セドナ、鎮まりてあれかし (ハヤカワ文庫JA)

  • 早川書房 (2010年11月25日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (336ページ) / ISBN・EAN: 9784150310189

みんなの感想まとめ

戦争の傷跡を抱えた登場人物たちが、辺境の小惑星セドナで遺骨の鎮魂に取り組む姿を描いた物語。主人公のゴロ空曹と仲間たちの静かな奮闘が、心に安らぎをもたらします。セドナの独特な生態系や、現在の日本を背景に...

感想・レビュー・書評

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  • 太陽系の外れにセドナという小惑星があるのを初めて知りました。
    戦争で脳に損傷を負ったゴロ空曹は、セドナに赴任する。そこでの任務はこれまでの戦争で死亡した戦士の遺骨を掘り起こし鎮魂することであった。任務に当たるのは、ゴロ空曹と井伊神田(すごい名字‼︎)空少将とアンドロイドのクイミクの3名。セドナにいるのはこの3名だけのはずだが...
    優しい味わいのSF、発売時から気にはなっていたけれどようやく読みました。
    いい小説!

  • 辺境の星セドナで、遺骨収集する三人の姿が、読んでいて心休まる。やけに登場人物に日本人が多い事に違和感があったけれど、設定の上で現在の日本を下敷きにして書かれているようで、納得。
    ゴロとイーイーの関係はちょっと出来すぎていると感じた。ただしその設定があるからこそ、作者が伝えたい事はよくわかる。

  • 小説第4作。これまでの恋愛小説とはうってかわったSFファンタジー。
    戦争で破壊された星で、遺骨を収集し英霊たちを鎮める主人公たちの心の交流を描いた、優しい再生の物語。

    戦争で傷を負い幼児退行したゴロ、老人イーイー、旧式アンドロイドのクイミクの家族のような絆や、家族のために命を賭した先祖のメッセージに心が温まる。
    文章が拙く展開も平坦だが、作者に書きたいものがあり、それが読み手にきちんと伝わる作品だと思う。

  • SF。戦後を描いた戦争SF。
    セドナ独自の生態系の描写が好み。
    オールディス『地球の長い午後』ほど綿密に練られてはいないか。
    芝村裕吏『セルフ・クラフト・ワールド』に似てる印象。
    SF的には平凡だが、純粋な登場人物たちと、静かに心に響くストーリーが良い。
    終盤はなかなか感動しました。
    SFを読まない人でも普通に楽しめそう。
    隠れた名作では?

  • >しごとは、ほねを ほります。
    >むかしの せんそうのときに しんだ へいたいさんの ほねです。

    全編が物語のエピローグのようなステキSF。
    全太陽系規模の戦いのあと、戦場となっていた準惑星セドナを舞台に、戦争で知能に障害を負った青年ゴロと、彼に取り憑いた幽霊、老少将と、彼の秘書アンドロイドが大地に埋まる大戦の遺骨を少しずつ収拾していくお話。
    SFはタイトルだよなーと常々思うわけで、タイトルがかっこいいので読みたいと思っていたのです。

    まず舞台がセドナですよ。
    太陽系最外縁の準惑星、1年が10000地球年の星に人工太陽を浮かべて人が暮らしている。
    セドナの軌道(https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Oort_cloud_Sedna_orbit.svg#/media/File:Oort_cloud_Sedna_orbit.svg)を思うとこの設定めちゃくちゃエモくないですか!?
    そんな孤独な場所で人類が生活していてセドナ語があったり、宇宙戦争していたり、誰もいなくなった後たった2人(とアンドロイドと幽霊)が遺骨集めてたりするんですよ。

    そしてテラフォーミングされた大地には、空を漂う蛇のような「火の尻尾」とか、「赤バッタ」とか、光を発する「蛍草」とか不思議で魅力的な独自生物が生きている。
    このセドナ生物が地上を覆う戦術ナノマシンの影響を受けてたりしてまた独特で味がある・・・。

    表紙イラストの大石まさるもノスタルSFには良くあっていてすごくいい。

    惑星間(恒星間かも?)戦争のわりに、戦争描写はまんま太平洋戦争なところはちょっと説明欲しい感じ。
    でもSF作家じゃないのか。その辺は雰囲気かな。


    >そらは、いつも あおく、はれています。
    >ときどき くもが ういています。
    >あおい そらの したを、あかい だいちが どこまでも つづいています。

  • セドナの生態系に心惹かれた。
    セドナの過去や碁呂達の行為から連想することもあり、 蛍の光が目に沁みる…。
    ほんわかした良い話なのにそこから抱くのは真面目な思い。 世代を継いで遺していきたい文化と今の日本人について考えさせられる。

