力の限界は越えない感じ。
    キャラクターの書きかたが上手くて読ませるなぁ。敵役のおぞましさとか、主人公の心情とか。バトルも俺tueeeeee!からの絶望の落差で次が気になる。ボイルドの絶望感はやや唐突な感もあるけども。
    気になるけど、すぐに読みたい!てほどではないような感じもする。単純に好みの問題だけどね。もう少し世界観が掘られていた方が好みなんだ。危なっかしいけど守ってあげたくなるような、超強い少女主人公の行く末は気になるけどね。

  • 少女娼婦バロットは賭博師シェルに計られ爆炎にのまれた。瀕死の彼女は緊急法令スクランブル09により蘇り、シェルの犯罪を追う。

    心を殺し、望むことを諦め、男たちに支配され、死さえ従順に受け入れかけていたバロット。彼女が蘇り、手に入れた力を操作する時に感じた征服感と高揚感の描き方が良かった。力を手に入れた人間は間違いなく彼女のようになるから。

    まだ1冊目だけど、最後まで彼女が戦うだけの話なのか、今後彼女の内面の変化を描くのか、気になるところ。

    必要以上にグロテスクな部分もあるけど、沖方丁のリズム感あふれる文体は好きだと思った。


    *以下引用*

    *愛の定義は与えることだ。それにはルールがある。与えられる者が守るべきルールが。それさえ守れるなら、君は愛され続ける (p18)

    *(生きていていいの?)誰もイエスと言ってはくれない気がした。それこそ無条件に愛された経験がない人間が抱える欠落だと泡がささやいた。その欠落に従ってこの世から消え去るか、一生涯イエスという答えを探すために生きるのか。 (p49)

    *心の殻を、割れずにいるだけだ。あまりに自分を傷つけるものが多すぎて (p70)

    *信じられることが何よりの支えだった。裏切られないという確信。それが世界に満ちてさえいれば麻薬も銃も必要ないのだと、何年も前に兄に言われたことを思い出した。 (p117)

    *私の知ってる女の子たちみんな、それが手に入らずにクスリや男でぐちゃぐちゃになって生きてる。そんな目に合ってまで生きてる言い訳がほしいだけなのに。(中略)私を愛して、ウフコック。 (p144)

    *この全ては自分が起こしているのだという快感が込み上げた。それは圧倒的な支配力だった。物事を思い通りに動かし、感情を持つ人間さえもいいように操作する力。(中略)男のひとたち、みんな、いつもこんな感じだったんだ。これか、と思った。自分を支配する男たちが味わっていたものはこれだったのだ。この胸の焼けるような甘い思い。これをどうして自分も味わってはいけないのか。 (p263-p264)

  • 攻殻機動隊の脚本を書いてたのをきっかけにこの本に辿り着きました。

    続きが気になってさくさく読み進められる作品
    途中でさすがにそれは…となるグロい表現もあるのが悩み

    でも、面白い内容

  • 140216読了。14冊目。
    ウフコックがかわいい。
    そしてかっこいい。
    SFはかなり久しぶりに読んだが、
    これは面白いと思った。

著者プロフィール

冲方丁(うぶかたとう)
1977年、岐阜県生まれ。4歳から9歳までシンガポール、10歳から14歳までネパールで過ごす。早稲田大学第一文学部中退。小説のみならずメディアを限定せず幅広く活動を展開する。
『マルドゥック・スクランブル』で日本SF大賞、『天地明察』で吉川英治文学新人賞、本屋大賞、北東文芸賞を受賞し、第143回直木賞にノミネートされた。『光圀伝』で第3回山田風太郎賞受賞。
代表作となる『天地明察』は2011年にコミック化、そして2012年に岡田准一主演で映画化されヒット作となる。2019年1月、『十二人の死にたい子どもたち』が堤幸彦監督により映画化。

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