The Indifference Engine (ハヤカワ文庫JA)

著者 :
制作 : 岡和田 晃 
  • 早川書房
3.81
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本棚登録 : 1861
レビュー : 201
  • Amazon.co.jp ・本 (303ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784150310608

感想・レビュー・書評

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  • 「意識とは何か、自我とは何か」
    という表題が作品を貫く。

    私たちが今現在認識している世界は意識が創造した夢にすぎないかもしれないのだ。


    円城塔が「死者の帝国」を引き継ぎ書き上げると宣言したが、
    私にとっては彼の難解な文体は少し苦手なので読みたいか微妙なところ。

    伊藤計劃の作品は、彼よりはやわらかめな文学的表現もしつつ、論理的哲学的に構築された表現もあり、文章を呑みこめるか呑みこめないかの絶妙なラインをついてくるところがよい。

    科学と哲学は表裏一体。SF作品を咀嚼しているとよく感じる。
    この2つの思想は記っても切り離すことができない。

  • 夭折の天才、伊藤計劃の遺稿を含む短編集。同人誌に掲載した試作や未完の作品が多く、「お試し」感の強いラインナップで、一読しての印象は「なんか中途半端だなー」というのが正直なところ。
    ただし、完結している作品ももちろん収録されてまして、この完成度が恐ろしく高いです。「虐殺器官」と同じ世界線にある表題作はもちろんのこと、鴨的には「From the Nothing, with Love」が衝撃的な出来。ぱっと見はあの世界的に有名なスパイ・アクション映画のパスティーシュで、なんでこの映画が題材なんだよ!と心の中で突っ込みながら読み進めたわけですが、これがちゃんとSFしていて、しかもいかにも伊藤計劃らしい深堀りした思索が静かに展開されていて、短編にも関わらずお腹いっぱいな読み応え。

    うーん、鴨の全く個人的な感触ですが、伊藤計劃は短編向きの作家だったんじゃないのかな、という気がします。
    長編は一通り読みました。スゴく面白かったんだけど、正直かなりリダンダントな印象を受けて、読後感は今ひとつでした。今にして思うと、鴨は伊藤計劃作品に「フツーのSF」を求め過ぎていたのかもしれません。先日師匠が初めて伊藤計劃作品を読んで、「村上春樹っぽいね」と評しておりました。正にその通りで、SFとして読む前に、この人の作品は「物語」なんでしょうね。歳を重ねて円熟した伊藤計劃がもし作品を世に出したら、どれほどの傑作になったんだろう、と今更ながらに思います。惜しい才能を無くしたなー。

  • 伊藤氏の短編を読むのは初めてなのですが、さすがに粒ぞろいの作品が揃っています。
    「虐殺器官」、「ハーモニー」のスピンアウトと呼べるような作品、ゲームの「メタル・ギア・ソリッド」に繋がるもの、「007シリーズ」を題材にしたもの、そして遺稿となった「屍者の帝国」のプロローグと、伊藤氏の作品の傾向が網羅的に理解できる構成になっています。
    円城塔氏が完成させた「屍者の帝国」もそうですが、伊藤氏の作品はいずれも「意識」とは何か?という問題意識に貫かれているように思います。
    「意識」とは何なのか?伊藤氏の作品を読みながら、そんなことをじっくり考えてみるのも良いかもしれません。

  • SFはあまり読まないが虐殺器官が「星、五つでっす!」だったので購入。
    同人誌で発表した作品や、虐殺器官のプロトタイプなど読めておもしろ。

  • "短編集、The Indefference Engineという表題の作品が強烈な印象を残す。
    ホテルルワンダの世界そのまま。
    007への愛情あふれる作品もいくつかある。
    最後に収録されている「屍者の帝国」は最近別の作家の手を経て発売された。"

  •  書籍というきちんとした形でまとめられていなかった作品を集めた作品集。
     6つの短編に、2つの劇画、1つの他の作品の解説、という構成になっている。
     やはり6編の短編はどれも極上。
    「セカイ、蛮族、ぼく。」という短編だけは少し毛色が違っているが、残りはどれも伊藤計劃らしさが漂ってくる作品となっている。
     きっちりと論理立てされており、だからといって息苦しさを感じさせることもなく、読むものを良質のエンターテインメントへと誘ってくれる。
     最後の「屍者の帝国」のみ未完(遺稿でもある)。 
     のちに円城塔が後を引き継いで完成させているが、購入してはいるがまだ未読(評判はあまり芳しくないようだが……)。
     どの作品も面白いのだが、やはり一番強く心に残ったのは「本当に惜しい才能を失ってしまった。もっと彼の作品を読んでみたかった」という残念な気持ち。
     特に未完に終わっている「屍者の帝国」の「これから先、どんな展開が待っているんだろう」と期待に胸を躍らさせてくれる内容を読んでしまうと、本当に残念でならない。

  • 『The Indifference Engine』『From the Nothing,With Love.』が面白かった。

  • 羊水の中で溺れてるみたいな気持ち悪さがありながらも、「かぁぁぁぁっこいい!!!」と唸りたくなる、劇場感。死がすぐ側まで、いやそれどころか内側まで、入り込んできているのに、まるで生まれ変わりの準備をしているみたいな安心感を感じるというか。中毒性高い。もっと生きてもっと多くの作品を残してもらいたかった…。表題作のThe Indifference Engineが一番好き。争うために歴史がいる。人を殺して死ねと教えたお前らが助け合えとのたまう。じょおおおおおだんじゃない!という不条理はそこらじゅうに転がっている。

  • 表題作と007の話が面白かった。
    表題作は今のシリアと照らし合わせて。
    007はメタを作品構造として取り込んだ質の良いオマージュ。
    他の作品はオリジナルの影響から抜け出しきれてない感じ。執筆順がどうなっているか分からないけど、作風のオリジナリティ獲得の軌跡として読むと面白い?
    この先にハーモニーや虐殺器官があるわけで、その2点をつないだ延長線上に必ずあるはずだった傑作を読めないのが本当に惜しい。

  • 『The Indifference Engine』
    圧倒的に生々しくグロテスク。読んでいてつらいけれど引き込まれる。部族対立による戦争が終わり、平和のために部族間の差異を認識できなくなる脳処置を受ける少年兵。そんな方法で憎悪は、戦争は止められるのか。

    『セカイ、蛮族、ぼく。』
    コミカルで妙にインパクトがある短編。冒頭から笑う。

    『From the Nothing, With Love.』
    これも凄みがある。英国の凄腕スパイの人格が死後も他人の脳に移植され引き継がれ代々活躍している。悍ましい技術によりコピーされる『私』は、任務の中で自身の意識への疑いを深めていく。コピーの繰り返しにより、スパイとしての行動様式と振る舞いこそ主になり自身の意識が不要になっていくというのは面白い。

著者プロフィール

1974年東京都生れ。武蔵野美術大学卒。2007年、『虐殺器官』でデビュー。『ハーモニー』発表直後の09年、34歳の若さで死去。没後、同作で日本SF大賞、フィリップ・K・ディック記念賞特別賞を受賞。

「2014年 『屍者の帝国』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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