マルドゥック・スクランブル The 3rd Exhaust 〔完全版〕 (ハヤカワ文庫JA)

著者 :
  • 早川書房
4.13
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本棚登録 : 1209
レビュー : 116
  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784150310165

作品紹介・あらすじ

それでも、この世界で生きる-バロットは壮絶な闘いを経て、科学技術発祥の地"楽園"を訪れ、シェルの犯罪を裏づけるデータがカジノに保管された4つの100万ドルチップ内にあることを知る。チップを合法的に入手すべく、ポーカー、ルーレットを制してゆくバロット。ウフコックの奪還を渇望するボイルドという虚無が迫るなか、彼女は自らの存在証明をかけて、最後の勝負ブラックジャックに挑む。喪失と再生の完結篇。

感想・レビュー・書評

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  •  シェルの犯罪の証拠を懸けてのブラックジャック対決、そしてボイルドとの最終対決が描かれる完結編。

    ブラックジャックシーンは専門用語が飛び交い、ブラックジャックに詳しくない自分にとって読むのはちょっときついかな、と始は思っていたのですが、読んでいくうちにあっという間に惹きこまれました。

     なんでルールも分からないのに惹きこまれるのだろう、と思ったのですがあとがきを読んで納得。
    というのも、冲方さんはこのシーンを書くため五日間ホテルでカンヅメをされたらしいのですがその際、
    作中の勝負にのめりこむあまり胃をやられ、中のものをベッドや床にぶちまけ、それを見て笑い声を上げたそうです。

     ……ものすごくツッコミどころが多いというか、常人には理解不能な状況ですが、それだけの情熱が傾けられた上に、初版発行から10年近くたっての改訂で改めて文章に命が吹きこまれた、
    言ってみれば2度にわたって作者の魂が吹きこまれた場面なのだから惹きこまれるのは自然なことだったのかな、と思います。

     ルールは分からないながらも心理戦やバロットとディーラーのアシュレイの対決、そしてそれを通してのバロットの成長は
    冲方さんの魂が込められているだけあって読み応え十分なので、多少の分からないところは割り切ってぜひ読んでほしいところです!

     そしてボイルドとの最終対決。ボイルドの生い立ちにもなかなか辛いものがありますがボイルドと同じように、禁じられた技術によって生まれたウフコックやバロットと彼の違いは、
    力を何のために行使しようとしたかという点に尽きるのかなと思います。

     なんとなくですがバロットの成長を読んでいると、信頼できる人に出会えた喜びと安心が言葉の端々から伝わってくように思います。
    一巻冒頭で「死んでしまった方がいい」とつぶやいていた彼女が、生きるために戦い続ける姿は、今まで彼女が得ることのできなかった、信頼だとか愛だとかを取り戻し、人間的な心理に戻ってきた帰結なのかな、という風に思います。

    第24回日本SF大賞

  • 心理戦からの怒濤のクライマックス。

    読むと止まらない。

    読めばわかる。

  • 「燃焼」の巻があいにく図書館になかったので…。なんてこと。表紙、ウフコックの顔のところに図書館の管理シールが貼られちゃってる…。

    のっけからブラックジャックのシーンがクール。前半部分を占めてるのはちょっと長過ぎる気もしたけれど。
    すでに書き上げていた作品をまた一から作り直すなんて、作家のプロ意識とこの作品への愛情は計り知れない。

    元々バトルものはあまり得意じゃないけど、ボイルドとウフコックの過去が気になるので、引き続き「ヴェロシティ」へ。

  • シェルとの決別、そしてボイルドとの闘い。

    バロットはウフコックの力に酔いしれることなく、ウフコックの心と重なることで、強さを得られたのではないか。
    自由自在の唯一無二の無敵の、魂ある、道具。
    道具に魂があるのがウフコックなのではなく、その魂に道具としての圧倒的能力が備わっているのが、ウフコックなのではないか。
    だからこそ、魂を委ねられる相棒を、彼は探し求めていたし、バロットは、彼に愛を乞うだけではなく、彼を受け入れ、思いやり、一体となり、愛した。


    始まった絆に終焉は、あるのか。


    物語の筋とは離れたところで、胸を刺す文も多いことも素晴らしい。

  • 一人の少女と一匹のネズミの物語、終結。

    徹頭鉄尾圧倒され、夢中になり、なりふり構わずノンストップで読み切った。心は何度も響き、言葉にできない満足感に浸れている。

    根拠は無いけど、この作品を読んだことによって自分はある種成長できたとさえ思った。バロットにとってのカジノと同じく、この読書経験が自身の成長へと繋がったのだと。それだけの価値がある作品だった。