  • 主人公のキャラクタというか、色というか、もう少し何とからなかったのか?という気がする。

    戦争によって精神に障害を負った主人公は、子供の純粋さをその色として持っていてるのだが、この点が物語を安くしていると思う。

    戦後の遺骨収集作業という物語のメインなのだけれども、前述のとおり主人公のあり方によってどうにもシャキッとしない。

    暗い物語に子供を配することで、バランスをとったり、よりコントラストを明確にしたりすることがあるけど、この場合はどうにも暗いほうが弱いせいで全体的にぼんやりしている。

  • ジュブナイルなのかなぁ。少々緩めの語り口や展開、ど直球なキャラと展開ではあるのですが、居心地の良い物語でした。戦争によって荒廃した辺境の惑星で、遺骨を丁寧に収集する元軍人とアンドロイドのもとへ戦争の後遺症を持つ青年が、後継者として赴任してきます。この3人がともに過ごした数ヶ月の物語です。かなり旧日本軍的な用語や思想が出てくるので気になる方には勧めません。

  • 短編連作とかにすればよかったかも。
    途中までの話者謎でひっぱる方が愉しかった。
    最後いらない、遺書でおわりがよかった。

  • 一文で表すなら、近未来的世界観で淡々と進むちょっといい話。
    さらっと読めるがズドンとこない。

  • この物語は、2つのパートに切り分けることができると思う。
    私の主観による大雑把な名称で分けるが、1つはSFパート、もう1つは思想パートである。

    まず、SFパートについて。
    これは物語の舞台となる、セドナの環境とそこでの生活について描かれている部分についてである。
    かつて繰り広げられた宇宙間の戦争において激戦地となり、その当時に大量散布された種々の戦術ナノマシンが、今なお惑星環境に多大な影響を及ぼしている惑星セドナ。
    ナノマシン自体・あるいはナノマシンが引き起こす環境変化に対応すべく、独特の進化を遂げた種々の動植物の存在は、とても魅力的である。
    初めて遭遇する環境に、驚き感動するゴロの視点は読者の視点そのままで、戦争で負傷し脳に障害を持つゴロの、子供ように素直な感嘆の表現は、すんなりと受け入れることができる良いファクターになっていると思う。
    “思念を読み取る”という性能を持ったナノマシン(戦争当時は敵兵の思考を読み取るために用いられたもの)が、独自の進化を遂げ、集って生じたという思念体・タガナックも、ある意味ではセドナの環境そのものの存在である。
    この物語はタガナックの視点で進むので、タガナックがゴロに接触を持つ際のシーンは特に面白かった。
    ナノマシンによって在るタガナックは、空中に浮遊するナノマシンを集めて擬似的に体を作り出すが、それが成せるのは大量のナノマシンが吹き荒れる暴風の夜のみである。
    この「暴風の夜のみ」という限定条件は、通常、夜は暴風を避けるため家にこもり外出を避けるゴロ達との境界線をくっきりと描いているかのようで、良い味付けになっていた。
    タガナックとゴロ達の住む世界が決定的に違うということ、セドナを覆う存在としてあるタガナックの特異性、両面を端的に表せている。
    暴風の夜であっても全身をしっかりと現すことが困難なタガナックは、必要である箇所、例えばゴロに触れるために腕を、あるいは語るために声帯を、それぞれ選んで強く実体として現す様は、目前で見ればその名の通りの“幽霊”だ。
    そもそもタガナックの元となっている“思念を読み取るナノマシン”が、特に思念を読み取った相手がゴロの祖父なので、タガナックは遠く時間を経て現れた孫を、セドナ上で見守っていたことになる。
    イーイーもクイミクもタガナックを戦死者の魂・英霊と捉えているが、それはあながち嘘ではない。
    英霊よりはもう少し科学的に説明のつくナニかではあったようだが、それでも、鎮魂の言葉をただ言葉としてだけでないものとして聞いたり、血の繋がりに無意識に影響を受けていたり、科学的に全てが説明できるわけでもない。
    タガナックの存在は最後まで不可思議さを残しており、なおかつそれは明かされないままでずっとそのままであって欲しいと思わせる、そんな奇妙で面白い存在だった。
    ただ、“思念体”として存在するタガナックがナノマシンの集合体であったとして、それがゴロの傍をつかず離れずで共に移動していくのは、一体どういう理屈なのだろうかと不思議ではあった。
    空中に浮遊しているナノマシン間を渡り歩く、一定の強弱や波形を持つ電気のような存在なのかも知れない。
    登場人物たちはみな基本的に善人ばかりである。
    隠者の趣ある老人・イーイーも、彼に従う人間じみたユーモラスなアンドロイド・クイミクも、障害ゆえに子供の如き純粋さを持つゴロも、それぞれがしっかりとしたキャラ立ちをしながら、セドナの上で生きていく。
    大きな起伏のある物語ではないが、キャラがそれぞれよく出来おりなおかつよく動くので、読んでいて飽きることはなかった。
    セドナの環境設定とキャラメイクにおいて、この物語は丁寧に作られている。

