マルドゥック・スクランブル The 3rd Exhaust 〔完全版〕 (ハヤカワ文庫 JA ウ 1-10)

著者 :
  • 早川書房
4.13
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本棚登録 : 1566
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  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784150310165

作品紹介・あらすじ

それでも、この世界で生きる-バロットは壮絶な闘いを経て、科学技術発祥の地"楽園"を訪れ、シェルの犯罪を裏づけるデータがカジノに保管された4つの100万ドルチップ内にあることを知る。チップを合法的に入手すべく、ポーカー、ルーレットを制してゆくバロット。ウフコックの奪還を渇望するボイルドという虚無が迫るなか、彼女は自らの存在証明をかけて、最後の勝負ブラックジャックに挑む。喪失と再生の完結篇。

感想・レビュー・書評

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  • 手に汗握る戦いの連続…おかげで一気に読んでしまった……こんなにも存在意義や価値を自問するような、己を見つめ返しながら命のとことんの所で戦う話は読んだことがなかった。
    バロットとアシュレイのブラックジャックでのシーンはルールのなかでお互いの生き様とこれからの生き方を問うような熱いものでした。古いゲームのなかで圧倒的な経験と実力を持った強者と新たな技術を得た未熟な少女。社会の成功者と対峙しながらチャレンジャーはその重みに対して寄り添ってくれる味方と共に戦い、成長していく。この過程が丁寧に描かれていて良かったです。
    そして仇敵ボイルドとの戦闘シーン…本当に勝てるのか?となるほどの白熱でした。西部劇のガンマン同士の戦いにも感じられました。

    助けてくれた誰かによって成長するバロット。この世界と自分自身に絶望していた少女が、この世界のルールを理解していきながら人生の主導権を得ていく。そこまでに必要な人生への価値付けや戦い方、そうして誰かとの暖かくも厳しい繋がり。読み終えたときの感動や自分の人生を少し右回りにしたいと思えるような感慨…とても良かったです。
    読後は脳内でAmazing graceが流れました

  • 退廃を感じさせる近未来。

    少女は、男に殺されかけた。
    「なぜ私なの?」その問いと共に、初めて「生きたい」という思いを抱く。
    彼女を支えるのは、道具になれるネズミ。"彼"は、有用であることを証明し続けなければ、生きることを許されない。
    深くまで描き込まれた一人ひとりが、肉弾戦で、頭脳戦で、存在を賭けてぶつかり合う。

    登場人物全員に感情移入せざるを得ない。手に汗を握るエンタメでありながら、人間の深奥部を抉り出す。ジャンルの枠を超えた傑作。

  • 三部作の完結編です。

    前作のカジノシーンはルーレットだったせいか少し退屈に感じたのですが、カードになった途端緊張感がすごくて引き込まれました。

    劇場版では尺の問題なのか説明が不充分でなぜそうなったのか分からなかったところがちょくちょくあったのでそこら辺の経緯がわかってすっきりです。

    ボイルドが最後ウフコックの温もりと声を思い出すシーンで泣いてしまいました……。
    つらい……。
    ウフコックの手で殺されるのを望んでいたような……。

    ラストでバロットがウフコックもずっと自分の体温を感じていたんだと気づくシーンがよかったです。

    あとがきで冲方先生がカジノシーンの執筆に熱中するあまり吐いてしまって笑ったと書いてあってその熱意にまた感動しました。

    ボイルド推しなのですがマルドゥック・ヴェロシティはボイルドが主人公??
    えっそっちも読もうかな。

  • 引き続きカジノのシーンから。バロット達の息遣いまで聞こえてきそうな描写に引き込まれる。ウフコックのチートぶりが相変わらず痛快(マーロウに少し同情してしまった)。アシュレイとバロットとの駆け引きに手に汗握る(アシュレイの技術が凄すぎて怖い)。ベルとアシュレイがバロットを気に入ってくれるのが好き。カジノのシーンが長いのは全体のバランスとしてどうなのかと思わなくもないが、面白いからいいのだ。終盤の息詰まる戦闘シーンも良い。ボイルドが能力を使ってどんな動きをしてくるか読めず、ハラハラした。

  • もうちょっと、カジノとか、短く出来なかったのかなぁっと。
    読んでいて飽きてきてしまった。ストーリーは面白かったのだけど……。

  • 未成年娼婦として働く主人公が雇い主に殺されかけたところを助けられ、「自分はなぜ殺させたのか」「なぜ生きているのか」を問いながら殺人事件の解決を目指す話。
    助けられた時に金属繊維の人工皮膚を移植されたり、空飛ぶ車が出てくるなど、SF要素が非常に強い作品。
    全体的には非常に暗い内容。

