- Amazon.co.jp ・本 (436ページ)
- / ISBN・EAN: 9784150310301
作品紹介・あらすじ
頭上に地面、足下に星空が広がる世界。人々は僅かな資源を分け合い村に暮らしていた。村に住めない者たちは「空賊」となり村々から資源を掠め取るか、空賊の取りこぼしを目当てに彷徨う「落穂拾い」になるしかない。世界の果てにもっと人間の暮らしやすい別天地があると確信した、落穂拾い四人組のリーダー・カムロギは、多くの敵と生き残りを賭けた戦いを繰り返し、楽園をめざす旅を続ける-。傑作短篇の長篇化完全版。
感想・レビュー・書評
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2018年1月9日読了。足元に宇宙の果ての天獄・頭上に巨大な天体を抱き減りゆく資源を奪い合い生きる人々、伝説にある天体の内部=地国を目指しカムロギたち一団は旅立つが…。相変わらず大量の数値データ・仮説が怒涛のように示され、登場人物たちはグチョグチョの肉や内臓にまみれ妙に緊張感のないやり取りを繰り返すが、設定は非常にユニークで面白い。映像化されたらどんな感じになるのだろう…?「地国を目指す旅」なのにお話のメインが巨大ロボットバトルを生き延びるための必死な努力になってしまっているのは微妙なところだが、「強大な力を持つ同士が戦う場合決着がつくのは一瞬」という点が非常な緊張感をもって描かれており、小林節に慣れている読者としてはとても楽しめる。続編はあるのかな?これ以上の驚きがあるのかな?
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「人類が太古に住んでいたという、原初の世界さ。そこでは重力が外から内へと向かってたんだろ。」
ハードSFを書かせたら、とことんハードな小林泰三の、短編から長編に昇格した一作。
頭上に地面、足下に星空が広がる世界、
全てのものは手を離しただけで空の彼方へ落ちて行く世界。
人々は僅かな資源を、分け合い、奪い合い、どうしようもなく衰退しながら暮らしている。
明らかに生き物が暮らすには向かない、過酷すぎる世界。
主人公カムロギは、地面の上にある、と神話が言う「地国」を目指して北限の地を目指す。
ちょっと読み進めれば分かるので書いてしまいますが、要するに巨大な宇宙コロニー(的な物)の外側にへばりついているのですね。
例によって出てくる数字を計算すると、世界の全容が詳しく分かる仕掛け、だそうです。
計算結果はこちらへどうぞ↓
http://www2s.biglobe.ne.jp/~ttsyhysh/diary/di0207d.html#020722
答えが分かるとものすごいセンスオブワンダーを感じることができるんですけどね。
これほどの驚きはなかなか他の人ではないですよ!
でも、読者の何%が計算すると思ってるんだ…?
「リヴァイアス」みたいな怪獣大決戦がメインで、全体的にはスペクタクル。
ナタの出生話は、極限状態の狂気って感じで良かったです。
以下愚痴。
ラストはどう取れば良いかわからずぽかーんとするしかない感じ。
長老ザビタンのネタは、笑うところか悩む。萌えを狙ったのでは、ないよね…?
