ハーモニー (ハヤカワ文庫JA)

著者 :
  • 早川書房
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レビュー : 939
  • Amazon.co.jp ・本 (384ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784150310196

感想・レビュー・書評

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  • 21世紀後半、「大災禍」と呼ばれる世界的な混乱を経て、人類は大規模な福祉厚生社会を築きあげていた。
    医療分子の発達で病気がほぼ放逐され、見せかけの優しさや倫理が横溢する“ユートピア”。
    そんな社会に倦んだ3人の少女は餓死することを選択した―それから13年。
    死ねなかった少女・霧慧トァンは、世界を襲う大混乱の陰にただひとり死んだはずの少女の影を見る―『虐殺器官』の著者が描く、ユートピアの臨界点。
    第30回日本SF大賞受賞、「ベストSF2009」第1位、第40回星雲賞日本長編部門受賞作。

    「虐殺器官」のその後の世界を描いた作品。
    虐殺器官を読んだ時にも感銘を受けましたが、ハーモニーは虐殺器官を凌駕していると言ってもいいほど、作品としての魅力が沢山ある作品だと思います。

    語り手の霧慧トァン。御冷ミァハ、零下堂キアンの三人で一切病気にかからず、人々の優しさに溢れるユートピアの世界でその世界に刃向おうとする。
    この世界では一人一人がパブリックボディとされていて、公共のリソースとして大切に大切に保護されながら生活をしている。

    タバコ、酒はもちろんこの世界には無いし、カフェインですら禁止になっている場所もあるほど。人々の身体は生命至上主義の名のもと管理されている。

    その発端となった。半世紀前の虐殺の繰り返しと核の乱発による大災渦。

    そして次に求めるは意識の統制。
    完全なる平和の世界。
    意志の喪失。無判断による生命の伝達。

    究極の世界だとも見える。
    進化するにつれて人は死者へ近づいていくのだろうか。
    人間である事を失すると同時に全ての均衡がとれるようになる。
    正直怖い。

    タグの様に括られて書かれている文章は、最後でその理由が分かると思います。
    やはり自分は、人間であるために意志の間でせめぎ合い。
    自分で摘み取って選びたい。鬱陶しい時もあるけれど。
    人間らしく間違って傷つきあいながらも、生きていたい。
    そう思う。

  • なぜだか今だに最初のところのミァハがトァンの手の甲に口付けをするシーンが忘れられなくて印象的であった。
    これは映像化されたらすごくおもしろそうだし、自分でも読んでてシーンが浮かんでいた。未来にこういう事が起こりうるんだよな…

  • コレは名作。
    SF、ガジェット、エヴァン、攻殻、ディアスポラ、人類の進化、オンライン、拡張が好きなら是非読んで欲しい。

    WatchMe。大災禍(メイルストロム)をきっかけとしての進化。メディモル。少女の死。意識の消失。

    あまり書くとネタバレになっちゃうからなんやけど、人類補完計画的な。

    意識ってなに?人類の存在意義ってなに?ハーモニーって?

    なにが、しあわせ?

  • “やさしさ”を突き詰めた社会体制が人を追いつめるのか、とゾッとした。
    書式おもしろいなーとユルい気持ちで読んでいたら、
    起こった事件のむごさに驚いて、それから先は一気読み。

    同作者の『虐殺器官』が余分な感情を排した世界なら
    『ハーモニー』は本来は好ましい感情を突き詰めた世界なんですね。
    どちらも極論に思えるのに、実際に起こりそうなのが怖い。

  •  まっちろけな表紙に惹かれて購入するも、逆に取っ掛かりがなさ過ぎる。中身も一行目から〈〉括りの横文字で始まっていてつい敬遠。ずいぶん積読にしていました。
     購入しておいてないやってんだか。

     しかし読んでみると物語は単純。噛み砕いて言うと、思春期特有の潔癖さが世界レベルの災厄を招くという話。途中でラノベを意識させるくだりもあって、親近感がさらに増。感情移入はしやすいと思うので、SFとして読んでも読まなくても楽しめます。

     さらに著者の事情も合わせて読むとぐっとくるものがあります。
     死に限りなく近い場所にいた人間の描いた医療によるユー(ディス)トピア。ウェルテム効果が危険です。(←たぶん意味合ってない)