    続いて思想パート。
    この部分については、正直、私は読んでいてかなり辟易とした。
    いわゆる民族・国家主義的な思想が語られるのだが、その内容が突拍子が無かったからだ。
    祖先から続く伝統を受け継いでいかなければ、というような表現が登場するのだが、物語の中で「祖先から続く伝統」を実感させてくれるエピソードは特に無い。
    物語に描かれていない・描ききられていないモノが唐突に語られるので、違和感がある。
    戦争の最中、まさにタガナックの思念の元となったゴロの祖父の心中が語られるシーンもあるわけだが、これがまたなんとも薄っぺらく感じられた。
    死を目前とした人間が、それを恐れなくなる心理は、想像しがたいものだと思う。
    そんな想像しがたい変化を納得させてくれるだけの強い説得力を持つエピソードは、残念ながら無かったように思う。
    また、クイミクが遺骨の発掘作業中に発見した遺書を読んだ際の「命をかけて戦ってくれて、ありがとうございます。」と言いながら号泣するシーンには、正直に言ってかなりぞっとした。
    その豹変っぷりがあまりに極端で、異様に見えたためだ。
    元が愛嬌のあるキャラなので、そのギャップがまた恐ろしく感じられた。
    セドナという特異な箱庭の中で、ある一定の思想にさらされた結果がクイミクのこの反応ならば、これは一種の思想教育の賜物といえるのかもしれないと、そんなことすら思った。
    非常に極端な民族・国家主義的な思想を頻繁に語るわりに、それを導けるだけの作中のバックグラウンド(政治情勢にしろ太陽圏連合のこれまでの歴史にしろ)がきちんと描かれていない。
    最後の数ページで一気にそのあたりをまくしたてられたが、それは物語を通してきちんと描くべきことだと私は思う。
    このパートについては、おそらくは現在の日本の様子を批判するつもりで描かれているものと推測されるのだが、日本をそのまま舞台しているわけではない以上、物語の中の世界は世界としてきちんと描くべきだろうと思う。
    「今の日本のことを反映しているとしたら」という前提を持てば、先に書いた伝統を受け継ぐという話も解らないではないが、そんな読解をしなくては意味が解らないような内容なら、物語としては体を為せていない。
    自分なりの思想を持つのは大事なことだし、それをはっきりとテーマに添えるのも解りやすくて良いとは思うのだが、そのテーマを読者に納得させてくれるだけの力は、この物語には無いと私は思った。
    読後、この思想パートに対して残った感覚は、ただただ異様さへの違和感のみだったからだ。
    SFパートを面白く読めていただけに、思想パートの噛み砕きの甘さは勿体無いと感じた。

    上記2つのパートが、物語中でそれぞれが独立したまま融合せずに展開していったように感じた為、異物感が最後まで拭えなかった。
    SFパートだけ読ませてもらえればもっと物語に入り込んで素直に最後まで読めたのだろうが、思想パートが急に入り込んでくるため、その度にふと我に返ってしまい、その都度物語に対し距離を感じてしまった。
    思想パートを問題なく読める人ならば最後まで面白い物語だと思うのだが、ここに違和感を覚える人はおそらく最後まで違和感を抱いたまま終わるのではないだろうか。

    また、上記2つのパートとはまた別の点なのだが、文章が読みにくく感じられた。
    作者の個性なのか、あえてそういう書き方をしたのかは解らないが、句点が多すぎて前につんのめるような感覚を覚える箇所が多々あった。
    更に、一文が妙に長く、結局何を言いたかったのかと読み返す箇所も何箇所かあったため、その都度にまた物語との距離を感じてしまった。
    物語全体がタガナックの独白のようなものだから、作文のような文章になっているのはまだ解るのだが、それにしては変に硬い文章が出てきたり、かと思えば妙に切れの悪い文章が出てきたりと、ブレているように感じた。
    これも好みの分かれるところではあると思うのだが、私は逐一気になってしまった。

    全てを面白く読めるかどうかについては、読み手を選ぶ小説だと思う。

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著者プロフィール

小説家。1976年生まれ。
2007年に『エレGY』(星海社文庫)で講談社BOX新人賞を受賞し、デビューする。小説家として活躍するかたわら、ボカロPである“ジェバンニP”としても活動している。小説の代表作に『私のおわり』『ジスカルド・デッドエンド』『猫の彼女のESP』(星海社FICTIONS)などがあり、ボカロPとしての代表作に『すすすす、すき、だあいすき』『恋ノート////』『リンカーネーション』などがある。

「2014年 『ボカロ界のヒミツの事件譜 3 名探偵エレGYちゃん様の謎解きごっこ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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