ハーモニー (ハヤカワ文庫JA)

著者 :
  • 早川書房
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本棚登録 : 6883
レビュー : 941
  • Amazon.co.jp ・本 (384ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784150310196

感想・レビュー・書評

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  • 再読。

    これは間違いなく、命と引き換えに書かれた物語です。

  • 世界中が平和である世界は怖い。
    白いのに黒い。
    そんな感じ。

  • とても面白かった。主人公が女性であったり、生命保持のために全てが統制された平和な世界が舞台。虐殺器官のような直接的なものとはまた違ったハードコアさがある。
    各章のタイトルが全てナインインチネイルズの曲名(もしくはそのもじり)から取られているのも、この物語の性格を表している。
    今の「つながり」を大事にした社会の、一つの行き着く先のよう。SFがエンタメであると同時に、未来の考察でもあるということがよく分かる。

  • めちゃくちゃ面白かった!今年読んだ本の中で一番面白かった。
    ちょくちょく出てくるプログラミングみたいな書き方も斬新で楽しい。そのような書き方をする訳も明かされるし伊藤計劃さんはすごいと思う。
    文章も読みやすいのですらすら進んだ。表現や描写が丁寧で、シーンのイメージも容易にできる。

    おそらく虐殺器官のラストが〈大災禍〉で、その後の世界なんだろうと思う。
    技術がこれだけ発展していれば、ハーモニーの世界もありえそうで怖い。
    舞台設定などもぴったりだった。
    難しい話ではあるが、話の運びが丁寧なのでわかりやすかった。
    人間の幸福の究極のかたちがこの物語の通りなら恐ろしい。確かに一見完璧な調和に見えるけれど、それと引き換えに失うものが大きすぎる。


    退屈させないペースでキーポイントが出てきたり話が進んだりするので飽きずに読めた。
    SFはあまり読まないが、こういう形のSFもあるのかと感動した。

    「財布を使いこなせれば、貯金箱はいらないのに」
    「良いこと、善、っていうのは、突き詰めれば「ある何かの価値観を持続させる」ための意思なんだよ。」
    「しかし考えてみたまえ、人間が身体を日々医療分子によって制御し、病気を抑えこんでいるというのに、脳にある『有害な』思考は制御してはならないという理由があるのかね」
    「かつて、かつて、かつて。
    それは過ぎ去った環境と時代に向けられる弔いの言葉。」
    「文字は残る。もしかしたら永遠に。永遠に近いところまで。」
    「進化は継ぎ接ぎだ。」

  • 時代設定としては前作『虐殺器官』後の世界の、さらに未来のお話。ありうべき未来としての設定の綿密さは相変わらずですが、テーマとなるのはやはり、そんな近未来のシステムそのものではなく、人間の内面の器官のほう。今回もなるほど、と思わされましたが、前作ほどのインパクトはなかったかなあ。しかし主人公が女性で、高校生時代の3人の少女の友情が物語りのベースになっていたので、その点は感情移入しやすく読みやすかったです。

  • 人間が病気で死ぬことがなくなった世界。WhatchMeと呼ばれる監視機構により体内のバランスは常に監視され、健康な状態を維持される。また、社会全体として、リソース意識なる言葉で、自分の健康に気を使わないのは、非道徳的であるという価値観が蔓延している社会。真綿で首を占めるように自らを律するそんな社会に違和感を覚えた三人の少女は、自殺を決行する。その結果、ミァハは亡くなり、トァンとキアンは生き残った。大人になった二人は…

    人間とは何か。完璧な社会とはどんなものか。これをとことんまで突き詰めた作品。主人公トァンの一人称視点で話が進むためか、一見平和で幸福な社会に見える監視社会も人間を無理矢理、理想郷に押し込んだためか、奇妙な軋轢と苦しみに満ちているように感じられる。

    読んでる最中は、中盤の全世界への脅迫とかつてのミァハの姿が重ならず、納得がいってなかったが、ミァハの過去に触れ、本質を知るに連れて、その思想の流れが理解できるようになった。

