ハーモニー (ハヤカワ文庫JA)

著者 :
  • 早川書房
4.26
  • (1231)
  • (962)
  • (384)
  • (50)
  • (22)
本棚登録 : 6873
レビュー : 940
  • Amazon.co.jp ・本 (384ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784150310196

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
  • 久々に衝撃を受ける本に出会った。“完全”な世界を求める人間の努力が行き着く先は、意識の喪失だという論理的帰結。その過程は非常に興味深かった。理想と現実について考える機会になった。

  • まさかこんな風に考えられるなんて思いもしなかった。『虐殺器官』といい、前から抱えてた疑問にひょろりと道筋を見せてくれた伊藤計劃のことを思うと、全くなんとも心の底から残念でならない。
    伊藤計劃の文は、どことなくあっさりしていて、でも淡白というわけでもなく、必要十分を満たしていると感じる。
    伊藤計劃が限界まで追い求めた答えを、俺も追い続けたい。

  • 【読了】伊藤計劃「ハーモニー」 今月20冊目。

    月初にデビュー作である「虐殺器官」を読んで、すごく気に入ったのだけども、すぐに「ハーモニー」を読むのももったいない感じがして、月末に締めとして読んでみることに。

    作品世界は前作の虐殺器官の後の世界。といっても時間軸で繋がっているだけで、キャラクターなどは全くつながっていないので、虐殺器官を読んでいなくても楽しめる。でも虐殺器官を読んでおいた方が理解度が高まる箇所があるので、素直に虐殺器官を読んでからをおすすめしたい。

    さて物語は医療分子の発達によって「病気」というものが無くなった世界。体内を常にモニタリングされて、問題があればすぐに対処できてしまう世界。全ての個人情報がフルオープンになっている世界。

    この状況設定が非常にうまく描写されていて、荒唐無稽な感じもなく、実にリアルにこの世界が感じられる。とはいえ、SF色は前作の方が色濃かったというか、ガジェット感が強かったのが前作。今作は社会システムの方に目を向けたという感じか。

    ちょっとSNSに置き換えて読んで考えてみると面白かったりするので、SNSの在り方、関わり方に悩んでいる人とかも読んでみると面白いかもしれない。

    惜しいなと思うところはクロージングだろうか。虐殺器官でも感じたのだけど、終盤のクライマックス、エンディングの展開が割と淡々としているというか。まぁエンディングは淡々としていて物語的には正解なんだけども、トァンの「意識」の葛藤みたいなものが終盤にもうちょっと劇的に書かれてもいいんじゃないかなと。でも好みの問題かもしれない。

  • この人の本の新作がもう出ないんだと思うと本当に悲しい。
    読みやすい・恰好いい・面白い。
    ラノベとかで奇をてらって失敗してる本はあるけど
    この本の場合、HTMLタグによくにたタグが入ってくるのも
    説明なしで世界観を理解するのに役立ってる。
    すごくいい。

    気になるところだってある。
    ・主人公の父親への思いがよくわからない
    ・っていうか、登場人物の考え方はわかるが、お互いへの思いがよくわからないところがある

    でもそれを差し引いても本当に面白い。
    この人の本は全部一人称で書いてあるけれど、それが本の中に入り込んで考えるということを促進している。
    漫画家さんで、同人あがりの人が活躍するようになって久しいけれど、この人は小説家のそれだとおもう。

    この人がもし、長生きしたら、いいSFやミステリを書いてくれたんだろうな、って思う一方で、ああでもこの輝いてる作品しかないまま逝ってしまったなんて、なんて贅沢だろうとも思う。

  • 久々に買って良かったと思えるホンに出会えた。他の伊藤計劃の作品も読んでみよう。健康重視社会へのアンチテーゼと読み取ったが如何に。

  • 凄い本を読んでしまったなと。
    体に埋め込まれた通信端末「WatchMe」により健康状態を常に完璧に保つことに成功した未来のお話。
    その世界では「健康な生存」がすべてにおいて優先され、ほとんどの病気を防ぐことが出来ます。死ぬとしたら老衰か自殺しかありません。
    また、隣人には常に優しく、誰もが助け合って生きていく優しい世界。
    そんな世界を「押しきかせだ!」と嫌悪する主人公トァン。

    前半がチョットだけ分かりづらいんですが、トァンが学生時代、一緒に世界を憎んで、餓死しようと試みた旧友と再会するところから、一気に盛り上がります。
    目の前で自殺する旧友。そのとき同時に自殺を図る数千人の人々。

    『ハーモニー』を読んで、以前なんかの記事で"現代における思想の主流は「エコ」だ"っていうのを読んだことを思い出しました。
    確かに誰もが「エコ」は正しいと感じていると思うし、また目立った反論も無い気がします。
    否定しようがないという点で、『ハーモニー』の中の優しい世界って、この「エコ思想」の発展系なのかなぁって気がしました。
    何となく「エコ」って、気持ち悪い部分もあるなぁって思ってしまっていたんですが、その感覚の一端を文章にしてもらえた思いです。

