マルドゥック・スクランブル The 3rd Exhaust 〔完全版〕 (ハヤカワ文庫JA)

著者 :
  • 早川書房
4.13
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本棚登録 : 1322
レビュー : 124
  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784150310165

作品紹介・あらすじ

それでも、この世界で生きる-バロットは壮絶な闘いを経て、科学技術発祥の地"楽園"を訪れ、シェルの犯罪を裏づけるデータがカジノに保管された4つの100万ドルチップ内にあることを知る。チップを合法的に入手すべく、ポーカー、ルーレットを制してゆくバロット。ウフコックの奪還を渇望するボイルドという虚無が迫るなか、彼女は自らの存在証明をかけて、最後の勝負ブラックジャックに挑む。喪失と再生の完結篇。

感想・レビュー・書評

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  • 未成年娼婦として働く主人公が雇い主に殺されかけたところを助けられ、「自分はなぜ殺させたのか」「なぜ生きているのか」を問いながら殺人事件の解決を目指す話。
    助けられた時に金属繊維の人工皮膚を移植されたり、空飛ぶ車が出てくるなど、SF要素が非常に強い作品。
    全体的には非常に暗い内容。

    上巻は読者に対して情報がほとんど開示されない状態で事件が進むため、正直おもしろくない。

    でも、中巻〜下巻がバツグンに面白い。特に中巻の中盤〜下巻の中盤にかけて行われるカジノゲームがとてもよい。
    『ライアーゲーム』のように頭脳を使ってゲームをクリアしていく様子は爽快感があって非常に面白いため、おススメ。

    戦闘部分の描写が分かりづらかったり、世界観が理解できていない時に専門用語がたくさん出てくる点は読みづらいけれど、中巻以降を信じて読み続けて欲しい。

  • 冲方丁作品は先に『天地明察』、『光圀伝』を先に読んでいて、どちらも素晴らしかったので、元々SFが本業だということに驚いた。

    『マルドゥック・スクランブル』は3冊組で、①はいかにもSFという感じの戦闘モノの色が強い。著者の言葉選びは面白いと思う一方で、ちょっと中2感がすぎるなと感じる時もあって、その辺はちょいと寒いかなと。
    ただ②、③は戦闘より、ギャンブルのシーンが長く、ここがとにかく面白い。SFらしく特殊能力を使っているものの、それを凌駕するほど強いディーラーとの戦い。

    ---

    “撃ったら引く(ヒット・アンド・ラン)。プレイヤーいつも不利な条件だから。自分よりも強い相手と戦うための戦法。”

  •  シェルの犯罪の証拠を懸けてのブラックジャック対決、そしてボイルドとの最終対決が描かれる完結編。

    ブラックジャックシーンは専門用語が飛び交い、ブラックジャックに詳しくない自分にとって読むのはちょっときついかな、と始は思っていたのですが、読んでいくうちにあっという間に惹きこまれました。

     なんでルールも分からないのに惹きこまれるのだろう、と思ったのですがあとがきを読んで納得。
    というのも、冲方さんはこのシーンを書くため五日間ホテルでカンヅメをされたらしいのですがその際、
    作中の勝負にのめりこむあまり胃をやられ、中のものをベッドや床にぶちまけ、それを見て笑い声を上げたそうです。

     ……ものすごくツッコミどころが多いというか、常人には理解不能な状況ですが、それだけの情熱が傾けられた上に、初版発行から10年近くたっての改訂で改めて文章に命が吹きこまれた、
    言ってみれば2度にわたって作者の魂が吹きこまれた場面なのだから惹きこまれるのは自然なことだったのかな、と思います。

     ルールは分からないながらも心理戦やバロットとディーラーのアシュレイの対決、そしてそれを通してのバロットの成長は
    冲方さんの魂が込められているだけあって読み応え十分なので、多少の分からないところは割り切ってぜひ読んでほしいところです!