    人間はどこまで人間なのか。SFでは、まま見られるテーマだが、今作のこれはインパクトのある結論だった。完璧な社会には、人間の意思は不要である。寧ろ、邪魔をするのみである。人間は、意思を捨て、動物を辞めることで、完全な調和を持った理想的な社会を実現できる。
    実に気持ち悪い結論ではないか。福祉国家の極致が、社会主義の極致と一致するのは、よく考えてみれば理解できることである。
    ミァハは、意思無き人間を当然のように受け入れられるが、私のような一般人には思い浮かばない発想だ。後書きの筆者のインタビューにて、今の私の思い描く世界の極致はこれが限界だとある(少し違うかも)。出来れば、この作者が次に描く世界にも触れて見たかったが、残念ながら、この作者は今はもういない。残念でならない。

  • 近未来の大戦後に作られたユートピアの話。
    世界観は前作の虐殺器官に続いている。

    この作家は言葉の力をすごく信じている。
    前作はそのままだったけど今回もそれを節々に感じられた。

    人が病気を駆逐した世界ってどんなものなんだろう。
    いまいちピンとこない部分もあった。
    ひとつの病気が無くなったら、さらに違う病が出そうだけど。
    でも極端な世界観は読み手の想像が広がるなぁ。
    これがSFなのかな。

    実は本編よりも解説の方を読んでハッとしました。
    病室でこの作品を書くというのはどういう心境だったんだろう。
    想像すると改めて畏怖した。

    亡くなられているのを知りませでした。
    もっと伊藤計劃の読みたかった。
    もっとすごい作品がかけただろうに。
    残念です。

  • 戦争や病気で苦しむひとが減り身体を機械に管理され、嗜好品と呼ばれるもの全てを禁止される未来の話。
    結局私達にとって本当の幸福とか平和ってなんだろうと考えてしまいます。
    トァンが起こした行動はとても人間らしくぐっときましたが、その後の切なさったらない。

  • ハーモニー、という題名と、伊藤計劃作品ということで、何となくイメージしていたとおり、もしユートピアが実現したら、という物語。そして、ユートピアとはどういうことか、ということに深く追求している。

    自然と非自然を分かつもの。それが人間と動物との違いであるという認識。全ての病を克服した状態で、みな他人に善意を押し付ける。その善意の源は、「リソース意識」。数少ない人間は、立派に育って社会の役にたつべきリソースである、という認識。

    良い高校、良い大学、良い会社に入って、結婚し、社会に貢献し、まっとうな人生を歩む。そんな全世代的な考え方の痛烈な批判とも受け取れるが、最後の章でそれを軽く乗り越えられる。人間は、完全に非自然的な存在になったとき、果たしてそれが幸福なことなのか否か、読者自身に考えさせるラストとなっている。

    まあ、思春期の葛藤の成れの果てで、全人類の運命を左右してしまったとも言えるが、思春期の葛藤ほど自我というものを痛烈に意識させるものがないということだろう。

    別の切り口から見ると、昨今のいじめ問題。この世界では、いじめなるものは一切存在しない。それなのに、子供の自殺は(作品内には統計は出てこないが)増加の一方である。いじめをなくす、思いやりのある人間に育てる、いい子に育てる、が、必ずしも自殺の減少にはつながらないのではないか、という指摘にも見える。一番大事なのは、型にはめることではない。自我を尊重すること。ハーモニーの社会を描くことで、そのことを一番訴えているように感じた。

  • おもしろかった!
    こんな世界が、近い未来に迫ってきているようで恐ろしい。汚いものを排除すれば綺麗なものだけが残るわけではないから、“わたし”は自分で選びながら生きていきたい。

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著者プロフィール

1974年東京都生れ。武蔵野美術大学卒。2007年、『虐殺器官』でデビュー。『ハーモニー』発表直後の09年、34歳の若さで死去。没後、同作で日本SF大賞、フィリップ・K・ディック記念賞特別賞を受賞。

「2014年 『屍者の帝国』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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