    上巻は読者に対して情報がほとんど開示されない状態で事件が進むため、正直おもしろくない。

    でも、中巻〜下巻がバツグンに面白い。特に中巻の中盤〜下巻の中盤にかけて行われるカジノゲームがとてもよい。
    『ライアーゲーム』のように頭脳を使ってゲームをクリアしていく様子は爽快感があって非常に面白いため、おススメ。

    戦闘部分の描写が分かりづらかったり、世界観が理解できていない時に専門用語がたくさん出てくる点は読みづらいけれど、中巻以降を信じて読み続けて欲しい。

  • 冲方丁作品は先に『天地明察』、『光圀伝』を先に読んでいて、どちらも素晴らしかったので、元々SFが本業だということに驚いた。

    『マルドゥック・スクランブル』は3冊組で、①はいかにもSFという感じの戦闘モノの色が強い。著者の言葉選びは面白いと思う一方で、ちょっと中2感がすぎるなと感じる時もあって、その辺はちょいと寒いかなと。
    ただ②、③は戦闘より、ギャンブルのシーンが長く、ここがとにかく面白い。SFらしく特殊能力を使っているものの、それを凌駕するほど強いディーラーとの戦い。

    ---

    “撃ったら引く(ヒット・アンド・ラン)。プレイヤーいつも不利な条件だから。自分よりも強い相手と戦うための戦法。”

  •  シェルの犯罪の証拠を懸けてのブラックジャック対決、そしてボイルドとの最終対決が描かれる完結編。

    ブラックジャックシーンは専門用語が飛び交い、ブラックジャックに詳しくない自分にとって読むのはちょっときついかな、と始は思っていたのですが、読んでいくうちにあっという間に惹きこまれました。

     なんでルールも分からないのに惹きこまれるのだろう、と思ったのですがあとがきを読んで納得。
    というのも、冲方さんはこのシーンを書くため五日間ホテルでカンヅメをされたらしいのですがその際、
    作中の勝負にのめりこむあまり胃をやられ、中のものをベッドや床にぶちまけ、それを見て笑い声を上げたそうです。

     ……ものすごくツッコミどころが多いというか、常人には理解不能な状況ですが、それだけの情熱が傾けられた上に、初版発行から10年近くたっての改訂で改めて文章に命が吹きこまれた、
    言ってみれば2度にわたって作者の魂が吹きこまれた場面なのだから惹きこまれるのは自然なことだったのかな、と思います。

     ルールは分からないながらも心理戦やバロットとディーラーのアシュレイの対決、そしてそれを通してのバロットの成長は
    冲方さんの魂が込められているだけあって読み応え十分なので、多少の分からないところは割り切ってぜひ読んでほしいところです!

     そしてボイルドとの最終対決。ボイルドの生い立ちにもなかなか辛いものがありますがボイルドと同じように、禁じられた技術によって生まれたウフコックやバロットと彼の違いは、
    力を何のために行使しようとしたかという点に尽きるのかなと思います。

     なんとなくですがバロットの成長を読んでいると、信頼できる人に出会えた喜びと安心が言葉の端々から伝わってくように思います。
    一巻冒頭で「死んでしまった方がいい」とつぶやいていた彼女が、生きるために戦い続ける姿は、今まで彼女が得ることのできなかった、信頼だとか愛だとかを取り戻し、人間的な心理に戻ってきた帰結なのかな、という風に思います。

    第24回日本SF大賞

  • 心理戦からの怒濤のクライマックス。

    読むと止まらない。

    読めばわかる。

  • 「燃焼」の巻があいにく図書館になかったので…。なんてこと。表紙、ウフコックの顔のところに図書館の管理シールが貼られちゃってる…。

    のっけからブラックジャックのシーンがクール。前半部分を占めてるのはちょっと長過ぎる気もしたけれど。
    すでに書き上げていた作品をまた一から作り直すなんて、作家のプロ意識とこの作品への愛情は計り知れない。

    元々バトルものはあまり得意じゃないけど、ボイルドとウフコックの過去が気になるので、引き続き「ヴェロシティ」へ。

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著者プロフィール

1977年岐阜県生まれ。1996年『黒い季節』で角川スニーカー大賞金賞を受賞しデビュー。2003年『マルドゥック・スクランブル』で第24回日本SF大賞、2010年『天地明察』で第31回吉川英治文学新人賞、第7回本屋大賞、第4回舟橋聖一文学賞、第7回北東文学賞、2012年『光圀伝』で第3回山田風太郎賞を受賞。主な著書に『十二人の死にたい子どもたち』『戦の国』『剣樹抄』『麒麟児』『アクティベイター』などがある。

「2022年 『骨灰』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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