     そしてボイルドとの最終対決。ボイルドの生い立ちにもなかなか辛いものがありますがボイルドと同じように、禁じられた技術によって生まれたウフコックやバロットと彼の違いは、
    力を何のために行使しようとしたかという点に尽きるのかなと思います。

     なんとなくですがバロットの成長を読んでいると、信頼できる人に出会えた喜びと安心が言葉の端々から伝わってくように思います。
    一巻冒頭で「死んでしまった方がいい」とつぶやいていた彼女が、生きるために戦い続ける姿は、今まで彼女が得ることのできなかった、信頼だとか愛だとかを取り戻し、人間的な心理に戻ってきた帰結なのかな、という風に思います。

    第24回日本SF大賞

  • 心理戦からの怒濤のクライマックス。

    読むと止まらない。

    読めばわかる。

  • 「燃焼」の巻があいにく図書館になかったので…。なんてこと。表紙、ウフコックの顔のところに図書館の管理シールが貼られちゃってる…。

    のっけからブラックジャックのシーンがクール。前半部分を占めてるのはちょっと長過ぎる気もしたけれど。
    すでに書き上げていた作品をまた一から作り直すなんて、作家のプロ意識とこの作品への愛情は計り知れない。

    元々バトルものはあまり得意じゃないけど、ボイルドとウフコックの過去が気になるので、引き続き「ヴェロシティ」へ。

  • シェルとの決別、そしてボイルドとの闘い。

    バロットはウフコックの力に酔いしれることなく、ウフコックの心と重なることで、強さを得られたのではないか。
    自由自在の唯一無二の無敵の、魂ある、道具。
    道具に魂があるのがウフコックなのではなく、その魂に道具としての圧倒的能力が備わっているのが、ウフコックなのではないか。
    だからこそ、魂を委ねられる相棒を、彼は探し求めていたし、バロットは、彼に愛を乞うだけではなく、彼を受け入れ、思いやり、一体となり、愛した。


    始まった絆に終焉は、あるのか。


    物語の筋とは離れたところで、胸を刺す文も多いことも素晴らしい。

  • 一人の少女と一匹のネズミの物語、終結。

    徹頭鉄尾圧倒され、夢中になり、なりふり構わずノンストップで読み切った。心は何度も響き、言葉にできない満足感に浸れている。

    根拠は無いけど、この作品を読んだことによって自分はある種成長できたとさえ思った。バロットにとってのカジノと同じく、この読書経験が自身の成長へと繋がったのだと。それだけの価値がある作品だった。

  • 78点。
    感想。

    非常にいろいろな内容が詰まった小説でした。
    1st終盤での戦闘シーンや、2ndからのギャンブルシーン、さらにコテコテのSF要素と。

    SF小説としての世界観の設定に関してはやや微妙。研究所のかつての3博士あたりは他のシリーズを読まないとわからないとは思いますが、少なくともカジノで描かれるセキュリティ関係とバロット周辺で描かれているオーバーテクノロジーのギャップはちょっと興醒めしてしまうぐらい隔たりを感じる。

    小説の流れとしてはおそらく、バロットの成長物語でそこは上手くかけていると思いますが、ウフコックとボイルド関連がどうにも描写不足に思えました。どうやらこれまた他のシリーズで描かれているらしいけれど、
    何故ウフコックがバロットを許し、ボイルドを拒絶し続けているのかは話の中核になる部分の筈なのでシリーズで描くにしてももう少し、この小説の中できっちり描いていた方が良かったように感じました。

  • 2と3の感想。
    合本版を読んでいたら、いつのまにか3になっていたらしい…

    「楽園」とかが出てきて、これはどこへ話が転がっていくんだろうとわくわくしたけど、カジノのターンがとても長くて、結局バロット個人の事件で終わってしまった。うーん次に期待…