    単純にお話としても、ドンドンとスケールが広がっていく様は読みながらドキドキしっぱなしでした。
    前作にあたる『虐殺器官』は読みづらいところもあったのですが、『ハーモニー』は流れに乗ってしまえば読みやすく、小説としても思想書としても一級品だったと思います。
    惜しむらくは作者であられる伊藤さんが若くして亡くなっているため、ほかの作品がもう読めないこと。
    もっとたくさん読んでみたかったです。

  • 虐殺器官の評価が高くてこの作家さんの作品を読んでみたいと思っていたら、この作品が2009年SF大賞を受賞したと知って、手に取ってみました。
    長編ですが、一晩で一気に読みました。
    と、言うか読まされたといった感覚でしょうか。
    半端ない吸引力でした。
    独特の世界観と精緻な文体が綴る理論と説得力に唸りました。

    一言で言えば、未来の世界を描いた小説。
    その未来とは、核戦争後の世界なのだけれど、誰もが健康を一番望んでいるという当たり前と言えば当たり前の世界。
    が、当たり前でないのは現在よりも科学が発達していて、人は身体の中に医療ポートを設置していて怪我をしたり病気の兆候があれば即座に治療をする。
    病気や怪我に悩まされることのない夢の未来。
    そして、不健康が悪という恐るべき管理社会。
    ファシズム的な管理の中であがく主人公のキァン視点で進んでいく。と、いう摩訶不思議な物語。
    SFだけれど、私にはホラー小説のようにも感じた。

    作中の「意志」の定義が興味深かった。
    全て読み終わった後に感じたことは、何だか思春期の頃に感じていた内容だったなあ…と思った。
    皆が自分と一緒になればいいのに…。
    そうしたら、楽で心地よい世界になるのに。
    なんて、バカなことを考えていたなあ…と思い出して苦笑い。
    こういう思考って、自意識が強くて自己愛の強い子供が考えがちだなあ…と。
    幸い、自分は自分だらけの世界なんて怖いわ…! 気持ち悪い…!
    という冷静さは持っていましたが。
    この物語の主人公もミァハも中二病をこじらせて大人になってしまった痛い子たちかなーというのが正直な感想です。

    作中に時折現れるHTMLタグ?が気になってたんですよね。
    実は、現実世界ではなくてネットのバーチャル世界なのかなーと思ってたら、エピローグを読んで、そういうオチかーと納得。

    この作品が海外SF作品で賞を受賞したというのも納得のクオリティ。
    世界観も文章の精度、センスも只者ではない。
    すごいなー、この作家さんって有名大学卒かなぁと思いながら、読みながら本の奥付きを見て愕然。
    伊藤先生って、亡くなっているんですね…。
    リアルに「ええっ!?」って声を出してしまった。

    物語の中盤で相当のショックを受けてしまった。
    しかも、30代で亡くなっているなんて…。
    後は虐殺器官しか長編ってないのか。
    残念…。本当に残念でたまりません。
    日本の文学界の損失を感じた次第です。

  • 設定がすごいと思いました。すごく凝ってる。タグで進んでいく感じとか、読み終わった後にああーってなりました。
    世界に対する反撃のために自殺を選んだミァハは、なんというか、その思考は思春期にありがちのような、だけどこの世界観ではとても重いもののような気がします。意思を無くしていた少女。
    みんながみんな優しさを押し付け合い、自分で決断することもほとんどなく、痛みや辛さを知らない世界というのは、なかなか魅力的なような気もしますがよく考えればとても気持ち悪いですね。
    最後がすごいです。こう〆るのか、と衝撃を受けました。トァンのちょっぴり冷めたキャラクターが好きです。

  • 虐殺器官と対をなす?小説。
    こちらもたまらなく面白い!
    最初は世界観の把握に若干とまどったが、
    一度入り込むと、最後までページをめくる手が止まらなくなる。
    巻末の解説によれば、著者の思考として(肉体的にも)
    ギリギリまで突き詰めたことが書いてある。
    まさにこれ以上のラストは現時点ではないだろう。
    しかし、この終わりでよかったのかという疑問を感じるのも事実で、
    やはりハーモニーの後が読みたくなる。
    しかしそれが叶わないのは何とも残念だ。

  • 伊藤計劃の作品は『虐殺器官』に続いて2作目。

    作者が病棟でこれを書いたのかと思うと
    中々感慨深いものがある。

    SFなんだけど彼の文章は非常に読みやすいのが良い。
    もう彼の作品は読めないのかと思うと…

全940件中 61 - 70件を表示

著者プロフィール

1974年東京都生れ。武蔵野美術大学卒。2007年、『虐殺器官』でデビュー。『ハーモニー』発表直後の09年、34歳の若さで死去。没後、同作で日本SF大賞、フィリップ・K・ディック記念賞特別賞を受賞。

「2014年 『屍者の帝国』 で使われていた紹介文から引用しています。」

ハーモニー (ハヤカワ文庫JA)のその他の作品

伊藤計劃の作品

ツイートする