カムロギ、生活困窮具合と比べてインテリ過ぎない? -
『AΩ』に次ぐ、小林泰三のSF長編第2作。
「天国と地獄」ではなく「天獄と地国」であるのが、設定を語っている。大地は頭上にあり、下は星海。落ちるということは遙か真空の宇宙空間に吸い込まれてしまうわけであり、これが天獄。人々は大地に穴を穿って住み、乏しい資源とエネルギーをやりくりして何とか「村」を維持している。大地の下には独立した岩塊「飛び地」があり、ここには空賊が住み、村を襲っては資源とエネルギーを奪う。破壊された村の生き残りは「落穂拾い」となって、一人乗りのオンボロ宇宙船を駆って、空賊の略奪の残り物を漁る。
という設定からすぐさま、この世界の人々は遠心力によって疑似重力を生み出している人工天体の居住区間の外側に張り付いて生活していると推察される。人工天体が『宇宙のランデヴー』のラーマのような円筒体か、リングワールドのような環か、はたまたダイソン球のような球状物かは当初はわからない。どうやら内側にちゃんとした居住区はあるらしく、そこにはたぶん資源もエネルギーも豊かにあるだろう。そこが地国なのである。
主人公は落穂拾いのチーム・リーダー、カムロギ。彼らはこの世界の最低層なのだが、大地に埋まった人間と昆虫を合わせたような体長数百メートルの巨大人造物を発見し、地国を目指す。この世界には「天使」とも「邪神」とも「ギガント」と呼ばれる、類似の巨大兵器が3つあって、力のバランスを取っていたが、そこにカムロギたちが参入し、スーパーロボット大戦が発生する。ここが中盤の読みどころで、巨大ロボット・アニメへのオマージュだ。しかし小林泰三だから若干ながらスプラッタな味わいが注入されている。カムロギが何だか素朴でいい人なのも味がある。
そして当然のことながら終盤に向けて、物語はこの世界の構造の解明へと進む。
『海を見る人』所収の同名短編の長編化。
読みながら情景をイメージするのだが、大地たる人工天体はたぶん球体で、私は球状に湾曲した大地とその上で戦う巨大ロボット(の如きもの)をイメージする。どうしてもそうイメージしてしまう。違うのである。頭上に広がる超巨大な球状の天体とその下で戦う巨大なロボット、なのである。そのたび頭の中で情景をひっくり返しながら読んだ。何と頭の硬いことよ。 -
入口は尻
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【要約】
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【ノート】
・blog not foundで
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大好きもう一つ大好き
本当に好き -
全てが下方の「天獄」に落ちていく世界を舞台にした、巨大ロボットSF。偶然発掘したロボットを見つけた主人公たちは、その脅威を排除しようとロボットを送り込む勢力と戦いながら伝説の「地国」を目指す。
巨大ロボットたちの構造がどれも生命体じみていたり、破壊や人間が機械にアクセスする描写など、生々しくグチャグチャしている。
ロボットたちの大きさは数百メートルから数十万キロに及ぶため、ロボット同士の戦闘はスピーディというよりは長距離の艦隊戦に近く、状況判断と実行、そしてその結果が出るまで時間がかかり、とても緊張感がある。 -
過去の短編作品を長編化した作品だが…これは短編のままの方が良かったのでは?
確かに面白いんだけど、途中から話をデカく膨らませ過ぎて、読んでてうまく話しに乗りきれないと言うか、読者置いてきぼりと言うか。
ΑΩの時と同じパターン。 -
展開に裏切られ続ける。チェックメイト感漂う短編ラストからのまさかの巨大兵器ゲット&勝ち上がり戦展開。そしてまさかの"ザビタン"長老。さらにさらにまさかの地国。そしてさらにさらにさらに絶望に見えて「いや、だがアマツミカボシなら・・・」と希望もあれこれ想像できるラスト。しばし呆然した。『海を見る人』にこの長編の冒頭部分が短編として収録されていたように、この長編もさらに壮大な世界のごく一部でしかない。個々のキャラクターが掘り下げられていたけれど、ヨシュアがまだ手付かずなのは今後に期待していいということだろうか。
あとがきでも触れられているとおり設定先行型の世界であるが故に、少なくとも地国を舞台としてもこれと同程度の長編が一冊書けるだろうし、この世界の成り立ちについてもさらに数冊書けるだろうということも容易に想像できる。文中に出てくる具体的な数値からスケールを出してみるとまたおもしろいだろうと思われるが自分にはその下地がなかったので軽く検索してみたところおもしろい示唆がネット上にいくつか転がっている模様。ストーリー以外の部分まで楽しみたい方は、ぜひ検証されてみてください。