  • 78点。
    感想。

    非常にいろいろな内容が詰まった小説でした。
    1st終盤での戦闘シーンや、2ndからのギャンブルシーン、さらにコテコテのSF要素と。

    SF小説としての世界観の設定に関してはやや微妙。研究所のかつての3博士あたりは他のシリーズを読まないとわからないとは思いますが、少なくともカジノで描かれるセキュリティ関係とバロット周辺で描かれているオーバーテクノロジーのギャップはちょっと興醒めしてしまうぐらい隔たりを感じる。

    小説の流れとしてはおそらく、バロットの成長物語でそこは上手くかけていると思いますが、ウフコックとボイルド関連がどうにも描写不足に思えました。どうやらこれまた他のシリーズで描かれているらしいけれど、
    何故ウフコックがバロットを許し、ボイルドを拒絶し続けているのかは話の中核になる部分の筈なのでシリーズで描くにしてももう少し、この小説の中できっちり描いていた方が良かったように感じました。

  • 上巻に同じ

  • ブラックジャックは全くわからなくて、戦闘シーンもあまり好きではないので、なんとか読んだという感じです。

  • 決着が、つきます。
    ともかくも、それに尽きる。

    死すべきものは死に、残るべきものは残り…。

    印象的だったのは、カジノの勝負の大詰め。
    バロットがウフコックを「外し」て勝負に臨む場面。

    あ、この娘は自分の力で生きようとしてる…と
    それでこそ、ウフコックといることが出来る…と
    心の中で快哉を叫びました。

    冒険小説の魅力とは、

    「現実ではあり得べからざる困難に対して、様々なものを奪われ、喪失した人物が、自ら能力と心を振り絞って戦うことで乗り越えていく自己回復のプロセスを読む」

    という達成感と爽快感、必死さにあると思うのですが
    これはそういう意味では一級品。

    回復の助力をする者の魅力を語るという意味で
    ウフコックはとびきり格好いいです。

    でもそれだけじゃなくて。

    バロットが自分の力でウフコックを護り、自分の未来を掴もうとした瞬間から、バロットも「何かを与えうるもの」に変貌してゆく。

    それがとても素敵でした。

    敵側のはずのカジノの面々が、バロットと心を重ね合わせる
    ところも、馴れ合いでなくて大人の対応ですし。

    敵役の悲しみにも寄り添いながら、罪は罪として清算させる。
    そこに妥協がないのも凄惨な場面があるのに、一抹清々しく。
    悲しいのに納得がいきます。

    最後の方でウフコックとバロットが涙する場面は
    最高の愛の場面です。

    「ずっと愛してもらいたいと思っていた。
    でも、愛したいと思ったのはあなただけ。」

    と言った趣旨の言葉が、ズンと胸に来ます。

    抱いていてくれと告げる、ウフコックのぬくもりも。

    なにもかもを失ったとしても、与えられるだけではない。
    ただ無意味に与えるだけでもない。

    生きるだけなら一人でも出来る。
    でも…取り戻した何かを、愛する人に
    一途に差し出せるから…。抱きしめることが出来るから…。

    ああ、これ以上言葉は要りませんね。
    刺さった何かを大事にしたいです。

  • 極上のエンターテイメント、という感想がぴったりな感じ。漫画を先に読んでいたので、読んでなければもっとワクワク読んでいただろうなぁ。

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著者プロフィール

冲方丁(うぶかたとう)
1977年、岐阜県生まれ。4歳から9歳までシンガポール、10歳から14歳までネパールで過ごす。早稲田大学第一文学部中退。小説のみならずメディアを限定せず幅広く活動を展開する。
『マルドゥック・スクランブル』で日本SF大賞、『天地明察』で吉川英治文学新人賞、本屋大賞、北東文芸賞を受賞し、第143回直木賞にノミネートされた。『光圀伝』で第3回山田風太郎賞受賞。
代表作となる『天地明察』は2011年にコミック化、そして2012年に岡田准一主演で映画化されヒット作となる。2019年1月、『十二人の死にたい子どもたち』が堤幸彦監督により映画化。

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