  • 読まなきゃ良かった、と、一瞬だけ思った。
    いや正確には、読み始めなければ良かった、と。

    読み始めたら読み終わるのは必定で、であれば読み始めなければ良かったのだ。という勝手なループに入り込めるほど、この書籍はあたしにとってすごかったから。

    例えばこの本をあたしが読んでいて、琴線という線を本当に持った楽器だったとしたらおそらくは、ずっと奏で続けることに耐えられずに壊れてしまったんじゃないだろうか。永遠に奏でることさえできなくなるほどに。そのくらいの衝撃。もっとわかりやすくいうと、例えば感動した箇所に、揺さぶられた部分に線を引いてご覧と言われたならば、多分、あたしは無表情に永遠と、この本を塗りつぶしてしまったんだろうと思う。



    神様はもう、この人に会いたくて仕方なかったんだろうね。だからこそそんなにも慈悲深く、この才能を摘み取ってしまったんだろう。ひどい話だ。

    でも同じくらいわかる気がする。神様ってのが人間を超えた存在だとしたらきっと、もう耐えられないくらい才能に敏感なはずだもの。見過ごしてくれる訳ないんでしょう。サヨナラ伊藤さん。愛されすぎた人。



    あたしが虐殺器官を読んで感動した時に誰かに、きっとハーモニーはもっと気に入るよ、っていわれた気がする。誰のセリフかは覚えてないけど、その人を抱きしめたいくらいの気分だ。その通り、すげーですこれ。もう感想なんて書いてられない。この気持ちだけを抱えて眠りにつきたい永遠に。そのくらい。



    というわけでもう、感想が書けないのがあたしの一番ストレートな感想です。こんなに感動したらもったいなくて、文章になんかしたくないです。陳腐な自分の言葉でこのセカイを、矮小化するなんてとんでもないのです。



    よって今日は、感想はひと言で終わります。



    <byebye_thisxxxxworld>
    あたしを殺してくれる声を発することのできる人をあたしは記憶から持ってこられない、その事実があたしをひどく傷つけます。
    </byebye_thisxxxxworld>






    了。

  • メディケアという医療分子とWatchMeというメディアによって、人が病気を克服した世界
    平均化され、完璧に近づいていく人間同士が描くハーモニーはいったいどんなものなのか
    人間らしさ、個性とはなんなのか
    考えさせる作品だったと思う
    ただ、残念だったのが、この世界に入りこむには少し難しかったということ
    最近、本を大量に読んでないせいもあるけども、世界観が少し特殊すぎて最初は少し耐え忍ぶ部分が出てくるかも
    ただ、それを超えると この世界のなんともいえない寒々しさ、奇妙さに引かれていくのではないかと思う。

  • 悪意がない世界。
    病気で死なない世界。
    安全で安心な平和な世界。
    そんな世界が成り立つとき、人は空っぽであることが条件になる。
    人間がonly oneを求めないこと。
    タイトルや真っ白なカバーは、その美しさの裏に、完璧な表面の下にある虚しさが覗くようで好きだ。
    この本のようなテーマは個人的に、深く考えるのを躊躇ってしまう。
    多分結論がどうしようもなく人間を否定するしかないような気がするから。
    だからこそ自分がたどり着けなかった結論に、なんらかの形を与えてくれたこの本に出会えてよかったと思う。

  • 伊藤計劃が円城塔と親交が深かったってのはなんとなくわかる気するな。。。思考回路が似てそう。
    大災禍以降、大人たちが住みよい理想の社会を追及していった結果、人類は病気では死なない、全てがコントロールされた世界が実現し…
    均一化し、個性のない人間たち。それに反発し、拒食によって自らの命を断とうとした3人の少女。
    ミァハひとりをのぞき、生き残ってしまったキアンとトァン。

    満たされていることに平和でいることに反発するとか厨二病か、と思いつつ読んでいましたがどうもこれはアンチテーゼが込められている気がする。無菌化された潔癖な社会の脆さや、「意識」の定義など色々衝撃を受ける内容でした。

    2009年、34歳という若さで亡くなった伊藤計劃、もし彼が生きていたら3.11をどう受け止め、どんな作品を生み出していたんだろうか。病床で彼が遺していった作品だと思うとかなしい。

    核も怖いが南海トラフも怖い、そんな残暑にて。

  • 衝撃体験。脳みそがひっくりかえるくらいおもしろかった。これ読んでるあいだは寝ても覚めても伊藤さん。これがSFというものか、そうなのか。

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著者プロフィール

1974年東京都生れ。武蔵野美術大学卒。2007年、『虐殺器官』でデビュー。『ハーモニー』発表直後の09年、34歳の若さで死去。没後、同作で日本SF大賞、フィリップ・K・ディック記念賞特別賞を受賞。

「2014年 『屍者の帝国』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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