    カジノのゲームは、ルールがよく分かってないので雰囲気で。ハリウッド映画っぽいかんじの…を想像…。ルールを理解して読むともっと楽しいのかもしれないが。

    あとは、ドクターの過去編があったらぜひ読みたい。

  • 本当にとてもとても面白かった。息つまる緊迫したカジノでの攻防も、その後のボイルドとの死闘もどちらも最高だった。単純に物語としての筋が面白いだけではなく、登場人物の心情やそれぞれの思いが丁寧に描かれていて胸が詰まる。社会機構の中で否応なく奪われ続けた少女、その象徴であるかのようなバロットがウフコックとドクターとの出会いによって死んでから甦り、そして中身を充実させ自らの意思で持って自らを守り自らの意思で歩いて行けるようになった、という事実が希望に溢れて止まらない。社会機構の中でどうしても搾取の対象にされがちな少女という存在が、その存在そのものを理由として奪われることも無く、尊重されているという事実が尊くて涙出てくる。シェルの悲哀も良かった。バロットをすり潰した張本人もまた、かつてすり潰された卵の中身であり、腐った卵であり、そして中身を抜くことで空っぽのまま空虚を量産し続けた、その悲劇の連鎖が本当に辛い。なんで世界ってこんなに辛いんだろう。シェルのことは全く擁護できないが、そんな辛さを生み出して再生産し続ける社会の仕組みに対する怒りと義憤のようなものが身勝手にも湧いてくる。それぐらい心揺さぶられる話だった。
    ここ最近、使われる武器に人格があったとして、人間のために作られた武器に人格を持たせるということの歪さや、その人格に人間が彼らを使うことを肯定させる醜悪さということを考えることがあったのだが、その答えのひとつをあまりにも鮮やかに提示されたような思いがある。ウフコックは武器であり、道具である。人に使われることで有用性を示し、それが彼の価値となる。今ウフコックを手にしている少女バロットは、人間でありながらかつて物として扱われ、そのように廃棄された存在である。そんな彼女もまた、ウフコックを手にして濫用してしまった。かつて自分を無造作に物として扱い廃棄した男たちと同じ行動を取ってしまった。バロットはそのことを深く悔い、自分がまた彼を濫用するのではないかと怯える。けれど彼女は最終的に、ウフコックをそのようには扱わなかった。むしろ彼の有用性を信じ、「あなたを使いたい」と彼に対する無上の愛で持って答えた。ウフコックもまた、バロットのそれに「それが俺の有用性だ」と応える。余りにも強い。語彙が死んだ。ウフコックが道具であるということそのものに対する無上の愛と信頼がバロットからは惜しみなく注がれていて、ウフコックもまたそれに全力で答えている。「武器だけど人格があるからそんな風には扱えない」とかいう安直な逃げに至ることなく、人格のやどった武器であるウフコックを尊重し、愛し、その存在そのもの全てを受け止めているバロットの誠実さに本当に胸を打たれた。キスもハグもセックスも無いけれどそんなもので表現しなくたって愛は書ける。強い。すごい。そして人格のある武器だからこそできた、ボイルドの最期の瞬間のウフコックの優しさ、本当に本当に胸が詰まる。どうしてそんなに優しいんだお前もうやめてくれ…。バロット一生ウフコックのそばに居て欲しい。引き金のない銃、バロットにボイルドを殺させない、ボイルドの思いもその全て、ウフコックが全部を受け止めて、お前…お前…。とにかく本当に良かった。落ち着いたらちゃんと感想を描きたい…。

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著者プロフィール

冲方丁(うぶかたとう)
1977年、岐阜県生まれ。4歳から9歳までシンガポール、10歳から14歳までネパールで過ごす。早稲田大学第一文学部中退。小説のみならずメディアを限定せず幅広く活動を展開する。
『マルドゥック・スクランブル』で日本SF大賞、『天地明察』で吉川英治文学新人賞、本屋大賞、北東文芸賞を受賞し、第143回直木賞にノミネートされた。『光圀伝』で第3回山田風太郎賞受賞。
代表作となる『天地明察』は2011年にコミック化、そして2012年に岡田准一主演で映画化されヒット作となる。2019年1月、『十二人の死にたい子どもたち』が堤幸彦監督により映画化。

冲方丁の作品

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